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第一章 第二節 カースへ
12 小さくて大きな嘘
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「今日一日一緒にいてな、俺、すっかりおまえのことが気に入ったんだよ。話も合いそうで楽しかったしな」
トーヤはさらにぐぐっと体をダルに寄せる。
「なあ、俺とダチになってくれねえか?」
「トーヤと友達に……」
目を丸くするダルにトーヤはさらに続ける。
「俺な、あっちで育ての親を亡くしてな、そんで故郷にいたくなくなって船に乗ってこっち来たんだよ」
「え、そうなのか」
「その上な、船に乗ってできた仲間も全部亡くした」
「ああ、そうだったな……」
ダルがしんみりとする。
嘘ではない。親代わりのようなミーヤを亡くして半分自暴自棄になってたこと、船の仲間を亡くしたこと、全部本当のことだ。
本当の中にほんの少しの嘘を混ぜる、それが一番いい嘘のつき方だとトーヤは知っている。
「だからな、おまえと友達になれそうだと思ってすごくうれしかった」
「トーヤ……」
ダルは感激した目でトーヤを見ている。
トーヤは目を合わせないようにつぶって腕組みをした。
「偶然だろうが村長に紹介されたおまえが同い年と知ってすごくうれしかったな。船の仲間はみんな年上だったから、仲間ではあっても友達じゃあなかった。傭兵仲間も似たようなもんだったよ。みんなそれなりにいい奴らで一緒にいて楽しかったのも本当だ、だが友達とはちょっとばかり違うんだよなあ。だから友達ってのは本当に久しぶりなんだよ」
トーヤは少し弱々しく首を振ってみせた。
「思えば、俺がこの国に来ておまえと知り合ったってのもシャンタルの思し召しかも知れねえんだなあ……」
「俺、俺でよかったら友達になるよ!いや、俺から頼むよ、トーヤ、友達になってくれ!」
「いいのか?」
トーヤはぱっと目を開けると見開いてダルをじっとみつめる。
よし、勝った。
「ああ、友達になってくれ、そんで俺に剣を教えてくれよ!俺、トーヤみたいにもっと強いかっこいい男になりたいんだ!」
「ダルはもうかっこいいぜ?でも腕っぷしが強くなったらもっとかっこいいだろうなあ。いいぜ、その手伝いだったらいくらでもやらせてもらう、友達だもんな、俺たち」
トーヤは右手を差し出すとダルと握手をした。
「だから、俺にももっとこの国のこと教えてくれよ、な?」
「いいぜ、いくらでも」
ダルはトーヤの手をぐっと強く握り返す。
「ただな、俺、いつまでこの国にいられるか分かんねえんだよなあ……」
「え、ずっといるんじゃなかったのか?」
ダルが驚いたように声を上げる。
「分かんねえな。そもそもこの国に来たのはさっきも言ったように親代わりを亡くしてやけくそみたいに船に乗ったからだし、今ここにいるのは船が嵐で沈んだからだしな。俺が自分でこうしたいと思ってここにいるわけじゃねえんだよ」
「言われてみればそうなのか……」
「だから、いつここから出ていけって言われるかも分かったもんじゃねえ」
「そんな!」
「いや、本当だ」
トーヤは深くため息をついて見せる。
「そういうわけでな、ゆっくりはしてられねえと思う。いられる間にできるだけのことをお前に教えてやりたいし、俺もこの国のことを知りたい。もしかしたら、そうしてるうちにずっといられるようになるかも知れねえしな。何にしても俺が決められることってのは結構少ない。今回だって宮からカースにお礼に来るってのがあって実現したことだしなあ」
「そうなのか……」
ダルがしゅんとする。
「だからな、俺もまたできるだけ早くこっちに来られるように話をつけるから、お前も遊びに来てくれよ」
「え、俺がシャンタル宮にか!?」
