34 / 46
五十歩百歩の世界
しおりを挟む
私のガラケーがついに壊れた
「2026年の3月末日でガラケーは使えなくなるので、部品もないし、修理はもう行ってないですよ」と、NTT ドコモのつれない言葉。
夫のガラケーはまだ健在だ。認知症で要介護3の夫は、デイサービスやショートステイを利用した帰りには「これから帰る」と、必ず私の携帯にかけてくる。そうすれば"帰ったらすぐ飯が食えるから"ということらしいが、とにかくもう習慣になっている。それが中断となり、長引いてしまうと携帯を使えなくなってしまうかもしれない。
それはまずい!と即、日曜日に娘とドコモショップで待ち合わせ、スマホを購入した。と言っても私は軽くて手に持ちやすいもの( あまり どれも差がないが)を選んだだけで後は娘に任せて 隣に座った。
それからは担当者と娘の間で交わされる全くわけのわからない、延々と続く手続きが終わってくれるのをひたすら待つだけだった。
そしてようやく 私の手元にスマホが
「もうお使いいただけますから」と、担当者からにっこり言われても、「はぁ…………」私には単語猫に小判なようなもので何の感慨もない。
「明日から会社だから、もう帰らなきゃ」という娘を引き止め、電話とメールの仕方を自宅で何度も教わったのだが…………
娘が帰った後 、一人で何度もやってみるがうまくいかない。
夫が見かねて
「俺の携帯、使っていれば」
まあ 確かに。それも一理あるけれど、 それでは本末転倒 だし……
数日後、NTTドコモから私宛に書留が届いた 。同じカードが2枚も入っていた。
夫に
「ねえ、ドコモって意外と親切だったのね。落としたりしてなくなった時のために、予備まで入れてくれているのよ。銀行も郵便局もカードは1枚しかくれないのに」
どれどれと見た夫が、
「これクレジットカード。もう1枚は家族用、お前が持っていて大丈夫なのかよ」
「大丈夫かって何が?ねぇ、それより クレジットって何?」
「それも知らないで作ったのか 。物を買う時に、現金で払わずに後払い すること」
「えー、今まで現金でしか買い物をしたことないわ。お金、持ってなくても買えるんだ」
「そうだよ。このカードと暗証番号でな」
「私 暗証番号なんて知らないけど、ふみちゃん(夫の名前)知ってる?」
「お前、バカじゃないの。俺が知るわけないだろ。あー、恐ろしいな。子供たちは俺の心配するけど、俺よりお前の方がずっと心配だよ、と言わなきゃな」
そういえば ドコモで娘が手続きの途中に
「お母さん、ここに暗証番号を書いて。4桁ね」
というので「ついでに書いてよ、お母さんの生年月日の○○○○」と大きな声で言ったら「お母さん、それ却下 ね」
結局、娘に全部やってもらったのだった。
無知はとっても恥ずかしいこと、とっても怖いことだけど、認知症とはまた違う。
そう言いたかったけれど、 黙っていた。
無知症という病名があったら私は太鼓判をされるほどの患者になりそうだから
「2026年の3月末日でガラケーは使えなくなるので、部品もないし、修理はもう行ってないですよ」と、NTT ドコモのつれない言葉。
夫のガラケーはまだ健在だ。認知症で要介護3の夫は、デイサービスやショートステイを利用した帰りには「これから帰る」と、必ず私の携帯にかけてくる。そうすれば"帰ったらすぐ飯が食えるから"ということらしいが、とにかくもう習慣になっている。それが中断となり、長引いてしまうと携帯を使えなくなってしまうかもしれない。
それはまずい!と即、日曜日に娘とドコモショップで待ち合わせ、スマホを購入した。と言っても私は軽くて手に持ちやすいもの( あまり どれも差がないが)を選んだだけで後は娘に任せて 隣に座った。
それからは担当者と娘の間で交わされる全くわけのわからない、延々と続く手続きが終わってくれるのをひたすら待つだけだった。
そしてようやく 私の手元にスマホが
「もうお使いいただけますから」と、担当者からにっこり言われても、「はぁ…………」私には単語猫に小判なようなもので何の感慨もない。
「明日から会社だから、もう帰らなきゃ」という娘を引き止め、電話とメールの仕方を自宅で何度も教わったのだが…………
娘が帰った後 、一人で何度もやってみるがうまくいかない。
夫が見かねて
「俺の携帯、使っていれば」
まあ 確かに。それも一理あるけれど、 それでは本末転倒 だし……
数日後、NTTドコモから私宛に書留が届いた 。同じカードが2枚も入っていた。
夫に
「ねえ、ドコモって意外と親切だったのね。落としたりしてなくなった時のために、予備まで入れてくれているのよ。銀行も郵便局もカードは1枚しかくれないのに」
どれどれと見た夫が、
「これクレジットカード。もう1枚は家族用、お前が持っていて大丈夫なのかよ」
「大丈夫かって何が?ねぇ、それより クレジットって何?」
「それも知らないで作ったのか 。物を買う時に、現金で払わずに後払い すること」
「えー、今まで現金でしか買い物をしたことないわ。お金、持ってなくても買えるんだ」
「そうだよ。このカードと暗証番号でな」
「私 暗証番号なんて知らないけど、ふみちゃん(夫の名前)知ってる?」
「お前、バカじゃないの。俺が知るわけないだろ。あー、恐ろしいな。子供たちは俺の心配するけど、俺よりお前の方がずっと心配だよ、と言わなきゃな」
そういえば ドコモで娘が手続きの途中に
「お母さん、ここに暗証番号を書いて。4桁ね」
というので「ついでに書いてよ、お母さんの生年月日の○○○○」と大きな声で言ったら「お母さん、それ却下 ね」
結局、娘に全部やってもらったのだった。
無知はとっても恥ずかしいこと、とっても怖いことだけど、認知症とはまた違う。
そう言いたかったけれど、 黙っていた。
無知症という病名があったら私は太鼓判をされるほどの患者になりそうだから
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる