どうやら主人公は付喪人のようです。 ～付喪神の力で闘う異世界カフェ生活？～【完結済み】

第２章 どうやらみんなは試験を受けるようです。

白熱！！スライム試験

   その後、俺達は１０メートルもあるドアの前に移動させられた。

このドアが試験会場と繋がっているのだろうか。

そして、そのドアはゆっくりと開き始めた。

周りのやつらは皆緊迫した雰囲気を出している。

おそらく、このドアが開ききったら試験が始まるのだろう。

「開始15秒前。」

さっき倒れてたばかりのあいつがカウントダウンを始めている。

しかもキツそうにして、息をきらしながらカウントダウンを行っている。

休んでろよ…と言ってやりたいが、涙目になりながらも頑張っているのだ。

…言いづらい。

しかし、ここで言ってやらないと流石にあいつ倒れてしまうだろう。

転んだだけで瀕死状態になるやつだ。

下手したらガチで死んでしまうかもしれない。

だが、あんな頑張ってるときに俺が同情してやったら、あいつは悲しむだろうな。

「うーん。一体どうすれ……………はっ!」

俺は素晴らしいアイデアを思い付いた。

これならあいつを傷つける事なく休ませてあげられるのだ。

「おい、あんたちょっとい……。」

「スタートです。」

現実は非常である…。



   ドアが完全に開き終わり、走り出した参加者達によって言葉をかけてやる暇もなく後ろから押されてドアの中へ。

建物中とは思えないほどの光が指してきた、蛍光灯とは違ったまるで外のような明るさである。

草は生え、風が吹き、鳥が舞い、花は咲き、スライムが大量にいる。

最後のは本当いらない…と思うが、明らかに外に出たようだ。

しかし、付喪連盟の周りは建物ばかり建っててこんな場所はなかったはず。

もしかしたらあのドアに何か仕組みがあるのだろうか？



   ふと気づいた事がある。

それは誰もいないこと。

そしてドアの上の方にデジタル時計みたいなのがあり、その数字がどんどん減っていってることだ。

これらから分かることそれは…。

「試験はもう…始まっているのか…。」

気づくのが遅かった。

完璧にタイムロスだ。

このままでは俺は不合格になってしまう。

俺は一刻も早くスライムを倒すことに決めた。

「ヒャハハハハハハ、この私にひれふしなさーい。スライムどもぶっ殺してあげるわ。死すべし死すべし死すべし！！！」

中には黒帝黒のようにスライムを大量に刈っていく者もいる。

だが、俺は探した。くまなく探した。

しかし、時すでに遅し、ほとんど他の参加者達に倒しつくされたみたいだ。

結局、俺が見つけたのは花畑に座って日向ぼっこしているウサギ達だけだった。

正直それでもいいと思うが、今はスライムを探す時だ。

ふと俺はそのウサギ達の中の一匹に聞いてみた。



   「おいウサギさん。俺をスライムのたくさんいる所まで連れていってくれ。」

俺は何してるんだろう…。

確かにここは異世界だからウサギもしゃべるかもしれない。

しかし、やはり見るからに故郷にもいた普通のウサギである。

普通のウサギがしゃべるはずもない。

俺は地面に腰掛けて、この後どうするか考える事にした。

そんな時、さっき話しかけたウサギが仲間の元を離れて森の方へ走っていくのが見える。



   「ん? まさか…。」

俺はそのウサギを追いかけていく。

どれくらいの距離を走っただろうか。

とある場所でウサギが急に止まった。

そこは木に覆われているが、微かに光が指しており、川の水が流れる音が聞こえる素晴らしい場所。

そして、そこには13体程のスライムがいた。

「お前…。」

ウサギは鼻をヒクヒクさせていた。

まるで俺を助けてくれたみたいだ。

実際その通りである。

「ウサギさんありがとな。次会ったら沢山の人参をプレゼントするぜ。」

早速俺はスライム討伐を始めることにした。



   他の参加者達が討伐数を稼ぐなか、突然警戒警報が辺りに鳴り響く。

鳥達は騒ぎ飛び始め、風は止んだ。

「いったい何が起こるんだ。」

数人の参加者は不安になっている。

「おい、あれ見ろよ。」

少し高台にいる参加者が森の奥の方を指差しながら言った。

見ると激しい轟音をあげながら森の中の木々がなぎ倒されていく。

「あっあれは何だ!」

「鳥か？  飛行機か？」

「こっ…こいつはまさか…。」

その場にいた参加者の前にその正体が晒された。

「スライムだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。体長10メートルくらいのスライムだぞォォォォォ。」

一人がそう叫び、周りにいた者達も慌てて逃げ出す。

しかし、そのスライムは逃げ惑う参加者達に攻撃を与えている。

中には、スライムからの攻撃によって瀕死状態になり、討伐数がゼロに戻る者もたくさんいた。

辺りの物すべてを呑み込みながら大きなスライムは進んでいく。

また時々跳びはねて、地面を揺らしながら。



   もはやスライムを討伐しようとする者はいない。

自分を守るために逃げ惑っている者もいれば、この状況を楽しんで見ている強者もいるようだ。

しかし、森の奥深くに黒きマントを着こんだ男が一人、岩に腰掛け座っていた。

「まったく…どうしてこの時期になるとスライムの数が激減してしまうんだ？
人間どもめ。何を企んでいる？」

男の周りからたくさんのスライム達が生まれてくる。

そして色々な形や種類のスライムが大量にこの世界にばらまかれた。

あとは無事に帰ることが出来れば男の仕事は終わりだった…はずだった。