笑う死霊家臣団 (別名義、別作品で時代小説新人賞最終選考落選歴あり)

牛馬走

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チャプタ―23

チャプタ―23

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「若、出来上がりましてござる!」
 威勢のいい声で叫びながら、平兵衛が串というより杭に近い木の棒で貫かれた猪一頭丸ごとを手に屋内に入ってきた。
 渠は、串を囲炉裏の灰の中に刺して、こんがりと焼けた猪を立てる――山女魚や鮎ではあるまいしあまりにも豪快な所業だ。
「ささ、若。まずは一口、召し上がり下さいませ」
 どこから拾ってきたのか小刀を取り出し、平兵衛はこちらに差し出した。これで、肉をこそぎ落として食べろということなのだろう。
 まるで、野武士(のぶせり)だ……――市右衛門はそんなことを思った。
 それに、猪が丸のまま出てきたことは置いておくとしても、正直、食欲がない。
 ……なにしろ、今日は人を殺(あや)めたのだ。
 手に、老爺を斬ったときの感覚が残っている。地下の子供が上げた悲鳴も鼓膜にこびりついたままだ。
 その前には、父と家臣たちを亡くしている。
 ――確かに、重臣たちは甦った。
 だが、父は他界したままだ。それに、家士たちの大半も……。
 これで、躊躇(ためら)うことなく食事にありついては無神経にもほどが――と考えたところで、脇から小刀が伸びてきて猪の肉の一部を切り落とした。
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