ダルが飛び上がるように驚いたのが分かった。
「俺の友達だって言えば大丈夫だろう。それに宮まで来なくても王都で遊ぶって方法もあるしな」
「俺が、シャンタル宮に……」
ダルがぽーっとのぼせたような目になった。
「でも遠いよな、カースまで。馬車で半日もかかったしなあ。もうちょい早く来る方法がありゃいいんだが……」
「あるぜ、道なら」
「え、そうなのか?」
トーヤがキラキラした目でダルを見るのを見せる。
そうだ、それが知りたかったのだ。
「馬車でもそんなゆっくりは走ってなかったぜ?」
「あるよ、道なら色々ある。あんな大きい馬車が通れる道はぐるっと王都の外から海岸線を回ってるでかい道になるけど、馬やもっと小さい荷馬車なら通れる近道もある」
「え、そんな道もあるのか」
「魚を王都に運んで売るのにのんびりは持っていけないからな、痛んじまうし」
「なるほどなあ……その道が一番早いんだな、じゃあ」
「いや、まだある」
「え、そんなにか?」
「そこは馬で魚を積んで通る道だからな、あまりに細い道は危ないだろ?もっと山の方には抜け道みたいな道もあるぜ。それに他にもあまり人に言えない道みたいなのも」
「おお、すげえな!だったら話は早い、もっと簡単にカースに来られる」
「よく使うのは王都の北をまっすぐこっちに続く細い道だな。あんまりいい道じゃないけど、飛ばせば半分ぐらいの時間で来られるかも」
「そうか、なるほどなあ。さすがに地元の人間は違う」
トーヤがいかにも感心して見せるとダルはうれしそうに頭をかいた。
よし、ここまでだ、今日はここまででいい。これ以上一気に話を進めるのは逆に疑いを抱かせる。引け時も駆け引きには大事なのだ。
「そんじゃまあ、道のことはまた今度にでも教えてくれよ。とりあえずは王都の案内でもしてもらえると助かるな。ミーヤは、案内はできないことはないみたいだが、何しろ宮の人間だからそこまで詳しくないってことだし、何より男同士で楽しく遊べると楽しいだろうしな」
「おう、まかせとけよ」
得意そうに言うダルの背中を一つ叩き、
「よろしく頼むぜ、兄弟」
トーヤは満面の笑みを浮かべた。
トーヤはさらにぐぐっと体をダルに寄せる。
「なあ、俺とダチになってくれねえか?」
「トーヤと友達に……」
目を丸くするダルにトーヤはさらに続ける。
「俺な、あっちで育ての親を亡くしてな、そんで故郷にいたくなくなって船に乗ってこっち来たんだよ」
「え、そうなのか」
「その上な、船に乗ってできた仲間も全部亡くした」
「ああ、そうだったな……」
ダルがしんみりとする。
嘘ではない。親代わりのようなミーヤを亡くして半分自暴自棄になってたこと、船の仲間を亡くしたこと、全部本当のことだ。
本当の中にほんの少しの嘘を混ぜる、それが一番いい嘘のつき方だとトーヤは知っている。
「だからな、おまえと友達になれそうだと思ってすごくうれしかった」
「トーヤ……」
ダルは感激した目でトーヤを見ている。
トーヤは目を合わせないようにつぶって腕組みをした。
「偶然だろうが村長に紹介されたおまえが同い年と知ってすごくうれしかったな。船の仲間はみんな年上だったから、仲間ではあっても友達じゃあなかった。傭兵仲間も似たようなもんだったよ。みんなそれなりにいい奴らで一緒にいて楽しかったのも本当だ、だが友達とはちょっとばかり違うんだよなあ。だから友達ってのは本当に久しぶりなんだよ」
トーヤは少し弱々しく首を振ってみせた。
「思えば、俺がこの国に来ておまえと知り合ったってのもシャンタルの思し召しかも知れねえんだなあ……」
「俺、俺でよかったら友達になるよ!いや、俺から頼むよ、トーヤ、友達になってくれ!」
「いいのか?」
トーヤはぱっと目を開けると見開いてダルをじっとみつめる。
よし、勝った。
