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「相済みませぬ。熱い思いで胸が詰まり、つい――」
蔵人はそれに弁解し、
「謹んで、お受け致しまする」
と答えた。京で過ごした年月のお陰で、こういう場では肥後訛りが出ないようになっている。それと前後する形で、
「御主には他にも果たしてもらいたい務めがある」
年寄がやや早口に告げた。
他に? 蔵人は訝しげな貌を年寄に向ける。
「剣術指南役はあくまで、表の顔たい。おどんの真の役目は、間者を斬ること……」
年寄は、「表の顔たい」以後声を落としてしゃべった。
「間者を――!」
明かされた内容に、蔵人は目を瞠る。
「――知っての通り、我が相良の勢威は富強。葦北、八代を領有して尚、南へ北へと伸張しつつある。だが、南方に島津、北に大友家があり我が家を取り巻く環境は甚だ厳しい。他国の間者がしばしば入り込んでおる」
ここで、蔵人の理解が及ぶのを待つように義陽は間を置いた。そして、
「そこで、公方様の上覧仕合の打太刀を務めた御主の力を借りたいのだ」
と言葉を接(つ)いだ。
「……」
蔵人はやや放心状態にある。まさか、このような役目を仰せつかるとは思ってもいなかった。
――脳裡に、政信と景の最期が閃く。
蔵人はそれに弁解し、
「謹んで、お受け致しまする」
と答えた。京で過ごした年月のお陰で、こういう場では肥後訛りが出ないようになっている。それと前後する形で、
「御主には他にも果たしてもらいたい務めがある」
年寄がやや早口に告げた。
他に? 蔵人は訝しげな貌を年寄に向ける。
「剣術指南役はあくまで、表の顔たい。おどんの真の役目は、間者を斬ること……」
年寄は、「表の顔たい」以後声を落としてしゃべった。
「間者を――!」
明かされた内容に、蔵人は目を瞠る。
「――知っての通り、我が相良の勢威は富強。葦北、八代を領有して尚、南へ北へと伸張しつつある。だが、南方に島津、北に大友家があり我が家を取り巻く環境は甚だ厳しい。他国の間者がしばしば入り込んでおる」
ここで、蔵人の理解が及ぶのを待つように義陽は間を置いた。そして、
「そこで、公方様の上覧仕合の打太刀を務めた御主の力を借りたいのだ」
と言葉を接(つ)いだ。
「……」
蔵人はやや放心状態にある。まさか、このような役目を仰せつかるとは思ってもいなかった。
――脳裡に、政信と景の最期が閃く。
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