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第二章 第一節 再びカースへ
3 抜け道
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「内緒って、みんなが使ってる抜け道じゃねえのかよ」
「違うよ。多分知ってるのはカースの男たちだけだね」
「女は?」
「これはな」
ダルは、誰も聞く者もない部屋でのことではないような、たくさんの人間がいる部屋の中での内緒話ででもあるような、そんな風に声を潜めてトーヤに囁いた。
「カースの男たちだけの秘密の抜け道なんだよ」
「おう」
トーヤも声を潜めて返事をする。
「漁に出る年になって、何回か海に出てこいつは大丈夫だと思ったら教えてもらえる洞窟があるんだよ」
「おい、すげえ秘密じゃねえか……」
声を潜めながらも興奮を隠せないと言う風に返事をするトーヤ。
実際に興奮していた。そんなものがあるのなら、ぜひとも使わせていただきたい。
「だろ?だから特別だぜ?トーヤはなんせ色々特別だからな。絶対秘密守ってくれよな?」
「分かった、約束する」
誰がそんなうまい話漏らすかよ。
「帰る時に通る近道があるんだが、その途中、宮の後ろからずっと続く山のある場所から洞窟ってか、なんかあれは人が掘ったみたいな穴の道が続いてる」
「穴の道?」
「洞窟は自然にできるもんだろ?そうじゃなくて、わざわざ通る場所も舗装とまではいかないが平らにしてある。聞いた話では、随分と昔、王宮で何かあった時にそこから逃げるための抜け道を作ってあったんじゃないかって話だ」
「そんな立派な抜け道なのかよ」
「そうなんだ、山を抜けるから坂道にはなってるが、松明さえあればまっすぐにカースまで来られる。途中何箇所か別れ道があるけど、その一番端っこはマユリアの海の向こうの崖まで続いてる」
トーヤは大声を上げそうになるのをかろうじて押さえた。
それは、なんか話がうますぎるのではないかと思うほど好都合の逃げ道ではないか!
「すげえ道だな……」
「だろ?」
「そこ通るとカースから王都まであっという間ってわけだな?馬も通れるのか?」
「それはさすがに……うーん、乗ってでなくて引いてではいけないこともない、かな?そうするとかなり狭いけどさ。まあそのぐらいの大きさの洞窟だよ」
「それはまた……」
その道を知ったらあっという間にあの崖の向こう側まで行ける。それはぜひとも知りたい。だが、崖の向こうはどうなっているのか。
「でもよう、そうやって崖の向こうまで行ってももう海なんだろ?」
「そうだよ」
「崖の向こうってどうなってるんだよ」
「崖の向こうもずっと崖だよ」
ダルがそう言う。
「崖なんか見ても面白くねえだろうによ」
「そんなこともないよ、いい風景だよ。それにね、大抵船がいくつか浮かんでるな。引き潮の時には砂の上に乗っかったみたいになってるけど」
「それ乗ってどこ行くってんだよ?まさかマユリアの海には入れねえだろうし」
「そりゃ崖の向こうの町だよ」
「なんだって、町があるのかよ!」
「そりゃあるさ、トーヤはシャンタリオをなんだと思ってるのさ」
ダルが面白そうに笑う。
「いや、だって、俺はここしか知らねえからよ」
「そうか、そうだったな」
トーヤがこの国に着いた時は海に流され気を失ったままであった。王都リュセルスと流れついたカース以外のことは分からない。この国がどのような広さでどことつながっているのかも。分かっているのはアルディナの神域のある大陸とは離れているらしい、と言うことだけだ。
「うーん、王都があるだろ?カースはその端だろ?その隣って言っていいのかどうか分かんねえけどよ、まあ隣は宮のある山がずっと続いてる、結構険しい山だ」
「だろ?だからなんかここが端っこで終わりの場所みたいに思ってたんだよ」
「違うよ」ダルが笑う。「まだ町があるよ、色んな町」
「そうなのか」
トーヤがうーんと腕を組んで考える。
これは、もしかすると思ったより楽に逃げられるのではないか。
だが逃げてもまだそこはシャンタリオの国内だとは分かった。
「どんな町があるんだ?」
「えっとなんだっけかな、行ったことないから分からないが、普通の町があるって」
「普通の町?なんだよそりゃ」
「そりゃリュセルスは特別だからね。王都だもの」
「そうか。そんじゃ普通に家があって店があって、みたいなそんな町か」
「他にどんな町があるんだよ」
またダルが笑う。
「いや、想像つかねえな」
「そうかもなあ、俺だってここしか知らねえしな」
「え、他の町行ったことねえのかよ?」
「ないよ」
「なんでだ?」
「なんでって、行く必要もないからかな。買い物があるなら王都で全部済むし、漁もあるし、そもそも俺まだ17歳だからな、これから大人になって行くこともあるかもしんねえけど、今のところそういう機会もなかった」
「なるほど」
トーヤは10歳になる前からもうあっちこっちの町に稼ぎに出かけていた。だから余計に「普通」と言う感覚が分からない。
だが「普通の町」と言うものはたくさん見ている。戦場以外にも人のいる場所はたくさんあり、その大部分が「普通の町」だった。
「違うよ。多分知ってるのはカースの男たちだけだね」
「女は?」
「これはな」
ダルは、誰も聞く者もない部屋でのことではないような、たくさんの人間がいる部屋の中での内緒話ででもあるような、そんな風に声を潜めてトーヤに囁いた。
「カースの男たちだけの秘密の抜け道なんだよ」
「おう」
トーヤも声を潜めて返事をする。
「漁に出る年になって、何回か海に出てこいつは大丈夫だと思ったら教えてもらえる洞窟があるんだよ」
「おい、すげえ秘密じゃねえか……」
声を潜めながらも興奮を隠せないと言う風に返事をするトーヤ。
実際に興奮していた。そんなものがあるのなら、ぜひとも使わせていただきたい。
「だろ?だから特別だぜ?トーヤはなんせ色々特別だからな。絶対秘密守ってくれよな?」
「分かった、約束する」
誰がそんなうまい話漏らすかよ。
「帰る時に通る近道があるんだが、その途中、宮の後ろからずっと続く山のある場所から洞窟ってか、なんかあれは人が掘ったみたいな穴の道が続いてる」
「穴の道?」
「洞窟は自然にできるもんだろ?そうじゃなくて、わざわざ通る場所も舗装とまではいかないが平らにしてある。聞いた話では、随分と昔、王宮で何かあった時にそこから逃げるための抜け道を作ってあったんじゃないかって話だ」
「そんな立派な抜け道なのかよ」
「そうなんだ、山を抜けるから坂道にはなってるが、松明さえあればまっすぐにカースまで来られる。途中何箇所か別れ道があるけど、その一番端っこはマユリアの海の向こうの崖まで続いてる」
トーヤは大声を上げそうになるのをかろうじて押さえた。
それは、なんか話がうますぎるのではないかと思うほど好都合の逃げ道ではないか!
「すげえ道だな……」
「だろ?」
「そこ通るとカースから王都まであっという間ってわけだな?馬も通れるのか?」
「それはさすがに……うーん、乗ってでなくて引いてではいけないこともない、かな?そうするとかなり狭いけどさ。まあそのぐらいの大きさの洞窟だよ」
「それはまた……」
その道を知ったらあっという間にあの崖の向こう側まで行ける。それはぜひとも知りたい。だが、崖の向こうはどうなっているのか。
「でもよう、そうやって崖の向こうまで行ってももう海なんだろ?」
「そうだよ」
「崖の向こうってどうなってるんだよ」
「崖の向こうもずっと崖だよ」
ダルがそう言う。
「崖なんか見ても面白くねえだろうによ」
「そんなこともないよ、いい風景だよ。それにね、大抵船がいくつか浮かんでるな。引き潮の時には砂の上に乗っかったみたいになってるけど」
「それ乗ってどこ行くってんだよ?まさかマユリアの海には入れねえだろうし」
「そりゃ崖の向こうの町だよ」
「なんだって、町があるのかよ!」
「そりゃあるさ、トーヤはシャンタリオをなんだと思ってるのさ」
ダルが面白そうに笑う。
「いや、だって、俺はここしか知らねえからよ」
「そうか、そうだったな」
トーヤがこの国に着いた時は海に流され気を失ったままであった。王都リュセルスと流れついたカース以外のことは分からない。この国がどのような広さでどことつながっているのかも。分かっているのはアルディナの神域のある大陸とは離れているらしい、と言うことだけだ。
「うーん、王都があるだろ?カースはその端だろ?その隣って言っていいのかどうか分かんねえけどよ、まあ隣は宮のある山がずっと続いてる、結構険しい山だ」
「だろ?だからなんかここが端っこで終わりの場所みたいに思ってたんだよ」
「違うよ」ダルが笑う。「まだ町があるよ、色んな町」
「そうなのか」
トーヤがうーんと腕を組んで考える。
これは、もしかすると思ったより楽に逃げられるのではないか。
だが逃げてもまだそこはシャンタリオの国内だとは分かった。
「どんな町があるんだ?」
「えっとなんだっけかな、行ったことないから分からないが、普通の町があるって」
「普通の町?なんだよそりゃ」
「そりゃリュセルスは特別だからね。王都だもの」
「そうか。そんじゃ普通に家があって店があって、みたいなそんな町か」
「他にどんな町があるんだよ」
またダルが笑う。
「いや、想像つかねえな」
「そうかもなあ、俺だってここしか知らねえしな」
「え、他の町行ったことねえのかよ?」
「ないよ」
「なんでだ?」
「なんでって、行く必要もないからかな。買い物があるなら王都で全部済むし、漁もあるし、そもそも俺まだ17歳だからな、これから大人になって行くこともあるかもしんねえけど、今のところそういう機会もなかった」
「なるほど」
トーヤは10歳になる前からもうあっちこっちの町に稼ぎに出かけていた。だから余計に「普通」と言う感覚が分からない。
だが「普通の町」と言うものはたくさん見ている。戦場以外にも人のいる場所はたくさんあり、その大部分が「普通の町」だった。
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