32 / 74
第32話 目覚めて
しおりを挟む
「何を言ってるのか判らないよ!」
「うわぁ!」
私の叫びに驚いたような声が重なり、私は目を開けた。
「い……いきなり動くから驚きましたよ。おはよう、お嬢さん」
私は荷馬車の荷台に乗せられていた。
これは一体……。
「えっと……?」
「あまりに目を覚さないので王城の医者に診てもらおうと思いまして。アイリスさんを荷台に乗せた所で目を覚ました流れです」
「姉ちゃん!」
「姉さん!」
弟達2人が駆け寄って飛びついてくる。
余程心配させてしまったのだろうか……2人の頭を撫でながらエーゲルさんに尋ねる。
「えと、私はエーゲルさんとお話ししていて……」
「ええ。そのまま倒れて昏倒され、丸1日眠られていたのです。更にハクさんまで見当たらなくて皆が心配していたんです」
「吾輩は今まさにこの世から旅立ちかけているのである」
お腹の辺りがモゾモゾと動く。
「そろそろ限界なのである。潰れるニャー!」
プロイとニュクスが私から離れると大きく息を吐く聖獣の姿があった。
「あれ、モフモフいつの間に!」
「……気付かなかった」
私はハクを肩に乗せて荷台から降りる。
さっきのは夢……だったのだろうか。
いや、丸一日も眠っていたというのならただ気を失っていたという訳では無いと思う。
「まあまあ、取り敢えずアイリスさんが目を覚まして良かった。ずっと眠っていたからお腹も空いているでしょうし、家に戻りませんか?」
エーゲルさんの言葉で揃って家まで戻ることになった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
家の外ではまだお酒を飲んだり談笑している気配がする。
私は休む事を勧められて自室で横になっていた。
「アイリス、少し良いであるか?」
「待ってたよ、ハク。私も話したかったの」
ドアを開けてハクを招き入れる。
部屋に入ったハクは月明かりに照らされた椅子に飛び乗り、私が寝台に腰掛けるのを待っていた。
割とはっきり物を言う筈のハクが、私を見つめるばかりで中々口を開かない。
月の光を受けたハクの目が銀の宝飾品のように見える。
「……珍しいよね? ハクがそんなに悩むの」
「そうであるか? これでも思慮深く生きているつもりなのであるが」
ようやく少しだけ空気が弛緩した気がする。
「……今回のアイリスの不調は吾輩のせいである。すまん……」
「どうして? 私が勝手に倒れて……」
ハクがゆっくり首を振る。
「聖女になったから、なのである。いや、目覚めてしまったからであるな。吾輩と契約していなければ……すまぬ」
項垂れるようにするハクの言葉が飲み込めない。
私が聖女として目覚めたから不調に?
でも、前世でそんな事は無かった……と思う。
少なくとも残っている記憶の中では無かった。
「吾輩の言葉を聞けば、アイリスは面倒事に巻き込まれるかも知れん……いや、確実にそうなると吾輩は思っている。だから、何も聞かずに吾輩との契約を解いてはくれないか?」
「何を言ってるの?」
「そうだぞ、ちゃんと解るように言わないと伝わらないじゃないか」
「えっ」
振り返ると窓に張り付いているプロイが居た。
「プロイ! 何してるの……まさかニュクスまで居ないでしょうね」
プロイが腕を上げると襟を掴まれたニュクスが姿を現す。
「すみません姉さん。盗み聴きするつもりでは無かったのですが……」
襟を掴まれたまま項垂れるニュクスと悪気を全く感じられないプロイを見て溜息を吐く。
「もういいから……家に入ってらっしゃい。ハク、一緒に話をして良いかな?」
「……そうであるな。その方が……」
一応念のためにハクの目を見て伝える。
『但し転生についての話題は無しでね』
「判っているのである』
頭の中に響くハクの声には何か苦い物を感じた。
その後何故かハクの指名で呼ばれたエーゲルさんも到着して、全員が揃う。
テーブルを囲んで座った私達に向けて、覚悟を決めたような顔でハクが言った。
「北の国と戦争になるかも知れんのである。……いや、恐らくそうなるのである」
ハクの一言は私達を驚かせるには十分な物だった。
「うわぁ!」
私の叫びに驚いたような声が重なり、私は目を開けた。
「い……いきなり動くから驚きましたよ。おはよう、お嬢さん」
私は荷馬車の荷台に乗せられていた。
これは一体……。
「えっと……?」
「あまりに目を覚さないので王城の医者に診てもらおうと思いまして。アイリスさんを荷台に乗せた所で目を覚ました流れです」
「姉ちゃん!」
「姉さん!」
弟達2人が駆け寄って飛びついてくる。
余程心配させてしまったのだろうか……2人の頭を撫でながらエーゲルさんに尋ねる。
「えと、私はエーゲルさんとお話ししていて……」
「ええ。そのまま倒れて昏倒され、丸1日眠られていたのです。更にハクさんまで見当たらなくて皆が心配していたんです」
「吾輩は今まさにこの世から旅立ちかけているのである」
お腹の辺りがモゾモゾと動く。
「そろそろ限界なのである。潰れるニャー!」
プロイとニュクスが私から離れると大きく息を吐く聖獣の姿があった。
「あれ、モフモフいつの間に!」
「……気付かなかった」
私はハクを肩に乗せて荷台から降りる。
さっきのは夢……だったのだろうか。
いや、丸一日も眠っていたというのならただ気を失っていたという訳では無いと思う。
「まあまあ、取り敢えずアイリスさんが目を覚まして良かった。ずっと眠っていたからお腹も空いているでしょうし、家に戻りませんか?」
エーゲルさんの言葉で揃って家まで戻ることになった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
家の外ではまだお酒を飲んだり談笑している気配がする。
私は休む事を勧められて自室で横になっていた。
「アイリス、少し良いであるか?」
「待ってたよ、ハク。私も話したかったの」
ドアを開けてハクを招き入れる。
部屋に入ったハクは月明かりに照らされた椅子に飛び乗り、私が寝台に腰掛けるのを待っていた。
割とはっきり物を言う筈のハクが、私を見つめるばかりで中々口を開かない。
月の光を受けたハクの目が銀の宝飾品のように見える。
「……珍しいよね? ハクがそんなに悩むの」
「そうであるか? これでも思慮深く生きているつもりなのであるが」
ようやく少しだけ空気が弛緩した気がする。
「……今回のアイリスの不調は吾輩のせいである。すまん……」
「どうして? 私が勝手に倒れて……」
ハクがゆっくり首を振る。
「聖女になったから、なのである。いや、目覚めてしまったからであるな。吾輩と契約していなければ……すまぬ」
項垂れるようにするハクの言葉が飲み込めない。
私が聖女として目覚めたから不調に?
でも、前世でそんな事は無かった……と思う。
少なくとも残っている記憶の中では無かった。
「吾輩の言葉を聞けば、アイリスは面倒事に巻き込まれるかも知れん……いや、確実にそうなると吾輩は思っている。だから、何も聞かずに吾輩との契約を解いてはくれないか?」
「何を言ってるの?」
「そうだぞ、ちゃんと解るように言わないと伝わらないじゃないか」
「えっ」
振り返ると窓に張り付いているプロイが居た。
「プロイ! 何してるの……まさかニュクスまで居ないでしょうね」
プロイが腕を上げると襟を掴まれたニュクスが姿を現す。
「すみません姉さん。盗み聴きするつもりでは無かったのですが……」
襟を掴まれたまま項垂れるニュクスと悪気を全く感じられないプロイを見て溜息を吐く。
「もういいから……家に入ってらっしゃい。ハク、一緒に話をして良いかな?」
「……そうであるな。その方が……」
一応念のためにハクの目を見て伝える。
『但し転生についての話題は無しでね』
「判っているのである』
頭の中に響くハクの声には何か苦い物を感じた。
その後何故かハクの指名で呼ばれたエーゲルさんも到着して、全員が揃う。
テーブルを囲んで座った私達に向けて、覚悟を決めたような顔でハクが言った。
「北の国と戦争になるかも知れんのである。……いや、恐らくそうなるのである」
ハクの一言は私達を驚かせるには十分な物だった。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
政治家の娘が悪役令嬢転生 ~前パパの教えで異世界政治をぶっ壊させていただきますわ~
巫叶月良成
ファンタジー
政治家の娘として生まれ、父から様々なことを学んだ少女が異世界の悪徳政治をぶった切る!?
////////////////////////////////////////////////////
悪役令嬢に転生させられた琴音は政治家の娘。
しかしテンプレも何もわからないまま放り出された悪役令嬢の世界で、しかもすでに婚約破棄から令嬢が暗殺された後のお話。
琴音は前世の父親の教えをもとに、口先と策謀で相手を騙し、男を篭絡しながら自分を陥れた相手に復讐し、歪んだ王国の政治ゲームを支配しようという一大謀略劇!
※魔法とかゲーム的要素はありません。恋愛要素、バトル要素も薄め……?
※注意:作者が悪役令嬢知識ほぼゼロで書いてます。こんなの悪役令嬢ものじゃねぇという内容かもしれませんが、ご留意ください。
※あくまでこの物語はフィクションです。政治家が全部そういう思考回路とかいうわけではないのでこちらもご留意を。
隔日くらいに更新出来たらいいな、の更新です。のんびりお楽しみください。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる