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学園4年生編

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 凱旋したわたし達を待っていたのは、国民の歓声と陛下のお褒めの言葉でした!
 パレードする?と聞かれたが、全員で丁重にお断りした。ヘルクリスだけ勝手にあちこち飛び回ってるからいいっしょ!


 事後処理も全て終わり、今日は陛下が祝賀会を行うと宣言した。皇国の首都、多くの人が集まる広場でやるとか…帰っていいですか?駄目ですかそうですか…。
 まあ、自分でも凄い事をした自覚はある。んふー、なんかご褒美くれるんでしょう!別に要らんけど。
 勲章とかでもくれればいいよ。今日付けて練り歩いて大事大事に仕舞っとくから。



 ガチガチに緊張しながらドレスアップした関係者は、陛下の待つ舞台に立った。手手手が震えるううう。
 てか、貴賓席に他国の王族もいる。あ、テノーで王太子妃になったルシファー様も!!じゃあお隣は王太子殿下か。
 彼女はわたしの視線に気付くと、にっこり笑って密かに手を振ってくれたので会釈でお返ししたぞ。



「タオフィ殿、前へ」

「はい」

 おっとまずはタオフィ先生か。陛下の前に膝を突き頭を下げて、言葉を待つ。

「貴殿の働きは、風の最上級精霊殿も称賛を贈る程と聞く。精霊殿より「クランギル」の姓を。そして私より准男爵の位とメダルを授ける」

「ありがとうございます」

 先生が返事をすると、周囲が拍手に包まれた。准男爵って…一代限りの貴族よね。あんらー、思っていた以上に大事でしたか…?


 その後次々と褒美を貰う、対象は精霊と共に戦った7人だ。
 バティストはセフテンスの働きも認められ、子爵位とメダルを賜った。どうやら勲章は全員貰うっぽいな…ひい。
 ルシアンは侯爵になるようだ。実はセフテンスを治めるってなった時、公爵って言われてたんだが…本人が嫌がって辺境伯だったんだよね。まあ辺境伯と侯爵はほぼ同等だから、何も変わるまい。
 パスカルは婿入りするから爵位は要らんようで…きゃっ。代わりに屋敷を建ててもらうって。何処にだよ、教えてくれないよ!
 エリゼは男爵位。ロッティは…リボンのみ。その代わり、ジスランにもメダルが与えられたのでな。



「では最後…シャルティエラ・ラウルスペード殿」

「はい」

 さて…わたしの番。ひー…陛下のニヤけ顔が恐ろしい…!舞台下でお父様も同じ顔して…一体何をくれやがるつもりだ…!!


「其方は精霊と人を結び付け、犠牲者を出さずに事態を収束させるという偉業を成し得た。
 此度の働きに称賛を贈ると共に、伯爵位とデイム・グランド・リボンを授ける」

「ブフーーーッ!!!」

 思わず膝を突いたまま噴き出した。貰いすぎです陛下!!
 なんで男爵も子爵もすっ飛ばして伯爵!!?領地はどうするつもりだ!しかもそのリボンは、女性に与えられる最高位の勲章じゃねえか…!!

「我が息子ルシアンが統治するセフテンス領なのだが。其方には東と北の男爵領を纏めて東側の島を分割統治してもらいたい。
 それと皇室騎士団への入団推薦状書いといたから。領地は行政官に任せれば大丈夫!」

「どこが、大丈夫なんですかぁ…!」

 ギャラリーには見えないように陛下を睨み付ける。爽やかな笑顔で流されたが…コンチクショウ!!!



 …スッと目を閉じ、思考を整理する。

 なんだかなあ。あれだけ逃げたかった伯爵なのに…結局そうなるのね。
 でも今回はまるで違う。わたしを支えてくれる最愛の男性もいるし、大勢の味方がいる。それなら…うん。頑張ってみようかな!!

