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最終部 繰り返しの終わり編
終一話「立ち止まるな」
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――無限ループというものはその殆どが人工的、又は意図的に作られたものである。
例えば、スタートとゴールを繋げる。するとそれだけで、無限ループは完成する。
人間が考えているより無限ループというものは簡単に生み出せるのだ。
次に、無限ループから脱出する方法は何か?
基本的に無限ループに干渉できるのは無限ループの中にいない外側の者になる。
逆に言えば無限ループの中にいる者達だけでは脱出出来ないのだ。
何故なら突破出来ないまま振り出しに戻り、繰り返すからだ。一度失敗したなら、またその失敗を一から繰り返す。だからこそ無限ループは成立する。
しかし、その無限ループを内側から突破出来る存在がいる。その者は『特異点』と呼ばれる存在。
特異点は無限ループの中にいながら、『一度として同じ事を繰り返さない』。
ある者がこう言った。
綺麗な丸、何処が始まりか終わりか、繋ぎ目も見えない綺麗な丸の輪郭に、一本真っ直ぐな線を引く。
線が一本引かれるだけでそこが基準になるのだ。
線から見て右が始まり、左が終わり。右から描かれる丸はやがて左の終わりに辿り着く。
しかしどうだろう。
線を一本引いたとしても丸の形は変わらない。内側から外側に出るには足りない。
結局のところ線は『二本』必要なのだ。
始まりと終わりを分けるための線、特異点と呼ばれる存在は本来『二人』必要なのだ――。
---
-元の月第10日-
相当話し込んでいたのだろう、辺りはだんだんと明るくなってくる。
あれ程暗く、静かだった森も地面の土が見え、はっきりと森の様子が確認出来る。
何処からかベル達を後押しする様に風が吹く。
「行こうか」
小さく呟くベル。
リリーの話を聞き、ゼノの話を聞き、イデアルの話を聞いた。
ベルには到底信じられない話しばかりだったが、自分自身もそんな体験をしたのだ、状況は信じる信じないという段階を超え、やるしかないという段階にまでなっていた。
「ちょっと待って!」
しかし皆を呼び止めるリリー。
「もう一つだけ話しておく必要があるの」
そう切り出したリリーは、ガーネアの持っていたベルナンドの行方について話す。
「結論から話すと、犯人はガンデスよ」というリリーはベルナンドが無くなる前の晩での出来事を話す。
誰かがナーファと会話した後、その誰かがガーネアが眠る部屋へと進んでいった。
本能的にばれてはいけないと息をひそめ、ガーネアが眠る隣の部屋側の壁に聞き耳を立てる。
争っている物音は聞こえない。暫くすると部屋から出ていく様子が伺える。
リリーも急いで部屋の扉の前まで移動する。
そのまま出ていく訳にはいかず、鍵穴から静かに様子を伺う。
――顔は見えない。
夜で暗く、鍵穴からだったので誰かは分からない。
しかし、リリーは右腕を見る事には成功した。
右腕には数字の烙印。アンドロイドだ。
――S-2013……。
リリーはその数字をしっかりと目に焼き付ける。
翌日、案の定宝石が無いと騒ぎ立てるガーネア。
リリーはさりげなく皆の右腕を確認する。
ゼノ……は人間なのでそもそも数字は無い。イデアルは違う、ベルも……。
ナーファは犯人と会話をしていた筈、だが実はナーファが犯人で誰かと会話した後にガーネアの部屋に向かったのはナーファだった?
確認するが数字は一致しなかった。
もう残り一人しかいない。
仲間内でその仲間を疑うようなことはしたくない。
リリーは心の中でどうか間違いであってくれと願う。
が、その願いは叶わなかった。
S-2013。しっかりと右腕に刻まれた数字は間違いようが無かった。
ベルナンドを奪ったのはガンデス。でも理由が判らない。
リリーはその思いと共にベル達に告げる。
――ガンデスは敵か?
