笑う死霊家臣団 (別名義、別作品で時代小説新人賞最終選考落選歴あり)

牛馬走

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チャプタ―55

チャプタ―55

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 三〇〇〇余の士卒が、前後からの挟撃を避けるために白鳥山へと移動していた。
 甲冑の擦れる音、下草を踏む音、それらが渾然一体となって騒音を周囲にまき散らしている。その物音だけで、臆病な者なら、逃げ出す、隠れるなどの行動に出てしまいそうだ。だが、その主である伊東勢の軍兵の心理は必ずしも、勇猛なものではない――。
「島津の追手がかかっておるらしいぞ」
「わざわざ退いたということは、よほどの大軍なのか?」
 いちいち、三〇〇〇余の兵に事情を説明する訳にはいかない、そのことが士卒――特に兵としてとられている地下たちの間に蔓延しつつあった。
なにしろ、大将である加賀守が攻め落とせると踏んでいた加久藤城で苦戦を強いられ、損害を重ねた末での退却だ……士気が低くなるのはどうしようもない。
 それでも田畑を踏み越え白鳥山の麓にたどりついたつき、「やれやれ、これで一心地つけるという」安堵が士卒の間に広がった。
 高所に陣取れば、低地からは容易には攻めてこられないからだ。
 ――が、山の入り口、木立の間から無数の影がまたたく間に出現するに至って、弛緩しかけた緊張の糸が再び一気に張り詰める。
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