 ゆっくりと目を開けて、1人頷いた。



「陛下。畏れながらよろしいでしょうか?」

「(おや?)もっと欲しい?」

「要りません!…ではなく」


 折角伯爵になるのならば…やっぱり。
 膝を突いて下を向いたまま、落ち着いた心で発言出来た。


「わたしに…ラサーニュ伯爵の名を与えてくださいませんか?」

 その言葉に、一瞬だけ周囲が固まった。

「それは…それで、いいのか?」

「はい。わたしは誰がなんと言おうとラウルスペード公爵家の娘だけれど。統治は人任せのお飾り領主になっちゃうと思うけれど。

 でも…やっぱり、わたしはラサーニュなんです」

「…よかろう。今日より其方は、ラサーニュ伯爵だ」

「ありがとうございます!」


 わたしの返事に広場が湧いた。なんだか今になって、わたし達はこの平和を守れたんだな…って実感したわ。そう考えると、今まで以上に自分を好きになれた気がする。


 わたしはこの日、シャルティエラ・ラサーニュになった。




 ※※※※※




 そうして秋は終わり冬がやって来て。わたしとロッティは成人を迎える。
 何故か陛下が皇宮で盛大にやろうと言うので…他国からもお客さんいっぱいでやりましたよ!!!


 わたし達に沢山の人が話し掛けてくれる。お近付きになりたいんだろうが…サラッと流す、ロッティが!
 タオフィ先生も色んな人と話している。先生に近付くあの巨体はテランス様だな。

「おお、先生!!先生の実力、この目でしかと見させて頂いたぞ!!どうだ、皇室魔術師団に入らんかね!!?」

「耳…がぁ…!申し訳ございません、ラブレー様。此方は教師は辞めますが、その後はラサーニュ伯爵家でお世話になりますので」

 決まってんのかーい。まあいいや、こき使ってあげましょい。
 

 ダンスもしてからちょい休憩。そこへモーリス様がやって来た。

「シャルティエラ嬢、お誕生日おめでとう」

「ありがとうございます、モーリス様。それと、春からよろしくお願いします!」

「こちらこそ。君は第一騎士団、近衛に配属が決まった」

「なんで!?」

 彼はウインクしながら親指を立てた。近衛は時間も不規則になりがちだから、出来れば避けたかったんだけどなー!!

「そこは特別待遇をさせてもらう。きちんとシフト制で、残業はほぼ無し。緊急時や皇室の予定によって変動はあるかもしれないから、そこは申し訳ないが」

「…ただの新人を特別扱いしては、他の騎士から不満が上がりませんか?」

「心配いらないよ。私を誰だと思っている?」

「皇室騎士団総団長様…ですね」

「その通り。そんな私と陛下の決定だ、文句を言える者はいないさ」

 いいのかな~…?まあ…近衛ってエリートって感じで格好良いんだけども!正直その条件なら嬉しいけど!!
 パスカルにも後で言っておくか…と呟いたら、モーリス様がそうしてあげてくれ、と笑った。





 あっという間に年も明け、冬も終わりを告げた頃に卒業だ。

 セディは残念ながらまだ「おねえちゃま」と呼んでくれない…くう。
 それでもスクスク大きくなって、首がすわって寝返りを打って座れるようになって。最近はハイハイするようになって、部屋中を縦横無尽に這い回っているぞ!
 シグニはよく先導してくれる、最早セディのベビーシッターさ。今もカササササ!!とシグニの後を追いハイハイしてる。可愛い!

「この動き…シャルロットお嬢様を思い出しますわ。お嬢様もよく動き回られていましたね」

「アイシャ、詳しく」

「お父様!!!」

 セディの成長を見ながら、アイシャが昔を語ってくれる事が増えた。どうやらわたしら双子の発育は対極だったらしい。ロッティが平均より早くて、わたしが遅かったんですって。

「シャルティエラお嬢様はシャルロットお嬢様のお姿を見て、真似をしようと鼻息を荒くしていました。
 でも上手く出来なくて、手足をワタワタ動かすだけで…諦めたのか、ごろんと寝返りを打って両手を広げていました。
 そのお顔…というか目が。「いや…まだ赤ちゃんだし?これからだし?」と語っているようで…私は笑いを堪えるのが大変だったのですよ!あの時代にカメラが無かったのが悔やまれますわ…」
 
「「詳しく!!」」

「お父様!!ロッティ!!!」

 んもう…!!結局わたしの面白話になっちゃうんだから!大人は放っておいて、お姉ちゃまが絵本を読んであげましょうねー?
 素早く這いずり回るセディを捕まえて膝に乗せた。


