信長、秀吉に勝った陰陽師――五色が描く世界の果て(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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 マノエルがとり憑かれたのも分からぬではない――久脩は心のうちで独語する。安倍晴明の生きたころと違って、必ずしも土御門家と勘解由小路家の関係は良好ではない。だが、それでも京という狭い世界で、それも陰陽師の二大大家に生まれた関係だ、まったく見知っていない訳ではない。
 いや、と久脩は首を横にふった。こちは話に聞いたあの御仁の致しようが羨ましかったのやもしれぬ――。
 吹けば飛ぶ地下の家の者でありながら、信じることのためであれば法華宗の一門を敵にまわし、命が危ないとなれば執着することなく京を捨てて出奔した。当人にしてみれば必死に生きる道を探っただけかもしれないが、久脩には在昌の峻烈な生き様はまるで流れ星のごとく激しく輝いているように思える。
 と、そこまで考えたところで久脩は眉をひそめた。
 気配、を察知したのだ。息を殺しながら、ひそやかに屋敷へと侵入を果たした者の存在を感じ取った。
 賊にしてはあまりにも気配が希薄――久脩は脈が早まるのを感じながら屋内へと早足にもどる。ただし足音は立てないように留意した。またうろたえて気配を乱すこともこらえる。
 日本でもっとも古い剣術の流儀といえば京八流があるが、この開祖は陰陽師だった。源義経は六韜三略を彼から盗み出したともいう。かつて陰陽師というのは、後世でいう先端技術者(テクノラート)であり陰陽道の知識に混じって大陸の兵法もまた伝来した知識の中に混じっていたのだ。そんなもののひとつ、家伝の二刀の剣術、陰陽剣を久脩は習得していた。
 ひざをつき、枕元にあった二本の小太刀へと手を伸ばした。これらは護身のために準備していたものだ。一本は先祖伝来の物で出仕の折に帯びていたものを使いやすいように刷り上げた品だった。
刹那、濡れ縁から格子を突き破って室内に影が躍り込んでくる。
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