付喪ライダー:付喪神の力と共に闘う轢過非日常生活

満部凸張(まんぶ凸ぱ)(谷瓜丸

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第2台目:Bブロック基地編

公園+決闘

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 芦谷に連れられて長与がやって来たのは人通りもない寂れた公園。
日本怪奇物討伐連盟に連れていくと言われたのに、近所の寂れた公園である。
2人は公園の中央付近まで歩くと、そこで立ち止まった。

「なぁ、芦谷。こんな公園にやって来て。何をするんだ?  公園デート?」

長与が周囲を見る限りは明らかに普通の何もない公園である。
警戒心の欠片もない長与は周囲をキョロキョロと見ながらも、芦谷に尋ねた。
すると、芦谷が急にこれまでとは違う雰囲気になり、閉ざしていた口を開く。

「日本怪奇物討伐連盟に連れていくと言ったが。
その前に大切な用事を思い出したんだよ」

「大切な用事?
誰かへの誕プレを買い忘れたとかか?」

「別にそういうのではない。一応尋問をしておかなきゃいけない」

「尋問……?」

「何年も昔の話だ。とある山奥の研究所で極秘の研究が行われていた。不死の研究だそうだ……。
そこの人体実験を繰り返されていたらしい。その内容は俺もよく知らん。ただ、そこの実験体が脱け出したらしくてな。
今も行方不明だそうだ。そこで我々はその実験体たちを捜しているわけだが。
森阿長与……お前。変身できるんだってな?」

その芦谷からの質問に長与は内心ギクッ!?と驚かされはしたが、それを隠すようにして平然と聞き返す。

「はぁ?  変身?
何を言ってるんだよ。変身ってなんだ?」

「変身ってのは元の姿じゃない見た目になることだよ」

「ああ、お面ドライバーとかエクストラマンとか外国のスーパーヒーローみたいな?
俺も憧れたぜ。少年の時は特にな」

「おい、僕の目を見ろ。青空を見るな。僕を見ろ」

「どこを見ようが俺の自由だろ。俺は過去の想い出や栄光に浸ってるだけなんだしよ」

「お前に栄光なんてねぇだろ。あるのは罪歴じゃないのか?
例えば……ロリコンとか?」

「最近、かなりの頻度でロリコンって言葉を聞くんだけど。俺まだなにもしてねぇよ。俺ってそういう風に見えるの?」

「いや見えない。例えばで言ってみた」

「じゃあ言うなよバーカ!!
本物に謝れ。謝罪しろ。ロリコンが罪歴って言ったこと謝罪しろや!!」

「ああ、分かった。すみま…………って、いい加減にしろ!!
◯旧道での目撃情報があがってるんだよ。お前が怪人みたいな姿に変貌したらしいことがな」

芦谷はそう言い放ち、長与を追い詰める。彼が本当に怪人みたいな姿に変身できるのかを確かめたいのである。
わざと、追い詰めて正体を露見させるつもりだったのだ。
だからこそ、芦谷は戦闘体勢に入る。殺しはしないが正体を露にさせるためだ。

「しらばっくれてるならこっちにも考えはある。無理矢理にでも露にさせてやる!!」

芦谷はポケットの中から数枚の紙を取り出した。その御札みたいな紙を長与に向かって投げつける。
御札はまっすぐに長与の方へと直進。向かってくるのはただの紙である。

「なんだこれ?」

なので、長与は別に怪しまなくてもいいだろうと考えて、その投げられた御札をキャッチした。
キャッチしてしまった。

「ん?」

長与が御札を捕まえた瞬間である。御札は青色の炎をあげながら突然発火。御札の周りが瞬間的に発火し、長与の腕を燃やし始めたのである。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!?!?!?」

長与の腕が燃えていく。御札を持った手が燃えていく。その炎は次第に長与の腕にまで燃え広がり始める。
焼き焦がされてしまいそうな程の激痛。本当に腕が失くなってしまうかと長与は焦る。
焦りながらも、長与はこの炎から逃げるために御札を手から放り投げた。



 御札を放り投げた長与は「ゼェゼェ」と苦しそうに息を吐き続ける。長与が御札を手放すと青色の炎は突然消火された。

「当たりだな……アホらしい」

「ああ?」

「だが、これでお前がただの人間ではないことが証明された。
この御札は人ならざるモノを焼き尽くす効果がある。つまり、お前は人外。
これでお前の日本怪奇物討伐連盟行きが確定したな」

「そうかいそうかい。だけどさ芦屋さんよぉ。
日本怪奇物討伐連盟は俺に何の用があるってのさ」

「それは知らん」

その発言に長与はイラッと怒りを感じた。
無理やり連れていかれそうになり、腕を燃やされかけて、その理由すら分からない。
もう「ふざけるなッ!!」とでも言って芦谷に殴りかかりたかったが、長与はそれを必死に堪えた。

「いい加減にしろ!!
もう冗談じゃねぇぜ。帰る!!
帰らせてもらうわ」

怒りを押し殺しながら、長与は方向を帰って自宅へと帰ろうとする。
そんな長与の背中を芦谷は追うこともなく、眺めていた。



 それは長与がそのまま公園から出ていこうとしていた時である。
芦谷は先程まで首を捻るような素振りで思い出そうとしていたのだが。
ふと、思い出したように語り始めた。

「あっ、思い出したぞ」

「…………なんだよ?」

理由が気になっていた長与はその声に足を止めて、芦谷の方を向こうとする。
だが……。

「グッ!?」

振り返った瞬間の芦谷からの腹パン。

「悪いな森阿長与。気絶させて連れてこいとの命令なんだ。
安心しな。女の子に危ない真似はしねぇ。証人として同行してはもらうけどな」

薄れゆく意識の中で長与は最後まで芦谷をにらみ続けていた。それは御札と腹パンの恨みが理由ではない。
エビルちゃんに彼ら組織が関わろうとしているという理由からである。
けれど、気絶しかけている長与にはにらみ続けるという方法でしか意思表示ができなかった。
そのうち、長与の意識もだんだん消えていくのであった。
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