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第6章 決戦の始まりと新たな真実
30話 「無限の闇を超えて──翼を持つ少年が挑む、新たなる絶望」
しおりを挟む無の領主を倒し、世界は再び光を取り戻した。翔太、駿、瑠衣は、一時の安堵に浸りながらも、彼らが歩んできた戦いの日々を振り返っていた。だが、平穏は決して長くは続かなかった。
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無の領主との戦いから数週間後、世界は再び平静を取り戻し始めた。村々では再建が進み、人々も新たな日常を取り戻しつつあった。翔太たちは、何もない平和な日々を過ごしていたが、どこかその心には不安の影が残っていた。
「無の領主が言っていたこと…気にならないか?」ある夜、焚き火の前で駿がぽつりと口を開いた。
翔太は火の揺らめく炎を見つめながら、静かに答えた。「俺たちの戦いは終わったはずだ。無の領主を倒した今、もう脅威はない…そう思いたいけど、確かに彼の最後の言葉が気になる。」
「"お前はその選択で本当に世界を救えるのか?"って言ってたわね…」瑠衣もまた、暗い表情で呟いた。
無の領主の消滅と共に、世界は一見、救われたように見えた。しかし、その最後の言葉が、三人の心に深く突き刺さっていた。特に翔太は、結晶の力が自分自身を蝕む可能性があることを知り、それに対する不安が消えることはなかった。
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数日後、彼らは次なる目的地として、世界の中心に位置する「光の都」へと向かうことにした。光の都は、かつてこの世界を照らし続けていた聖なる都市であり、無の領主によってその光を奪われていた。しかし、無の領主が倒れた今、再びその光が蘇っているかもしれないと考えたからだ。
「この旅の終わりが近づいているのかもしれないな…」駿は、光の都の壮大な城壁を遠くに眺めながら呟いた。
翔太は黙って頷き、進み続けた。彼の心には新たな覚悟が芽生えていた。もし、何か新たな脅威が彼らを待ち受けているのなら、今度こそ自分の力を完全にコントロールし、守り抜かなければならない。
だが、光の都に近づくにつれ、空気がどこか不穏に変わっていった。空は再び曇り始め、かつての明るさを失っていく。翔太たちはその異変に気付き、足を速めた。
「これは…ただの曇り空じゃないわね。」瑠衣が目を細めて、周囲の空気を感じ取っていた。
翔太は警戒を強め、すぐに背中の羽を広げた。「何かが起こっている。早く都へ向かおう。」
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光の都に到着した翔太たちは、予想を超える光景に直面した。城壁内は、かつての輝きを取り戻すどころか、暗黒に包まれていた。町の中を歩く人々の顔は、不安と恐怖で覆われており、何か異常な事態が起こっているのは明らかだった。
「どうなっているんだ…?」駿は眉をひそめ、周囲を見渡した。
翔太は急いで近くの住民に話しかけた。「何が起こっているんですか?ここは無の領主が倒されたはずでは?」
住民は震えながらも、口を開いた。「確かに、無の領主は倒された…だが、その後、突然また…闇が現れたのです。今度は、まるで新たな力が何かを目覚めさせたかのように…」
「新たな力…?」瑠衣が思案深げに呟いた。
「それはいつからだ?」翔太は焦りを感じながら尋ねた。
「ほんの数日前からです。何もかもが急に変わり始めて、都全体が闇に飲み込まれていくのを感じています。」
翔太たちはさらに不安を募らせながら、光の都の中心部へと急いだ。そして、都の中心にある神殿の前にたどり着いた時、その異変の正体に直面することになった。
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神殿の中から現れたのは、かつての無の領主と似た気配を持つ者だった。しかし、その姿はまるで人間のようでありながら、背中には黒い翼を持ち、眼には赤い光が宿っていた。
「お前は…誰だ?」翔太は剣を構えながら尋ねた。
その存在は冷ややかに笑い、「俺の名は『無の遺児』だ」と名乗った。
「無の遺児?」駿が訝しげに問いかけた。
「そうだ。かつての無の領主が残した力を受け継ぎ、そして超越した存在だ。俺がこの世界を真の無に導くのだ。」
翔太はその言葉に驚きと共に、再び自分の中に湧き上がる力を感じた。「お前が…また世界を闇に染めようとしているのか?」
「そうだ。お前が無の領主を倒したことで、俺の目覚めは早まった。だが、それも計画の一部だ。結局、この世界は無に還らざるを得ない。」
「ふざけるな!」翔太は怒りを爆発させ、剣を構えた。「俺たちは、再びこの世界を守るために戦うんだ!お前に好きにはさせない!」
無の遺児は再び冷笑を浮かべ、手を掲げると、周囲の空間がひび割れ、闇の力が解放されていく。「ならば、もう一度俺を倒してみせろ。だが、お前の力がどれほど強まろうとも、この無の力を打ち破ることはできない。」
翔太は無の遺児の言葉に激しく胸を打たれながらも、すぐに冷静さを取り戻し、駿と瑠衣に目配せした。「俺たちがこれまで戦ってきたことを無駄にするわけにはいかない。新たな敵だろうと、俺たちでこの世界を守るんだ!」
駿は剣を固く握りしめ、「いつでも行けるぜ、翔太!」と戦意を漲らせた声で応じた。瑠衣も杖をしっかりと構え、力強く頷いた。「どんな強敵でも、私たち三人ならきっと乗り越えられるわ!」
三人は互いに背中を合わせ、無の遺児を中心に円を描くように動き出した。無の遺児の目には、わずかな興味が浮かび上がっていた。「面白い…では、見せてみろ。お前たちの"絆"とやらが、無に勝てるかどうか。」
その瞬間、無の遺児の周囲から闇が渦を巻くように拡がり、空間が歪み始めた。凍てつくような冷たい風が吹き荒れ、翔太たちはその圧力に押しつぶされそうになりながらも、一歩も引かなかった。
「行くぞ、駿、瑠衣!」翔太は翼を広げ、無の遺児に向かって突進した。駿は翔太の後を追い、剣を振りかざして闇の渦に切り込んだ。瑠衣は魔法を唱え、光のバリアを展開しながら仲間を守ろうとする。
しかし、無の遺児はその全てを軽々といなすように、手を一振りしただけで闇を操り、翔太たちの攻撃を打ち消してしまった。「無駄だ。俺の力は無限だ。お前たちの希望など、この無に飲まれるに過ぎない。」
「そんなことはない!」翔太は強く叫びながら、再び結晶の力を呼び起こし、光の刃を解き放った。だが、それでも無の遺児には届かず、闇に吸い込まれるように消えていく。
「翔太、気をつけて!」瑠衣が叫ぶと同時に、無の遺児は逆に攻撃を仕掛けてきた。闇の触手が彼らに襲いかかり、空間が裂けるような轟音が響いた。
「くそっ、こいつは強すぎる!」駿は歯を食いしばりながらも、無の遺児の攻撃に耐え続けた。
翔太は必死に無の遺児の攻撃を避けながらも、自分たちの力が圧倒されている現状に焦りを感じていた。「このままじゃ、俺たちは負けてしまう…でも、諦めるわけにはいかない!」
その時、翔太の中で何かが変わった。結晶の力が再び反応し始め、彼の背中の羽が輝きを増していった。だが、その輝きは今までのものとは違い、まるで彼自身の魂を削っているかのような感覚が伴っていた。
「翔太、やめて!その力は危険よ!」瑠衣が止めようと叫んだが、翔太はその声に耳を貸すことができなかった。彼は自分の限界を超え、無の遺児を打ち倒すために、結晶の力を解放しようとしていた。
「これしかない…この力で、お前を倒す!」翔太は全身に宿った光の力を一気に解き放ち、無の遺児に向かって突進した。光と闇が激突し、空間が震えるほどの衝撃が走った。
だが、無の遺児は再び冷笑を浮かべた。「愚か者め。お前がどれほど力を解放しようとも、無は無限だ。お前自身がその力に飲み込まれるだけだ。」
その瞬間、翔太の体から光が逆流し、彼の意識が遠のいていく。結晶の力が暴走し、彼自身を蝕んでいく感覚に襲われた。周囲の景色が歪み、闇に包まれ始めた。
「俺は…これ以上…無理なのか…」翔太の視界が暗くなり、意識を失いかけたその時、彼の心に駿と瑠衣の声が響いた。
「翔太、諦めるな!俺たちはまだ一緒だ!」
「翔太、あなたは一人じゃない!私たちがついているわ!」
二人の声に呼び戻された翔太は、最後の力を振り絞って自分の中の結晶の力を制御しようとした。そして、無意識のうちに、彼は結晶の力を他の二人に共有し始めた。
「これは…翔太の力が…」瑠衣は驚きながらも、その力を受け入れ、光の魔法をさらに強めた。駿もまた、翔太の力を受け取り、剣に宿る光をさらに強く輝かせた。
「今だ、翔太!」駿が叫び、翔太の方を見た。
翔太は二人の力を感じながら、再び立ち上がった。「ありがとう、駿、瑠衣。俺たちなら、この無の力を打ち破れる!」
三人の力が一つに結集し、無の遺児に向かって放たれた。光の刃が渦を巻きながら、無の遺児の闇を貫いた。
「馬鹿な…この俺が…!」無の遺児は驚愕の表情を浮かべたまま、その体が光に包まれ、闇が消滅していった。
「やったか…?」駿が息を切らしながら呟いた。
無の遺児の姿は完全に消え去り、周囲の闇もまた消え去った。翔太たちはようやく勝利を確信し、深く息を吐いた。
「これで、終わった…」翔太は空を見上げ、ようやく安堵の笑みを浮かべた。
だが、その時、突然地面が震え始めた。無の遺児が消滅した後に、再び何かが目覚めようとしているかのような不気味な気配が漂っていた。
「まさか…これが本当の脅威なのか…?」瑠衣が不安そうに呟いた。
翔太たちは新たな脅威を前に、再び立ち上がらなければならなかった。果たして、無の遺児の言葉が示す「真の無」とは何なのか?彼らの旅は、まだ終わりを迎えることはなかった。
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