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王都オルトリアス 後編
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私達を乗せた馬車は、来た道をそのまま戻って商店街に向かっていた。馬車の中ではティオが次の目的地を決めかねている。
「つぎ、どこ行こうかな。・・・昼には少し早いし、・・・そうだ靴屋いきましょうか。」
私は、おじ様に貰った皮の靴を見直した。
「これで、じゅうぶんな気がするんだけど?」
「今までなら、それで良かったんだけど、あの服には合わないと思うから。」
ティオの目線が隣に座っているハミルさんの足元を示した。
(あぁ・・そっか。)
「そうかもね。それじゃあ、お願いします。」
少しして、隣で眠そうにしていたモカが、私の膝の上に乗っかってきたので私は頭を撫でて両手で支えた。
「モカ。海、楽しかったね。」
「はいです・・・」力ない返事のモカに、なおは「寝てていいよ。」とそっと抱きしめる。車輪の音と振動とモカの温かさで、私も眠たくなってきた。
胸を反らして、睡魔を振り払いながら私はティオと今日の予定を話合った。
「私達、王族や貴族が買い物する時に行く広場があるので、今日もそこに行こうと思うの。」
ティオが楽しそうに話す。
「先ずは靴屋ね。もう年配のお爺ちゃんがやってる店なんだけど、とっても綺麗で美しい靴を作ってくれるの。サイズ合わせの手直しなら、1時間もあれば、やってくれるのよ。」
「次は・・・そうね。昨日食べたケーキのお店も広場にあるので、そこでティータイムしながら、靴が出来るの待ちましょうか。」
「そのあとは・・・」
ティオの目線が、私に移る。
「なおは、何か見たいのある?」
「そうね・・・」 考えてみたけど、思いつかなかったので、
「ケーキ食べながら決めようかな。」
「そうしましょうか。」 ティオがハミルさんに視線を移して何か言いたい表情だったけど、すぐ私に視線を戻していた。
馬車は賑わいが見える町に入っていった。
人々が行き交う大きな街道から、すこし細い道に馬車は入っていく。少し走ると、白から緑の景色に変わっていった。
緑の木々と芝生の間を馬車はゆっくりと進んでいく。
「すごく静かなところだね。さっきの通りと全然ちがうね。」
私は寝ているモカを落とさないように、窓側に移動した。
「でしょ。ここはみんなのオアシスなの。この奥に泉が沸いててね、この町が出来る前からあるんだって。 この森抜けたら、すぐだから。」
森の端には大きな石の門が立っていた。馬車は門の下を通って大きな円になっている広場に出た。真ん中には小さな泉を囲んで出来た水場があった。
「なお。着いたわよ。」
ティオとハミルさんが降りたあと、寝ているモカを抱いたまま、私は馬車の外に出た。
広場の外には数店のお店が広場に沿って並んでいる。
「オアシスの泉ってそこにあるやつ?」 私は広場の真ん中にある噴水を指差した。
「もっと大きいのが森の中にあるの。この泉も小さいけど、オアシスのひとつだよ。」
「そうなんだ。」
広場は大通りの商店街ほど人は居なかったけど、数十人ほどの人達がゆったりと過ごしているのが見える。
ティオは、一礼する人達に手を振り、すぐ近くの店に私を連れていく。
「ここがいつも利用する商店街みたいな場所よ。 で、ここが靴屋さんね。」
扉をハミルさんが開けて、ティオが店の中に入っていった。
黒髪の青年が私達を迎えてくれた。
私が店に並んでいる靴に目を奪われている間に、青年と言葉を交わしたティオが、私のところに来てくれる。
「なお。店にある靴で気に入ったのあったら言ってね。それを加工して、あの服に合わせるからね。」
奥から、70才過ぎの老人が私達のところにやってきた。
「ティオお嬢様。ご機嫌よろしくてなによりです。孫から注文の事は聞きました。ごゆるりと、していってください。」
「はい。突然の訪問ですが、よろしくお願いします。」
「あの・・よろしくお願いします。」
ティオの後に、私は老人に挨拶を交わして、ティオと靴選びを続けた。
「これに、しよっかな。」
私は白いショートブーツを選んだ。銀の細工がとても綺麗であの鎧と合いそうだったし、カードケースとも、似合いそうだった。
ティオも同意見で、すぐにティオは老人に靴を持っていった。
「なおも足のサイズを測るから、こっち来てね。」
私はティオに言われるまま、指定された椅子に座った。まだ寝ているモカを膝の上に置いて。
店の奥からさっきの青年が出てきて、椅子に腰掛けた私に一礼をして、足の採寸を始める。
(モカのこと・・気にしてないみたいだけど・・なんでだろ・・)
ほどなく採寸が終わり、私達は靴屋を出た。
「それじゃ、次は、お菓子屋にいきましょうか。」
私にそう言って、ティオは店の前で待っていたハミルさんに声をかけて、並んで歩き出した。
私は二人の後ろを少し離れて歩いていく。
2軒隣のお菓子屋さんの中に入ると、香ばしい焼き菓子の匂いと甘いケーキの匂いが私のお腹を刺激した。店の中にはテーブルが沢山あり、沢山の人たちが楽しそうにしていた。
腕の中で寝ていたモカが、もぞもぞと動き出して目を覚ました。
「クッキーの匂いがするです。」
まだ半分寝ているモカに小さな声で私は
「そうよ。モカ。お菓子屋さんに着いたよ。」
ティオもモカが起きた事に気づいて、笑顔を向けている。
可愛いエプロンをつけたメイドさんとティオが挨拶を交わす。
「この奥に離れの席があるから、そこに行きましょうか。」
入り口から動かないハミルさんを見たティオは少し強い口調で話しかけていた。
「ハミルも一緒に来てくださいね。」
小声でティオは 「あれくらい言わないと来てくれないのよ。」
ハミルさんが鎧を戻してローブ姿で私達の少し後ろをついてくる。
お姫様モードのティオに連れられて私達は奥へと入っていった。
屋根のついたテラスには四角いテーブルが3つ並んでいて、一番奥のテーブルをティオは選んだ。ティオとハミルさんが並んで座ってから、私はモカ抱いたまま、ティオの対面の椅子に座る。
ほどなく、さっき話していたメイドさんが、沢山のケーキと焼き菓子が乗ったワゴンを押してくる。
