信長、秀吉に勝った陰陽師――五色が描く世界の果て(時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品)

牛馬走

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「矢だ、敵が矢を射かけてきておるッ」
 組頭が憎々しげ絶叫するのが聞こえた。だが、それにしても転ぶ者の数が多すぎる。
「それだけではない、地面の草が結わえてあるわッ」
「莫迦にしおって」
 さらに怒声が重なった。その間にも矢は降り注ぐ。悲鳴が入り混じり、奇襲の失敗で士卒の戦意がいちじるしく下がった。
「楯だ、楯を構えて横並びになれ」
 声に応じて、夜の闇で人影が躍る。
 応仁の大乱から長いこと立っている、軍兵の動きも手馴れていた。またたく間に楯の列が整う。
 刹那、矢が空気を裂くのとはあきらかに違う異音が祐治の耳に届いた。
 次の瞬間、重い打突音が鳴る、ひびく、響き渡る。兜を割られ、鎧を凹まされ、足を潰されて多くの士卒が地面に張った。
 祐治の知る由もないが、竹を利用した即席の投石器が使用されたのだ。それも複数。
 楯の列が乱れたのに付け入るようにふたたび矢が飛来する。悲鳴や苦悶が立て続けに湧いた。
 既に数十人の死傷者が出ている。
 これが兵法(へいほう)を知らぬ公家の戦ぶりともうすかっ――。

 さように、敵の将は思っているはず――。
 久脩は馬防柵の後で戦いを見守りながらふりずんばいを使って自身も石を投じていた。武田にも投石隊が存在したが、元来、投石という攻撃方法は非常に有効なものだった。鉄砲が日本に広まってもちいられる割合は減ったがそれでも十二分に実戦に耐えられる攻撃手段だ。
 六韜三略を義経に伝えたは陰陽師、鬼一法眼――。
 元はといえば、陰陽師と兵法というものは近しい存在だった。
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