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第二章 第三節 進むべき道を
18 マユリアの行方
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「ってことは、今のシャンタルはちょっと変わってるってことなのか?」
「そうなります」
ミーヤが答えた。
「私は物心ついた頃にはもう今のシャンタルでいらしたので先代シャンタル、今のマユリアとさらに先代マユリアの3人しか存じ上げませんが、他の色の髪や肌の方がいらっしゃったという記録はないそうです。宮に入った時に教えられました。ですが、まさかそのような呼び名で呼ばれているとは……今初めて知りました……」
「ごめんよ、気を悪くしないでおくれよ」
ナスタがミーヤに謝る。
「いえ、そういうつもりで申したわけではないのです。ただ、少し驚いたもので」
「俺もだ、ミーヤと違う意味でだけどな」
色々な髪の色、肌の色を見てきているトーヤには驚くことであった。
「俺のいた国やその近所の国ではそりゃ色んな色の髪、目、肌、それに顔立ちのもんがいるな。銀色の髪は北の方に多い。ただ肌は南の方が濃い色が多いな。だから変わった組み合わせだなとは思ったが、ないことないから特に不思議ともなんとも思わなかった」
言われてみればみんな自分と同じ黒い髪、黒い瞳、日焼けの具合で多少の濃淡はあるが白い肌だと今更ながら気がついた。
「そういやここは俺と同じ感じのやつばっかりだもんな」
「ええ、なので時々トーヤが違う国の人だと忘れてしまいます」
そういえばあの時もミーヤはそう言っていた。フェイを1人で送り出すと知った時だ。
「それで、親御様ってのは?」
「ああ、次代様の母親だよ、宮に入られたそうだ」
「いつですか?」
「今日だよ」
「まあ、よりにもよってそんな日に私は宮を離れていたなんて……」
ミーヤが焦るように言った。
「帰るか?」
「はい、できるだけ早く」
そうして急いでカースを後にしたが、戻ってみると常には静かに動いている宮が蜂の巣をつついたような騒ぎで驚いた。
「ミーヤよかった、手が足りないのよ、何しろ急だったものでね」
「らしいですね。カースで聞いて急いで戻ってきました」
同僚の侍女がミーヤにも来るようにと奥宮に引っ張って行ってしまった。
「大騒ぎだな……あんたもこれ、初めてなのか?」
ルギに聞くと、
「いや、2度目になる」
意外にもすんなりと答えた。
「ってことは、今のマユリアがシャンタルの頃に衛士になったってことか?」
「まあそうだな」
「交代って何やるんだ?」
「まずは次代様の出産を待つ」
「これから生まれるのか」
「そうだ」
これもまた珍しいことにルギが丁寧にトーヤに説明する。
「親御様が奥宮に迎えられ次代様が生まれる。落ち着かれる頃、1月ほど後に交代の日が定められると当代がご自分の中のシャンタルを次代様に移される。そうして1日だけシャンタルが2人になる特別な日を迎える」
「シャンタルが2人?」
「そうだ。シャンタルの力は大きくて偉大だ、定まるのを待つために1日時間をかけるのだ」
「なるほど。そんでマユリアはどうなる?」
「翌日、先代にご自分の中のマユリアを移し人に戻られる」
そうして以前トーヤがアランたちに説明した「真名」について説明をしてくれた。
「ふえ~なんか、えらいことだな」
「そうだ、大事な日だ」
ルギが複雑な顔をしているのにトーヤは気づいた。
「よう、何だ、その顔は?」
「何がだ」
「いや、なんか、今まで見たことねえような顔してるぜ、あんた」
「そんなことはない」
「いや、ある」
トーヤはルギの顔をじっと見た。
「なんだろうな、あんたがそんな顔するようなこと……」
ルギは何も答えない。
「あんたがそうなるってのは……マユリアか、マユリアになんかあるんだな?」
ルギがジロリとトーヤを睨みつけた。
「おろ? 当たり、だな……」
トーヤがニヤリとした。
「なんだよ、マユリアになんかあんだろ? そういや人間に戻るって言ってたな。戻った後、どうなんだよ?」
ルギはしばらく黙って考えていたが、
「マユリアは、現世に戻られたら後宮に迎えられることになっている」
やがて淡々とそう言った。
「後宮ってあれか、王様の奥様になるってことか? 王妃になるのか?」
「いや違う。俺は王宮とはそれまであの大臣のおっさん以外と接触がなかったもんでよく知らなかったんだが、王様は当時もう50ぐらいで跡継ぎの王子が妃がいるぐらいの年だった。だから側室の1人になるってこったな」
「ええー、いくら偉いってもそんなおっさんの? マユリアってその頃、シャンタル十年マユリア十年で二十歳ぐらいだろ?」
「そんなもんだな」
「まあ神様ったってその座から降りたら普通の人間、一国民だ、王様の命令には逆らえないんじゃねえの?」
「そういうことだ」
トーヤがベルとアランに答える。
「なんか、かわいそうだな……」
「おまえはずっとかわいそうかわいそう言ってんな」
トーヤが笑ってまたベルの頭をグシャグシャにする。
「やめろってー直したばっかなんだからよ」
「また直しゃいいだろうがよ、おらおら」
わざとベルの頭を撫でくりまわしてベルに手をはたかれた。
「いてーな」
そう言って笑いながら、
「もしもこいつを連れて逃げるような事態になってなかったら、今頃は後宮にいたのかもな。幸せになったかどうかは知らんが」
トーヤがそう言った。
「そうなります」
ミーヤが答えた。
「私は物心ついた頃にはもう今のシャンタルでいらしたので先代シャンタル、今のマユリアとさらに先代マユリアの3人しか存じ上げませんが、他の色の髪や肌の方がいらっしゃったという記録はないそうです。宮に入った時に教えられました。ですが、まさかそのような呼び名で呼ばれているとは……今初めて知りました……」
「ごめんよ、気を悪くしないでおくれよ」
ナスタがミーヤに謝る。
「いえ、そういうつもりで申したわけではないのです。ただ、少し驚いたもので」
「俺もだ、ミーヤと違う意味でだけどな」
色々な髪の色、肌の色を見てきているトーヤには驚くことであった。
「俺のいた国やその近所の国ではそりゃ色んな色の髪、目、肌、それに顔立ちのもんがいるな。銀色の髪は北の方に多い。ただ肌は南の方が濃い色が多いな。だから変わった組み合わせだなとは思ったが、ないことないから特に不思議ともなんとも思わなかった」
言われてみればみんな自分と同じ黒い髪、黒い瞳、日焼けの具合で多少の濃淡はあるが白い肌だと今更ながら気がついた。
「そういやここは俺と同じ感じのやつばっかりだもんな」
「ええ、なので時々トーヤが違う国の人だと忘れてしまいます」
そういえばあの時もミーヤはそう言っていた。フェイを1人で送り出すと知った時だ。
「それで、親御様ってのは?」
「ああ、次代様の母親だよ、宮に入られたそうだ」
「いつですか?」
「今日だよ」
「まあ、よりにもよってそんな日に私は宮を離れていたなんて……」
ミーヤが焦るように言った。
「帰るか?」
「はい、できるだけ早く」
そうして急いでカースを後にしたが、戻ってみると常には静かに動いている宮が蜂の巣をつついたような騒ぎで驚いた。
「ミーヤよかった、手が足りないのよ、何しろ急だったものでね」
「らしいですね。カースで聞いて急いで戻ってきました」
同僚の侍女がミーヤにも来るようにと奥宮に引っ張って行ってしまった。
「大騒ぎだな……あんたもこれ、初めてなのか?」
ルギに聞くと、
「いや、2度目になる」
意外にもすんなりと答えた。
「ってことは、今のマユリアがシャンタルの頃に衛士になったってことか?」
「まあそうだな」
「交代って何やるんだ?」
「まずは次代様の出産を待つ」
「これから生まれるのか」
「そうだ」
これもまた珍しいことにルギが丁寧にトーヤに説明する。
「親御様が奥宮に迎えられ次代様が生まれる。落ち着かれる頃、1月ほど後に交代の日が定められると当代がご自分の中のシャンタルを次代様に移される。そうして1日だけシャンタルが2人になる特別な日を迎える」
「シャンタルが2人?」
「そうだ。シャンタルの力は大きくて偉大だ、定まるのを待つために1日時間をかけるのだ」
「なるほど。そんでマユリアはどうなる?」
「翌日、先代にご自分の中のマユリアを移し人に戻られる」
そうして以前トーヤがアランたちに説明した「真名」について説明をしてくれた。
「ふえ~なんか、えらいことだな」
「そうだ、大事な日だ」
ルギが複雑な顔をしているのにトーヤは気づいた。
「よう、何だ、その顔は?」
「何がだ」
「いや、なんか、今まで見たことねえような顔してるぜ、あんた」
「そんなことはない」
「いや、ある」
トーヤはルギの顔をじっと見た。
「なんだろうな、あんたがそんな顔するようなこと……」
ルギは何も答えない。
「あんたがそうなるってのは……マユリアか、マユリアになんかあるんだな?」
ルギがジロリとトーヤを睨みつけた。
「おろ? 当たり、だな……」
トーヤがニヤリとした。
「なんだよ、マユリアになんかあんだろ? そういや人間に戻るって言ってたな。戻った後、どうなんだよ?」
ルギはしばらく黙って考えていたが、
「マユリアは、現世に戻られたら後宮に迎えられることになっている」
やがて淡々とそう言った。
「後宮ってあれか、王様の奥様になるってことか? 王妃になるのか?」
「いや違う。俺は王宮とはそれまであの大臣のおっさん以外と接触がなかったもんでよく知らなかったんだが、王様は当時もう50ぐらいで跡継ぎの王子が妃がいるぐらいの年だった。だから側室の1人になるってこったな」
「ええー、いくら偉いってもそんなおっさんの? マユリアってその頃、シャンタル十年マユリア十年で二十歳ぐらいだろ?」
「そんなもんだな」
「まあ神様ったってその座から降りたら普通の人間、一国民だ、王様の命令には逆らえないんじゃねえの?」
「そういうことだ」
トーヤがベルとアランに答える。
「なんか、かわいそうだな……」
「おまえはずっとかわいそうかわいそう言ってんな」
トーヤが笑ってまたベルの頭をグシャグシャにする。
「やめろってー直したばっかなんだからよ」
「また直しゃいいだろうがよ、おらおら」
わざとベルの頭を撫でくりまわしてベルに手をはたかれた。
「いてーな」
そう言って笑いながら、
「もしもこいつを連れて逃げるような事態になってなかったら、今頃は後宮にいたのかもな。幸せになったかどうかは知らんが」
トーヤがそう言った。
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