「お待たせいたしました。こちらが今日のお菓子でございます。」
モカが私の膝から飛び上がり、肩の上辺りでふわふわと浮いた。
「モカ、いきなり飛んだらびっくりするでしょ。」
「ごめんなさいです。」
手を伸ばしモカを膝の上に戻して、私はメイドさんに謝ろうと顔を向けたら、声にならないほど驚いていたのが判った。
(あ・・これが普通なんだよね。)
「びっくりさせてごめんなさい。大丈夫ですか?」
メイドさんは深くお辞儀をして「大丈夫です。」と答えた。
ティオが何事も無かったようにケーキと焼き菓子を選んだので、メイドさんも普段通りの仕草でお皿の上に並べていった。
「なお。好きなだけ選んでね。モカも遠慮しなくていいからね。」
私はモカをテーブルの上に置いて一緒にお菓子を選んだ。
ハミルさんの分はティオが選んでいたようで、それぞれの前にケーキと焼き菓子が配られた。
メイドさんはワゴンの中からティーポットとカップを取り出し、注いで並べようとしていたけど、動きが止まったので、私は、
「この子の分もお願いします。」
「はい。」と緊張した声の後、私達の前にカップを並べた。
並び終えて、一呼吸したメイドさんに私は会釈した。緊張が解けたようで、笑顔が戻ったメイドさんは、私達に一礼をしてワゴンを引いて戻って行った。
「靴屋でも、広場でも、モカのこと、なにも無かったから精獣に理解ある場所なのかなって思ってたけど、そうじゃなかったみたい。」
「たぶんだけど・・・」 ティオが少し笑いながら、
「寝てたから、ぬいぐるみだと思ってたんじゃないかな。」
私は少し恥ずかしくなって、
「それって・・・いい大人がぬいぐるみ持ち歩いているって事だよね・・・」
「そうなるわね。」
ティオが今にも声を出して笑いそうになっているのが判った。
「まあ、怖がられるよりは良しとする・・・かな。」
モカを見て私も笑いそうになった。
「なお。もう、食べてもいいのです?」
「そうね。いただきましょう。」とティオが言って、私はモカの皿のケーキを小分けした。
私達は暖かい日差しの中、ティータイムを過ごしていた。
入り口からメイドさんが新しいポットを抱かえて来る。その後ろから数人の人達が入ってくるのが見えた。
「ティオさま~。」
ハミルさんが席から立ち、来客の人達に一礼をすると、メイドさんの後ろに居る、付き添いだと思われる人達もその場で一礼を返していた。
メイドさんの横をすり抜けて、私たちのテーブルに来たのは、短い青い髪の、可愛い少女だった。
テーブルの前で丁寧な、お辞儀をしたその少女は
「エリオナ・シーナです。初めまして。」と、私に挨拶をした。
(あっ。船の・・・水の巫女さんだったかな・・・)
私は一度、席を立ち「月乃宮 なおです。」と返して、隣できょとんと、しているモカを紹介しようとしたけど、私はどう説明していいのか判らず、困惑していると、ティオが代わりに言ってくれた。
「エリオナ、そちらの精獣はモカ様といって、今は、なおさんの精獣です。」
(なんか、曖昧な言葉だけど・・・仕方ないよね。ありがとね。ティオ)
「それと、メイドが困っているから、早く席に着いてね。」
ハミルさんが席を立って譲ろうとしたのをティオが制した。
「貴方は座ってて。」
ティオが空いている隣の席にエネオナを座らせるとメイドさんが空になっていた私達のカップに新しい紅茶を注いでくれた。
「すぐにご用意いたしますので、少しお待ちください。」
メイドさんは急ぎ足で戻って行った。
エネオナの付き添いの人達は隣のテーブルについていた。
「エリ?。どうして、ここに居るって分かったの?」ティオが訊ねた。
「朝、ティオねぇさまの馬車が港に来たのが見えたんだけど、海岸に行っただけで戻って行ってしまわれたので・・・会いにきてくださったのかと・・・」 少し言葉が小さくなっていた。
「だから、追いかけて来ちゃいました。・・・やっぱりご迷惑になってしまいましたか?」
ティオが笑顔でエネオナの頭を撫でて、
「いいえ。私もエリに会いたかったので、今日の夕刻にでも、お邪魔しようかと思ってたのよ。来てくれてありがとう。」
メイドさんが新しいお菓子を並べ終えるをまって、私達は、ティータイムを再開した。
エリオナはケーキを頬張りながら話し始めた。
「ティオねぇさまは、月礼祭で親善試合でるのですよね?」
「そうよ。リエムリムからは、マリエルさんって方が出るのですよね。」
「はい。一番のファルト使いです。私もいつか、ティオねぇさまと戦えるようになりたいです。」
ケーキを食べる手を止めることなく、エネオナが答えた。
1個目のケーキを食べ終えたエリオナの口元にクリームが残っていたので、ティオがハンカチで拭いてあげた。
「慌てなくていいのに。」
本当の姉妹に見えるくらい二人の仕草が自然だった。
「ティオねぇさま。」
エリオナの視線が私に向けられた。
「なおさまもファルトをお持ちのようですが・・・」
「そうよ。この私と試合して、勝つほどの実力があるのよ。」
乗り出す勢いでエリオナが話しかけてきた。
「すごいです。今度、私と対戦してほしいです。」
少しビックリして、手に持っていたカップを落としそうになる。
「勝ったっていっても僅差だったし、私の方こそ、是非お願いします。もっと色んな人達と対戦したいと思っていたから。」
「はい。」
小さな少女は嬉しく頷いた。
私は空になったモカの皿と新しいケーキが乗った皿と取り替えた。
「ちょっとまっててね。」 フォークで小さく分けてあげた。
モカはくちばしの周りにクリームをつけたまま、新しいケーキを食べ始めた。
「ティオねぇさま?・・・」ちらちらと、モカを見ている。
「なに?」
「モカ様って精獣・・・なんですよね?」
ティオがモカを再確認するように見つめ、そして笑顔になって、
「変わってるでしょ。 私達が知っている精獣とは全然違うけど、モカは精獣ですよ。」
ティオが楽しそうに話始めた。
「ねぇ。なお。精獣ってね・・・。」
私は笑っているティオの次の言葉を待っていた。
「食事って取らないのよ。」
「は?・・・えー! 」
隣で無心でケーキを食べているモカを凝視した。
「え?・・・なんで?・・・え?」
混乱している私をよそに、ティオは笑いながら言葉を続けた。
「正確には、食べる事しなくても大気の中や契約者の魔力だけで成長するから。」
私は黙々と食べているモカに確かめてみた。
「はいです。僕達は自然にある魔力を吸収して生きてます。」
「じゃあ・・なんで食べてるの?・・・お腹空いたっていつも言ってるし・・・」
食べるのを中断したモカのくちばしの周りについているクリームをハンカチで取ってあげた。
「なおがくれたから。」
モカが嬉しそうに教えてくれた。
「初めてクッキー食べた時、ぼく嬉しかったです。美味しかったです。」
(味覚あるのに、食べなくてもいいなんて・・・)
「そっか。・・・じゃあもっと色んな物一緒に食べようね。」
私はモカの頭を撫でて、私のケーキを少し切り分けてモカに食べさせた。
「ん?・・・じゃあ今まで一緒にご飯食べてたのって、みんな不思議だったの?」
ティオが笑いながら答えてくれる。
「そうよ。でも私は、契約者のなおが当たり前のようにしてたし、モカも美味しそうに食べてるし、そんな二人がとても自然だったから、すぐに普通に見えたのも、確かよ。たぶんみんなそう思ってるとおもうわよ。」
「はい。私もお二人のお姿を見て、羨ましくおもいました。」
エリオナも笑顔で答えてくれた。
「私のお兄様の精獣なんて、喋ってくれないし、目が怖いし、ほんとモカ様と全然違うんです。」
「そうね。アルカさんの精獣は無愛想だよね。でも、私が知ってる精獣はみんなそんな感じ。」
私は手を伸ばしてクッキーを取っていた。
「エリオナさんのお兄さんって精獣と契約してるんだ。」
私は色々聞きたくなったけど、何故か聞かないほうが良いような気がした。
(モカはモカだしね。)
クッキーを口いっぱい頬張り、カップの紅茶を一気に飲み干した。
「モカ。美味しいね。」
「はいです。」 モカは、またクリームで汚れていた。
「そうだ。次の目的地を決めないと。」
私はモカのクリームを取りながら考えた。
「泉を見てみたいかも。」
「それいいかも。それじゃあ、エリも一緒に行かない?」ティオが尋ねて
「はい。ティオねぇさま。ご一緒したいです。」 焼き菓子を食べていたエネオナが嬉しく微笑んだ。
「なおも良いよね?」
私は「もちろん。」とエリオナを見て、
「一緒に行きたいと私も思ってたの。よろしくね。」
私とエリオナはもう一度、挨拶を交わしてケーキ屋を出た。
エリオナの護衛の人達は、男2人と女性1人の計3人。私たちのすぐ後ろを歩いてくる。
私とティオは靴屋に戻って、仕立て直した白いブーツに履き替えた。
モカはケーキ屋からずっと私の腕の中にいる。
静かに散策出来ると思ったので、私はモカに頼んで腕の中にいてもらう事にした。
「おまたせしました。」
私は広場で待っていたエリオナ達と合流した。
「せっかくなので、ここから泉まで歩いていきましょうか。」
ティオの提案で私達はのんびりと、広場から続く、林の歩道を歩くことにした。
木々が等間隔で並び日の光が十分に照らされた歩道には、私達以外誰も居ない。
「静かだね。町の中だと思えないよ。」 私は深呼吸して緑の香りを一杯に吸い込んだ。
「ここは、ミレナさまが降り立った時から、ほとんど手を加えずに守ってきた場所だって聞いてます。町の商店街からも遠いですし、この歩道も今は裏道みたいなものだからね。」
先頭を行くティオが振り返りながら教えてくれた。
「モカ。少し飛ぶ?」 私は腕の中のモカに問いかけた。
「はいです。」
ふわっと浮き上がり羽を伸ばすような仕草で私の周りをふらふらと浮いている。
「ねぇ、モカ? 精霊界ってどんなところなの?」
「私も知りたいです。」 ティオのすぐ後ろを歩いていたエリオナがキラキラした目でモカを見る。
「えっと、です。おっきな木があって、その下にどこまでも続く森があるです。」
「大きいってどれくらいなの?」 私はモカに聞く。
「んーと、あの山くらい?あるのかもです。」
小さな翼で示した先には木々の間から見える城壁の上、遥か遠くの山を指していた。
「そんなに大きいの!」「すごいです。」 エリオナと私の声が重なった。
「僕達はみんな、その木の周りに住んでます。なにも変わらない景色だから僕達が居なければ、永遠に時間が止まった場所になってると思うです。」
「太陽とか天気が変わったりとか、そんなのが何も無いの?」
「はいです。空はずっと同じで白く光ってるです。」
モカは太陽に照らされた青い空を眺めている。
「そっか。モカもこの世界で、初めてが、一杯あったんだね。」
「もうすぐ泉にでるわよ。」
ティオが指差した木々の向こうには太陽で輝いている水面が見えていた。
私達は林の歩道を抜けて、大きな池になっている泉を目の前にした。
池の周りには散歩を楽しむ人達で賑わっている。
私はモカを腕の中に呼んで、エリオナと並んでティオのすぐ後ろをついていった。
「この池の底から沢山の水が湧いているのよ。ここは丘の上にあるから、水路を作って、町に水を引いて、さっき通った港までの畑にも使われているのよ。」
ティオは少し歩く速度を遅くして、ハミルさん達の護衛の輪の中に入る。私達3人を囲むように前にハミルさん、左右と後ろにエリオナの護衛さん達。
(打ち合わせとか、してなかったよね?ティオも自然だったし、やっぱりすごいな~。)
私は、同じく自然な振る舞いで隣を歩いているエリオナを見て、
「エリオナ・・・さん・・・も、えっと、水の都のお姫様なのですか?」
「いえ。私は普通の巫女です。」
エリオナが申し訳なさそうに答えたので私は気まずくなってしまった。
「ごめんなさい。なんていうか、立ち振る舞いがティオに似てたから…ってティオも巫女だった。」
ティオがお姫様モードで笑みをこぼしながら、こっちに振り向いた。
「そうよ。私も巫女なんだからね。」
私はティオにも「ごめん。」と笑いながら答えてた。
ティオがエリオナの頭を少し撫でて、
「エリが言葉濁した言い方を、したのはね、王族が収める都市ってこのオルトリアスだけなのよ。でも、『リエムリム』は、水竜アンリノエ様が巫女の中から一人選んで力を特別に授けるの。その巫女の事を『姫巫女様』って呼んで、うやまうのよ。」
私はゆっくりと歩きながらティオの言葉を聴いていた。
エリオナは、うつむいている。
「でね、エリが選ばれたのよ、『姫巫女』に。」
私はエリオナの態度がなんとなく理解できた。
