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第7章 どうやら四阿は八虐の謀大逆のようです。
八剣の過去
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『八剣(やけん) 野月花(やつきな)』は三姉妹のうちの次女であった。
彼女の姉は当時の彼女にとってはとても頭の良い存在で、自分より何でもできていた完璧姉さん。
料理、片付け、掃除、運動、勉強……全てが完璧だったのだ。
そんな彼女を八剣は本気で越えようとしていたが、越えるべき壁は高く、八剣にはたくさんの時間が必要だった。
その事を当時の八剣はとても悔しく目標としていた。
そんな生活を過ごしていたある日、八剣と姉の二人は自分が付喪人だと知らされる。
彼女らは生まれながらに付喪人としての素質を持っていたのだ。
しかし、八剣の姉の方は支配力の低い付喪人であった。
支配力の低い付喪人はいつ暴走するか分からない。
なので八剣も疑われ、姉妹は監禁施設に入れらてしまう。
末っ子だけを家族の元に残して……。
ここで八剣は初めて姉をひとつ越えた。
姉よりも安全な存在として監禁レベルを下げられたのだ。
しかし、周りは誰もそこから彼女らを助けようとはしなかった。
いや、それどころか意味嫌うようになっていた。
彼女らがいつ暴走するか分からないという恐怖から周りの人々から嫌われていたからだ。
突然日常が異常になったのである。
親も来てくれない、幼稚園の友達も来てくれない。
その後、そんな二人はとある事件に巻き込まれる事となった。
それは監禁施設で隔離されてから3年後の出来事である。
「従業員は直ちに避難してください。繰り返します。従業員は直ちに避難してください」
暗い廊下にアナウンスが流れ続ける。
「何があった?」
「459号室の彼が突然暴走を始めたんです」
「とにかく奴を外に出すんじゃないぞ。ここで仕留めるんだ」
ドアの外では従業員達の慌てる声が聞こえた。
廊下を走る者のたくさんの足音。
たまに遠くから悲鳴も聞こえた。
その時はまだ幼かった八剣。
彼女は姉の袖にしがみついて恐怖で震えている。
そんな幼かった八剣を姉は優しく撫でてあげている。
彼女も震えるほど怖かったはずなのだが、姉としての意識を持って、八剣の側に居てあげているのだ。
すると突如、部屋の電気消える。
停電である。
度重なる恐怖の積み重ねにより、八剣は更に力強く姉にしがみついた。
そんな八剣を姉は優しく宥めている。
そんな中、電子ロックされていたドアの鍵が開いていた。
停電によってドアロックが外れたのだろう。
その事に気づいた姉は決意を固めると八剣に言った。
「八剣逃げるよ」
暗闇に閉ざされた廊下を二人の女の子が道もわからず走っている。
走るなんて久しぶりのことだったので八剣は体力を消耗していく。
「まっ、待って」
「早くしないとバレちゃう」
疲れきった八剣の手を引いて姉は再び走り出した。
ここで見つかればもう逃げ出すチャンスはない。
姉はこのチャンスを無駄にはしたくなかったのだ。
何度か建物は揺れている。
おそらくどこかで暴れている者の起こしている振動であろう。
足音しかない暗い廊下。
もし、これが昼間だったら気づいたかもしれないが、幼い二人はどっちみち気づかなかったかもしれない。
天井の一部が崩れて、二人に迫って落ちてきたのだ。
大量の瓦礫が降ってくる中、姉はいち早くその事に気づいた。
「あぶない!!」
姉はおもいっきり八剣を突き飛ばす。
いきなり突き飛ばされて何が起こったか理解できない八剣。
運良く二人は落ちてくる瓦礫から逃れることは出来た。
しかし、二人の間は瓦礫が塞いでおり、子供では退かすことが出来ない。
「八剣外に逃げて。お姉ちゃんは大丈夫よ。後から追い付くから。先に行って」
瓦礫の向こうで姉が八剣に声をかける。
こういう場合、最初は戸惑ったりするものだと思うのだが、その時の八剣は冷静に物事を考えていた。
