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第二章 第七節 残酷な条件
4 逃亡者
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「え?」
「ええ?」
男とミーヤが同時に目を見開いて驚く。
「やっぱりかそうだったか……」
トーヤは今までの自分の推測が当たっていたことを確信できた。
「だから逃げたんだな……そりゃ逃げるよな……」
「え?」
ミーヤにはトーヤが言っている意味が分からない。
「あんた、何を知ってる、何を言ってるんだ」
「多分、あなたが思っている以上に色々と」
男の警戒がさらに強くなる。
「いや、だからどうこうしようってんじゃないんですよ。うーん、こんな場所で立ち話するようなことでもないし、部屋、入っていいですか?」
男は返事をせずにじっとトーヤを見ている。
「俺は、シャンタルを、当代シャンタルを助けてくれって言われてここにいます」
「ええっ!」
ミーヤはトーヤが仕事のことを次代様の父親とはいえ、初対面の人間に話したことに驚いて声を上げてしまった。
「こっちは侍女のミーヤ、俺の世話役をしてくれてます。ちょっと色々話しませんか?」
少し考えて男は、
「分かった……」
そう言ってトーヤとミーヤを部屋に入れてくれた。
室内でトーヤが話した内容にミーヤは心底から驚いた。
「だから逃げたんですね、子どもを取られたくなくて」
「いや、少し違う」
トーヤの質問に父親は首を横に振った。
「少しでも長く一緒にいたかった、妻と子どもと3人で。逃げようなんて、逃げ切れるなんて思ってませんしね」
「そりゃまそうか……」
「だから、そろそろ産み月になって覚悟を決めたので、自分たちで宮へ来たんですよ」
「そうなのか……立派だな、俺だったら逃げるけどな」
「次代様をお渡しするのは大事なことです。国の行く末に関わる。ですが……」
「ですよね、心配ですよね」
「それと、当代を助けるという話、あれはなんなんです」
「いや、それが、はっきり言いますが俺にもよく分かりません」
トーヤは自分が嵐に流されてこの国に来たこと、そして「助け手」と呼ばれて宮の客分として滞在していること、もうすぐ当代を連れてこの国から出るだろうことを話した。
「そうなんですか……」
「なんでなのかは俺にも分かりません。次代様が生まれたら教えるってマユリアは言ってるけど、それをあなたに話せるかどうかも分かりません。まあ、そういうことです」
「そうですか……」
父親はそうとだけ言ってため息をついた。
「それで、どうしてそれを私に?」
「う~ん、俺が答え合わせをしたかったから、かな。仕事をする上ですっきりしたいと思いました。もうすぐこの国から出ていくもんで、その前に」
「そうですか」
「それで、どうするつもりですか?」
「どうとは?」
「この後です、次代様が生まれたらまた村に帰るんですか?」
「分かりませんが、今のところは王都に残ろうかと思ってます。妻と相談して決めますが」
「そうですか」
「少しでも子どものそばにいたいという気持ちもありますし……」
「そうか……」
うーん、とトーヤは考えこんだ。
「もしも、どこかに行くならミーヤの故郷に行ってください。王都にいるのならカース知ってますよね? あの村の近くに」
「なぜ」
「俺、仕事が終わったら戻ってくるつもりです。そうしたらあなたにも報告したいから、どうなったかを。だから居場所を知っておきたい」
父親は少し考えていたがトーヤの言っている意味を理解すると頭を下げた。
「ありがとうございます……」
「いえ、無事に生まれるといいですね、娘さん」
次代様だ、もう女の子だと生まれる前から決まっている。
「それだけです、今願うのは。それと妻が無事であるようにと」
「ええ」
「あの……」
ミーヤが声をかける。
「祖父に、理由は伏せますがこちらにいらっしゃると知らせても構いませんか? 大層心配しておりましたので」
そう、ミーヤの祖父が一緒に仕事をしていていなくなった職人夫婦というのが次代様の両親だったのだ。
「そしてトーヤが言うように、もしも王都から離れられるのなら、また祖父のところで一緒にいていただけたら……」
父親は少し考えていたようだが、
「はい、分かりました。よろしくお伝え下さい」
そう言ってミーヤにも頭を下げた。
2人は父親の部屋を出て前の宮に戻る。
「驚きました……」
「だろうな」
「よく気が付きましたね」
「いや、なんだろうな、なんか集まってきてるのに気付いてな」
「集まる?」
「これも運命ってやつなのかねえ、たまたま集まった破片がぴったり合うのに気付いちまったからなあ」
トーヤがため息をつく。
「なんにしても、あんたに居場所を教えるって約束してくれてよかった」
「ええ、そうですね……」
ミーヤが痛ましそうな顔をする。
「そんな顔するなって、なんか、みんなうまくいくように思うぜ」
「そうでしょうか……」
「なんにしろ、俺は仕事をするだけだ。それがうまくいきゃあ、みんなうまくいく。そうだろ?」
「はい、そう思いたいです……」
「思いたいじゃなくて、そうなるんだよ」
自信たっぷりに言うトーヤに、
「ええ、そう、そうですね、きっとうまくいきます。ええ、そうなります……」
ミーヤがそう答えた。
「ええ?」
男とミーヤが同時に目を見開いて驚く。
「やっぱりかそうだったか……」
トーヤは今までの自分の推測が当たっていたことを確信できた。
「だから逃げたんだな……そりゃ逃げるよな……」
「え?」
ミーヤにはトーヤが言っている意味が分からない。
「あんた、何を知ってる、何を言ってるんだ」
「多分、あなたが思っている以上に色々と」
男の警戒がさらに強くなる。
「いや、だからどうこうしようってんじゃないんですよ。うーん、こんな場所で立ち話するようなことでもないし、部屋、入っていいですか?」
男は返事をせずにじっとトーヤを見ている。
「俺は、シャンタルを、当代シャンタルを助けてくれって言われてここにいます」
「ええっ!」
ミーヤはトーヤが仕事のことを次代様の父親とはいえ、初対面の人間に話したことに驚いて声を上げてしまった。
「こっちは侍女のミーヤ、俺の世話役をしてくれてます。ちょっと色々話しませんか?」
少し考えて男は、
「分かった……」
そう言ってトーヤとミーヤを部屋に入れてくれた。
室内でトーヤが話した内容にミーヤは心底から驚いた。
「だから逃げたんですね、子どもを取られたくなくて」
「いや、少し違う」
トーヤの質問に父親は首を横に振った。
「少しでも長く一緒にいたかった、妻と子どもと3人で。逃げようなんて、逃げ切れるなんて思ってませんしね」
「そりゃまそうか……」
「だから、そろそろ産み月になって覚悟を決めたので、自分たちで宮へ来たんですよ」
「そうなのか……立派だな、俺だったら逃げるけどな」
「次代様をお渡しするのは大事なことです。国の行く末に関わる。ですが……」
「ですよね、心配ですよね」
「それと、当代を助けるという話、あれはなんなんです」
「いや、それが、はっきり言いますが俺にもよく分かりません」
トーヤは自分が嵐に流されてこの国に来たこと、そして「助け手」と呼ばれて宮の客分として滞在していること、もうすぐ当代を連れてこの国から出るだろうことを話した。
「そうなんですか……」
「なんでなのかは俺にも分かりません。次代様が生まれたら教えるってマユリアは言ってるけど、それをあなたに話せるかどうかも分かりません。まあ、そういうことです」
「そうですか……」
父親はそうとだけ言ってため息をついた。
「それで、どうしてそれを私に?」
「う~ん、俺が答え合わせをしたかったから、かな。仕事をする上ですっきりしたいと思いました。もうすぐこの国から出ていくもんで、その前に」
「そうですか」
「それで、どうするつもりですか?」
「どうとは?」
「この後です、次代様が生まれたらまた村に帰るんですか?」
「分かりませんが、今のところは王都に残ろうかと思ってます。妻と相談して決めますが」
「そうですか」
「少しでも子どものそばにいたいという気持ちもありますし……」
「そうか……」
うーん、とトーヤは考えこんだ。
「もしも、どこかに行くならミーヤの故郷に行ってください。王都にいるのならカース知ってますよね? あの村の近くに」
「なぜ」
「俺、仕事が終わったら戻ってくるつもりです。そうしたらあなたにも報告したいから、どうなったかを。だから居場所を知っておきたい」
父親は少し考えていたがトーヤの言っている意味を理解すると頭を下げた。
「ありがとうございます……」
「いえ、無事に生まれるといいですね、娘さん」
次代様だ、もう女の子だと生まれる前から決まっている。
「それだけです、今願うのは。それと妻が無事であるようにと」
「ええ」
「あの……」
ミーヤが声をかける。
「祖父に、理由は伏せますがこちらにいらっしゃると知らせても構いませんか? 大層心配しておりましたので」
そう、ミーヤの祖父が一緒に仕事をしていていなくなった職人夫婦というのが次代様の両親だったのだ。
「そしてトーヤが言うように、もしも王都から離れられるのなら、また祖父のところで一緒にいていただけたら……」
父親は少し考えていたようだが、
「はい、分かりました。よろしくお伝え下さい」
そう言ってミーヤにも頭を下げた。
2人は父親の部屋を出て前の宮に戻る。
「驚きました……」
「だろうな」
「よく気が付きましたね」
「いや、なんだろうな、なんか集まってきてるのに気付いてな」
「集まる?」
「これも運命ってやつなのかねえ、たまたま集まった破片がぴったり合うのに気付いちまったからなあ」
トーヤがため息をつく。
「なんにしても、あんたに居場所を教えるって約束してくれてよかった」
「ええ、そうですね……」
ミーヤが痛ましそうな顔をする。
「そんな顔するなって、なんか、みんなうまくいくように思うぜ」
「そうでしょうか……」
「なんにしろ、俺は仕事をするだけだ。それがうまくいきゃあ、みんなうまくいく。そうだろ?」
「はい、そう思いたいです……」
「思いたいじゃなくて、そうなるんだよ」
自信たっぷりに言うトーヤに、
「ええ、そう、そうですね、きっとうまくいきます。ええ、そうなります……」
ミーヤがそう答えた。
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