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第二章 第一部 吹き返す風
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「どこからかな、衛士?」
「うーん、衛士は俺も結構顔知ってるやつもいるから、衛士ではない気がするけど」
「知らないやつもいるわけだろ? そういや衛士ってルギの部下だけじゃないんだよな」
「うん、ルギはあくまで警護隊の隊長だから」
「警護以外にもいるのか」
「中心は警護だけど他にも色々任務はあるからね」
「なるほど……そんでダルたいちょう~そのなんだっけ、検問所っての近いの?」
途中からベルがアベルになってダルにそう聞く。わざと会話を聞かせようとしてのことだ。
「あ~ここからだったらマルトの雑貨店を通り抜けて、それからもうちょっとカースの方まで歩くよ」
「なんだよ、正反対じゃん、結構あるじゃん」
「まあ神殿に用があったからね」
「ちょっと休憩とかしちゃだめか?」
「まあせっかく清めてもらったんだから、できるだけ早く渡しておきたいんだよ。もうちょっとだけ付き合ってよ」
「ちぇー分かったよ」
アベルがぶうぶう言いながら月虹隊隊長と並んで急いで歩く。
その少し後ろから、マントを着て顔もフードで隠した二人組が少し離れてついてくる。
「悪いね。終わったらお茶でもしよう」
「お、やったー! だったらがんばるよ」
「現金だなあ」
ダルが楽しそうにそう言って笑った時、数人の男が二人の前に現れた。
「月虹隊のダル隊長ですよね?」
ダルは一瞬間を置いてから、
「そうだけど何かな?」
と、いつもの調子で聞いた。
「月虹隊に頼みがあるんです」
「あ、そうなの?」
あくまでのんびりと、いつものダルの調子だ。
「ええ、月虹隊は宮と民をつなぐ兵、そうですよね?」
「うん、そうだけど」
「だったら宮へ進言してもらいたいんですよ、民たちの頼みだって」
「そう、分かった。でも今俺は非番でちょっと私用で急いでるところなんだ。だから用事の向きを書いてどちらかの本部に届けておいてくれる? 俺からも当番の兵に伝えておくから」
「いや、急ぐんだよ」
「急ぐのなら尚更だよ。月虹隊には色々な頼みごとが届くからね。急ぐなら少しでも早く手続きをした方がいいと思うよ」
「それじゃあ間に合わないからこうして隊長様に頼んでるんじゃねえかよ」
中で一番体が大きく乱暴そうな男がダルの前に回り込み、足を止めさせた。
「ごめんね、悪いけど本当に急いでる。神殿で祝福してもらった帰りなんだよ」
そう言ってダルが祝福を終えたお守りを入れた袋を掲げると、男たちが怯んだ。
袋には神殿の祝福の印のある白いリボンが巻いてあったからだ。
この国では何よりもシャンタルが一番尊い存在である。
そしてその次がマユリアと国王、それに次いで神殿には権威があり、神殿から帰る者の邪魔をすると災いがあると信じられている。
「こちらを済ませてしまわないと俺は何もできないし、それにさっき言ったように今非番でね。悪いけど本部に行って当番の者に言ってもらえるかな。じゃあ、急ぐから」
ダルは穏やかにそう言うと、男たちの横を普通の状態でアベルを連れて通り過ぎた。
男たちがはしばらく悔しそうにダルとアベルの後ろ姿を睨みつけていたが、仕方なく何処かへ散っていった。
「大丈夫かよ」
「何が?」
「恨み買って後でなんかされたりしねえ?」
「ああ、まあ気をつけるよ」
「なんだよ、なんかたよんねえなあ」
「まあ、これでも一応月虹隊隊長だからね、それなりに色々と経験もしてきてるさ」
ダルがそう言ってベルに笑って見せた。
「そうかあ? なんか隊長すげえたよんなく見えるんだけど」
「失礼だなあ」
声を上げて笑い、
「さ、用事を済ませてしまわないと、急ぐよ」
「分かった」
そう言って二人でカースの検問所に向かって足早に歩く。
「まだ来てるね」
「そだな」
ダルもベルもマントの男2人がついて来ているのを確認する。
「なんとか正体だけでもわかんねえかなあ」
「顔はチラッと見えたこともあるんだけど、知らない顔だったよ」
「そうか。おれも知らない相手かな」
「もしも王宮からとかだったら、知らないかもねえ」
「王宮……」
ベルは一日だけだが王宮にもいたことがある。
あの「王宮の鐘」が鳴った時、「奥様」と一緒に一時王宮の一室に閉じ込められていたからだ。
「ちょっと仕掛けてみる」
「おい」
ダルが驚いて止める間もなく、ベルはいきなり反対に向かって走り出した。
マントの男二人は少年がいきなり自分たちの方に向かって走ってきたので慌てて足を止めたが、ベルはその二人の真ん中を通り過ぎながら、
「ごめんなさい、ちょっと急ぐんで、ほんとごめんなさい!」
そう言って走り抜け、少し行ったところで足を止めると地面をキョロキョロと見渡した。
「お、おいアベル、どうしたんだ?」
ダルも慌てたように、今度は二人で道を開けたマント二人の横を通り抜け、アベルのところまで急いだ。
「あ、たいちょ~」
ベルが情けなさそうにくしゃっと顔を崩して泣きそうな顔になる。
「いきなり走り出すからびっくりしたよ、どうしたの」
「おれ、かーちゃんにもらってきたお守り、落としたみたい」
「え!」
「どうしよう、どこで落としたんだろう!」
「え、えと、どうしよう」
「たいちょ~」
そう言ってワッと泣き出す振りでダルにしがみつき、