「うん」
そう言うと八剣は瓦礫から離れて走っていった。
八剣は再会を信じることにしたのだ。
姉はいつも何でも出来ていたから、自分より頭が良かったから何か対策を見つけ出す。そう思ったのだ。
そんな八剣への運命が決まっていたかのように再び頭上に落ちてくる瓦礫たち。
今度は先程よりも早く気づいたのだが、八剣は恐怖に駆られてその場にしゃがみこんでしまった。
思わず目を瞑ると真っ暗で何も見えなくなる。
「おい、もう大丈夫だ。そのまま早く外に逃げるんだ」
目を開けて上を見るとそこには落ちてきそうな瓦礫を必死に支えてくれている大人がいた。
どうやら八剣を庇ってくれていたようだ。
しかし、顔は見えない。それに服も従業員とは違っていた。おそらく外部の人間なのだろうか。
「あの……?」
「早く行くんだ。ここから逃げればもう君を縛る者はない。もう君を意味嫌う者もいない。
君は普通に生きれるんだ。さぁ、早く急いで」
そう言われると八剣は迷った。
この人は早くここから逃げろと言っているが、八剣は伝えなければならないことがあった。
たった一言でよかった。この先に姉がいると……。
しかし、瓦礫を必死に支えている大人の姿を見ているとこれ以上ここにいては迷惑になるという気持ちにもなるのだ。
幼いながらにも必死に選択しようとする。
このまま逃げるか。姉の助けを求めるか。
だが幼い八剣には選ぶなんて難しい。
八剣は結局、その場から必死に立ち去った。
太陽が昇り鳥たちが鳴き出して飛び初めても、姉とは再会することはなかった。
その真実を理解した幼い八剣。
だが、家族もあの大人も結局見つからない。
そんな状況の八剣の心の中はある思いでいっぱいになっていた。
「やっと姉を越える為の時間ができた」
その喜びと悲しみを胸に少女は一人、朝日を見つめていた。
その後、八剣は幸運なことに二人の老夫婦に拾われ、しばらくの間一緒に暮らすこととなった。
八剣はそれから今まで以上に勉強も料理もスポーツも作法も付喪神の能力も頑張って極めていった。
全ては一番になるために、姉が出来たであろう事を自分が代わりに一番になるために……。
中学生の時には何事も一番になれた。
賞も点数も沢山手に入れた。
妬まれる事は度々あったが、そいつらは自分より下だと実感できる証明と思って彼女は日々を過ごしていたのだ。
しかし、高校に入ったとき老夫婦は彼らの息子と一緒に暮らす事となった。
突然の別れ。悲しみの別れ。
八剣は二人と別れた後、独り暮らしを始めた。
これからは誰にも頼らずに自分の力だけで生きていくためである。
高校に行き始めても八剣は変わらない。一番になるために頑張って日々を過ごしていた。
だが、遂に幸運は続くことが無くなった。
今まで姉にしか負けたことのなかった八剣は遂に敗北を知ったのである。
それは生徒会選挙。
八剣はそこで生徒会長落選という結果を出されてしまった。
自分よりも下と思っていた男に負けたのだ。
そして今、八剣は書記長としてその生徒会長にスカウトされている。
しかし、八剣はまだ生徒会長の座を諦めてはいないのだ。
……というのが、八剣の人生をざっと振り返ったものである。
そして現在。
「さっさと溶けきっちゃいなさい」
「アホか。俺だけで死ぬわけにはいかん。ちょっと待て。話してる…途中で…水攻めを…するなァァァァ」
校庭で戦っていたのは八剣とF-206である。
話している途中で水をかけられ続ける哀れなF-206。
自慢の握力も流水が邪魔をして近づいて発揮することもできないようだ。
なんだか、かわいそうになってくる。
「このままあなたが何も出来ないまま溶け続けても、私は憐れだとは思わねぇ。むしろ、どうなっていくのかっていう興味しか湧かないわ」
そう言いながら八剣は流水をF-206の口やら鼻の穴に流し込んだ。
それはまるでプールの水が鼻に入ったような感覚である。
「ゴホォ…グッ…ゴホォ。お前…最低だぜ。ただでさえ死にかけなのに…。偽物でも生きてんのによ」
