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歌い手の旅
第53話 苦境が、動きます
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「さて、内輪話ばかりしてもいられない。新女王様、まずはエリスの件を」
「はい……フィアナごめんね。先代女王の言葉通り、出来る事はさせて欲しいの」
「勿論シャルロットを信じるわ。……エリス姫の事だけど……集落を襲った後、西へ向かったそうよ」
エリス姫については集落で聞いた話だ。
あの集落から西となると、海沿いに走ればラミレア王国へ。山岳地帯の方へ向かえばローア王国へと入る事になる。
「ラミレアとローア……どっちだろう」
独り言だったが、元女王に拾われる。
「流れから言えばラミレアだ。……開戦時に陣形の弱い部分を狙われた。恐らくエリスが情報を流したと見て間違いないだろう」
シャルロットさんも頷く事で肯定する。
「どうしてそんな事を……」
フィアナさんが言う通り『どうして』だろう。
動機も理由も無く起こす行動では無い。
「理由はご本人に問い質すまで解らない事だと思います。問い質すためにはエリス姫を見つけなければいけません。行き先を知るためにラミレアに聞いた所で本当の事を知れるかは怪しいですし、もっと良い手があれば……」
僕の言葉にフィアナさんが答える。
「それでしたら、アルバスタへ戻れば解るかも知れません。ルキも情報を集めているでしょうし、どちらへ向かっても国境付近の兵に見られずに通過するのは難しいでしょう」
「では、アルバスタで情報を得た上で行動する、と言う事で……次はラミレア王国との戦についてですね」
穏やかに話し合いをしているが、今は一応戦時下なのである。
しかし、穏やかなのは理由がある。
先程入った報告で、ラミレアの海軍が撤退を始めたと知ったからだ。
「海戦は終わりましたが……宣戦布告も無しで戦争を仕掛けられた事に違いはありません。小領同士の小競り合いならまだしも、国家対国家の話であればこれは許されない事です」
シャルロットさんが怒りを滲ませている。
開戦の仕方に規則がある、というのは確かに習った覚えが有るような無いような……。
元貴族の子としては申し訳ない話だけど、戦争の話はあまり好きでは無く……幼年学校でも真剣に話を聞いていたとは言えないのだ。
戦いに関する物語が嫌いかというとそんな事も無いので、自分でも矛盾しているとは思う。
「アルバスタも不意打ちで攻撃を受けた以上、このままという訳にはいきません」
フィアナさんも怒っている。
実際にあの場にいた僕も思う事はある。
あの勇気ある奥さんも、それに応えた兵士の夫も……あの場にいた皆が命を落としていたかも知れないのだ。
その原因を作った誰かにどんな理由があれば納得出来るのだろうか。
「……ひとつひとつ決着をつけるべきだ」
元女王は静かな声で言う。
「これ以上余計な形で掻き回されないよう、エリスを捕らえるべきだろう」
「そうですね」
シャルロットさんとフィアナさんが頷く。
方針は決まった。
「……お母様、留守をお任せします。私はフィアナとアルバスタへ行き、エリスを探します」
「女王、上に立つ者がそんな軽々しく……言っても無駄か。まあ正式な戴冠式を行う前だ、大目に見よう。留守番は請け負うが、ラミレア王国の動きが読めない以上人員に悩みが出るな……」
確かに、オフェリアから軍を動かせばラミレアが動いた時に対応出来なくなってしまう。
アルバスタにも余裕は無いだろうから、何かあればオフェリアの余力分はこちらへ回さなければならない。
絶対的に……手が足りない。
「女王……失礼します」
城に入る際に顔を合わせた衛兵さんがやって来た。
「女王とロイ殿へお客様が参られました」
「ふむ?」
前女王が首を捻り、シャルロットさんを見る。
何も言わないという事は、前女王の予定では無いようだ。
当然だけど、僕がお城で待ち合わせた相手にも覚えが無い。
「……誰かにお会いする予定は無かったはずですが。どなたですか?」
「はっ、草原の国の代表と名乗られています」
「リチャードさんが!?」
