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アラコルト
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「それは猿だぞ」
男の左側から声がしたが
驚くわけにはいかない
驚いて大声を出せば戸Rの警備が駆けつける
驚いて手の力加減を少し変化させれば断崖から転落する
ので
男は平静なまま答えた
「意図的にと言ったのは
おまえか?女 」
女の声が答える
「わたしじゃないよ
その猿が言ったのだよ 」
男は驚くわけにはいかない
が驚いてしまった
落ちそうになったが
なんとか長い指に力を取り戻して岩を掴んだ
「喋る猿に
状況把握能力の異様に高い女か?
なんなのだ? 」
猿が滑らかに答えてくれる
「俺は竜Q国第一軍師の
猿だ 」
男は何があっても驚かない覚悟を固めた
「あの大国竜Q国の第一軍師が猿のわけがないだろ
嘘つくな猿
いや
猿が喋ること事態が
嘘としか思えないが … 」
女がすかさず
「その猿の言うことは本当だよ
わたしの前では嘘をつけないことまで
その猿は読んでいる
その竜Q国第一軍師は
あんたよりずっと頭がいいのさ
アラコルト提督 」
アラコルトは長い指が汗ばむのを感じた
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「偶然なのか?おれの名前 を当てたのも
かつて他国人が1人も侵入できなかった戸R国に
3人も いや 2人と1匹が侵 入するというのも
すべて
偶然なのか?女 」
「アラコルト提督
わたしの名は… 」
「ジュスズだ 」
突然猿が会話に割り込んだ
実に聞き取りやすい声だと
アラコルトは思う
「確かに猿の声は
アラコルトあんたより
ずっと男の、いや、雄の色気のあるいい声をしているね
わたし惚れて
しまうかもね 」
猿は
ジュスズに色気を感じないらしい
言葉を続けた
「その メス、いや、その女はT舵国の
もとヴェダだ
レイリョクにより
思考を読む 」
「レイリョクは
ヴェダを下りたら消える
はずだろ? 」
猿は素早く答える
「鳳O国は南の豊かな朱雀大陸にあり
海軍は世界一といわれる
だからのんびりとしていて
他国の情報を集める
ことさえしない 」
「たこくのじょうほうをあつめる?
どういう意味だ猿 」
「やはり…意図的に発想力 や想像力が
抑制されている … 」
と猿は呟いた
今度は聞き取り難い声であった
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「何をぶつぶつ言っとるんだ猿軍師
それにしても
思考を読んでおれの名を当てたなら
誰かがおれの名を呼んだ時のおれの記憶を
読んだということか
ジュス ズ?… 」
「違うよアラコルト提督
猿さんの思考を
読んだんだよ 」
「そうか
猿さんはおれのことを
知ってたのか ? 」
「鳳O国のアラコルト提督
手足が異様に長く
異様に瞬発力が高く
異様に持続力がある
少し整った顔の男
おぬししかおらぬよ
アラコルト提督
この崖を登れる人間は
世界でも数少ない
俺は猿だし
ジュスズはレイリョクを使 って
登ってきたからな 」
「なるほど
世界の情報を集めるとは
そういうことなのか…
う……
なんか…… 頭痛え 」
なぜか
アラコルト提督のその言葉に猿はひどく驚いた表情をした
猿は
「おぬし
詩人レイグスクに
会ったことが
あるな? … 」
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