同情を求めようとするF-206に、八剣は更に追い討ちをかけるように体内の流水を勢い良く動かした。
「!?」
体内で激しく動き回る液体。
F-206の口から少し血が吹き出す。
「でも、あなたどうせ付喪神なんでしょ。罪もない騎士団達を殺したあんたに同情なんてねぇよ」
冷たいゴミを見るのような目でF-206を見つめる八剣。
F-206の体は既に水に濡れたティッシュのようにベチョっとしている。
「──冷たいな。この流水のように…。冷えきってる。なぁ、取引しよう。俺が今から俺たちの契約者の居場所を教えるから。見逃してくれよ。乾けば俺は元通りだから…。俺たちだって生きてるんだ。死にたくないよ」
必死に命乞いをするF-206。
そこまでして生きて何の得があるのだろう。
だが、八剣はさすがに話だけは聞くことにした。
「いいか。場所は理市の廃工場だ。市の中に一つしかないから分かるだろ。なぁ、これで助けて……」
頭を上げて八剣を見ようとしたF-206だったが、頭を上げると既に八剣は校舎へと歩いていた。F-206の体内に入っていた水も元の水に戻っている。
「──馬鹿め。お前が解除するときを待っていたのだ。今度こそお前の可愛い背中を紙風船を潰すようにぶっ潰してやるぜェェェ。死ぬのはお前一人だぜお嬢ちゃんnnnnnnn!!!」
F-206は背を向けた八剣に向かって飛びかかる。
しかし、八剣は振り向くことはしなかった。
おそらく、気づいていないのだろう。
F-206の強力な握力が背中を潰そうと迫ってくる。
その時、再び体内の水が暴れだし、そして体外へと身体中から噴き出していった。
「ぞんな…ばがなぁぁぁ!?!?!?」
「ふっ、バー――――――――カ!!!」
まるで内部爆発のようにF-206の体はバラバラに吹き飛ばされ、もう動くことはなかった。
「─あんたは溺死じゃすまねぇよ。本物はもっといい人だけど、あんたはしゃべり方も中身も別人だ。名誉毀損の罪を償いな。
じゃあ、そろそろ副会長を助けに行こうかなー。手柄をたてたら副会長くらいにはなれるかも~」
八剣は敵の死亡を確認すると、スキップをしながら校舎へと入っていった。
彼女の姉は当時の彼女にとってはとても頭の良い存在で、自分より何でもできていた完璧姉さん。
料理、片付け、掃除、運動、勉強……全てが完璧だったのだ。
そんな彼女を八剣は本気で越えようとしていたが、越えるべき壁は高く、八剣にはたくさんの時間が必要だった。
その事を当時の八剣はとても悔しく目標としていた。
そんな生活を過ごしていたある日、八剣と姉の二人は自分が付喪人だと知らされる。
彼女らは生まれながらに付喪人としての素質を持っていたのだ。
しかし、八剣の姉の方は支配力の低い付喪人であった。
支配力の低い付喪人はいつ暴走するか分からない。
なので八剣も疑われ、姉妹は監禁施設に入れらてしまう。
末っ子だけを家族の元に残して……。
ここで八剣は初めて姉をひとつ越えた。
姉よりも安全な存在として監禁レベルを下げられたのだ。
しかし、周りは誰もそこから彼女らを助けようとはしなかった。
いや、それどころか意味嫌うようになっていた。
彼女らがいつ暴走するか分からないという恐怖から周りの人々から嫌われていたからだ。
突然日常が異常になったのである。
親も来てくれない、幼稚園の友達も来てくれない。
その後、そんな二人はとある事件に巻き込まれる事となった。
それは監禁施設で隔離されてから3年後の出来事である。
「従業員は直ちに避難してください。繰り返します。従業員は直ちに避難してください」
暗い廊下にアナウンスが流れ続ける。
「何があった?」
「459号室の彼が突然暴走を始めたんです」
「とにかく奴を外に出すんじゃないぞ。ここで仕留めるんだ」
ドアの外では従業員達の慌てる声が聞こえた。
廊下を走る者のたくさんの足音。
たまに遠くから悲鳴も聞こえた。
その時はまだ幼かった八剣。
彼女は姉の袖にしがみついて恐怖で震えている。