その問いに答えられる者は一人も居なかった……。
---
疑念を抱いたまま、しかし立ち止まる訳にはいかないベル達はゼノとリリーが言う『存在しない筈の国』パコイサスへと向かっている。
「どうした? 何か気になる事が?」
リリーの話を聞いてからだんまりを決め込んでいたイデアルにベルが話しかける。
ガンデスの事かと聞き、イデアルもそうだと答える。
「俺も疑いたくないが、ガンデスにしかできないだろう? 右腕の数字の件もそうだが、ナーファとガーネア姫が襲われたのもそれに関係が……」
「それだよ!」
ゼノの言葉を遮るイデアル。
他の面々も思わずイデアルの方を見る。
「な、なんだよ」
「皆、聞いてくれ。犯人はガンデスじゃないかもしれない」
「何だと!?」
イデアルに注目が集まる。
イデアルも意気込んで続きを話す。
「俺はずっと引っかかっていたんだ、リリーがさっき言ってた数字があるだろう?」
「ええ……」
S-2013。再び確認する為に数字を呟く。
「俺が見たときは『S-2012』だった……」
「数字が足りない?」
一同は足を止める。
「ちょっと待てよ、別人だってのか!?」
「そんな筈はない、いつも一緒だった、入れ替わるタイミングなんて」
無い。と言いきろうとした時、それが間違いだとゼノは気づく。
リリーは既に気づいていた様で、イデアルに変わり説明する。
「リセットされる際にアンドロイドは修復されるわ。そうしないと劇を演じる役者が壊れたままになってしまう」
「そうだ、腕が取れてたり足が壊れてたりな」
そうか。とベルも納得する。
確かに二人の言っている通りだった。
同時にどのタイミングでガンデスと『誰か』が入れ替わったのだろうか。
「それは分からない。入れ替わるタイミングが一つしか無くても、そのタイミングは何回も起きているからな」
イデアルも困惑している様だった。
無限ループ。ベル達はその渦の中にいる。
「でも尚更わからないわね。ガンデスでは無いのだとしたら、ノースクで私たちを助けた理由が分からない」
全員が確かにと一言発してから黙ってしまう。
ガンデス、いやガンデスのふりをしているアンドロイドの真意がわからない――。
一同は真意がわからないまま足をパコイサスの方向へと進める。
例えば、スタートとゴールを繋げる。するとそれだけで、無限ループは完成する。
人間が考えているより無限ループというものは簡単に生み出せるのだ。
次に、無限ループから脱出する方法は何か?
基本的に無限ループに干渉できるのは無限ループの中にいない外側の者になる。
逆に言えば無限ループの中にいる者達だけでは脱出出来ないのだ。
何故なら突破出来ないまま振り出しに戻り、繰り返すからだ。一度失敗したなら、またその失敗を一から繰り返す。だからこそ無限ループは成立する。
しかし、その無限ループを内側から突破出来る存在がいる。その者は『特異点』と呼ばれる存在。
特異点は無限ループの中にいながら、『一度として同じ事を繰り返さない』。
ある者がこう言った。
綺麗な丸、何処が始まりか終わりか、繋ぎ目も見えない綺麗な丸の輪郭に、一本真っ直ぐな線を引く。
線が一本引かれるだけでそこが基準になるのだ。
線から見て右が始まり、左が終わり。右から描かれる丸はやがて左の終わりに辿り着く。
しかしどうだろう。
線を一本引いたとしても丸の形は変わらない。内側から外側に出るには足りない。
結局のところ線は『二本』必要なのだ。
始まりと終わりを分けるための線、特異点と呼ばれる存在は本来『二人』必要なのだ――。
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-元の月第10日-
相当話し込んでいたのだろう、辺りはだんだんと明るくなってくる。
あれ程暗く、静かだった森も地面の土が見え、はっきりと森の様子が確認出来る。
何処からかベル達を後押しする様に風が吹く。
「行こうか」
小さく呟くベル。
リリーの話を聞き、ゼノの話を聞き、イデアルの話を聞いた。
ベルには到底信じられない話しばかりだったが、自分自身もそんな体験をしたのだ、状況は信じる信じないという段階を超え、やるしかないという段階にまでなっていた。
「ちょっと待って!」