僕は思わず声を上げる。
思ってもいない場所で、思ってもいなかった友人と再会することになったのである。
「はい……フィアナごめんね。先代女王の言葉通り、出来る事はさせて欲しいの」
「勿論シャルロットを信じるわ。……エリス姫の事だけど……集落を襲った後、西へ向かったそうよ」
エリス姫については集落で聞いた話だ。
あの集落から西となると、海沿いに走ればラミレア王国へ。山岳地帯の方へ向かえばローア王国へと入る事になる。
「ラミレアとローア……どっちだろう」
独り言だったが、元女王に拾われる。
「流れから言えばラミレアだ。……開戦時に陣形の弱い部分を狙われた。恐らくエリスが情報を流したと見て間違いないだろう」
シャルロットさんも頷く事で肯定する。
「どうしてそんな事を……」
フィアナさんが言う通り『どうして』だろう。
動機も理由も無く起こす行動では無い。
「理由はご本人に問い質すまで解らない事だと思います。問い質すためにはエリス姫を見つけなければいけません。行き先を知るためにラミレアに聞いた所で本当の事を知れるかは怪しいですし、もっと良い手があれば……」
僕の言葉にフィアナさんが答える。
「それでしたら、アルバスタへ戻れば解るかも知れません。ルキも情報を集めているでしょうし、どちらへ向かっても国境付近の兵に見られずに通過するのは難しいでしょう」
「では、アルバスタで情報を得た上で行動する、と言う事で……次はラミレア王国との戦についてですね」
穏やかに話し合いをしているが、今は一応戦時下なのである。
しかし、穏やかなのは理由がある。
先程入った報告で、ラミレアの海軍が撤退を始めたと知ったからだ。
「海戦は終わりましたが……宣戦布告も無しで戦争を仕掛けられた事に違いはありません。小領同士の小競り合いならまだしも、国家対国家の話であればこれは許されない事です」
シャルロットさんが怒りを滲ませている。
開戦の仕方に規則がある、というのは確かに習った覚えが有るような無いような……。
元貴族の子としては申し訳ない話だけど、戦争の話はあまり好きでは無く……幼年学校でも真剣に話を聞いていたとは言えないのだ。
戦いに関する物語が嫌いかというとそんな事も無いので、自分でも矛盾しているとは思う。
「アルバスタも不意打ちで攻撃を受けた以上、このままという訳にはいきません」
フィアナさんも怒っている。
実際にあの場にいた僕も思う事はある。
あの勇気ある奥さんも、それに応えた兵士の夫も……あの場にいた皆が命を落としていたかも知れないのだ。
その原因を作った誰かにどんな理由があれば納得出来るのだろうか。
「……ひとつひとつ決着をつけるべきだ」
元女王は静かな声で言う。
「これ以上余計な形で掻き回されないよう、エリスを捕らえるべきだろう」
「そうですね」
シャルロットさんとフィアナさんが頷く。
方針は決まった。
「……お母様、留守をお任せします。私はフィアナとアルバスタへ行き、エリスを探します」
「女王、上に立つ者がそんな軽々しく……言っても無駄か。まあ正式な戴冠式を行う前だ、大目に見よう。留守番は請け負うが、ラミレア王国の動きが読めない以上人員に悩みが出るな……」
確かに、オフェリアから軍を動かせばラミレアが動いた時に対応出来なくなってしまう。
アルバスタにも余裕は無いだろうから、何かあればオフェリアの余力分はこちらへ回さなければならない。
絶対的に……手が足りない。
「女王……失礼します」
城に入る際に顔を合わせた衛兵さんがやって来た。
「女王とロイ殿へお客様が参られました」
「ふむ?」
前女王が首を捻り、シャルロットさんを見る。
何も言わないという事は、前女王の予定では無いようだ。
当然だけど、僕がお城で待ち合わせた相手にも覚えが無い。
「……誰かにお会いする予定は無かったはずですが。どなたですか?」
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思ってもいない場所で、思ってもいなかった友人と再会することになったのである。
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