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チャプタ―211
チャプタ―211
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「なにをぐずぐずしておるのだッ、兵庫(維新公)を討て!」
渠は周囲に声を響かせる。
あたりの東軍の軍兵の間に再び闘志が戻った。
まずい――このままでは、意気をとりもどした渠らに押しつぶされる。
「八九郎、鉄炮を寄越せ!」
囁くような声で呼ばわった。が、透波である渠にはそれで充分だ。
「承知」
気配もなく動いて、八九郎がすばやく鉄炮を撃てる状態にしてさし出す。
――市右衛門は息を殺して、その場に片膝をついた。
これを失敗(しくじ)れば、おのれだけでなくこの場の者すべて……道明までも命を落とすことになるだろう――。
鉄炮が見上げるような巌(いわお)の如く重く思えた。
戦場を支配する騒擾の気配が遠のき、己の鼓動の音が頭蓋のなかで反響する――。急激に喉が乾き、唾を呑みこんだ。
直政は、複数いる騎馬武者の向こうだ。
だが、生き物である馬――それも戦の気配で気が立っている――はその場にとどまらない。
結果、直政の姿が覗く、隠れるという状態がくり返される。
今だ――静かに市右衛門は判断した。
渠は周囲に声を響かせる。
あたりの東軍の軍兵の間に再び闘志が戻った。
まずい――このままでは、意気をとりもどした渠らに押しつぶされる。
「八九郎、鉄炮を寄越せ!」
囁くような声で呼ばわった。が、透波である渠にはそれで充分だ。
「承知」
気配もなく動いて、八九郎がすばやく鉄炮を撃てる状態にしてさし出す。
――市右衛門は息を殺して、その場に片膝をついた。
これを失敗(しくじ)れば、おのれだけでなくこの場の者すべて……道明までも命を落とすことになるだろう――。
鉄炮が見上げるような巌(いわお)の如く重く思えた。
戦場を支配する騒擾の気配が遠のき、己の鼓動の音が頭蓋のなかで反響する――。急激に喉が乾き、唾を呑みこんだ。
直政は、複数いる騎馬武者の向こうだ。
だが、生き物である馬――それも戦の気配で気が立っている――はその場にとどまらない。
結果、直政の姿が覗く、隠れるという状態がくり返される。
今だ――静かに市右衛門は判断した。
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