しかし皆を呼び止めるリリー。
「もう一つだけ話しておく必要があるの」
そう切り出したリリーは、ガーネアの持っていたベルナンドの行方について話す。
「結論から話すと、犯人はガンデスよ」というリリーはベルナンドが無くなる前の晩での出来事を話す。
誰かがナーファと会話した後、その誰かがガーネアが眠る部屋へと進んでいった。
本能的にばれてはいけないと息をひそめ、ガーネアが眠る隣の部屋側の壁に聞き耳を立てる。
争っている物音は聞こえない。暫くすると部屋から出ていく様子が伺える。
リリーも急いで部屋の扉の前まで移動する。
そのまま出ていく訳にはいかず、鍵穴から静かに様子を伺う。
――顔は見えない。
夜で暗く、鍵穴からだったので誰かは分からない。
しかし、リリーは右腕を見る事には成功した。
右腕には数字の烙印。アンドロイドだ。
――S-2013……。
リリーはその数字をしっかりと目に焼き付ける。
翌日、案の定宝石が無いと騒ぎ立てるガーネア。
リリーはさりげなく皆の右腕を確認する。
ゼノ……は人間なのでそもそも数字は無い。イデアルは違う、ベルも……。
ナーファは犯人と会話をしていた筈、だが実はナーファが犯人で誰かと会話した後にガーネアの部屋に向かったのはナーファだった?
確認するが数字は一致しなかった。
もう残り一人しかいない。
仲間内でその仲間を疑うようなことはしたくない。
リリーは心の中でどうか間違いであってくれと願う。
が、その願いは叶わなかった。
S-2013。しっかりと右腕に刻まれた数字は間違いようが無かった。
ベルナンドを奪ったのはガンデス。でも理由が判らない。
リリーはその思いと共にベル達に告げる。
――ガンデスは敵か?
その問いに答えられる者は一人も居なかった……。
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疑念を抱いたまま、しかし立ち止まる訳にはいかないベル達はゼノとリリーが言う『存在しない筈の国』パコイサスへと向かっている。
「どうした? 何か気になる事が?」
リリーの話を聞いてからだんまりを決め込んでいたイデアルにベルが話しかける。
ガンデスの事かと聞き、イデアルもそうだと答える。
「俺も疑いたくないが、ガンデスにしかできないだろう? 右腕の数字の件もそうだが、ナーファとガーネア姫が襲われたのもそれに関係が……」
「それだよ!」
ゼノの言葉を遮るイデアル。
他の面々も思わずイデアルの方を見る。
「な、なんだよ」
「皆、聞いてくれ。犯人はガンデスじゃないかもしれない」
「何だと!?」
イデアルに注目が集まる。
イデアルも意気込んで続きを話す。
「俺はずっと引っかかっていたんだ、リリーがさっき言ってた数字があるだろう?」
「ええ……」
S-2013。再び確認する為に数字を呟く。
「俺が見たときは『S-2012』だった……」
「数字が足りない?」
一同は足を止める。
「ちょっと待てよ、別人だってのか!?」
「そんな筈はない、いつも一緒だった、入れ替わるタイミングなんて」
無い。と言いきろうとした時、それが間違いだとゼノは気づく。
リリーは既に気づいていた様で、イデアルに変わり説明する。
「リセットされる際にアンドロイドは修復されるわ。そうしないと劇を演じる役者が壊れたままになってしまう」
「そうだ、腕が取れてたり足が壊れてたりな」
そうか。とベルも納得する。
確かに二人の言っている通りだった。
同時にどのタイミングでガンデスと『誰か』が入れ替わったのだろうか。
「それは分からない。入れ替わるタイミングが一つしか無くても、そのタイミングは何回も起きているからな」
イデアルも困惑している様だった。
無限ループ。ベル達はその渦の中にいる。
「でも尚更わからないわね。ガンデスでは無いのだとしたら、ノースクで私たちを助けた理由が分からない」
全員が確かにと一言発してから黙ってしまう。
ガンデス、いやガンデスのふりをしているアンドロイドの真意がわからない――。
一同は真意がわからないまま足をパコイサスの方向へと進める。
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