黒のシャンタル 第三話 シャンタリオの動乱

小椋夏己

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第四章 第四部

 8 条件付け

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「それは一体どういうことなんだ?」

 トーヤが戸惑いながら光に聞く。

『世界が止まったことで世界も淀みました。その淀みがこの神域にも影響を与えたのです。ですが、そのことがなくとも、今ではなくとも、もう少し未来だとしても、やはり同じ状態になっていた、ということです』

「つまり、二重に世界が閉じたことで早まったが、それがなくてもいつかは親御様が生まれなくなっていた、そういうことですか」

 今までほとんど口を開かず、じっくりと話を聞いていたディレンがいきなりそう聞いたので、他の者たちが驚く。

『その通りです』

「いきなり口を開いて申し訳ない。ただ、あなたが言った世界ってのが、俺が生まれ育ったアルディナのことである、そう思ったので気になりました」

『そう思うかも知れませんね』

「あちらの世界のことはあなたに聞いても仕方がないのかも知れないが、俺たちの生まれ故郷だ。あちらにも何らかの異常事態は起こってるってことになるんですか?」

『いいえ、今のところはおそらく、目に見える変化はないでしょう』

「西の戦!」

 今度はいきなりベルがそう言った。

「なあ、こっち来る前にちょっと大きい戦が起こりそうだ、そこでまとまった仕事しよう、そういう話になってたよな?」
「ああ」
「もしかしてそれって何か関係あるのか?」

『おそらくは』

「やっぱりか……」
「あっちにも影響あるのか」
「ってか、あっちでも千年前からなんかあったはずじゃないのか?」
 
 アルディナ出身者たちがざわつく。

『いいえ、それがおそらく始まりです』

「はじまり?」

 トーヤが他の者を抑え、代表で聞く。

『その通りです』

「ってことは、アルディナでは今までなんも起こってなかったってことか?」

『その通りです』

「千年も止まってて、それがこっちにそんだけ影響与えてんのにか?」

『アルディナは世界を閉じてはいませんでした。常に風が流れていたので、影響はほぼなかったのです』

「新しい物が生まれなくなったってのはどうだ?」

『多少の影響はありましたが、ほぼなかったでしょう』

「あっち、あれだけあっちこっちで戦やってるのに、そっちより戦がなかったシャンタリオの方がひどいって、なんか不思議だよな」
「そんだけ淀みの影響ってのは、えらいことだってことだな」 

 不思議がるベルにトーヤがそう言った。

「それで、あっちのことは今は置いとくとして、親御様が生まれなくなって六十年ほどになるよな。その後は、もうそのままだったら新しい親御様は生まれなかった、そういうことなんだな?」

『その通りです』

「じゃあラーラ様の親ってのはどういうことになるんだ?」

『マユリアがその身を差し出したことから、その身を生むのにふさわしい者を探したのです」

「ってことは、それまでの親御様とは違うってことになるよな」

『その通りです』

「それでその次だ、マユリア以下次代様まで4人の親、ラデルさん夫婦のことはなんで先に分かった?」
「そう、それだよ!」
「確かに」

 トーヤにベルとアランも言葉を添える。

 肝心のシャンタルはいつものようにじっと黙って聞いている。
 ベルがそっと気にするようにシャンタルを見るが、表情だけでは何を考えているのかは分からない。

「ラーラ様が生まれたら、次の親御様が見えた、そう言ってたな?」
 
『その通りです』

「ってことは、マユリアがそうして自分の体を提供してくれたから、その影響で次に親になれる人が生まれた、そういうことなのか?」

『いいえ』

 光が否定する。

「そうだよな。もしもマユリアが人になった影響で、また親御様が生まれるようになったとしたら、4人も続けて赤ん坊を取られる、なんてことにならなくてもいいよな。また次の親御様が生まれてくれりゃいいんだから」

 トーヤが自分の仮説が否定されたことに納得する。

「そんじゃあ、なんで見えたんだ? 本当なら見えないはずなんだろ?」

『それは条件付けをしたからです』

「条件付け?」

『ラーラの親が生まれる時には、マユリアを人として生むにふさわしい、その任に耐えられる者、その条件で探し出したのです』

「マユリアたちの親、ラデル夫婦が何かの条件にぴったり合ったってことだな。で、その条件ってのはなんだ?」

 光が迷うように瞬く。

「なんだ、ここにきてそれか?」
 
 トーヤがまたふっと笑う。

「それとも、その条件ってのも時が満ちないと言えないってやつなのか?」

『いいえ……』

 そう言いながらも、光はまだ迷っているようだ。

「そんじゃ何をそんなに迷ってんだよ。俺らはもう覚悟を決めたって言ったはずだ。さっきリルも言ってただろ? あんたもそろそろ覚悟を決めてくれてもいいんじゃねえのか?」

 光がすっと静かに輝きを落とす。

「おい、ちょいまち! まさかそのままとんずらってことじゃねえよな!」

 急いでトーヤが引き止めると、

『いいえ、そうではありません。見て、もらわなければならないからです』

「何をだ?」

『わたくしをです』

「え!」

『今まで姿を現さなかったのには理由があります。もしも、わたくしがそのまま姿を現したなら、落ち着いて話を聞いてはもらえなかったかも知れません。ですが、今、時が満ちました……』

 そうして光が静かに姿を現した。
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