「ああ、友達になってくれ、そんで俺に剣を教えてくれよ!俺、トーヤみたいにもっと強いかっこいい男になりたいんだ!」
「ダルはもうかっこいいぜ?でも腕っぷしが強くなったらもっとかっこいいだろうなあ。いいぜ、その手伝いだったらいくらでもやらせてもらう、友達だもんな、俺たち」
トーヤは右手を差し出すとダルと握手をした。
「だから、俺にももっとこの国のこと教えてくれよ、な?」
「いいぜ、いくらでも」
ダルはトーヤの手をぐっと強く握り返す。
「ただな、俺、いつまでこの国にいられるか分かんねえんだよなあ……」
「え、ずっといるんじゃなかったのか?」
ダルが驚いたように声を上げる。
「分かんねえな。そもそもこの国に来たのはさっきも言ったように親代わりを亡くしてやけくそみたいに船に乗ったからだし、今ここにいるのは船が嵐で沈んだからだしな。俺が自分でこうしたいと思ってここにいるわけじゃねえんだよ」
「言われてみればそうなのか……」
「だから、いつここから出ていけって言われるかも分かったもんじゃねえ」
「そんな!」
「いや、本当だ」
トーヤは深くため息をついて見せる。
「そういうわけでな、ゆっくりはしてられねえと思う。いられる間にできるだけのことをお前に教えてやりたいし、俺もこの国のことを知りたい。もしかしたら、そうしてるうちにずっといられるようになるかも知れねえしな。何にしても俺が決められることってのは結構少ない。今回だって宮からカースにお礼に来るってのがあって実現したことだしなあ」
「そうなのか……」
ダルがしゅんとする。
「だからな、俺もまたできるだけ早くこっちに来られるように話をつけるから、お前も遊びに来てくれよ」
「え、俺がシャンタル宮にか!?」
ダルが飛び上がるように驚いたのが分かった。
「俺の友達だって言えば大丈夫だろう。それに宮まで来なくても王都で遊ぶって方法もあるしな」
「俺が、シャンタル宮に……」
ダルがぽーっとのぼせたような目になった。
「でも遠いよな、カースまで。馬車で半日もかかったしなあ。もうちょい早く来る方法がありゃいいんだが……」
「あるぜ、道なら」
「え、そうなのか?」
トーヤがキラキラした目でダルを見るのを見せる。
そうだ、それが知りたかったのだ。
「馬車でもそんなゆっくりは走ってなかったぜ?」
「あるよ、道なら色々ある。あんな大きい馬車が通れる道はぐるっと王都の外から海岸線を回ってるでかい道になるけど、馬やもっと小さい荷馬車なら通れる近道もある」
「え、そんな道もあるのか」
「魚を王都に運んで売るのにのんびりは持っていけないからな、痛んじまうし」
「なるほどなあ……その道が一番早いんだな、じゃあ」
「いや、まだある」
「え、そんなにか?」
「そこは馬で魚を積んで通る道だからな、あまりに細い道は危ないだろ?もっと山の方には抜け道みたいな道もあるぜ。それに他にもあまり人に言えない道みたいなのも」
「おお、すげえな!だったら話は早い、もっと簡単にカースに来られる」
「よく使うのは王都の北をまっすぐこっちに続く細い道だな。あんまりいい道じゃないけど、飛ばせば半分ぐらいの時間で来られるかも」
「そうか、なるほどなあ。さすがに地元の人間は違う」
トーヤがいかにも感心して見せるとダルはうれしそうに頭をかいた。
よし、ここまでだ、今日はここまででいい。これ以上一気に話を進めるのは逆に疑いを抱かせる。引け時も駆け引きには大事なのだ。
「そんじゃまあ、道のことはまた今度にでも教えてくれよ。とりあえずは王都の案内でもしてもらえると助かるな。ミーヤは、案内はできないことはないみたいだが、何しろ宮の人間だからそこまで詳しくないってことだし、何より男同士で楽しく遊べると楽しいだろうしな」
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