黒のシャンタル 第三話 シャンタリオの動乱

小椋夏己

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第四章 第一部 最後のシャンタル

20 強い光と深い闇

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「光と闇のことって」

 こちらはシャンタル宮のアランたちの部屋だ。あの空間から元の部屋に戻って、誰言うともなくその話題になった。

「もしかしたらあれかも」

 アランが口にしたのはトーヤから聞いた懲罰房の話だ。

「私もそうではないかと思いました」

 その懲罰房にいた本人であるミーヤもそう言う。

「水音ですよね」
「ええ」
「実際に何があったかはミーヤさんから聞きたいんですが、なんでそんなことが起こってたか、は知らないですよね?」
「え?」
「俺はトーヤから聞いたんです、その水音が何なのかってのを」
「なぜトーヤが」
「あ~、やっとこれも話していいのかな」

 アランがちょっと苦笑する。

「こっちに来て、うまく宮に潜り込んでから、ある時トーヤから聞いたんです、シャンタルの親のこと」
「ああ、俺も一緒だった」

 ディレンもそう言う。

「だからまあ、トーヤが宮に潜り込むのに使った手のことも知ってたんですが、そのことと関係があるから話せなかったんです」
「トーヤが宮に戻っていたんですか?」
「ええ、そうなんです」

 ミーヤは知らないことであった。
 ミーヤはトーヤとは、あの時、エリス様御一行が逃亡して以後、あの不思議な空間で再会するまで会う機会はなかったからだ。

「トーヤ、シャンタルの父親に手伝ってもらってお父上として宮に潜り込んでました」
「え、そうなんですか」

 ミーヤとアーダは「お父上」が宮へ訪問することができることは知っている。

「そうなんです。でもそれ言うとばれちまうんで言えませんでした、すみません」
「そうなんですね」

 では近くに来ていたのだ。同じ宮の中にトーヤがいたのだ。ミーヤはその事実に少しばかり胸が苦しくなった。

「キリエさんからミーヤさんが懲罰房に入れられたことや、あの水音のことも聞いて、それで、相談して、あの青い小鳥をリルさんから借りてくることを思いついたようですよ」
「え!」

 これにも驚いた。

「えーと、なんか色々入り組んでるんで一言で説明するのは大変なんですが、あの青い小鳥はベルが作ってリルさんに渡したんです」
「ええっ!」

 聞けば聞くほど混乱しそうなことが次から次へと出てくる。

「時間もないことですし、そのあたりの説明はおいおい」

 今日の召喚は午後だった。一番ゆっくりできる昼過ぎとはいえ、あまり長い時間ミーヤとアーダがこの部屋にこもりきりはよくないとアランは判断した。

「とにかく、アーダさんとハリオさんが話を知っているとは知られちゃいけないですから」
「そうだな」
 
 ディレンも同意する。

「今日の午後の担当はアーダさんでしたよね」
「はい」
「じゃあミーヤさんは一度部屋から出て他の仕事の方を」
「分かりました」
「あの、私も一度ミーヤ様と一緒に退室いたします」
「そうですね。じゃあこっちはこっちで仕事の話をしとくか」

 ディレンがそう言ってハリオを見る。

「おまえが月虹隊の手伝いをするって話だ」
「ああ」
 
 アーリンが噂をばらまいている男に接触する時に、ハリオが手助けをするという例の話だ。

「明日にでもって話でしたよね」
「そうだったな」

 その話をするのにダルは宮から王都へと戻っていた。そしてリルのところで3回目の召喚に参加したということだ。

「その時になんとか動くことがないか色々と見直しておきましょう」
「そうだな」

 ということで、ミーヤとアーダも一度部屋から出ることとなった。世話役といっても一日中その部屋にべったりというわけではない。他にも色々とやることはあるのだ。

 室内ではアランがディレンとハリオに一連の流れをざっと説明していた。

「2人に話しておけば、俺がいない時にも折を見てミーヤさんとアーダさんにも説明してもらえますから」
「そうだな」
「けど、聞けば聞くほどすごい話で……」

 ざっとではあるが、懲罰房でトーヤが見たこと、侍女の怨念が水音を響かせていたことなどを説明した。

「じゃあ、その懲罰房ってのがあそこで聞いた闇ってやつになるのか?」
「うーん、それはどうでしょう」

 ディレンの質問にアランが慎重に答える。

「何しろ俺もトーヤからざっと聞いただけで本当のところは分かりません。それにトーヤもまだ全部話してくれてない気がしますから」
「そうか、あいつならありえるな」
「だから、今のところで分かることだけ考えるしかないですね」
「そうだな」

 そうして3人で光と闇について話をする。

「でもまあ、やっぱり一番くさいのは懲罰房ではあるんですが」
「それはそうですよね」

 ハリオもアランに同意する。

「ただ、そんじゃそこについてどう考えるかなんですよ」
「本当なら知ってることじゃないですもんね」
「そうだな」

 アランとハリオにディレンも同意する。

「ってことは、俺らでも分かるところにも闇があるのかも知れない」
「闇ってのは、光が濃いほど濃くなるってな」
「え?」
「いや、そんな言葉があるんだが」
「確かに」

 アランがディレンの言葉に考え込む。

「それの象徴がその懲罰房だとすりゃ、それはやっぱりそこの話なんだろうが、何しろこの宮自体が言ってみりゃ光の象徴だってなもんだろう。ってことは他にも闇があっても不思議じゃない」

 ディレンの言葉に2人の若者が黙ってうなずいた。
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