そんな幼かった八剣を姉は優しく撫でてあげている。
彼女も震えるほど怖かったはずなのだが、姉としての意識を持って、八剣の側に居てあげているのだ。
すると突如、部屋の電気消える。
停電である。
度重なる恐怖の積み重ねにより、八剣は更に力強く姉にしがみついた。
そんな八剣を姉は優しく宥めている。
そんな中、電子ロックされていたドアの鍵が開いていた。
停電によってドアロックが外れたのだろう。
その事に気づいた姉は決意を固めると八剣に言った。
「八剣逃げるよ」
暗闇に閉ざされた廊下を二人の女の子が道もわからず走っている。
走るなんて久しぶりのことだったので八剣は体力を消耗していく。
「まっ、待って」
「早くしないとバレちゃう」
疲れきった八剣の手を引いて姉は再び走り出した。
ここで見つかればもう逃げ出すチャンスはない。
姉はこのチャンスを無駄にはしたくなかったのだ。
何度か建物は揺れている。
おそらくどこかで暴れている者の起こしている振動であろう。
足音しかない暗い廊下。
もし、これが昼間だったら気づいたかもしれないが、幼い二人はどっちみち気づかなかったかもしれない。
天井の一部が崩れて、二人に迫って落ちてきたのだ。
大量の瓦礫が降ってくる中、姉はいち早くその事に気づいた。
「あぶない!!」
姉はおもいっきり八剣を突き飛ばす。
いきなり突き飛ばされて何が起こったか理解できない八剣。
運良く二人は落ちてくる瓦礫から逃れることは出来た。
しかし、二人の間は瓦礫が塞いでおり、子供では退かすことが出来ない。
「八剣外に逃げて。お姉ちゃんは大丈夫よ。後から追い付くから。先に行って」
瓦礫の向こうで姉が八剣に声をかける。
こういう場合、最初は戸惑ったりするものだと思うのだが、その時の八剣は冷静に物事を考えていた。
「うん」
そう言うと八剣は瓦礫から離れて走っていった。
八剣は再会を信じることにしたのだ。
姉はいつも何でも出来ていたから、自分より頭が良かったから何か対策を見つけ出す。そう思ったのだ。
そんな八剣への運命が決まっていたかのように再び頭上に落ちてくる瓦礫たち。
今度は先程よりも早く気づいたのだが、八剣は恐怖に駆られてその場にしゃがみこんでしまった。
思わず目を瞑ると真っ暗で何も見えなくなる。
「おい、もう大丈夫だ。そのまま早く外に逃げるんだ」
目を開けて上を見るとそこには落ちてきそうな瓦礫を必死に支えてくれている大人がいた。
どうやら八剣を庇ってくれていたようだ。
しかし、顔は見えない。それに服も従業員とは違っていた。おそらく外部の人間なのだろうか。
「あの……?」
「早く行くんだ。ここから逃げればもう君を縛る者はない。もう君を意味嫌う者もいない。
君は普通に生きれるんだ。さぁ、早く急いで」
そう言われると八剣は迷った。
この人は早くここから逃げろと言っているが、八剣は伝えなければならないことがあった。
たった一言でよかった。この先に姉がいると……。
しかし、瓦礫を必死に支えている大人の姿を見ているとこれ以上ここにいては迷惑になるという気持ちにもなるのだ。
幼いながらにも必死に選択しようとする。
このまま逃げるか。姉の助けを求めるか。
だが幼い八剣には選ぶなんて難しい。
八剣は結局、その場から必死に立ち去った。
太陽が昇り鳥たちが鳴き出して飛び初めても、姉とは再会することはなかった。
その真実を理解した幼い八剣。
だが、家族もあの大人も結局見つからない。
そんな状況の八剣の心の中はある思いでいっぱいになっていた。
「やっと姉を越える為の時間ができた」
その喜びと悲しみを胸に少女は一人、朝日を見つめていた。
その後、八剣は幸運なことに二人の老夫婦に拾われ、しばらくの間一緒に暮らすこととなった。
八剣はそれから今まで以上に勉強も料理もスポーツも作法も付喪神の能力も頑張って極めていった。
全ては一番になるために、姉が出来たであろう事を自分が代わりに一番になるために……。
中学生の時には何事も一番になれた。
