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第253話 戦慄! ダークオーク
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さらに向かいの部屋へと進んだ一行はここでも数匹のハウルドッグと巨大コウモリに遭遇し、これらを撃破することに成功した。出現ポイントも破壊し、制圧する。
そうして廊下の南端から2つ目の西の部屋も同じように制圧を完了した。
次は向かいの東の部屋だ。
入った瞬間、一同はただならぬ気配を感じとる。
「おい――、なんだよこれは……?」
その気配の異常さに気付いたジルベルトが言葉を漏らした。
「部屋の奥、明らかにやばいやつがいるな……? これまでとはちょっと格が違う――」
キールも応じる。
「――来やがったな。待ってたぜぇ――」
ハリーズがにやりと微笑んだ。ついで、
「じゃあ、約束だ――。すまないがこれだけは譲れないんでな……」
と言った。
部屋の奥まで明かりは届き切ってはいないが、明らかにそこにいる大きな人型の影を一同は認識していた。
「本当に一人でやるんですか? 正気ですか――? さすがにあれはちょっと……」
とキールが言いかけると、
「ああ、本気だ。だから、約束は守れよな――」
ハリーズがキールに強いまなざしを向ける。その目には固い意志が現れていた。
「死にますよ、あなた」
「かもな」
「死んだ者はどうにもできませんよ?」
「当たり前だ」
「――本気、なんですね――」
「そう言っただろ」
そんなやり取りのあと、ハリーズは、
――じゃあ、行ってくる。
と、まるで朝仕事に向かうかのような自然体で部屋の中央へと進み出た。
部屋の中央へとハリーズが進み出ると、ゆらりと部屋の奥の影が揺れる。どうやらハリーズを認識したようだ。
うごおおおぉぉぉぉおおお!
と、地響きがしそうな咆哮が遺跡中を駆け巡る。そして次の瞬間、その影はハリーズに向かって一直線に襲い掛かった。
長身のさらに頭上から刀身約1メートルほどの巨大な斧が振り下ろされ、斧はハリーズの頭上から迫ってくる。
ハリーズは、自身も負けじと大剣をその刃筋に合わせて迎え撃たせにゆく。
果たして、大斧と大剣が交錯すると、ギリリリッと金属の擦れ合う音が響き、ぱあっと火花が飛び散った。
大斧はその刃筋を流されて、ハリーズの頭から肩、そして足元へと軌道を変えてゆく。
――うまい!
ぬうおおおおおお!
返す刀で、大きく振りかぶったハリーズが今度は流れた大斧のせいで態勢が崩れた「巨大豚男」の頭上から急襲する。
ガィイイイイィィン!
ところが大剣は、巨大豚男の頭に命中することはなかった。先程まで床の上まで振り下ろされていたはずの大斧がハリーズの大剣を受け止めたのだ。
今度はハリーズが弾かれ体勢を崩す。大剣は弾かれ、もう一度頭上まで撃ち上げられている。ハリーズはかろうじて大剣から腕を放さず堪え切ったが、そのせいで、大きく伸びをする形となっており、胴ががら空きになっていた。
(――や、べぇ……)
ハリーズの脳裏に一瞬、戦慄が走った。このままでは胴を薙《な》がれて一巻の終わりだ――。
(ぐううおお――! まにあえぇぇぇ!)
ハリーズは打ち上げられた反動を利用して、さらに体を逸らしながら、その場で後方に体を回転させると、さらに信じられないことに振り上げた右足で巨大豚男の胴を蹴ったのだ。
ぶぅぅううん!
と、大斧はさっきまでハリーズの居た空間を切り裂く。ハリーズはそのまま後方に跳んでいたがさすがに態勢に無理があった。そのまま床に叩きつけられるように転がった。
「ハリーズさん!」
「うわっ!」
「おい!」
「むぅ――」
「ほう――なかなか――」
「躱し、ましたね?」
先に声を発した4人はもしかしたらと気色ばんだが、あとの二人、ティットとキューエルは落ち着いた声でハリーズが躱したことを見て取っていた。
「だが――」
ティットがすぐに言葉を繋いだ。
「いつまでも寝てられる状況じゃねぇんだが――なぁ」
床に横倒しになった状態のハリーズはまだ動かない。それに対して巨大豚男の方はすでに追撃の態勢に入っている。
大斧はハリーズの横たわる体にめがけて、すでに降下を開始している。このままでは迎撃に間に合わない――。
ぬううおおおおお!
先程の巨大豚男の咆哮に負けないほどの大音声が部屋中に響き渡ると、大剣が『翡翠』の魔法の明かりの中で閃いた。
ギイイイイイイイ――ン!
ガアアアアアア――ン!
と、二つの衝撃音が響き渡る。
大斧は床へ突き刺さった。ハリーズの体は翻りはしたものの横倒しのままだ。
そして静寂一瞬――。
大斧は床の上、大剣は――?