「そっか。まだ小さいのに・・・」
「ほんとよね。エリが9歳の時に指名されたのよ。冗談じゃないわよ。」
声を荒げてしまったティオは、何も無かったように、お姫様モードに戻してエリオナの背中に手を当てた。
「私は、それからエリのおねぇちゃんになる事にしたのよ。」
エリオナが嬉しく照れているのが判る。
「ティオがおねぇちゃんなら問題ないね。・・・ん?問題ないよね?」
ティオとエリオナの絆が羨ましく、微笑ましく想い、私はティオに意地悪を言ってみた。
「ないわよ。」
池のほとりを歩く少女達の、笑い声が周りの人々に暖かい風になって広がっていく。
「ねぇ、ティオ? エリオナさんの事、エリオナちゃんって呼ぶのって駄目かな?」
小さな少女を私はどう呼べば良いのか判らず、おねぇちゃんのティオに聞いてみた。
「エリ。エリはなおと、友達になりたい?」
私を見上げるエリオナの言葉を私はすこし緊張しながら待っていた。
「はい。」
照れながら、私に微笑んでくれた。
「じゃあ、なおは、これから、エリの事を『エリオナちゃん』って呼ぶからね。」
「エリオナちゃん。これからもよろしくね。」
「はい。なおさま。」
すかさず、ティオの言葉が入る。
「エリ。友達を『様』で呼ぶのはだめですよ。なおさんって呼んで上げてね。」
「なおさん。・・・」
私は笑顔で答えた。
騎士に囲まれた姫様一行は、池のほとりをゆっくりと進んでいた。
「ティオ。エリオナちゃん。ほんと、ここは、いいところね。ね。モカ。」
「はいです。」
池に隣接する大きな建物に私達は向かっていた。近づくにつれて、そこは神殿だと理解した。
参拝者達が、神殿に続く石畳の道を往来している。すれ違う人々は立ち止まり、姫様一行に一礼をする。
扉のない入り口。大きな柱。壁には彫刻で色々な物が描かれている。
エリオナも初めての場所だったので、モカと3人できょろきょろと周りを見ていた。
私達は神殿の中に歩みを止めることなく入っていった。
神殿は、ほぼそのままの一つの部屋になっていて、奥には大きな像が建っていた。
「あの像が月の精霊ミレナ様よ。この場所に降り立ったって言われているのよ。」
ドレス姿の女性。右手は差し出し、手の平は下向きに。
(祝福を授ける。・・・ポーズ?かな・・・)
「綺麗な像だね。真っ白でゴツゴツしているところもないし、まるでミレナ様がそのまま石になってるみたい。」
ティオに連れられて、像の足元から上を眺めていた。
「見上げると、すごい迫力ある・・・かざしてる手がなにか神々しい。」
「でしょ。私達はこの手の下で祈りを捧げるのよ。なおもやってみる?」
「なにを祈ればいいの?」
「感謝の言葉とか、願い事とか・・・なんでもいいのよ。エリも一緒にね。」
私とエリオナはティオを挟んで横に並び、ティオの動作の真似をした。
(この場所にこれた事、モカ。ティオ・・沢山の人に出会えた事。ほんとうにありがとうございます。いつか・・・私がみんなに恩返しできるように頑張ります。)
私たちは、他の参拝者達と同様に、祈りを済ませて神殿の外へ出る。
神殿の外出ると、ティオの馬車とエリオナの馬車が並んで参道に止まっているのが見えた。
(あれ?いつの間にきてたのかな?ほんと凄いな~。)
ティオはお姫様モードで人々に手を振っている。
「そろそろ城に戻りましょうか。エリも一緒にどう?」
エリが寂しそうに答えた。
「いえ。一度、船に戻らないと・・・」
ティオは少し屈み、エリの頬に頬をくっ付けて、
「そうよね。今度は私から、ちゃんと誘いの文を送るから待っててね。」
ティオとエリオナは別れの挨拶をした。
「エリオナちゃん。ファルト対戦楽しみにしてるね。」
私はエリオナが少しでも元気になって欲しかった。
「はい。わたしも、なおさんに出会えて嬉しいです。是非、お願いします。」
私はエリオナの無邪気な笑顔を見て、
「私の事は、『なお』って呼んでくれるともっと嬉しいんだけど、だめかな?」
少し悩んで、「はい!」 とエリオナの元気な声が届いた。
一礼を交わして、私たちは馬車に乗り込もうとしていた。
その時、町全てに響き渡るくらい大きな音が聞えてくる。石が擦れる鈍い音だった。
ハミルさんとティオが振り向く先を私も追うように振り向いた。
神殿よりすこし西側、北にある高い城壁の一部が開いていくのが見える。
「あれって、扉だったんだ。」
(あれも魔法で開けてるんだよね。すっごいな~)
ティオに話しかけようとしたけど、すごく緊張しているのが見えた。ハミルさんもエリオナも、見渡すと、全ての人々が緊張。不安。恐怖。そんな感情が見えているのが私にも判った。
「どう・・したの?」
「ごめん。なお、先に馬車に乗って城に戻っていて。エリも早く船に。」
ティオは光に包まれて、銀細工の綺麗なローブをドレスの上に被せるように着けていた。頭には宝石が付いた銀の冠があった。
「ティオさまも、お城に戻ってください。」
ハミルさんが声をかけるが、ティオは聞く気が無かった。
「わたしは知らなければならない義務があります。民を守るのが私の使命。貴方はわたしを守りなさい。いいわね。」
毅然とした態度でハミルさんを従えて、二人は魔法の力で浮き上がり、私達に一礼して門に向かって飛んでいった。
状況が飲み込めない私は、エリオナを見つめた。
「ティオに言われたように私は、城に戻るね。エリオナちゃんも気を付けてね。」
なにが起きるのか、判らなかったけど、人々の異様な緊張感が重大な何かが起きようとしているのだけは判った。
「はい。でも・・・私はここで様子を見ています。ここには沢山の水があるので、私は大丈夫ですから。なおさん・・あ。なおは早くお城に。」
私はエリオナに別れを告げて、モカと馬車に乗り込んだ。
私たちの馬車はエリオナ達に見送られながら城へと向かった。
馬車の窓から見える町の人々は、誰もが不安と恐怖を抱えながら、大切な人の居る場所に駆け出していた。
「モカ・・・どうなるのかな?みんな大丈夫だよね・・・」
モカを胸に抱きしめて、私は祈った。
(みんなとまた・・・絶対に会うんだから。)
馬車は人々を避けながら街道を走っていく。
銀色のローブを着た巫女さんや神官らしい人達が町の人達をどこかに誘導しているのが見える。
私はただ、祈るだけしか出来なかった。
「なお。来るです。」
