ニルヴァーナ――刃鳴りの調べ、陰の系譜、新陰流剣士の激闘(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 ――閃(せん)、面を狙って斬撃が放たれた。蔵人は同じ軌道で刀を迎え打つ。
 直後、敵はこちらの脚を狙ってきた。急速に振り下ろされた一刀がそれを弾き返す。反撃の蹴りが、相手の右脚へと伸びた。
 痛みと転倒を防ぐために、対手は一瞬動きが止まる。慌てて右半身になり反撃の構えを見せたときには遅い――蹴りを放った足が相手の前脚の裏面に押し当てられ、動きが制されている。
 流れるような動きで相手の動きを封じた蔵人は、刀を横にして柄を鳩尾へと叩き込んだ。
「う……」と呻きながら、敵はよろよろと後退する。
 ――そこへ、斬り合いの最中に頼慶の蹴りを喰らったもう一人の男が転がってきた。
「きはははははは! やるな、御主ら!」
 それを認めた福相の巨漢が、胸元に刺していた扇を引き抜く。それはただの扇ではなく、鉄製の『鉄扇』と呼ばれるものだ。
「此奴等の太刀筋、鞍馬(くらま)流と見たがどうだ」
 蔵人は揺さぶりをかけるために、流派を見抜いたことを告げる。
 ――鞍馬流、それは平安の世に生まれた最も古き刀法関東七流に継いで生まれた京八流の流れを汲む流派だ。開祖は市井に生きる陰陽師であった鬼一法眼(きいちほうげん)とされる。まだ牛若丸と名乗っていた源義経が学んだことでも京八流は名を馳せている。
「――む」と福相の男がここで初めて笑みを崩し、唸り声を漏らした。だが、すぐに笑みを取り戻し、
「ここは退かせてもらおう、きははははは!」
 奇声を上げながら、鉄扇で宙を掻く摩訶不思議な動きを見せた。
 刹那、その手前に無数の脇差が出現する。
「な――」と蔵人は眼を剥いた。
「きははははは!」
 福相の男が鉄扇を一振りすると、無数の刃が矢のような迅さで飛ぶ。
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