上 下
180 / 207
チャプタ―192

チャプタ―192

しおりを挟む
 機を逃さず、
「没義道な者どもに、目にものを見せてやれェェェェ!」
 吉継は雷声を発した。
 この声音に対する反応は二つに別れる――。
 渠の軍兵は勢いを得て敵を屠った。
 同時に、敵勢は雷に打たれたように硬直する者が続出し、無抵抗なままに討ち取られる浮き目に遭った。

 一旦は、大谷吉継は小早川秀明麾下の士卒を撃退することに成功する。

 ……だが、裏切り者の出現によってそれも水泡と帰した。
 小早川対策のために配置していた脇坂安治らが東軍に寝返ったのだ。

 ――思ってもいなかった方角から狼狽(うろた)えるような悲鳴が響いてくる。それも無数。
 あそこに小早川の将兵はおらぬはず……――。
 疑問に思ったら、吉継の判断は早かった。
しおりを挟む

処理中です...