モカが腕から浮き上がって、窓の外を見ている。初めて聞く緊張した声。
開かれた門の空間が、黒い霧で覆われていた。
「つぎ、どこ行こうかな。・・・昼には少し早いし、・・・そうだ靴屋いきましょうか。」
私は、おじ様に貰った皮の靴を見直した。
「これで、じゅうぶんな気がするんだけど?」
「今までなら、それで良かったんだけど、あの服には合わないと思うから。」
ティオの目線が隣に座っているハミルさんの足元を示した。
(あぁ・・そっか。)
「そうかもね。それじゃあ、お願いします。」
少しして、隣で眠そうにしていたモカが、私の膝の上に乗っかってきたので私は頭を撫でて両手で支えた。
「モカ。海、楽しかったね。」
「はいです・・・」力ない返事のモカに、なおは「寝てていいよ。」とそっと抱きしめる。車輪の音と振動とモカの温かさで、私も眠たくなってきた。
胸を反らして、睡魔を振り払いながら私はティオと今日の予定を話合った。
「私達、王族や貴族が買い物する時に行く広場があるので、今日もそこに行こうと思うの。」
ティオが楽しそうに話す。
「先ずは靴屋ね。もう年配のお爺ちゃんがやってる店なんだけど、とっても綺麗で美しい靴を作ってくれるの。サイズ合わせの手直しなら、1時間もあれば、やってくれるのよ。」
「次は・・・そうね。昨日食べたケーキのお店も広場にあるので、そこでティータイムしながら、靴が出来るの待ちましょうか。」
「そのあとは・・・」
ティオの目線が、私に移る。
「なおは、何か見たいのある?」
「そうね・・・」 考えてみたけど、思いつかなかったので、
「ケーキ食べながら決めようかな。」
「そうしましょうか。」 ティオがハミルさんに視線を移して何か言いたい表情だったけど、すぐ私に視線を戻していた。
馬車は賑わいが見える町に入っていった。
人々が行き交う大きな街道から、すこし細い道に馬車は入っていく。少し走ると、白から緑の景色に変わっていった。
緑の木々と芝生の間を馬車はゆっくりと進んでいく。
「すごく静かなところだね。さっきの通りと全然ちがうね。」
私は寝ているモカを落とさないように、窓側に移動した。
「でしょ。ここはみんなのオアシスなの。この奥に泉が沸いててね、この町が出来る前からあるんだって。 この森抜けたら、すぐだから。」
森の端には大きな石の門が立っていた。馬車は門の下を通って大きな円になっている広場に出た。真ん中には小さな泉を囲んで出来た水場があった。
「なお。着いたわよ。」
ティオとハミルさんが降りたあと、寝ているモカを抱いたまま、私は馬車の外に出た。
広場の外には数店のお店が広場に沿って並んでいる。
「オアシスの泉ってそこにあるやつ?」 私は広場の真ん中にある噴水を指差した。
「もっと大きいのが森の中にあるの。この泉も小さいけど、オアシスのひとつだよ。」
「そうなんだ。」
広場は大通りの商店街ほど人は居なかったけど、数十人ほどの人達がゆったりと過ごしているのが見える。
ティオは、一礼する人達に手を振り、すぐ近くの店に私を連れていく。
「ここがいつも利用する商店街みたいな場所よ。 で、ここが靴屋さんね。」
扉をハミルさんが開けて、ティオが店の中に入っていった。
黒髪の青年が私達を迎えてくれた。
私が店に並んでいる靴に目を奪われている間に、青年と言葉を交わしたティオが、私のところに来てくれる。
「なお。店にある靴で気に入ったのあったら言ってね。それを加工して、あの服に合わせるからね。」
奥から、70才過ぎの老人が私達のところにやってきた。
「ティオお嬢様。ご機嫌よろしくてなによりです。孫から注文の事は聞きました。ごゆるりと、していってください。」
「はい。突然の訪問ですが、よろしくお願いします。」
「あの・・よろしくお願いします。」
ティオの後に、私は老人に挨拶を交わして、ティオと靴選びを続けた。
「これに、しよっかな。」
私は白いショートブーツを選んだ。銀の細工がとても綺麗であの鎧と合いそうだったし、カードケースとも、似合いそうだった。
ティオも同意見で、すぐにティオは老人に靴を持っていった。
「なおも足のサイズを測るから、こっち来てね。」
私はティオに言われるまま、指定された椅子に座った。まだ寝ているモカを膝の上に置いて。
店の奥からさっきの青年が出てきて、椅子に腰掛けた私に一礼をして、足の採寸を始める。
(モカのこと・・気にしてないみたいだけど・・なんでだろ・・)
ほどなく採寸が終わり、私達は靴屋を出た。
「それじゃ、次は、お菓子屋にいきましょうか。」
私にそう言って、ティオは店の前で待っていたハミルさんに声をかけて、並んで歩き出した。
私は二人の後ろを少し離れて歩いていく。
2軒隣のお菓子屋さんの中に入ると、香ばしい焼き菓子の匂いと甘いケーキの匂いが私のお腹を刺激した。店の中にはテーブルが沢山あり、沢山の人たちが楽しそうにしていた。
腕の中で寝ていたモカが、もぞもぞと動き出して目を覚ました。
「クッキーの匂いがするです。」
まだ半分寝ているモカに小さな声で私は
「そうよ。モカ。お菓子屋さんに着いたよ。」
ティオもモカが起きた事に気づいて、笑顔を向けている。
可愛いエプロンをつけたメイドさんとティオが挨拶を交わす。
「この奥に離れの席があるから、そこに行きましょうか。」
入り口から動かないハミルさんを見たティオは少し強い口調で話しかけていた。
「ハミルも一緒に来てくださいね。」
小声でティオは 「あれくらい言わないと来てくれないのよ。」
ハミルさんが鎧を戻してローブ姿で私達の少し後ろをついてくる。
お姫様モードのティオに連れられて私達は奥へと入っていった。
屋根のついたテラスには四角いテーブルが3つ並んでいて、一番奥のテーブルをティオは選んだ。ティオとハミルさんが並んで座ってから、私はモカ抱いたまま、ティオの対面の椅子に座る。
ほどなく、さっき話していたメイドさんが、沢山のケーキと焼き菓子が乗ったワゴンを押してくる。
「お待たせいたしました。こちらが今日のお菓子でございます。」
モカが私の膝から飛び上がり、肩の上辺りでふわふわと浮いた。
「モカ、いきなり飛んだらびっくりするでしょ。」
「ごめんなさいです。」
手を伸ばしモカを膝の上に戻して、私はメイドさんに謝ろうと顔を向けたら、声にならないほど驚いていたのが判った。
