132 / 207
チャプタ―143
チャプタ―143
しおりを挟む
第三章
一
慶長五年(一六〇〇)、兵庫頭と手勢五〇〇は京に在った。
――そのなかには、市右衛門たちの姿もある。
日の本は風雲急を告げていた。治部少輔(じぶのしょうゆう)側と徳川家康方に大名たちが別れ、戦に及ぶ気配を見せているのだ。
だが、異変は市右衛門たちにも訪れていた。
「若、朝餉はまだでござろうか?」
怪訝な表情で、平兵衛がたずねてきた。もちろん、その姿は祓魔師(エクソシスト)との戦いの折に乗り換えた透波のものだ。
――あの後日、人払いした状態で兵庫頭の御前に呼び出され、市右衛門は説明を求められた。
誤魔化すのは無理だろう……そうあきらめ、市右衛門は正直にそれまでの経緯を明かした。
兵庫頭はその言葉を、黙って凝っと聞いていた。
その表情からは、その内心を推し量ることはできない。市右衛門は、強い緊張をおぼえながらすべてを語り終えた。
すると、兵庫頭は一言ぽつりと言ったのだ。
「見上げた心意気だ」
「は――?」
思わず市右衛門は、兵庫頭に対して素っ頓狂な声を上げてしまう。
一
慶長五年(一六〇〇)、兵庫頭と手勢五〇〇は京に在った。
――そのなかには、市右衛門たちの姿もある。
日の本は風雲急を告げていた。治部少輔(じぶのしょうゆう)側と徳川家康方に大名たちが別れ、戦に及ぶ気配を見せているのだ。
だが、異変は市右衛門たちにも訪れていた。
「若、朝餉はまだでござろうか?」
怪訝な表情で、平兵衛がたずねてきた。もちろん、その姿は祓魔師(エクソシスト)との戦いの折に乗り換えた透波のものだ。
――あの後日、人払いした状態で兵庫頭の御前に呼び出され、市右衛門は説明を求められた。
誤魔化すのは無理だろう……そうあきらめ、市右衛門は正直にそれまでの経緯を明かした。
兵庫頭はその言葉を、黙って凝っと聞いていた。
その表情からは、その内心を推し量ることはできない。市右衛門は、強い緊張をおぼえながらすべてを語り終えた。
すると、兵庫頭は一言ぽつりと言ったのだ。
「見上げた心意気だ」
「は――?」
思わず市右衛門は、兵庫頭に対して素っ頓狂な声を上げてしまう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる