お帰り転生―素質だけは世界最高の素人魔術師、前々世の復讐をする。

永礼 経

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第406話 ハーランドの計画

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「奴らが、聖堂に人々を集め聖水と称して飲ませ、また、聖堂中にお香として焚いているものもリーキの葉でした。それはすでに調査済みです」
と、言ったのはケリー・グラントだ。
 なるほど、彼の『隠密スキル』であれば、潜入して調査してくるぐらいはそれほど難しくないかもしれない。ミリアが魔法感知できないぐらいなのだ、相当のスキルである。

「――それで、私に何をさせようと?」
ミリアは核心に迫るように問いかける。

「国王を救い出したいのです。奴らは国王にリーキの葉を使用して、寝室に幽閉しておるのです。まずは国王をお救いせねば、打って出ることも叶いませぬ」
と、ハーランド院長がこれに答えた。

「そんなこと、これだけの魔術師がいれば、私が手を貸すまでもないんじゃありません? 相手は、聖職者たちなのでしょう?」

 ミリアのイメージでは、聖職者というのは、死者の弔いや結婚の祝福を与える存在であり、「武力」とはやや縁遠い存在だったため、このような言葉が出たのだ。

「いえ、奴らラーデンフォウルの者たちは皆、武闘修道士モンクなのです――。魔術師との戦闘は苛烈を極め、こちらも無事ではすみません。国王陛下さえこちらに救い出せれば、衛兵隊が使えます。そうなれば、武力ではこちらが圧倒することができます」

 武闘修道士モンク――。
 心身を鍛え、体術を身につけた武闘派の僧侶のことを言う。主として、俊敏な動きと強靭な肉体を武器とした、無手の戦闘術を身につけている者たちを指す。その動きの俊敏さに、魔法術式の展開が間に合わず、あっという間に間合いを詰められ、一撃必殺の打撃技を繰り出してくる。魔術師との相性はある意味最悪と言える。

 魔術師というのは基本的には、『後衛職』だ。接敵の際には、前衛にガード役が立ちはだかり、魔術師の術式発動の時間を作りつつ、魔術師に近接攻撃を仕掛けられないよう充分な間合いを確保する。そうすることによって、魔術師は落ち着いて術式展開ができ、的確な魔術式を編むことができるというわけだ。

 おそらくのところ、この人たちの中に、その「ガード役」を兼ねることができる魔術師が存在しないということなのだろう。
 その為、衛兵隊の助けがいるという結論へと至ったわけだ。

 この者たちが魔術師であるということは、既にミリアにも分かっている。これまでこの者たちの話に矛盾した点は見当たらない。
 ならば、ここは話に乗るという態度を示しておいて問題ないだろう。
 
「――国王を救出するための手筈はどのように考えているのですか?」 

「それについてなんですが、詳細はこのケリー・グラントから説明いたします――」

 その後、ミリアは、ケリーから事の手順を聞いた。その計画であれば、確かに可能性は高いと言えるかもしれない――。
 問題は、この者たちがミリア自身をたばかっている場合だ。
 現時点では確かに矛盾点は見当たらないように見える。が、それはあくまでも、この者たちの話を信じればという条件付きだ。
 この条件を払拭するには、もう一方、国王側もしくは、現在王城に陣取っている者たちの話も聞かねばなるまい。

「わかりました。ですが、現時点であなたたちが正しいことを為そうとしているのかどうかは判断しかねます。私が国王に謁見した際、少しでも違和感を感じたなら、私はこの計画に参加することを止めさせていただきます」
(その場合は、おそらく自分の身に危険が降りかかることになるだろうが、そうなったとしても、自分だけのことなら、何とでもなる)

 ミリアはそう決断した。

「もちろんです。ですが、われわれの言っていることが真実であるということは、王城に足を踏み入れればお分かりになるでしょう。ミリア様、どうか、この国をお救いください」

 そう言ってハーランド院長以下、元国家魔術院の魔術師たちが揃って頭を下げたのだった。



 その後――。
 ミリアは再びジョドに跨り、フロストボーデンの城下町近くまで飛び、そこからまた徒歩で城門へと向かった。

 馬車で送ってもらうと、勘付かれる恐れもあるということで、敢えて手間をかけたわけだが、相変わらず通りの人影はほとんど見当たらない。

 昼前にこの地に着いたのだが、なんだかんだで時間が過ぎてしまっており、もはや、夕方で日が落ち始めている。今晩のところは、城内にあるはずの大使館に泊まることになるだろう。

 それにしても、こういう事態が起きているというのに、メストリルの魔術院はおろかエルルート大使館にさえ情報が入っていないというのはすこし不気味な気がする。

 そこのところは少し気を付けておいた方がいいかもしれない。


 城門に辿り着くと、先刻の門衛がまた対応してくれた。
 門衛はすこし会釈をして、ミリアを謀ったことを詫びているそぶりを見せたが、あとは事務的に手続きを進める。最後にまた会釈をし、「どうぞお気をつけて」とだけ、声をかけてきた。

 先程と同じように扉を出たミリアは、今度は迎えの馬車はなかったため、そのまま門衛の指示通り、通りを歩き始めた。
 今晩の逗留先は、エルルート大使館フロストボーデン支部になっている。
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