(あ・・これが普通なんだよね。)
「びっくりさせてごめんなさい。大丈夫ですか?」
メイドさんは深くお辞儀をして「大丈夫です。」と答えた。
ティオが何事も無かったようにケーキと焼き菓子を選んだので、メイドさんも普段通りの仕草でお皿の上に並べていった。
「なお。好きなだけ選んでね。モカも遠慮しなくていいからね。」
私はモカをテーブルの上に置いて一緒にお菓子を選んだ。
ハミルさんの分はティオが選んでいたようで、それぞれの前にケーキと焼き菓子が配られた。
メイドさんはワゴンの中からティーポットとカップを取り出し、注いで並べようとしていたけど、動きが止まったので、私は、
「この子の分もお願いします。」
「はい。」と緊張した声の後、私達の前にカップを並べた。
並び終えて、一呼吸したメイドさんに私は会釈した。緊張が解けたようで、笑顔が戻ったメイドさんは、私達に一礼をしてワゴンを引いて戻って行った。
「靴屋でも、広場でも、モカのこと、なにも無かったから精獣に理解ある場所なのかなって思ってたけど、そうじゃなかったみたい。」
「たぶんだけど・・・」 ティオが少し笑いながら、
「寝てたから、ぬいぐるみだと思ってたんじゃないかな。」
私は少し恥ずかしくなって、
「それって・・・いい大人がぬいぐるみ持ち歩いているって事だよね・・・」
「そうなるわね。」
ティオが今にも声を出して笑いそうになっているのが判った。
「まあ、怖がられるよりは良しとする・・・かな。」
モカを見て私も笑いそうになった。
「なお。もう、食べてもいいのです?」
「そうね。いただきましょう。」とティオが言って、私はモカの皿のケーキを小分けした。
私達は暖かい日差しの中、ティータイムを過ごしていた。
入り口からメイドさんが新しいポットを抱かえて来る。その後ろから数人の人達が入ってくるのが見えた。
「ティオさま~。」
ハミルさんが席から立ち、来客の人達に一礼をすると、メイドさんの後ろに居る、付き添いだと思われる人達もその場で一礼を返していた。
メイドさんの横をすり抜けて、私たちのテーブルに来たのは、短い青い髪の、可愛い少女だった。
テーブルの前で丁寧な、お辞儀をしたその少女は
「エリオナ・シーナです。初めまして。」と、私に挨拶をした。
(あっ。船の・・・水の巫女さんだったかな・・・)
私は一度、席を立ち「月乃宮 なおです。」と返して、隣できょとんと、しているモカを紹介しようとしたけど、私はどう説明していいのか判らず、困惑していると、ティオが代わりに言ってくれた。
「エリオナ、そちらの精獣はモカ様といって、今は、なおさんの精獣です。」
(なんか、曖昧な言葉だけど・・・仕方ないよね。ありがとね。ティオ)
「それと、メイドが困っているから、早く席に着いてね。」
ハミルさんが席を立って譲ろうとしたのをティオが制した。
「貴方は座ってて。」
ティオが空いている隣の席にエネオナを座らせるとメイドさんが空になっていた私達のカップに新しい紅茶を注いでくれた。
「すぐにご用意いたしますので、少しお待ちください。」
メイドさんは急ぎ足で戻って行った。
エネオナの付き添いの人達は隣のテーブルについていた。
「エリ?。どうして、ここに居るって分かったの?」ティオが訊ねた。
「朝、ティオねぇさまの馬車が港に来たのが見えたんだけど、海岸に行っただけで戻って行ってしまわれたので・・・会いにきてくださったのかと・・・」 少し言葉が小さくなっていた。
「だから、追いかけて来ちゃいました。・・・やっぱりご迷惑になってしまいましたか?」
ティオが笑顔でエネオナの頭を撫でて、
「いいえ。私もエリに会いたかったので、今日の夕刻にでも、お邪魔しようかと思ってたのよ。来てくれてありがとう。」
メイドさんが新しいお菓子を並べ終えるをまって、私達は、ティータイムを再開した。
エリオナはケーキを頬張りながら話し始めた。
「ティオねぇさまは、月礼祭で親善試合でるのですよね?」
「そうよ。リエムリムからは、マリエルさんって方が出るのですよね。」
「はい。一番のファルト使いです。私もいつか、ティオねぇさまと戦えるようになりたいです。」
ケーキを食べる手を止めることなく、エネオナが答えた。
1個目のケーキを食べ終えたエリオナの口元にクリームが残っていたので、ティオがハンカチで拭いてあげた。
「慌てなくていいのに。」
本当の姉妹に見えるくらい二人の仕草が自然だった。
「ティオねぇさま。」
エリオナの視線が私に向けられた。
「なおさまもファルトをお持ちのようですが・・・」
「そうよ。この私と試合して、勝つほどの実力があるのよ。」
乗り出す勢いでエリオナが話しかけてきた。
「すごいです。今度、私と対戦してほしいです。」
少しビックリして、手に持っていたカップを落としそうになる。
「勝ったっていっても僅差だったし、私の方こそ、是非お願いします。もっと色んな人達と対戦したいと思っていたから。」
「はい。」
小さな少女は嬉しく頷いた。
私は空になったモカの皿と新しいケーキが乗った皿と取り替えた。
「ちょっとまっててね。」 フォークで小さく分けてあげた。
モカはくちばしの周りにクリームをつけたまま、新しいケーキを食べ始めた。
「ティオねぇさま?・・・」ちらちらと、モカを見ている。
「なに?」
「モカ様って精獣・・・なんですよね?」
ティオがモカを再確認するように見つめ、そして笑顔になって、
「変わってるでしょ。 私達が知っている精獣とは全然違うけど、モカは精獣ですよ。」
ティオが楽しそうに話始めた。
「ねぇ。なお。精獣ってね・・・。」
私は笑っているティオの次の言葉を待っていた。
「食事って取らないのよ。」
「は?・・・えー! 」
隣で無心でケーキを食べているモカを凝視した。
「え?・・・なんで?・・・え?」
混乱している私をよそに、ティオは笑いながら言葉を続けた。
「正確には、食べる事しなくても大気の中や契約者の魔力だけで成長するから。」
私は黙々と食べているモカに確かめてみた。
「はいです。僕達は自然にある魔力を吸収して生きてます。」
「じゃあ・・なんで食べてるの?・・・お腹空いたっていつも言ってるし・・・」
食べるのを中断したモカのくちばしの周りについているクリームをハンカチで取ってあげた。
「なおがくれたから。」
モカが嬉しそうに教えてくれた。
「初めてクッキー食べた時、ぼく嬉しかったです。美味しかったです。」
(味覚あるのに、食べなくてもいいなんて・・・)
「そっか。・・・じゃあもっと色んな物一緒に食べようね。」
私はモカの頭を撫でて、私のケーキを少し切り分けてモカに食べさせた。
「ん?・・・じゃあ今まで一緒にご飯食べてたのって、みんな不思議だったの?」
ティオが笑いながら答えてくれる。
「そうよ。でも私は、契約者のなおが当たり前のようにしてたし、モカも美味しそうに食べてるし、そんな二人がとても自然だったから、すぐに普通に見えたのも、確かよ。たぶんみんなそう思ってるとおもうわよ。」
「はい。私もお二人のお姿を見て、羨ましくおもいました。」
エリオナも笑顔で答えてくれた。
「私のお兄様の精獣なんて、喋ってくれないし、目が怖いし、ほんとモカ様と全然違うんです。」
「そうね。アルカさんの精獣は無愛想だよね。でも、私が知ってる精獣はみんなそんな感じ。」
私は手を伸ばしてクッキーを取っていた。
「エリオナさんのお兄さんって精獣と契約してるんだ。」
私は色々聞きたくなったけど、何故か聞かないほうが良いような気がした。
(モカはモカだしね。)
クッキーを口いっぱい頬張り、カップの紅茶を一気に飲み干した。
「モカ。美味しいね。」
「はいです。」 モカは、またクリームで汚れていた。
「そうだ。次の目的地を決めないと。」
私はモカのクリームを取りながら考えた。
「泉を見てみたいかも。」
「それいいかも。それじゃあ、エリも一緒に行かない?」ティオが尋ねて
「はい。ティオねぇさま。ご一緒したいです。」 焼き菓子を食べていたエネオナが嬉しく微笑んだ。
「なおも良いよね?」
私は「もちろん。」とエリオナを見て、
「一緒に行きたいと私も思ってたの。よろしくね。」
私とエリオナはもう一度、挨拶を交わしてケーキ屋を出た。
エリオナの護衛の人達は、男2人と女性1人の計3人。私たちのすぐ後ろを歩いてくる。
私とティオは靴屋に戻って、仕立て直した白いブーツに履き替えた。
モカはケーキ屋からずっと私の腕の中にいる。
静かに散策出来ると思ったので、私はモカに頼んで腕の中にいてもらう事にした。
「おまたせしました。」
私は広場で待っていたエリオナ達と合流した。
「せっかくなので、ここから泉まで歩いていきましょうか。」
ティオの提案で私達はのんびりと、広場から続く、林の歩道を歩くことにした。
木々が等間隔で並び日の光が十分に照らされた歩道には、私達以外誰も居ない。
「静かだね。町の中だと思えないよ。」 私は深呼吸して緑の香りを一杯に吸い込んだ。
「ここは、ミレナさまが降り立った時から、ほとんど手を加えずに守ってきた場所だって聞いてます。町の商店街からも遠いですし、この歩道も今は裏道みたいなものだからね。」
先頭を行くティオが振り返りながら教えてくれた。
「モカ。少し飛ぶ?」 私は腕の中のモカに問いかけた。
「はいです。」
ふわっと浮き上がり羽を伸ばすような仕草で私の周りをふらふらと浮いている。
「ねぇ、モカ? 精霊界ってどんなところなの?」
「私も知りたいです。」 ティオのすぐ後ろを歩いていたエリオナがキラキラした目でモカを見る。
「えっと、です。おっきな木があって、その下にどこまでも続く森があるです。」
「大きいってどれくらいなの?」 私はモカに聞く。
「んーと、あの山くらい?あるのかもです。」
小さな翼で示した先には木々の間から見える城壁の上、遥か遠くの山を指していた。
「そんなに大きいの!」「すごいです。」 エリオナと私の声が重なった。
「僕達はみんな、その木の周りに住んでます。なにも変わらない景色だから僕達が居なければ、永遠に時間が止まった場所になってると思うです。」
「太陽とか天気が変わったりとか、そんなのが何も無いの?」
「はいです。空はずっと同じで白く光ってるです。」
モカは太陽に照らされた青い空を眺めている。
「そっか。モカもこの世界で、初めてが、一杯あったんだね。」
「もうすぐ泉にでるわよ。」
ティオが指差した木々の向こうには太陽で輝いている水面が見えていた。
私達は林の歩道を抜けて、大きな池になっている泉を目の前にした。
池の周りには散歩を楽しむ人達で賑わっている。
私はモカを腕の中に呼んで、エリオナと並んでティオのすぐ後ろをついていった。
「この池の底から沢山の水が湧いているのよ。ここは丘の上にあるから、水路を作って、町に水を引いて、さっき通った港までの畑にも使われているのよ。」
ティオは少し歩く速度を遅くして、ハミルさん達の護衛の輪の中に入る。私達3人を囲むように前にハミルさん、左右と後ろにエリオナの護衛さん達。
(打ち合わせとか、してなかったよね?ティオも自然だったし、やっぱりすごいな~。)
私は、同じく自然な振る舞いで隣を歩いているエリオナを見て、
「エリオナ・・・さん・・・も、えっと、水の都のお姫様なのですか?」
「いえ。私は普通の巫女です。」
エリオナが申し訳なさそうに答えたので私は気まずくなってしまった。
「ごめんなさい。なんていうか、立ち振る舞いがティオに似てたから…ってティオも巫女だった。」
ティオがお姫様モードで笑みをこぼしながら、こっちに振り向いた。
「そうよ。私も巫女なんだからね。」
私はティオにも「ごめん。」と笑いながら答えてた。
ティオがエリオナの頭を少し撫でて、
「エリが言葉濁した言い方を、したのはね、王族が収める都市ってこのオルトリアスだけなのよ。でも、『リエムリム』は、水竜アンリノエ様が巫女の中から一人選んで力を特別に授けるの。その巫女の事を『姫巫女様』って呼んで、うやまうのよ。」
私はゆっくりと歩きながらティオの言葉を聴いていた。
エリオナは、うつむいている。
「でね、エリが選ばれたのよ、『姫巫女』に。」
私はエリオナの態度がなんとなく理解できた。
「そっか。まだ小さいのに・・・」
「ほんとよね。エリが9歳の時に指名されたのよ。冗談じゃないわよ。」
声を荒げてしまったティオは、何も無かったように、お姫様モードに戻してエリオナの背中に手を当てた。
「私は、それからエリのおねぇちゃんになる事にしたのよ。」
エリオナが嬉しく照れているのが判る。
「ティオがおねぇちゃんなら問題ないね。・・・ん?問題ないよね?」
ティオとエリオナの絆が羨ましく、微笑ましく想い、私はティオに意地悪を言ってみた。
「ないわよ。」
池のほとりを歩く少女達の、笑い声が周りの人々に暖かい風になって広がっていく。
「ねぇ、ティオ? エリオナさんの事、エリオナちゃんって呼ぶのって駄目かな?」
小さな少女を私はどう呼べば良いのか判らず、おねぇちゃんのティオに聞いてみた。
「エリ。エリはなおと、友達になりたい?」
私を見上げるエリオナの言葉を私はすこし緊張しながら待っていた。
「はい。」
照れながら、私に微笑んでくれた。
「じゃあ、なおは、これから、エリの事を『エリオナちゃん』って呼ぶからね。」
「エリオナちゃん。これからもよろしくね。」
「はい。なおさま。」
すかさず、ティオの言葉が入る。
「エリ。友達を『様』で呼ぶのはだめですよ。なおさんって呼んで上げてね。」
「なおさん。・・・」
私は笑顔で答えた。
騎士に囲まれた姫様一行は、池のほとりをゆっくりと進んでいた。
「ティオ。エリオナちゃん。ほんと、ここは、いいところね。ね。モカ。」
「はいです。」
池に隣接する大きな建物に私達は向かっていた。近づくにつれて、そこは神殿だと理解した。
参拝者達が、神殿に続く石畳の道を往来している。すれ違う人々は立ち止まり、姫様一行に一礼をする。
扉のない入り口。大きな柱。壁には彫刻で色々な物が描かれている。
エリオナも初めての場所だったので、モカと3人できょろきょろと周りを見ていた。
私達は神殿の中に歩みを止めることなく入っていった。
神殿は、ほぼそのままの一つの部屋になっていて、奥には大きな像が建っていた。
「あの像が月の精霊ミレナ様よ。この場所に降り立ったって言われているのよ。」
ドレス姿の女性。右手は差し出し、手の平は下向きに。
(祝福を授ける。・・・ポーズ?かな・・・)
「綺麗な像だね。真っ白でゴツゴツしているところもないし、まるでミレナ様がそのまま石になってるみたい。」
ティオに連れられて、像の足元から上を眺めていた。
「見上げると、すごい迫力ある・・・かざしてる手がなにか神々しい。」
「でしょ。私達はこの手の下で祈りを捧げるのよ。なおもやってみる?」
「なにを祈ればいいの?」
「感謝の言葉とか、願い事とか・・・なんでもいいのよ。エリも一緒にね。」
私とエリオナはティオを挟んで横に並び、ティオの動作の真似をした。
(この場所にこれた事、モカ。ティオ・・沢山の人に出会えた事。ほんとうにありがとうございます。いつか・・・私がみんなに恩返しできるように頑張ります。)
私たちは、他の参拝者達と同様に、祈りを済ませて神殿の外へ出る。
神殿の外出ると、ティオの馬車とエリオナの馬車が並んで参道に止まっているのが見えた。
(あれ?いつの間にきてたのかな?ほんと凄いな~。)
ティオはお姫様モードで人々に手を振っている。
「そろそろ城に戻りましょうか。エリも一緒にどう?」
エリが寂しそうに答えた。
「いえ。一度、船に戻らないと・・・」
ティオは少し屈み、エリの頬に頬をくっ付けて、
「そうよね。今度は私から、ちゃんと誘いの文を送るから待っててね。」
ティオとエリオナは別れの挨拶をした。
「エリオナちゃん。ファルト対戦楽しみにしてるね。」
私はエリオナが少しでも元気になって欲しかった。
「はい。わたしも、なおさんに出会えて嬉しいです。是非、お願いします。」
私はエリオナの無邪気な笑顔を見て、
「私の事は、『なお』って呼んでくれるともっと嬉しいんだけど、だめかな?」
少し悩んで、「はい!」 とエリオナの元気な声が届いた。
一礼を交わして、私たちは馬車に乗り込もうとしていた。
その時、町全てに響き渡るくらい大きな音が聞えてくる。石が擦れる鈍い音だった。
ハミルさんとティオが振り向く先を私も追うように振り向いた。
神殿よりすこし西側、北にある高い城壁の一部が開いていくのが見える。
「あれって、扉だったんだ。」
(あれも魔法で開けてるんだよね。すっごいな~)
ティオに話しかけようとしたけど、すごく緊張しているのが見えた。ハミルさんもエリオナも、見渡すと、全ての人々が緊張。不安。恐怖。そんな感情が見えているのが私にも判った。
「どう・・したの?」
「ごめん。なお、先に馬車に乗って城に戻っていて。エリも早く船に。」
ティオは光に包まれて、銀細工の綺麗なローブをドレスの上に被せるように着けていた。頭には宝石が付いた銀の冠があった。
「ティオさまも、お城に戻ってください。」
ハミルさんが声をかけるが、ティオは聞く気が無かった。
「わたしは知らなければならない義務があります。民を守るのが私の使命。貴方はわたしを守りなさい。いいわね。」
毅然とした態度でハミルさんを従えて、二人は魔法の力で浮き上がり、私達に一礼して門に向かって飛んでいった。
状況が飲み込めない私は、エリオナを見つめた。
「ティオに言われたように私は、城に戻るね。エリオナちゃんも気を付けてね。」
なにが起きるのか、判らなかったけど、人々の異様な緊張感が重大な何かが起きようとしているのだけは判った。
「はい。でも・・・私はここで様子を見ています。ここには沢山の水があるので、私は大丈夫ですから。なおさん・・あ。なおは早くお城に。」
私はエリオナに別れを告げて、モカと馬車に乗り込んだ。
私たちの馬車はエリオナ達に見送られながら城へと向かった。
馬車の窓から見える町の人々は、誰もが不安と恐怖を抱えながら、大切な人の居る場所に駆け出していた。
「モカ・・・どうなるのかな?みんな大丈夫だよね・・・」
モカを胸に抱きしめて、私は祈った。
(みんなとまた・・・絶対に会うんだから。)
馬車は人々を避けながら街道を走っていく。
銀色のローブを着た巫女さんや神官らしい人達が町の人達をどこかに誘導しているのが見える。
私はただ、祈るだけしか出来なかった。
「なお。来るです。」
モカが腕から浮き上がって、窓の外を見ている。初めて聞く緊張した声。
開かれた門の空間が、黒い霧で覆われていた。
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