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第二章 第三部 女神の国
13 金色の髪の王子様
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「お話がはずんでいらっしゃいますが、シャンタル、そろそろお昼寝のお時間ですよ」
マユリアが楽しそうに笑いながら言うと、
「もうですか? マユリア、もう少しだけ、いいでしょう?」
と、今までになかったことおっしゃるので、マユリアもラーラ様もひどく驚いた。
「そうですねえ……」
ラーラ様が困った顔をしてマユリアに視線を投げる。
「お昼寝はなさった方がいいと思いますが」
マユリアもラーラ様に視線を投げながらそう言う。
「でも、もうちょっとだけ」
シャンタルはただの小さな子どもではない、神だ。
この国唯一の尊い神、絶対の存在、誰もその意に背ける者はない。
だが、マユリアとラーラ様にとっては、それだけではなく、お守りする小さな妹であり娘でもある。
その子の健やかな成長のためには、ただただお気持ちに従うだけではなく、庇護者として、シャンタルのためにはよくない、そう思うことはきちんとお話するのが家族としての役目でもある。
だが、それでもどうしてもと主張されたら、その時には神の意に沿うしかない。家族ではなく、神の僕として。
「ですがシャンタル、お昼寝なさらないとお体にさわりますよ?」
その上でもう一度だけ家族としてそう声をかける。
「でも、こんなに楽しいんですもの。ね、もう少しだけいけませんか?」
そこまで言われてはもう何も言えなくなる。
ただの子どもなら、わがままはよくないと言えるのだが、これ以上神に対して言えることはない。
と、
「お昼寝しないのはよくないんじゃないですかね」
アランがいきなりそう発言する。
「よくないの?」
「いつもしてるんですよね」
「うん」
「だったら体がそういう風に覚えてると思うので、いきなりやめたら体がびっくりしませんか?」
「そうなのかしら」
「それに、じゃあいつまでお話したらいいのかってなるけど、疲れてしまうまで続けたら楽しいで終わらなくなりません?」
「それはそうかも」
「だったら今日はこれまでにして、また今度続きのお話をしましょう」
「そうね」
やっとシャンタルが渋々と納得する。
この国の者ではないアランだからこそ、普通の子どもとして接することのできたアランだからこそ言えたことである。
「でも、今度またきっとお話してくださいね」
「もちろんですよ」
シャンタルはアランにそう言うと、ラーラ様に向かって、
「ラーラ様、明日もまたお話したいです」
とすがるような目で言い、
「明日、ですか」
ラーラ様が困ったようにマユリアに視線をやる。
「ねえ、いけませんか?」
「それは……」
ラーラ様はアランとディレンが逮捕されている身の上であると知っている。
もしも、以前のまま、宮の客人のままならば、アランたちの都合を聞いてよければと言えるのだが。
「ルギ隊長」
ラーラ様が困っているとアランがルギに声をかけた。
「なんでしょう」
アランとディレンが逮捕されたことはシャンタルには言っていない。ルギは二人と一緒に招待された関係者、といった位置に置かれていた。一般人の男性二人だけがシャンタルとお会いするなど、あってはならぬことなのだ。
「俺と船長、何か明日、宮のお手伝いすることってありましたっけ?」
取り調べなどがないかをこういう言い方で聞いてみる。
「ええ、少しばかりお手伝いいただく約束をしていました」
「そうでしたよね」
「ですが、時間に多少の融通は効きますので、シャンタルがお望みであれば」
「だそうですよ、シャンタル」
「ラーラ様!」
シャンタルがうれしそうに母を振り向く。
「本当によろしいのですか?」
「ええ」
ラーラ様がルギに確認するとそう答えるので、
「そうですか、では少しだけ」
「よかった!」
と、明日もまたお茶会を、と話が進みそうになった時、
「明日は一緒にお昼をいただくというのではだめなのかしら?」
シャンタルが期待に満ちた顔でそう言い出して、それではという話になった。
「じゃあ明日、お昼にね」
そう言って満面の笑みでアランたちを見送るシャンタルに、
「では、二人をお送りしてきます」
と、ルギも話を合わせ、3人でマユリアの客室を辞した。
「いいんすかね?」
アランがしばらく廊下を歩いてからルギに聞く。
「今さらそう思うのならあのようなことを聞かなければよかったのだ」
ルギがいつもの調子で無表情に言うが、
「だって、かわいそうじゃないですか」
アランもそう返す。
「あんな小さな子が、特にやることもなくて部屋の中で退屈して、そんで自分が知らなかった話を聞きたい。健気ですよ」
「そういうところかも知れんな」
アランの答えにルギがそう答える。
「何がです?」
「ずいぶんと気にいられたものだ」
「え?」
「そうだな、俺もなんかそう思う」
ルギに返すアランにディレンもそう言う。
「何がです?」
「シャンタルがお気に召してるのはおまえさんだよ」
「は?」
「金色の髪の王子様だよ」
「はあ?」
ディレンのからかうような口ぶりにアランが驚く。
「いや、外の国の話が楽しいんでしょう」
「そうではないな」
ルギもそう言う。
「外の国から来た見たことがない輝く髪を持つ王子様、まさにそう思っていらっしゃるのかもな」
アランもルギの言葉には、さすがにからかってるんだろうとは思えなかった。
マユリアが楽しそうに笑いながら言うと、
「もうですか? マユリア、もう少しだけ、いいでしょう?」
と、今までになかったことおっしゃるので、マユリアもラーラ様もひどく驚いた。
「そうですねえ……」
ラーラ様が困った顔をしてマユリアに視線を投げる。
「お昼寝はなさった方がいいと思いますが」
マユリアもラーラ様に視線を投げながらそう言う。
「でも、もうちょっとだけ」
シャンタルはただの小さな子どもではない、神だ。
この国唯一の尊い神、絶対の存在、誰もその意に背ける者はない。
だが、マユリアとラーラ様にとっては、それだけではなく、お守りする小さな妹であり娘でもある。
その子の健やかな成長のためには、ただただお気持ちに従うだけではなく、庇護者として、シャンタルのためにはよくない、そう思うことはきちんとお話するのが家族としての役目でもある。
だが、それでもどうしてもと主張されたら、その時には神の意に沿うしかない。家族ではなく、神の僕として。
「ですがシャンタル、お昼寝なさらないとお体にさわりますよ?」
その上でもう一度だけ家族としてそう声をかける。
「でも、こんなに楽しいんですもの。ね、もう少しだけいけませんか?」
そこまで言われてはもう何も言えなくなる。
ただの子どもなら、わがままはよくないと言えるのだが、これ以上神に対して言えることはない。
と、
「お昼寝しないのはよくないんじゃないですかね」
アランがいきなりそう発言する。
「よくないの?」
「いつもしてるんですよね」
「うん」
「だったら体がそういう風に覚えてると思うので、いきなりやめたら体がびっくりしませんか?」
「そうなのかしら」
「それに、じゃあいつまでお話したらいいのかってなるけど、疲れてしまうまで続けたら楽しいで終わらなくなりません?」
「それはそうかも」
「だったら今日はこれまでにして、また今度続きのお話をしましょう」
「そうね」
やっとシャンタルが渋々と納得する。
この国の者ではないアランだからこそ、普通の子どもとして接することのできたアランだからこそ言えたことである。
「でも、今度またきっとお話してくださいね」
「もちろんですよ」
シャンタルはアランにそう言うと、ラーラ様に向かって、
「ラーラ様、明日もまたお話したいです」
とすがるような目で言い、
「明日、ですか」
ラーラ様が困ったようにマユリアに視線をやる。
「ねえ、いけませんか?」
「それは……」
ラーラ様はアランとディレンが逮捕されている身の上であると知っている。
もしも、以前のまま、宮の客人のままならば、アランたちの都合を聞いてよければと言えるのだが。
「ルギ隊長」
ラーラ様が困っているとアランがルギに声をかけた。
「なんでしょう」
アランとディレンが逮捕されたことはシャンタルには言っていない。ルギは二人と一緒に招待された関係者、といった位置に置かれていた。一般人の男性二人だけがシャンタルとお会いするなど、あってはならぬことなのだ。
「俺と船長、何か明日、宮のお手伝いすることってありましたっけ?」
取り調べなどがないかをこういう言い方で聞いてみる。
「ええ、少しばかりお手伝いいただく約束をしていました」
「そうでしたよね」
「ですが、時間に多少の融通は効きますので、シャンタルがお望みであれば」
「だそうですよ、シャンタル」
「ラーラ様!」
シャンタルがうれしそうに母を振り向く。
「本当によろしいのですか?」
「ええ」
ラーラ様がルギに確認するとそう答えるので、
「そうですか、では少しだけ」
「よかった!」
と、明日もまたお茶会を、と話が進みそうになった時、
「明日は一緒にお昼をいただくというのではだめなのかしら?」
シャンタルが期待に満ちた顔でそう言い出して、それではという話になった。
「じゃあ明日、お昼にね」
そう言って満面の笑みでアランたちを見送るシャンタルに、
「では、二人をお送りしてきます」
と、ルギも話を合わせ、3人でマユリアの客室を辞した。
「いいんすかね?」
アランがしばらく廊下を歩いてからルギに聞く。
「今さらそう思うのならあのようなことを聞かなければよかったのだ」
ルギがいつもの調子で無表情に言うが、
「だって、かわいそうじゃないですか」
アランもそう返す。
「あんな小さな子が、特にやることもなくて部屋の中で退屈して、そんで自分が知らなかった話を聞きたい。健気ですよ」
「そういうところかも知れんな」
アランの答えにルギがそう答える。
「何がです?」
「ずいぶんと気にいられたものだ」
「え?」
「そうだな、俺もなんかそう思う」
ルギに返すアランにディレンもそう言う。
「何がです?」
「シャンタルがお気に召してるのはおまえさんだよ」
「は?」
「金色の髪の王子様だよ」
「はあ?」
ディレンのからかうような口ぶりにアランが驚く。
「いや、外の国の話が楽しいんでしょう」
「そうではないな」
ルギもそう言う。
「外の国から来た見たことがない輝く髪を持つ王子様、まさにそう思っていらっしゃるのかもな」
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