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チャプタ―19

チャプタ―19

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 だが、戸惑っているのは家臣たちも同様だ。
 己の姿を見下ろす、手足を動かしなどしてどういう状態にあるのかを当惑気味に確認する。
 そして、どうやら死んでいるらしいことを認めると、次いで周囲の情況の把握に移った。
『若、もしや、この地下共に襲われておいでだったのでござるか?』
 平兵衛が、頭蓋に直接響く異様な声で尋ねる。
「あ、あ、ああ――」
 背筋に寒気を感じながらも、市右衛門は反射的にうなずいた。
「我らが若に手出しするとは不届き至極ッ。者共、こやつらを討ち取るのだ!」
 叫ぶや、平兵衛が間近にいた地下に飛びかかる。
 刹那、その姿が相手の身体に吸い込まれるようにして消えた。
 件の地下、気むずかしそうな顔立ちの子供が一瞬、総身を震わせたかと思うと、まばたきを数度して己の首から下を見下ろす――。
「ぬ、これは面妖なッ!?」
 明らかに地下の子供とは思えない――それこそ、平兵衛のごとき口調でおどろきを露わにした。
「とり憑いた……?」
 市右衛門は、何が起きたのかなんとなく理解し唖然となる。
『いかがいたす?』
『このまま“こう”しておっても埒があかぬであろう?』
『そうだな』
 他の家臣たちも短いやり取りで結論を出し、各々、地下たちに向かって襲いかかった。先ほどの平兵衛と同様に、相手の身体に重なって消える。
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