最上位αの初恋

認認家族

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私の番は少しでも私の気配を感じて居たいのだろう、私が居ようといまいと、講義の合間、時間がある時はA1にくる。

「そりゃ、時給が良いからですよ。カテキョーも辞めさせましたし」
……五月蝿い、猪瀬。

A1に着くと、陸が笑顔で私を迎えてくれた。
『おかえりなさい』
そんなふうに言ってくれている。
陸の為にもいい物件を押さえておかなければ。利便性よりもセキュリティが重要だ。こんなにも愛らしい陸だ。不届き者が出ないとも限らない

「紅茶、すぐ用意しますね」

すぐ用意しますねすぐ用意しますねすぐ用意しますね……

「貴嗣様」
コホンと猪瀬が咳払いする。
下半身に集まりかけた熱が散る

「このあとの議題ですが……」
タブレットを見ると……うん、今の陸には理解出来ない内容だろう。
「陸、紅茶はローテーブルのほうに」
陸の隣を陣取ることにする。

ソファにすわり商談について吟味していると、案の定、陸が船を漕ぎ始めた。理解が出来なくて眠たくなったんだな。可愛い過ぎるだろ。
そのまま、コテンと私の肩によりかかった。
くぅ~

猪瀬が冷たい目を私に向ける
……お前もさっさと番を見つけろ。人の事を軽蔑出来なくなるさ。

「青島はブレーンとしての価値は0ですね」
嘆かわしい、猪瀬が言う。京極のトップの伴侶には外交の為の知識や技術が必要とされる。
ましてや……私の母を基準にしている者達もいる。元上位αであった母の見識は広く人をかしずかせる威厳がある。比較はされてしまうだろう

「陸は、存在自体が尊いからいいんだよ」

陸の髪の毛を撫でる。
そう、陸は何も出来なくていい。陸の分も私が働くから。実際、陸と出会って私のαとしての能力が更に覚醒した。それまでモヤがかかっていたような状態だったのに、全てがクリアになった。
柔らかい髪……。いつまでも触っていたいが、そうもいかない。
今までは機械的に片づけていた仕事も番を養う為だと思えばとても有意義な作業に
思える

「進めるか」
「はい」
猪瀬がうっとりと私を見る。
最高位αである私をこのように見つめる者は多い。
幼馴染である猪瀬はまだ耐性がある方だ。
その猪瀬でさえも、私が陸を見つけた日には神を目の前にしたような反応をした。
私に恐れと畏敬の念を抱き、体は震え、膝を地に着き、拝んできた。
陸の存在は私を一段上にあげるのだ。

「う~」
陸がむずがる。
再び髪を撫でると穏やかな寝息をたてる。

『え?いやいや、京極様だって人間だから!休息は必要だから!』
この部屋で業務を行っていた私達に陸は言った。
『京極様、休憩取りますよ!』
それまでは、各々でとっていた休息。部下達がとる中、私には必要無かったから途切れる事なく報告や決済を済ませていた。
そんな私を強引に休ませたのも陸が初めてだ。

『京極様だって人間だから!』
あの時の猪瀬達の顔、今思い出してもくすりと笑ってしまう。
そうか、私も人間だったのか。

「わ、笑った……」
誰かがぽそりと呟いた。まぁ、そうだろう。側近達にとって私は感情というものを廃した神に近しい存在だったのだから。

陸は……私に対して緊張はしても、それは畏怖ではない。困ったな、そんな顔はしても、それだけだ。

するりと髪が私の指の間を抜ける。
捕まえたと思った次の瞬間には離れていく。


コンコン、ノックの音が響く。
舌打ちしそうになる。
陸が起きたらどうしてくれる。

「失礼します」

最近採用したヤツだ。私の側近になれるか試用期間のような立ち位置の者。京極を含め、一定の会社は学生のうちから優秀な者を引っ張るようにしている。いや、寧ろそれを目的にこの大学に来るαも多い。国内の最高学府といわれるこの場は、学業の場であると同時に、社交の場でもあるのだ。より太いコネ、より大樹へと近づく為に。

側近候補A は一瞬で現状を悟ったらしい。失態に顔色が悪くなる。だが、陸の眠りは深く、起きることはなかった。
九死に一生を得たな。
だが、二度目はない。

私の蜜月を邪魔する者は……


誰も物音を立てない
陸のスースーと可愛いらしい寝息が聞こえる


皆、猫のように気配を消して物音も立てずに業務を行う
当然だ。私の番の眠りを阻害するなど言語道断。


私に身じろぎさせぬよう、書類が手渡される。確認が終わった書類は目で合図をし 、受け取りにこさせる。
ふむ……中々皆優秀だな。物音一つ立てない。
肩に乗る陸の重みが愛おしい。

すると…マヌケが、書類を滑らせた。陸に落ちる。陸がパチリと目を覚ます

「え?あれ?すみませんっ」

陸が謝罪をしながら私から離れた。肩が、肩が急に寒くなった。

「…………。猪瀬」
「はい」

それだけで、皆察しただろう。このマヌケはクビだ


暫くすると、陸が再び寝落ちした。
疲れているのか。
陸の学力でこの大学は中々厳しいだろう。人よりも勉強に費やす時間も長くなる。

「陸…」

ウトウトとしていた陸が、私の方に倒れ込んできた。恐る恐る膝を貸した。

「…………」

陸は目を覚まさない。
震える手で陸の髪を、頬を撫でる。
陸は目を覚まさない。


陸がぶるりと震えた。
今日は梅雨の戻り、少し肌寒い。
上に何かをかけてあげたいが動きたくない。
すると、部下達が持ってきた。
一人はブランケット
もう一人は私のジャケット。番が私の香りに包みこまれる……

「…………。猪瀬」
「はい」

それだけで、皆察しただろう。
ジャケットのコイツは正式採用決定だ。

















~~~~~~~~~~~~~~
京極様の採用基準は、陸と出会って崩壊しました……それまではまともだったのに……。


因みにこの話は、『底辺α……』の95話と96話の間に猪瀬さん視点で入ってます♪
『最上位α…』から入られた読者様へ。その付近はすでシリアスモード&ネタバレなので…前後は読まないほうがいいかもしれません。












    
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