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第二章 第二節 青い運命
15 奇跡
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前の宮にたどり着き、中に入ってフェイが寝かされていた療養室へ向かって早足で歩く。
と、その少し前の廊下でリルが手を揉みながら右往左往しているのが目に入った。
「リル、どうかしたの!?」
ミーヤが声をかけるとこちらを見て、トーヤを認めると一瞬はっと目を見開いたが、それよりも先に立つ感情のままに言葉を発した。
「ミーヤ! どこに行っていたの! 探したのよ! フェイが、フェイの容態が悪くなったの!」
「なんだと」
トーヤが近づくと少し身を引きながら、それでも、
「個室に移されたわ。あなたたちを呼んでいます、早く行ってあげて!」
そう言う。
「行きましょう」
個室は療養室よりさらに奥、通り越してもう一つドアを開けたその向こうにあった。
療養室は広々として風も入り、心地よく過ごせそうな空間であったが、重傷者の入る個室の周囲は静かに過ごせるようにしてあるせいかやや暗い。
ミーヤが閉まっているドアの前で立ち止まり声をかけた。
「ミーヤです、こちらはフェイの病室でしょうか」
「入りなさい」
中から男の声がした。トーヤも何回か診察を受けたあの医者の声のようだった。
中に入るとそこはさらに暗く、まだ昼間だと言うのに遮光するようにカーテンを締め切り、ほの暗く照らすランプの芯が燃えるにおい、病室独特のにおいがこもっていた。
その中でフェイは浅く息をして目をつぶっていた。
「さっきまでトーヤ様、ミーヤ様と呼んでいたんだが、今はもう意識がないようだ」
医者が軽く首を左右に振った。
「おい、フェイ!」
トーヤがたまらず駆け寄って顔をのぞくが反応がない。
「水、持ってきたぞ、今飲ませてやるからな。大丈夫だ、すぐに良くなる」
「フェイ、フェイ、トーヤ様がシャンタルの聖なる水を汲んできてくださいましたよ、聞こえますか?」
「スプーンか何かあるか?」
「取ってきます!」
ミーヤが急いでスプーンを取りに行く。
トーヤはフェイの背中に腕を入れて起こそうとする。
「君、何をする、起こしてはいかん」
「うるせえ!」
医者を一括するとフェイを自分にもたれかけさせ上体を起こした。
ミーヤがスプーンを持って戻ってくる。
「ミーヤ、頼む」
「はい、分かりました」
ミーヤは瓶の水を一度カップに入れ、それをさらにすくってフェイの口元に持っていった。
色が薄くなり、本当にうっすらと力が抜けたように開かれたフェイの口元にスプーンの先を少し差し込み、ほんのひとしずくを口に入れる。水はフェイの口の中に染み込んでいった。
「フェイ、聖なる水ですよ、分かりますか?」
返事はない。
さらにもうひとしずく。
もうひとしずく。
3度繰り返した時、ほんのわずかだがフェイの口が動いた。
「フェイ、分かるか、聖なる水だ、もっと飲め、がんばって飲め」
トーヤが声をかけ、今度はスプーンに半分ほどの水をミーヤが口にゆっくりと入れてやる。
ごくり
「飲みました」
「よし、いいぞ、もっと飲め、がんばれ」
また半分ほど、飲んだ、また半分、飲んだ、半分。
何度か繰り返すうちにしっかりと飲み込むようになってきた。
ミーヤが今度はスプーン一杯の水を入れてやる。
ごくり、飲み込んだ。
もう一度、また飲み込む。
「…………」
わずかにフェイの口が動く。
「フェイ、なんだ、何が言いたい、言ってみろ」
「…………」
「フェイ、フェイ」
「……ト、トー、ヤ、さ、ま……」
「そうだ、トーヤだ、俺だ、分かるか?」
「トー、ヤ、さま?」
「そうだ、ミーヤもいるぞ!」
「ミーヤ、さま?」
「はい、ここにいますよ」
ミーヤがフェイの手をぎゅっと握る。
「トーヤさま、ミーヤさま……」
「おう、いるぞ、ここに」
トーヤがフェイの背中に回した手に力を込める。
「よかった……お会い、できた……」
「フェイ、水だ、もっと飲め。ミーヤ」
「はい」
ミーヤが今度はカップに入れた水をフェイの口にあててやる。
「むせないように、ゆっくりと……」
ゆっくりカップを傾けると、フェイが少しずつ少しずつ水を飲んだ。
ごくり。
喉が動いてしっかりと飲み込む。
ごくり。
また飲み込む。
何度か同じ動きを繰り返し、カップに半分ほど入っていた水を全部飲み干した。
「えらいぞ、まだ飲めるか?」
「おいしい……おいしい水です……」
「そうか、よかったな」
「フェイ、まだ飲みますか?」
「はい、おいしい……」
もう一度繰り返し、また半分ほどの水を全部飲んだ。
「いい調子だ、どうだ?」
「おいしいです」
心なしか言葉がしっかりしてきた。
「よかったな、これで元気になるぞ」
「ええ、なりますよ」
ミーヤもうれしそうにカップを握る手に力を込める。
「それ……おそろい……」
「え?」
トーヤがフェイが目を向けている方向を見る。
カップの取っ手に青いリボンが結ばれている。
ミーヤがフェイの髪に巻かれていたリボンがはずされていたのを結んだのだ。
「ああ、本当だ、おそろいだな」
「はい」