賞も点数も沢山手に入れた。
妬まれる事は度々あったが、そいつらは自分より下だと実感できる証明と思って彼女は日々を過ごしていたのだ。
しかし、高校に入ったとき老夫婦は彼らの息子と一緒に暮らす事となった。
突然の別れ。悲しみの別れ。
八剣は二人と別れた後、独り暮らしを始めた。
これからは誰にも頼らずに自分の力だけで生きていくためである。
高校に行き始めても八剣は変わらない。一番になるために頑張って日々を過ごしていた。
だが、遂に幸運は続くことが無くなった。
今まで姉にしか負けたことのなかった八剣は遂に敗北を知ったのである。
それは生徒会選挙。
八剣はそこで生徒会長落選という結果を出されてしまった。
自分よりも下と思っていた男に負けたのだ。
そして今、八剣は書記長としてその生徒会長にスカウトされている。
しかし、八剣はまだ生徒会長の座を諦めてはいないのだ。
……というのが、八剣の人生をざっと振り返ったものである。
そして現在。
「さっさと溶けきっちゃいなさい」
「アホか。俺だけで死ぬわけにはいかん。ちょっと待て。話してる…途中で…水攻めを…するなァァァァ」
校庭で戦っていたのは八剣とF-206である。
話している途中で水をかけられ続ける哀れなF-206。
自慢の握力も流水が邪魔をして近づいて発揮することもできないようだ。
なんだか、かわいそうになってくる。
「このままあなたが何も出来ないまま溶け続けても、私は憐れだとは思わねぇ。むしろ、どうなっていくのかっていう興味しか湧かないわ」
そう言いながら八剣は流水をF-206の口やら鼻の穴に流し込んだ。
それはまるでプールの水が鼻に入ったような感覚である。
「ゴホォ…グッ…ゴホォ。お前…最低だぜ。ただでさえ死にかけなのに…。偽物でも生きてんのによ」
同情を求めようとするF-206に、八剣は更に追い討ちをかけるように体内の流水を勢い良く動かした。
「!?」
体内で激しく動き回る液体。
F-206の口から少し血が吹き出す。
「でも、あなたどうせ付喪神なんでしょ。罪もない騎士団達を殺したあんたに同情なんてねぇよ」
冷たいゴミを見るのような目でF-206を見つめる八剣。
F-206の体は既に水に濡れたティッシュのようにベチョっとしている。
「──冷たいな。この流水のように…。冷えきってる。なぁ、取引しよう。俺が今から俺たちの契約者の居場所を教えるから。見逃してくれよ。乾けば俺は元通りだから…。俺たちだって生きてるんだ。死にたくないよ」
必死に命乞いをするF-206。
そこまでして生きて何の得があるのだろう。
だが、八剣はさすがに話だけは聞くことにした。
「いいか。場所は理市の廃工場だ。市の中に一つしかないから分かるだろ。なぁ、これで助けて……」
頭を上げて八剣を見ようとしたF-206だったが、頭を上げると既に八剣は校舎へと歩いていた。F-206の体内に入っていた水も元の水に戻っている。
「──馬鹿め。お前が解除するときを待っていたのだ。今度こそお前の可愛い背中を紙風船を潰すようにぶっ潰してやるぜェェェ。死ぬのはお前一人だぜお嬢ちゃんnnnnnnn!!!」
F-206は背を向けた八剣に向かって飛びかかる。
しかし、八剣は振り向くことはしなかった。
おそらく、気づいていないのだろう。
F-206の強力な握力が背中を潰そうと迫ってくる。
その時、再び体内の水が暴れだし、そして体外へと身体中から噴き出していった。
「ぞんな…ばがなぁぁぁ!?!?!?」
「ふっ、バー――――――――カ!!!」
まるで内部爆発のようにF-206の体はバラバラに吹き飛ばされ、もう動くことはなかった。
「─あんたは溺死じゃすまねぇよ。本物はもっといい人だけど、あんたはしゃべり方も中身も別人だ。名誉毀損の罪を償いな。
じゃあ、そろそろ副会長を助けに行こうかなー。手柄をたてたら副会長くらいにはなれるかも~」
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