「あーぅーうっ!」

「まるまる、しかく。ぐーるぐる。これは何かな~」

「いうあぁ~!!」

「そう、さんかくだね~!いやん、この子天才!!」

 可愛い…超可愛い…!!なでなですると、ウキャキャと笑った。
 でもわたしはもうじき家を出る。成長を間近で見られないのは悲しいけど…それより、パスカルとの新生活が楽しみで仕方ないのだ。

 明日は学園の卒業式。そして…明後日に、籍を入れるんだ。そのままわたし達は首都にある邸宅に…なんで陛下から贈られてんの!!?
 庭も広いし素敵なおうちでしたけど!セフテンスの片割れ…ラサーニュ領にも本邸建てましたけど!!パスカルの褒美はコレだったらしい。

 とにかく新生活!楽しみだなあ…使用人増やさなきゃ!
 あ、そうそう。この冬の間にラウルスペード公爵家で変化があったんだけど…それはそのうち、ね!




 そして、わたしの結婚の日。今日でこの屋敷ともお別れ…か。いつでも帰って来れるけど…今まで通りではない。
 もう荷物は先に送った。最後にわたしは、玄関ホールに集まってくれた皆に挨拶をする。

「皆…短い間だったけど、今までありがとう!ラウルスペード家になってから、わたしは毎日楽しくて幸せでした。
 これからは…パスカルと生きていきます。遊びに来るから、皆も元気でね!」


 騎士も使用人も涙を流しながらお祝いの言葉をくれた。特に…アイシャ。

「本当に…私もこの日を、待ち望んでおりました…!お嬢様、どうか…どうか、笑顔を忘れないでくださいね。
 貴女ならきっと大丈夫。パスカル様と…どうか、お幸せになって、ください」

 彼女は大粒の涙を流しながら、わたしを優しく抱き締めてくれた。うう…つられてわたしも。ありがとう…お母さん…!!
 1人ずつハグをして別れを惜しむ。バジルとモニクも結婚する事が決まっているので、お幸せにね!
 ロッティは…ジスランが以前、ジェイルとデニスに勝てるようになったら結婚すると言ったらしい。そんで…先日見事勝利!!!


「ロッティの結婚は来月だっけ?」

「ええそうよ。小さい頃から知っている相手だから…なんだか不思議な感じね」

「シャーリィ、本当に先に籍を入れるのか?」

「そうだよお父様!まあ一般的でないのは分かってるけどね」

 この国の結婚は、基本的に籍を入れる日にお祝いをするからね。
 平民は住んでいる地区の役所に、貴族は皇宮に婚姻届を提出する。わたしはこの後迎えに来るパスカルと一緒に出しに行くのだ。


 皆に挨拶をして。最後に…

「…わたしね。君と双子に生まれて来れて、本当によかった。愛してるよ、わたしの片割れのロッティ」

「ええ…私も。お姉様がいなかったら、今の私はない。愛しているわ、私の半身のシャーリィ」

 互いに涙を流しながら、強く抱き合った。
 ………待って待って強い!!!ぐええ、し、絞め殺され、る…!!

「こらロッティ!!シャーリィの顔が紫になってんじゃねーか!!!」

「あらやだっ」

 そんな軽いノリで殺さんといて。お父様が救出してくれて、そのまま横抱きにされた。

「…じゃあな、シャーリィ。辛くなったらいつでも帰っておいで。その時は、騎士団総出でパスカルを血祭りにあげるからな」

「うん…。出来れば穏便にお願いね」

 苦笑しながらお父様の頬にキスをする。そしてお父様も返してくれて、ぎゅっと抱き締めた。


 その時、パスカルが迎えに来てくれた。手に花束を持って。
 今日の装いは紺色の礼服。わたしも揃えて、紺色がメインのドレスさ。彼はわたしの姿を見て、目に涙を浮かべて笑った。

