上 下
7 / 8

第7話 VSコカトリス

しおりを挟む
――コカトリス

 鶏の体にドラゴンの翼と足、蛇の尻尾を持つ。即効性の猛毒を持ち、毒を吐いて攻撃する魔物である。

 空太のスマホには魔物コカトリスの情報が表示されていた。しかし、その中でも一つ気になる情報があった。

『邪視を持つため直接目を合わせたものを殺すことができる』
 これはまずい。焔に共有しておかなければ。

「焔、ちょっといいか?」
 コカトリスにバレないようにひそひそ声で焔に伝える。
「なんだ?」
「どうやら、あのデカいトリはコカトリスというらしい。しかもかなり危険だ。目を合わせただけで死ぬらしい」
「なんだと? そんなことが可能なのか?」
「ああ、アンノウンが教えてくれた」
 アンノウンという単語に焔は反応した。
「アンノウンって誰だ?」
「えーと、簡単に説明すると、カーナビみたいな存在だ」
「まあいい、深くは聞かないでおく、それより」
 焔はさらに顔を近づけて話しかけてくる。
「目を合わせられないならどうやって倒す? 目隠しでもつけて戦えと言うのか?」
「そこは心配しなくていい、アンノウンに音声案内してもらい、その通りに動けば、勝機はある」
「なるほど、誰だか分からないやつの案内に従い倒すというのか、雲行きが怪しいな」
 焔はごもっともなことを言う。しかし今はアンノウンに従うしかないのだ。
「焔にも聞こえるようにスマホの音量を上げておく。そろそろ始めるとしよう」
「ふむ、いささか不安ではあるが、やってみよう」

『よろしくお願い致します。焔様。』

「うお、いきなり喋るなアンノウン。気づかれたらどうする――」

 コケコッコー!!

「もう気づかれたぞ、空太」
 やれやれと焔は鞘から日本刀を抜くと構える。そしてコカトリスへと走り出した!
「あ! おい焔! 目は合わせるなよ!?」
「任せておけ!」
 そういうと焔は目線を下に向け、コカトリスと目が合わないようにしつつ、コカトリスとの距離を縮める。
「はあああああっ!」
 焔は日本刀をコカトリスの足に向け振り下ろした!

 ガキンッ

 鈍い音がした。焔の日本刀は確かにコカトリスの足を捉えて切り裂いた――かに見えたが、コカトリスの足は傷一つ付いていなかった。
「なんだと!?」
 焔は驚愕していた。コカトリスの足はダイヤモンドのように硬かったからだ。

「コケ―!!」
 コカトリスが焔に向け、毒を吐いた!
「なめるな!」
 焔はコカトリスから吐かれる毒を華麗に避けると。コカトリスから距離を取る。「空太! なにか対策はないのか!?」
 焔が叫ぶ。そうだ。アンノウンに聞いてみよう。
「アンノウン、対策はないのか?」

『データを共有致します。コカトリスの弱点は神聖な武器です。聖なる武器で討伐が可能です』

「聖なる武器ってなんだよ!ここはファンタジーの世界じゃないんだぞ!」

「おい空太! 聖なる武器って聞こえたが? 心当たりはあるのか?」
「もちろんないよ!」
 焔は呆れた表情になったが、すぐにいつもの調子に戻る。
「まあいい! 私が時間を稼ぐ! その間になんとかしてくれ!」
 そういうと再び焔はコカトリスに立ち向かう。
「足が駄目なら、尻尾はどうだ!」
 焔はコカトリスの尻尾めがけて日本刀を振り下ろす!

 キィン!

「くそ! ここも硬いっ!」
 刃はやはりコカトリスには効いていない。聖なる武器でないと駄目なのだ。

「あ~! まずいぞ! 考えろ! 考えろ! 俺!」
 空太は聖なる武器に心当たりはないか考えたが、やはり思いつかなかった。
 万事休すか、空太がそう思った時。

『空太様。提案がございます』
「なんだ?」
『前回倒したジェヴォーダンの獣を素材にして頂ければ、聖なる武器を提供可能です』
「なんだって?」
『今から言う手順に従ってください』
 どうやら選択の余地はないようだ。
「わかった。どうすればいい?」
『スマホのQRコード読み取り履歴からジェヴォーダンの獣を選択してください』
「わかった!」
 空太は急いでスマホのQRコードアプリを開き読み取り履歴を開きジェヴォーダンの獣を選択する。
「選択したぞ! 次はどうすればいい?」
『素材を取得するという項目があります。そちらをタップしてください』
 空太はスマホの画面を見る。確かに素材取得という項目があった。その項目をタップする。すると。

『素材取得
・ジェヴォーダンの皮
・ジェヴォーダンの牙
・ジェヴォーダンの天鱗』

 3つの素材が取得できた。
「できたぞ! 次は?」
『素材を合成するをタップしてください』
 空太はスマホの画面を見る。素材を合成する項目を見つけた。すぐにタップする。

『素材合成中・・・・・・構築中・・・・・・構築完了・・・・・・武器を具現化致します』
「具現化? 何を言って・・・・・・うわっ!」
 突然、空太のスマホが光を放つ。四角いスマホがみるみる剣の形に変わっていく。
 空太の手には剣が握られていた。

『具現化完了。武器名――アロンダイト』

「アロンダイト・・・・・・これが聖なる武器か」
 空太はアロンダイトをまじまじと見る。見た限りではなんの飾りもないただの剣にみえる。
「まあ試してみる価値はありそうだな」
 空太は焔に声をかける。
「焔! 準備ができた! 今から俺も戦う!」
「待ちくたびれたぞ、空太」
 空太は焔の隣に立つ。今こそ、コカトリスに引導を渡してやろう。

「アンノウン! 案内は任せたぞ!」
『かしこまりました』
 空太と焔はコカトリスに向け走り出した!

『焔様。コカトリスの足を払い、コカトリスの体制を崩してください』
「ふん、任せろ!」
 焔はコカトリスの足元に素早く潜り込むと足を払った。

 コケッ!?

 コカトリスは盛大にこけた。足をバタバタさせていてなかなか起き上がれないようだ。

『チャンスです。空太様。コカトリスの胸をアロンダイトで貫いてください』
「うおおおおおっ!」
 空太はコカトリスの胸を狙いアロンダイトを突き刺した!

コケーーーーーーーッ・・・・・・コ。

 アロンダイトは弾かれることなくコカトリスの胸を貫いた。コカトリスはピクピクしていたが、やがて動かなくなった。
「やったな」
 隣に焔がやってきた。
「ああ。焔もいたから倒せた」
「なに、私はサポートしたまでだ。とどめを刺したのは空太だ」
「ありがとう、焔」
「どういたしまして」
 空太と焔はグータッチをした。無事に倒せたが、焔がいなければ倒すことはできなかったと思う。もう一度、焔に感謝の言葉を述べよう――そう思って焔の方を向いた時。
――唇が重ねられた。重ねてきたのは焔だ。
「こ、これは今日のデートのお礼だ」
 顔を真っ赤にした焔が照れくさそうに言った。
「あ、ああ、お礼、ね、どういたしまして・・・・・・」
 空太は頭の中が真っ白になった。
「さあ、そろそろ帰るぞっ」
 焔はそそくさと出口へと向かっていってしまった。
「・・・・・・そうだ。QRコード。」
 とりあえず体を動かさなければ。考えるのはそれからでも遅くない。空太はコカトリスのQRコードを探し、読み取るのであった・・・・・・


 
しおりを挟む

処理中です...