4 / 26
執愛
しおりを挟む
クラレント公爵邸、地下。中央動力室。
何本ものパイプが天井を埋め尽くし、部屋の中に置かれたポンプやタービンなどに複雑に配置されている。
勝手知ったるなんとやら。
ヴィクトルは鼻歌を歌いながら、機械の合間を縫って浮かれた足取りで歩を進める。
目的の魔力配伝盤や制御盤のある一角に辿り着くと、無造作に焼け爛れた手袋を脱ぎポケットにねじ込んだ。
そして怪我ひとつない綺麗な手で、一つ目の炉の魔力注入口に触れた。
魔力がタンクに充填され、配管を通り屋敷の各部屋に行き渡る。
アリスターにはああ言ったが、ヴィクトルは怪我など一つもしていない。
先程のトラブルは彼に罪悪感を与えるための狂言に過ぎなかった。
魔石が青く光り、燃料タンクの目盛が一つ上がる。
三機ある炉全てに繰り返して息をつき、ヴィクトルはひとりごちた。
「次はゴーレムか。明日の午前中まで持てばいいかな」
女性型のメイドゴーレムに魔力を注ぎ、起動の呪文を唱えた。
すっと頭を下げたゴーレムにヴィクトルは口元だけの笑顔を作る。
「傷心のアリの面倒を見てあげて。まず温かい風呂に入れて、その間に汚れたベッドを綺麗にして、部屋を少し掃除して、食事はまあ……食べさせられたらでいいや。君のその顔でやさしくやさしくしてあげてよ」
お行き、と命じるとメイドは無言で アリスターの元へと移動する。
その背を眺めたヴィクトルの喉から意図せずにくふりと笑いがもれる。
アリスターが無意識下でヴィクトルの事を劣ったアルファだと思っていることを知っている。
これはアルファの本能的なものでアルファとしての優劣を嗅ぎ取るのだ。
アリスターはアルファの中のアルファ、王にすら並び立つ強い個体だ。
本来の彼はそうした本能が人一倍強い。
だからこそ怪我人でアリスターよりも劣る個体である自分が頑張って起動させていったゴーレムに世話をされた彼は、ヴィクトルの手を灼いたという罪悪感に苛まれるのだ。
まして彼女はアリスターの母親オメガの若い頃の姿を模したゴーレムだ。一見そうと分からないように色味を変えているし、女性型にしてあるが、彼がそちらも意識せず感じ取っているのを知っている。
「あー、本当にかわいいなぁ。アリスターは。ぜーんぶ僕のせいだって知らずに慕ってくれて、本当チョロくて可愛い」
今日は少し加減を間違えて魔道具を一つダメにしてしまったが、 思った以上にアリスターの罪悪感を膨らませられたので、安いものだ。
あと少しで、アリスターは完全に自分の手に、そしてオメガに堕ちるだろう。
そうしたらぐずぐずに甘やかして、依存させて、毎日毎日その胎に魔力を注いで、孕ませて……。
めくるめく妄想と共に唇から執愛がこぼれ落ちる。
「ああ……愛しているよ。アリスター」
うっとりと先程のアリスターの泣き顔を反芻して、ヴィクトルは宰相府の自室へ帰る魔法陣を起動した。
何本ものパイプが天井を埋め尽くし、部屋の中に置かれたポンプやタービンなどに複雑に配置されている。
勝手知ったるなんとやら。
ヴィクトルは鼻歌を歌いながら、機械の合間を縫って浮かれた足取りで歩を進める。
目的の魔力配伝盤や制御盤のある一角に辿り着くと、無造作に焼け爛れた手袋を脱ぎポケットにねじ込んだ。
そして怪我ひとつない綺麗な手で、一つ目の炉の魔力注入口に触れた。
魔力がタンクに充填され、配管を通り屋敷の各部屋に行き渡る。
アリスターにはああ言ったが、ヴィクトルは怪我など一つもしていない。
先程のトラブルは彼に罪悪感を与えるための狂言に過ぎなかった。
魔石が青く光り、燃料タンクの目盛が一つ上がる。
三機ある炉全てに繰り返して息をつき、ヴィクトルはひとりごちた。
「次はゴーレムか。明日の午前中まで持てばいいかな」
女性型のメイドゴーレムに魔力を注ぎ、起動の呪文を唱えた。
すっと頭を下げたゴーレムにヴィクトルは口元だけの笑顔を作る。