「シャーリィ…綺麗だ。俺がどれだけ、この日を待っていた事か…!」

「えへへ…わたしも!末永くよろしくね、旦那様」

「ああ。俺の愛するお嫁さん。…俺がお婿さんか」

「あははっ」

 わたしはお父様の腕を離れ、パスカルに飛び付いた。彼はわたしに花束を渡し、ひょいっと持ち上げられた。


「それじゃあ、義父上、ロッティ、ラウルスペード家の皆。貴方方のお姫様は、俺が大切にする」

「おう、泣かせんなよ。もし浮気とかしたら…斬り落とす」

「どこを!?って浮気なんてしてたまるか!!!」

 というお父様とパスカルのやり取りに、玄関ホールに笑い声が響いた。そして彼は馬車に向かって歩き出す。
 わたしは最後にもう一度振り返り、皆に手を振ったのだ。


 フェイテとネイもわたし達について来てくれるので、同じ馬車に乗った。

「俺ら別のほうがよかったんじゃ?2人の時間を邪魔したくないんですけど」

「まあまあ。俺としても見張りが欲しくて……フェイテはともかくネイがいれば、抑止力になるだろ?
 流石に少女の前であんな事やこんな事は出来ないし…」

「人の妹を何に使ってくれてんですかこの性欲魔王!!夜まで待てないんですか!?」

「頑張る」

「ったく…ははっ」

 ん?彼らは男同士内緒話をしている。これから先一緒に暮らすもんね、楽しげでよきかな。
 しかしメイドがネイしかいねい。早いとこ雇わないとな~。

「しかしお嬢様…これからは旦那様…じゃなくて、奥様でもない。ご主人様ってお呼びすればいいっすか?」

「……うん、そうなるね」

 でもメイドさんにご主人様って言われると…オムライスにケチャップでハートを描いてもらいたくなる。
 でも伯爵はわたしなので奥様でもないし。慣れるしかない、か。

「これから先、わたし達力を合わせて頑張ろう!!」

「「「おー!!!」」」


「おい、オレ忘れてる!!?」

「「「「あっ」」」」

 馬車の外から、馬で並走するジェイルが声を掛けてきた。忘れてた。

 彼もラウルスペード騎士団を抜けて、一緒に皇室騎士団に入団するのだ。それは当然、薪名が木華の侍女だからね!
 わたしとはもう主従では無い。だから敬語も何も無く、友人のように接するのだ。

「オレも結婚するまではシャーリィの屋敷で世話になるって、それも忘れてないよな!?オレの部屋無いとか言われたら泣くぞ!!」

 用意してあるよ!!…最悪客間だってあるし。
 そんな風に、賑やかな一行は首都に向かった。


 馬車に3人残し、2人で入宮する。なんか…視線が生温かい、ような。
 というか、すれ違う人全員に「おめでとうございます!」「お幸せに!」と言われる。どうもありがとうございます。……なんで知れ渡ってんだよ!!!


 恥ずかしい思いをしながらも法務省までやって来た。そこで…

「やあ」

「なんで陛下が待ってんですか!!!」

 受付に提出して終わりと思いきや応接間に通された。そこでは陛下が優雅にお茶を飲んで…仕事しろ!!!

「つれないなあ、プライベートでは伯父様って呼んでくれ。仕事はルキウスとクィンシーに押し付けてきたから問題ないよ」

「大アリですよ!」

 とまあ、言いたい事は色々あるが…伯父様もわざわざお祝いを言いに来てくれたのだ。沢山の人が祝福してくれて、幸せだなあ…って感じる。
 少し雑談をしてから、わたし達は退室する事に。やる事がいっぱいあるのでな。

「そうそう、結婚式だけど。私が牧師やるから」

「なんでや!!!」

 思わず叫んだ。陛下が牧師さんて!皇帝に「貴方は愛を誓いますか?」とか言われるんかい!!

「話を聞いたら面白そうで。ルシファーも旦那と参加するし…それで、白い服は駄目なんだって?」

「あ。そうそう、招待状にも書かせて頂きましたが…白系は駄目です!小さい子供は可」

「理由を聞いてもいいかい?」

「新郎新婦が白のタキシードとドレスを着るんです!披露宴ではお色直しもしますけど…主役と被るから駄目なんです。
 結婚式で白を着て来たら、喧嘩を売られていると判断します」

「……………………」

「…………もしかして「オーバンの結婚式だったら白着てやるのにな~」とか考えてません?」

「わお、エスパー」

「わおじゃないですよ!!」

 本当にこの人は、もう!本当に仲良し兄弟ですね!!