「分かった、神殿の神官だ、見たことある顔だ」
そう伝えた。
「うーん、衛士は俺も結構顔知ってるやつもいるから、衛士ではない気がするけど」
「知らないやつもいるわけだろ? そういや衛士ってルギの部下だけじゃないんだよな」
「うん、ルギはあくまで警護隊の隊長だから」
「警護以外にもいるのか」
「中心は警護だけど他にも色々任務はあるからね」
「なるほど……そんでダルたいちょう~そのなんだっけ、検問所っての近いの?」
途中からベルがアベルになってダルにそう聞く。わざと会話を聞かせようとしてのことだ。
「あ~ここからだったらマルトの雑貨店を通り抜けて、それからもうちょっとカースの方まで歩くよ」
「なんだよ、正反対じゃん、結構あるじゃん」
「まあ神殿に用があったからね」
「ちょっと休憩とかしちゃだめか?」
「まあせっかく清めてもらったんだから、できるだけ早く渡しておきたいんだよ。もうちょっとだけ付き合ってよ」
「ちぇー分かったよ」
アベルがぶうぶう言いながら月虹隊隊長と並んで急いで歩く。
その少し後ろから、マントを着て顔もフードで隠した二人組が少し離れてついてくる。
「悪いね。終わったらお茶でもしよう」
「お、やったー! だったらがんばるよ」
「現金だなあ」
ダルが楽しそうにそう言って笑った時、数人の男が二人の前に現れた。
「月虹隊のダル隊長ですよね?」
ダルは一瞬間を置いてから、
「そうだけど何かな?」
と、いつもの調子で聞いた。
「月虹隊に頼みがあるんです」
「あ、そうなの?」
あくまでのんびりと、いつものダルの調子だ。
「ええ、月虹隊は宮と民をつなぐ兵、そうですよね?」
「うん、そうだけど」
「だったら宮へ進言してもらいたいんですよ、民たちの頼みだって」
「そう、分かった。でも今俺は非番でちょっと私用で急いでるところなんだ。だから用事の向きを書いてどちらかの本部に届けておいてくれる? 俺からも当番の兵に伝えておくから」
「いや、急ぐんだよ」
「急ぐのなら尚更だよ。月虹隊には色々な頼みごとが届くからね。急ぐなら少しでも早く手続きをした方がいいと思うよ」
「それじゃあ間に合わないからこうして隊長様に頼んでるんじゃねえかよ」
中で一番体が大きく乱暴そうな男がダルの前に回り込み、足を止めさせた。
「ごめんね、悪いけど本当に急いでる。神殿で祝福してもらった帰りなんだよ」
そう言ってダルが祝福を終えたお守りを入れた袋を掲げると、男たちが怯んだ。
袋には神殿の祝福の印のある白いリボンが巻いてあったからだ。
この国では何よりもシャンタルが一番尊い存在である。
そしてその次がマユリアと国王、それに次いで神殿には権威があり、神殿から帰る者の邪魔をすると災いがあると信じられている。
「こちらを済ませてしまわないと俺は何もできないし、それにさっき言ったように今非番でね。悪いけど本部に行って当番の者に言ってもらえるかな。じゃあ、急ぐから」
ダルは穏やかにそう言うと、男たちの横を普通の状態でアベルを連れて通り過ぎた。
男たちがはしばらく悔しそうにダルとアベルの後ろ姿を睨みつけていたが、仕方なく何処かへ散っていった。
「大丈夫かよ」
「何が?」
「恨み買って後でなんかされたりしねえ?」
「ああ、まあ気をつけるよ」
「なんだよ、なんかたよんねえなあ」
「まあ、これでも一応月虹隊隊長だからね、それなりに色々と経験もしてきてるさ」
ダルがそう言ってベルに笑って見せた。
「そうかあ? なんか隊長すげえたよんなく見えるんだけど」
「失礼だなあ」
声を上げて笑い、
「さ、用事を済ませてしまわないと、急ぐよ」
「分かった」
そう言って二人でカースの検問所に向かって足早に歩く。
「まだ来てるね」
「そだな」
ダルもベルもマントの男2人がついて来ているのを確認する。
「なんとか正体だけでもわかんねえかなあ」
「顔はチラッと見えたこともあるんだけど、知らない顔だったよ」
「そうか。おれも知らない相手かな」
「もしも王宮からとかだったら、知らないかもねえ」
「王宮……」
ベルは一日だけだが王宮にもいたことがある。
あの「王宮の鐘」が鳴った時、「奥様」と一緒に一時王宮の一室に閉じ込められていたからだ。
「ちょっと仕掛けてみる」
「おい」
ダルが驚いて止める間もなく、ベルはいきなり反対に向かって走り出した。
マントの男二人は少年がいきなり自分たちの方に向かって走ってきたので慌てて足を止めたが、ベルはその二人の真ん中を通り過ぎながら、
「ごめんなさい、ちょっと急ぐんで、ほんとごめんなさい!」
そう言って走り抜け、少し行ったところで足を止めると地面をキョロキョロと見渡した。
「お、おいアベル、どうしたんだ?」
ダルも慌てたように、今度は二人で道を開けたマント二人の横を通り抜け、アベルのところまで急いだ。
「あ、たいちょ~」
ベルが情けなさそうにくしゃっと顔を崩して泣きそうな顔になる。
「いきなり走り出すからびっくりしたよ、どうしたの」
「おれ、かーちゃんにもらってきたお守り、落としたみたい」
「え!」
「どうしよう、どこで落としたんだろう!」
「え、えと、どうしよう」
「たいちょ~」
そう言ってワッと泣き出す振りでダルにしがみつき、
「分かった、神殿の神官だ、見たことある顔だ」
そう伝えた。
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