フェイがにっこりと笑った。
カースでフェイがトーヤのカップに結んだのと同じリボン、おそろいのカップになった。
と、その少し前の廊下でリルが手を揉みながら右往左往しているのが目に入った。
「リル、どうかしたの!?」
ミーヤが声をかけるとこちらを見て、トーヤを認めると一瞬はっと目を見開いたが、それよりも先に立つ感情のままに言葉を発した。
「ミーヤ! どこに行っていたの! 探したのよ! フェイが、フェイの容態が悪くなったの!」
「なんだと」
トーヤが近づくと少し身を引きながら、それでも、
「個室に移されたわ。あなたたちを呼んでいます、早く行ってあげて!」
そう言う。
「行きましょう」
個室は療養室よりさらに奥、通り越してもう一つドアを開けたその向こうにあった。
療養室は広々として風も入り、心地よく過ごせそうな空間であったが、重傷者の入る個室の周囲は静かに過ごせるようにしてあるせいかやや暗い。
ミーヤが閉まっているドアの前で立ち止まり声をかけた。
「ミーヤです、こちらはフェイの病室でしょうか」
「入りなさい」
中から男の声がした。トーヤも何回か診察を受けたあの医者の声のようだった。
中に入るとそこはさらに暗く、まだ昼間だと言うのに遮光するようにカーテンを締め切り、ほの暗く照らすランプの芯が燃えるにおい、病室独特のにおいがこもっていた。
その中でフェイは浅く息をして目をつぶっていた。
「さっきまでトーヤ様、ミーヤ様と呼んでいたんだが、今はもう意識がないようだ」
医者が軽く首を左右に振った。
「おい、フェイ!」
トーヤがたまらず駆け寄って顔をのぞくが反応がない。
「水、持ってきたぞ、今飲ませてやるからな。大丈夫だ、すぐに良くなる」
「フェイ、フェイ、トーヤ様がシャンタルの聖なる水を汲んできてくださいましたよ、聞こえますか?」
「スプーンか何かあるか?」
「取ってきます!」
ミーヤが急いでスプーンを取りに行く。
トーヤはフェイの背中に腕を入れて起こそうとする。
「君、何をする、起こしてはいかん」
「うるせえ!」
医者を一括するとフェイを自分にもたれかけさせ上体を起こした。
ミーヤがスプーンを持って戻ってくる。
「ミーヤ、頼む」
「はい、分かりました」
ミーヤは瓶の水を一度カップに入れ、それをさらにすくってフェイの口元に持っていった。
色が薄くなり、本当にうっすらと力が抜けたように開かれたフェイの口元にスプーンの先を少し差し込み、ほんのひとしずくを口に入れる。水はフェイの口の中に染み込んでいった。
「フェイ、聖なる水ですよ、分かりますか?」
返事はない。
さらにもうひとしずく。
もうひとしずく。
3度繰り返した時、ほんのわずかだがフェイの口が動いた。
「フェイ、分かるか、聖なる水だ、もっと飲め、がんばって飲め」
トーヤが声をかけ、今度はスプーンに半分ほどの水をミーヤが口にゆっくりと入れてやる。
ごくり
「飲みました」
「よし、いいぞ、もっと飲め、がんばれ」
また半分ほど、飲んだ、また半分、飲んだ、半分。
何度か繰り返すうちにしっかりと飲み込むようになってきた。
ミーヤが今度はスプーン一杯の水を入れてやる。
ごくり、飲み込んだ。
もう一度、また飲み込む。
「…………」
わずかにフェイの口が動く。
「フェイ、なんだ、何が言いたい、言ってみろ」
「…………」
「フェイ、フェイ」
「……ト、トー、ヤ、さ、ま……」
「そうだ、トーヤだ、俺だ、分かるか?」
「トー、ヤ、さま?」
「そうだ、ミーヤもいるぞ!」
「ミーヤ、さま?」
「はい、ここにいますよ」
ミーヤがフェイの手をぎゅっと握る。
「トーヤさま、ミーヤさま……」
「おう、いるぞ、ここに」
トーヤがフェイの背中に回した手に力を込める。
「よかった……お会い、できた……」
「フェイ、水だ、もっと飲め。ミーヤ」
「はい」
ミーヤが今度はカップに入れた水をフェイの口にあててやる。
「むせないように、ゆっくりと……」
ゆっくりカップを傾けると、フェイが少しずつ少しずつ水を飲んだ。
ごくり。
喉が動いてしっかりと飲み込む。
ごくり。
また飲み込む。
何度か同じ動きを繰り返し、カップに半分ほど入っていた水を全部飲み干した。
「えらいぞ、まだ飲めるか?」
「おいしい……おいしい水です……」
「そうか、よかったな」
「フェイ、まだ飲みますか?」
「はい、おいしい……」
もう一度繰り返し、また半分ほどの水を全部飲んだ。
「いい調子だ、どうだ?」
「おいしいです」
心なしか言葉がしっかりしてきた。
「よかったな、これで元気になるぞ」
「ええ、なりますよ」
ミーヤもうれしそうにカップを握る手に力を込める。
「それ……おそろい……」
「え?」
トーヤがフェイが目を向けている方向を見る。
カップの取っ手に青いリボンが結ばれている。
ミーヤがフェイの髪に巻かれていたリボンがはずされていたのを結んだのだ。
「ああ、本当だ、おそろいだな」
「はい」
フェイがにっこりと笑った。
カースでフェイがトーヤのカップに結んだのと同じリボン、おそろいのカップになった。
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