大剣は、巨大豚男の腹にいくらかめり込んでいる。その腹から何やら液体が垂れているのも見えた。
そしてそこからが圧巻だった。
ハリーズは腹に刺さった大剣の柄を両腕で握りしめると、その態勢のままさらに体をひねったのだ。
『うううぅぅぅうらあぁぁぁぁぁぁあああ!』
『ぐぼぉおおおおおおぉぉぉおおおおおん!』
二人の声が同時に発せられると、巨大豚男も負けじと、大斧を引き抜いて体を回そうと試みた。
――が、その大斧はハリーズに命中することはなかった。
その前に、巨大豚男の胴が真っ二つに切り離され、大斧を握りしめたままの腹から上が、床に転がった――。
そうして廊下の南端から2つ目の西の部屋も同じように制圧を完了した。
次は向かいの東の部屋だ。
入った瞬間、一同はただならぬ気配を感じとる。
「おい――、なんだよこれは……?」
その気配の異常さに気付いたジルベルトが言葉を漏らした。
「部屋の奥、明らかにやばいやつがいるな……? これまでとはちょっと格が違う――」
キールも応じる。
「――来やがったな。待ってたぜぇ――」
ハリーズがにやりと微笑んだ。ついで、
「じゃあ、約束だ――。すまないがこれだけは譲れないんでな……」
と言った。
部屋の奥まで明かりは届き切ってはいないが、明らかにそこにいる大きな人型の影を一同は認識していた。
「本当に一人でやるんですか? 正気ですか――? さすがにあれはちょっと……」
とキールが言いかけると、
「ああ、本気だ。だから、約束は守れよな――」
ハリーズがキールに強いまなざしを向ける。その目には固い意志が現れていた。
「死にますよ、あなた」
「かもな」
「死んだ者はどうにもできませんよ?」
「当たり前だ」
「――本気、なんですね――」
「そう言っただろ」
そんなやり取りのあと、ハリーズは、
――じゃあ、行ってくる。
と、まるで朝仕事に向かうかのような自然体で部屋の中央へと進み出た。
部屋の中央へとハリーズが進み出ると、ゆらりと部屋の奥の影が揺れる。どうやらハリーズを認識したようだ。
うごおおおぉぉぉぉおおお!
と、地響きがしそうな咆哮が遺跡中を駆け巡る。そして次の瞬間、その影はハリーズに向かって一直線に襲い掛かった。
長身のさらに頭上から刀身約1メートルほどの巨大な斧が振り下ろされ、斧はハリーズの頭上から迫ってくる。
ハリーズは、自身も負けじと大剣をその刃筋に合わせて迎え撃たせにゆく。
果たして、大斧と大剣が交錯すると、ギリリリッと金属の擦れ合う音が響き、ぱあっと火花が飛び散った。
大斧はその刃筋を流されて、ハリーズの頭から肩、そして足元へと軌道を変えてゆく。
――うまい!
ぬうおおおおおお!
返す刀で、大きく振りかぶったハリーズが今度は流れた大斧のせいで態勢が崩れた「巨大豚男」の頭上から急襲する。
ガィイイイイィィン!
ところが大剣は、巨大豚男の頭に命中することはなかった。先程まで床の上まで振り下ろされていたはずの大斧がハリーズの大剣を受け止めたのだ。
今度はハリーズが弾かれ体勢を崩す。大剣は弾かれ、もう一度頭上まで撃ち上げられている。ハリーズはかろうじて大剣から腕を放さず堪え切ったが、そのせいで、大きく伸びをする形となっており、胴ががら空きになっていた。
(――や、べぇ……)
ハリーズの脳裏に一瞬、戦慄が走った。このままでは胴を薙《な》がれて一巻の終わりだ――。
(ぐううおお――! まにあえぇぇぇ!)
ハリーズは打ち上げられた反動を利用して、さらに体を逸らしながら、その場で後方に体を回転させると、さらに信じられないことに振り上げた右足で巨大豚男の胴を蹴ったのだ。
ぶぅぅううん!
と、大斧はさっきまでハリーズの居た空間を切り裂く。ハリーズはそのまま後方に跳んでいたがさすがに態勢に無理があった。そのまま床に叩きつけられるように転がった。
「ハリーズさん!」
「うわっ!」
「おい!」
「むぅ――」
「ほう――なかなか――」
「躱し、ましたね?」
先に声を発した4人はもしかしたらと気色ばんだが、あとの二人、ティットとキューエルは落ち着いた声でハリーズが躱したことを見て取っていた。
「だが――」
ティットがすぐに言葉を繋いだ。
「いつまでも寝てられる状況じゃねぇんだが――なぁ」
床に横倒しになった状態のハリーズはまだ動かない。それに対して巨大豚男の方はすでに追撃の態勢に入っている。
大斧はハリーズの横たわる体にめがけて、すでに降下を開始している。このままでは迎撃に間に合わない――。
ぬううおおおおお!
先程の巨大豚男の咆哮に負けないほどの大音声が部屋中に響き渡ると、大剣が『翡翠』の魔法の明かりの中で閃いた。
ギイイイイイイイ――ン!
ガアアアアアア――ン!
と、二つの衝撃音が響き渡る。
大斧は床へ突き刺さった。ハリーズの体は翻りはしたものの横倒しのままだ。
そして静寂一瞬――。
大斧は床の上、大剣は――?
大剣は、巨大豚男の腹にいくらかめり込んでいる。その腹から何やら液体が垂れているのも見えた。
そしてそこからが圧巻だった。
ハリーズは腹に刺さった大剣の柄を両腕で握りしめると、その態勢のままさらに体をひねったのだ。
『うううぅぅぅうらあぁぁぁぁぁぁあああ!』
『ぐぼぉおおおおおおぉぉぉおおおおおん!』
二人の声が同時に発せられると、巨大豚男も負けじと、大斧を引き抜いて体を回そうと試みた。
――が、その大斧はハリーズに命中することはなかった。
その前に、巨大豚男の胴が真っ二つに切り離され、大斧を握りしめたままの腹から上が、床に転がった――。
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