 今度こそ皇宮を後にして、わたし達は新居に向かった。皇宮のすぐそこじゃねーーーか!!歩いて5分!!
 もう、なんでもいいや…通勤に楽だと前向きに考えよう。
 おや、屋敷の玄関前に人が立っている。あれは…

「おー、待っていましたよお2人さん!」

「タオフィ先生!」

 結局彼はラサーニュ家で働く事に。余談だがイケメンで若い先生が2人一気に辞めて、女生徒は悲しんでいるとかなんとか。
 パスカルは先生が仕えるの嫌がっちゃうかな?とか思ったんだけど。全然そんな事なくて、先日これからよろしくお願いしますと挨拶していたぞ。


「おっと姫、先生ではありませんよ。今後はタオフィとお呼びくださいね。
 それと精霊様達は先に寛いでいますよ。特にセレネ様は、やっとシャーリィと一緒に住める!!と大喜びです。
 でも寝室はちゃんと分けるから、安心して欲しいぞ!と言っていました」

 …精霊達の姿が見えないと思ったら…。気を使われている、恥ずかしい…!!
 気を取り直して、初めて足を踏み入れる新居は…と!


「ん?遅かったじゃないか」

「待ちくたびれたぞ、早く座れ」

 ずざざざざー!!とパスカルと一緒にコケた。なんで、サロンに友人達が勢揃いしている!!!

「やあねえお姉様、結婚のお祝いに決まってるじゃない」

「いやロッティ、さっき感動的なお別れしたばっかりだよね?」

「私は過去を振り返らない主義なの」

 どうやって先回りしたの…と聞けば、私だ。とヘルクリスが返事した。全く…!

 …こんな騒ぎが楽しくて嬉しくて。わたしはパスカルと微笑み合った。
 タオフィせ…とバジル、フェイテ、ネイが給仕をして簡素なお茶会が始まった。


「素敵なお屋敷ですわね~。私は新居とか無いので、羨ましいですわ」

「オレも皇室魔術師団に入るから、遊びに来るわ」

「そうだシャーリィ、セフテンスについて…」

「ロッティ、俺達も首都に邸宅が必要か?」

「公爵家のタウンハウスがあるからいいんじゃない?」

 おう…ちょっと一気に言われても分かんない。
 彼らは結局1時間程で帰って行った…最後に満面の笑みで「おめでとう!」と言い残して。


 わたし達は2週間だけなんの予定も無く過ごす。その後わたしは入団式があるし、パスカルも仕事がある。セフテンス…じゃなくてラサーニュ領にも顔を出さなきゃいけないし、結構忙しい。
 だから、2週間。誰にも邪魔をされずに夫婦の時間を過ごそうと決めた。友人達も気を使って、その間は来ないと言うが…パスカルの熱の込もった視線が怖いので、来てもいいのよ?



 その日の夜。きょきょきょ今日から、パスカルと同じベッドで眠る、のか…!!

 わたしが寝巻きでベッドの前で立ちすくんでいたら。後ろからポンと肩を叩かれて飛び上がってしまった。

「おっぽぉあーーーっっ!!?」

「相変わらず変な叫び声を…可愛いなあ、シャーリィは」

 ひ、ひい…!シャワーを浴びたパスカルが、後ろから抱き付いてきた…!
 そんでベッドの上に座らされ…彼はわたしの上に跨った。こ、心の準備が!!


「んー?…熱い初夜を過ごそうって、言ったよね?」

「待っ…ん、ぅ!」

 静止など一切聞かず、わたし達は唇を重ねる。初めてではないとは言え、これからする事を考えると…顔に熱が集中してしまう。

 長く口付けをしていたと思ったら、ふいにパスカルが離れた。唇をペロっと舐める仕草がエロい!!何より、その熱い目が若干怖い。


「ああ…本当に、可愛い。シャーリィ、シャーリィ。
 たった2週間しかないけれど。その間は…俺だけを見つめてくれ…」


 あー…もう、どうにでもなれい。


「お、お手柔らかに…お願いします」

「それは約束出来ないなあ」

「ひえ…!」

 わたしの反応にパスカルは悪戯っ子のように笑った。

「ところで」

「?」

「結婚したら…着てくれるんだよね?」

「……………………」

 彼がベッドの脇から取り出したのは…例のセクスィ~なナイトドレス。はい、言いましたね…!
 わたしが観念したように項垂れると、彼はくすりと笑う。

 そして…優しく肩を押されてベッドに押し倒され。胸元のリボンを引っ張られる。



 パスカルの宣言通り、わたし達は熱い夜を過ごしましたとさ…先が思いやられるよぅ…!



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