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アラコルト

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「それは猿だぞ」

男の左側から声がしたが
驚くわけにはいかない
驚いて大声を出せば戸Rの警備が駆けつける
驚いて手の力加減を少し変化させれば断崖から転落する
ので
男は平静なまま答えた

「意図的にと言ったのは
おまえか?女  」

女の声が答える
「わたしじゃないよ
その猿が言ったのだよ  」

男は驚くわけにはいかない
が驚いてしまった
落ちそうになったが
なんとか長い指に力を取り戻して岩を掴んだ

「喋る猿に
状況把握能力の異様に高い女か?
なんなのだ? 」

猿が滑らかに答えてくれる

「俺は竜Q国第一軍師の
猿だ  」

男は何があっても驚かない覚悟を固めた

「あの大国竜Q国の第一軍師が猿のわけがないだろ
嘘つくな猿
いや
猿が喋ること事態が
嘘としか思えないが … 」

女がすかさず

「その猿の言うことは本当だよ
わたしの前では嘘をつけないことまで
その猿は読んでいる
その竜Q国第一軍師は
あんたよりずっと頭がいいのさ
アラコルト提督  」

アラコルトは長い指が汗ばむのを感じた



89


「偶然なのか?おれの名前 を当てたのも
かつて他国人が1人も侵入できなかった戸R国に
3人も いや 2人と1匹が侵 入するというのも
すべて
偶然なのか?女 」

「アラコルト提督
わたしの名は… 」

「ジュスズだ 」

突然猿が会話に割り込んだ
実に聞き取りやすい声だと
アラコルトは思う

「確かに猿の声は
アラコルトあんたより
ずっと男の、いや、雄の色気のあるいい声をしているね 
わたし惚れて
しまうかもね 」

猿は
ジュスズに色気を感じないらしい
言葉を続けた

「その メス、いや、その女はT舵国の
もとヴェダだ
レイリョクにより
思考を読む  」

「レイリョクは
ヴェダを下りたら消える
はずだろ? 」

猿は素早く答える

「鳳O国は南の豊かな朱雀大陸にあり
海軍は世界一といわれる
だからのんびりとしていて
他国の情報を集める
ことさえしない  」

「たこくのじょうほうをあつめる?
どういう意味だ猿 」

「やはり…意図的に発想力 や想像力が
抑制されている … 」

と猿は呟いた
今度は聞き取り難い声であった



90


「何をぶつぶつ言っとるんだ猿軍師

それにしても
思考を読んでおれの名を当てたなら
誰かがおれの名を呼んだ時のおれの記憶を

読んだということか
ジュス ズ?… 」

「違うよアラコルト提督
猿さんの思考を
読んだんだよ 」

「そうか
猿さんはおれのことを
知ってたのか ? 」

「鳳O国のアラコルト提督 
手足が異様に長く
異様に瞬発力が高く
異様に持続力がある
少し整った顔の男

おぬししかおらぬよ
アラコルト提督

この崖を登れる人間は
世界でも数少ない

俺は猿だし
ジュスズはレイリョクを使 って
登ってきたからな 」

「なるほど
世界の情報を集めるとは

そういうことなのか… 

う…… 
なんか…… 頭痛え 」

なぜか
アラコルト提督のその言葉に猿はひどく驚いた表情をした

猿は

「おぬし
詩人レイグスクに
会ったことが
あるな? … 」







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