「傷心のアリの面倒を見てあげて。まず温かい風呂に入れて、その間に汚れたベッドを綺麗にして、部屋を少し掃除して、食事はまあ……食べさせられたらでいいや。君のその顔でやさしくやさしくしてあげてよ」
お行き、と命じるとメイドは無言で アリスターの元へと移動する。
その背を眺めたヴィクトルの喉から意図せずにくふりと笑いがもれる。
アリスターが無意識下でヴィクトルの事を劣ったアルファだと思っていることを知っている。
これはアルファの本能的なものでアルファとしての優劣を嗅ぎ取るのだ。
アリスターはアルファの中のアルファ、王にすら並び立つ強い個体だ。
本来の彼はそうした本能が人一倍強い。
だからこそ怪我人でアリスターよりも劣る個体である自分が頑張って起動させていったゴーレムに世話をされた彼は、ヴィクトルの手を灼いたという罪悪感に苛まれるのだ。
まして彼女はアリスターの母親オメガの若い頃の姿を模したゴーレムだ。一見そうと分からないように色味を変えているし、女性型にしてあるが、彼がそちらも意識せず感じ取っているのを知っている。
「あー、本当にかわいいなぁ。アリスターは。ぜーんぶ僕のせいだって知らずに慕ってくれて、本当チョロくて可愛い」
今日は少し加減を間違えて魔道具を一つダメにしてしまったが、 思った以上にアリスターの罪悪感を膨らませられたので、安いものだ。
あと少しで、アリスターは完全に自分の手に、そしてオメガに堕ちるだろう。
そうしたらぐずぐずに甘やかして、依存させて、毎日毎日その胎に魔力を注いで、孕ませて……。
めくるめく妄想と共に唇から執愛がこぼれ落ちる。
「ああ……愛しているよ。アリスター」
うっとりと先程のアリスターの泣き顔を反芻して、ヴィクトルは宰相府の自室へ帰る魔法陣を起動した。
30
あなたにおすすめの小説
終焉の晩餐会:追放される悪役令息は、狂欲の執事と飢えた庭師を飼い慣らす
河野彰
BL
かつて、ローゼンベルグ家の庭には白薔薇が咲き誇っていた。嫡男リュシアンは、そのバラのように繊細で、風が吹けば折れてしまいそうなほど心優しい青年だった。しかし、名門という名の虚飾は、代々の放蕩が積み上げた「負の遺産」によって、音を立てて崩れようとしていた。
悪役になり切れぬリュシアンと彼を執拗にいたぶる執事のフェラム、純粋な愛情を注ぐ?庭師のルタムの狂気の三重奏。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
イケメンダブルセンターとアンチ>ファンな平凡な俺
スノウマン(ユッキー)
BL
アイドルグループ【オーバーウェルミング】は圧倒的な歌唱力の深山影月、圧倒的なパフォーマンス力の漣陽太、そして圧倒的な平凡力な俺間桐真緒の3人で結成されている。
大人気の二人と違いアンチしかいない俺だが、メンバーからもファンからも愛される日が果たしてくるのか!?
「行くな」と言って、縋って泣いて。貴方はきっと僕のすべてを忘れるから
水城
BL
番になれないβだから、忘れられることを選んだ。
誰も教えてはくれなかった。αの発情が最も激しくなる瞬間を――忘却と救済のオメガバース
鳴海奏(なるみかなで)は、交通事故で死んだ。享年二十五。
スーパーアルファを輩出する名門、九条家の執事として、また秘書として、当主である九条柾臣(くじょうまさおみ)に一生をかけ仕えるはずだった奏の魂は、ふと気づくと自分の葬儀会場にいた。
現世に残してきたアルファの柾臣を見守る奏。奏はベータ。すでに婚約者のいる柾臣とは番にも恋人にもなれるはずもない身。
しかし、唯一の理解者であり支えであった奏を失い、柾臣は次第に壊れていく――
アルファとオメガの理の外側で「忘れられる」ことを選んだベータ。
それははたして救いだったのか。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる