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第四章 第三部
11 神の格
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「そんで、あんたらはどっちに入るんだ? 種から生まれた派か、それとも生まれてない派か」
はあっとめんどくさそうにトーヤがため息をつくが、光はトーヤの様子には触れることなく淡々と続ける。
『光からアルディナが生まれたようにわたくしは慈悲から生まれました。わたくしとよく並び称される寛容の男神シュリは寛容から、あなたたちもよく知る剣の女神アイリスは剣から、その事象や物事が光と闇から生まれると、そこから総べる神が生まれ、それを『次代の神』と呼ぶので』
「ってことは、あんたらとは違う生まれ方する神様もいるってことだな。そいつらは種から生まれる、そういうことか」
トーヤが仮にも神という存在に対して「そいつら」などと言ったことにアーダがビクッとする。同じ侍女でもミーヤとリルはトーヤのこんな言動には慣れてしまってはいるが、さすがに困ったことだという顔にはなっている。
『その通りです。わたくしたちと違って種から生まれる神もあるのです。たとえばマユリアはわたくしの侍女となるために、種から生まれた神の一人です』
「え!」
思わずベルがそう言って口を押さえた。
「いや、俺もびっくりした」
トーヤがそう言ったので、ベルは口を押さえたまま「うんうん」と激しく首を上下に振る。
「マユリアはつまり、あんたとは違う神様ってことなんだな」
『その通りです』
「それはつまり、どう違うってことになるんだ?」
『一言で言えば格が違うということでしょうか』
「格?」
『そうです、わたくしは慈悲から生まれた慈悲を司る神、そしてマユリアはわたくしに仕えることを選び、種から生まれた神ということになります。次代の神と種から生まれた神は生まれる時から格が違うのです』
トーヤがむうっと額にシワを寄せる。
「なんか、やな話だな。生まれる時から格が違うなんて言われてよ」
光が困ったように瞬く。
「けどまあ、しゃあないわな、あんたが決めたことじゃない、あんたのせいじゃない。いくら俺がへそ曲がりだっても、そのことだけは理解できる」
トーヤが言ったことに他の者たちも同意する。
「だよな、神様だってこうしてやれって思ってそういうの作って、そんで自分のが格が上だって言ってんじゃねえしな。生まれつき神様だってのも自分でやりたくてやってんじゃないだろうし、責めてやったらかわいそうだよな」
「なんだよその言い方」
ベルの言葉にアランが思わず遠くからそう突っ込んだ。
なんとなく場が和む。
『ありがとう、童子』
光も微笑むように揺れてそう言った。
「童子、な……」
トーヤがその単語に反応する。
「そのことで聞きたいこともあるんだが、まあそっちの話を先にしてくれや」
そう、この言い方にもトーヤがちょっとばかり引っかかっている。
『いえ、そのこともこの続きにあるのです。だから一緒に話をしましょう』
「そうなのかよ。まあなんでもいい、とっとと話が進むならな」
思わぬ返事をもらったものだが、一緒に話が済むのならそれでいいとトーヤは思った。
『さっきも申した通り、神にも格があるのです。わたくしのようにそのことを司るために生まれた神、そしてその神の元に生まれるために種として生まれてくる神という違いがあるのです』
「で、マユリア、代々の人のマユリアの中に入ってる神様ってのは、その神様になる種から生まれた神様ってことなんだな」
『その通りです』
「そんで、それがなんか関係あるのか?」
『まずはその種の話から』
光が何を伝えたいのか分からない瞬き方をした。
うれしいのか悲しいのか、それとも他の何かか、その輝きからは分からなかった。
『神として生まれるはずの種が、人として生まれることがあるのです』
「は?」
トーヤだけではなく、他の者たちもそれぞれに意味を受け止め兼ねるような反応をする。
『マユリアがその神の肉体を人として生まれさせたように、本来ならば神になるはずの種が、その役割を果たすために人として生まれることを選ぶことがあるのです』
「それは一体どういうことになるんだ?」
『人として生まれるだけのことです。マユリアがラーラになったように』
「つまり、ラーラ様が人として最後まで今の人生を生きるように、その元神様の種も人として生きるってことか?」
『その通りです』
「そういうのはちょくちょくあんのか?」
『ちょくちょく、ではありませんが、必要な時にはそうなることがあるということです』
「その必要な時はちょくちょくあんのか?」
光がつい笑ってしまったという風にチラチラと揺れたが、すぐに真顔に戻ったように光の波が止まる。
『八年前の出来事に関係してはやはりありました』
光はその頻度ではなく、具体的な話を始めたようだ。
『まあ、マユリアの体がそうなってんだんだから、ありえる話だな。で?」
『神の魂を持ちながら人として生まれることを選んだ者、その者のことを『童子』と呼ぶのです』
「えっ!」
ベルだ。
「ちょ、ちょいまち! それって、おれがそれってこと!?」
思わず言葉の勢いのまま立ち上がる。
『その通りです』
「おいおいおいおい……」
トーヤも目を丸くしてどう言っていいのか分からない。
とんでもない話が飛び出したものだ。
はあっとめんどくさそうにトーヤがため息をつくが、光はトーヤの様子には触れることなく淡々と続ける。
『光からアルディナが生まれたようにわたくしは慈悲から生まれました。わたくしとよく並び称される寛容の男神シュリは寛容から、あなたたちもよく知る剣の女神アイリスは剣から、その事象や物事が光と闇から生まれると、そこから総べる神が生まれ、それを『次代の神』と呼ぶので』
「ってことは、あんたらとは違う生まれ方する神様もいるってことだな。そいつらは種から生まれる、そういうことか」
トーヤが仮にも神という存在に対して「そいつら」などと言ったことにアーダがビクッとする。同じ侍女でもミーヤとリルはトーヤのこんな言動には慣れてしまってはいるが、さすがに困ったことだという顔にはなっている。
『その通りです。わたくしたちと違って種から生まれる神もあるのです。たとえばマユリアはわたくしの侍女となるために、種から生まれた神の一人です』
「え!」
思わずベルがそう言って口を押さえた。
「いや、俺もびっくりした」
トーヤがそう言ったので、ベルは口を押さえたまま「うんうん」と激しく首を上下に振る。
「マユリアはつまり、あんたとは違う神様ってことなんだな」
『その通りです』
「それはつまり、どう違うってことになるんだ?」
『一言で言えば格が違うということでしょうか』
「格?」
『そうです、わたくしは慈悲から生まれた慈悲を司る神、そしてマユリアはわたくしに仕えることを選び、種から生まれた神ということになります。次代の神と種から生まれた神は生まれる時から格が違うのです』
トーヤがむうっと額にシワを寄せる。
「なんか、やな話だな。生まれる時から格が違うなんて言われてよ」
光が困ったように瞬く。
「けどまあ、しゃあないわな、あんたが決めたことじゃない、あんたのせいじゃない。いくら俺がへそ曲がりだっても、そのことだけは理解できる」
トーヤが言ったことに他の者たちも同意する。
「だよな、神様だってこうしてやれって思ってそういうの作って、そんで自分のが格が上だって言ってんじゃねえしな。生まれつき神様だってのも自分でやりたくてやってんじゃないだろうし、責めてやったらかわいそうだよな」
「なんだよその言い方」
ベルの言葉にアランが思わず遠くからそう突っ込んだ。
なんとなく場が和む。
『ありがとう、童子』
光も微笑むように揺れてそう言った。
「童子、な……」
トーヤがその単語に反応する。
「そのことで聞きたいこともあるんだが、まあそっちの話を先にしてくれや」
そう、この言い方にもトーヤがちょっとばかり引っかかっている。
『いえ、そのこともこの続きにあるのです。だから一緒に話をしましょう』
「そうなのかよ。まあなんでもいい、とっとと話が進むならな」
思わぬ返事をもらったものだが、一緒に話が済むのならそれでいいとトーヤは思った。
『さっきも申した通り、神にも格があるのです。わたくしのようにそのことを司るために生まれた神、そしてその神の元に生まれるために種として生まれてくる神という違いがあるのです』
「で、マユリア、代々の人のマユリアの中に入ってる神様ってのは、その神様になる種から生まれた神様ってことなんだな」
『その通りです』
「そんで、それがなんか関係あるのか?」
『まずはその種の話から』
光が何を伝えたいのか分からない瞬き方をした。
うれしいのか悲しいのか、それとも他の何かか、その輝きからは分からなかった。
『神として生まれるはずの種が、人として生まれることがあるのです』
「は?」
トーヤだけではなく、他の者たちもそれぞれに意味を受け止め兼ねるような反応をする。
『マユリアがその神の肉体を人として生まれさせたように、本来ならば神になるはずの種が、その役割を果たすために人として生まれることを選ぶことがあるのです』
「それは一体どういうことになるんだ?」
『人として生まれるだけのことです。マユリアがラーラになったように』
「つまり、ラーラ様が人として最後まで今の人生を生きるように、その元神様の種も人として生きるってことか?」
『その通りです』
「そういうのはちょくちょくあんのか?」
『ちょくちょく、ではありませんが、必要な時にはそうなることがあるということです』
「その必要な時はちょくちょくあんのか?」
光がつい笑ってしまったという風にチラチラと揺れたが、すぐに真顔に戻ったように光の波が止まる。
『八年前の出来事に関係してはやはりありました』
光はその頻度ではなく、具体的な話を始めたようだ。
『まあ、マユリアの体がそうなってんだんだから、ありえる話だな。で?」
『神の魂を持ちながら人として生まれることを選んだ者、その者のことを『童子』と呼ぶのです』
「えっ!」
ベルだ。
「ちょ、ちょいまち! それって、おれがそれってこと!?」
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『その通りです』
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とんでもない話が飛び出したものだ。
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