笑う死霊家臣団 (別名義、別作品で時代小説新人賞最終選考落選歴あり)

牛馬走

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チャプタ―90

チャプタ―90

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祭りの舞台は、城下――麓からそう遠くない神社だ。
 ここは、名も知れない武神を祀っている。ために、家中の者も多く顔を出していた。
「ああ、これは柏木氏(うじ)」「これは、近藤氏」
 お互いに軽く礼をして通り過ぎる。
 ――境内は大勢の地下と、少数の士分の者が入り混じってごった返していた。
 にぎやかな声に、子供の泣き声や歓声が混じり、華やかな空気を醸造している。
 人の姿に混じって、祭りの儀式の一環なのか猿、狐を模した面をした者たちの姿があった。
「市右衛門、あまり“あれら”を見るな」
 渠らを見やっていると、道明が眉をひそめてそんな言葉を告げてくる。
「どうしてだ、道明?」
「あれらは、人ではない――山や野の精だ。じろじろ見て気を引くと、“憑(つ)かれる”ぞ」
 怪訝な顔の市右衛門に、道明が真面目な声音で告げた。
「つ、憑かれる……」市右衛門はあわてて目を逸らす。
 冗談ではない、人外など平兵衛たちだけで充分だ――。
 側を歩き、近くにいる若い娘のうなじに鼻の下をのばしている家臣たちを見ながら思った。
 平兵衛たちが惹かれているのは遊女だ。物売り、芸人、遊女は戦場ですら、“まだ危険はない”と判断すれば姿を現す――となれば、祭りなどは渠らにとっては“居て当たり前”の場所なのだろう。――遊女が色っぽい視線を向けてきたのを受けて、平兵衛と八九郎が嬉しげに声を上げた。
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