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第三章 第四節 死と恐怖
15 長い夜
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「シャンタル、どうぞマユリアを、ラーラ様を、そしてキリエをお信じください」
「信じない!」
この状況で信じろと言われてもそれは無理だとミーヤも思った。
「どうぞトーヤにお心をお開きになって、そして助けをお求めください。それが唯一の道なのです」
「嫌!トーヤは嫌い!トーヤもシャンタルを嫌い!トーヤも一緒になってシャンタルを沈めるの!」
「そんなことはございません!」
キリエが声を張り上げる。
「トーヤは約束いたしました、シャンタルがお心を開かれたら助けると。シャンタルが自ら助けてと言えば何があっても助けると!」
「嫌!」
シャンタルがミーヤにしがみついたまま激しく首を横に振る。
「嘘!トーヤはシャンタルを助けない!」
「マユリアやキリエの言葉を思い出されたのなら、どうぞ、どうぞトーヤの言葉も思い出してくださいませ!」
「嫌!思い出したくない!」
「思い出してください!」
「嫌!」
そう言うなりミーヤの背を離れ、走って寝室に駆け込んでしまった。
「シャンタル!」
急いで後を追う。
シャンタルは寝台の上に上がり布団の中に潜り込んでいた。
「シャンタル……」
気持ちは分かる。一番信頼していたはずの人たちが自分に辛いことを強いる、それも苦しいことを、命を落とすかも知れないことを。
そんなことを知って平常でいられる人間がどれほどいるものか。
寝台横の椅子に腰掛ける。いつもはラーラ様がそこに座り、シャンタルを見守っているだろう椅子に。
キリエは寝室の入り口に立ち、じっと黙って立っている。
ミーヤをじっと見て、黙って頭を下げる。シャンタルを頼む、そう言っているのだろう。
ぱたりと扉が閉じられ、寝室にはシャンタルとミーヤの2人になった。
長い夜になるだろう、ミーヤはそう思った。
じっと待つ。シャンタルが何かを言うまで、動くまで。そう思ってミーヤはじっと待ち続けた。
時間がただ進んでいくがどのぐらいの早さで進んでいるか分からない。長いような、短いような、待たねばならないような、急かさねばならないような。そんな時間の間に浮かんだような形でずっと待ち続けた。
何時頃になったのだろう。誰も寝室に近寄らず静かに夜が進んでいったある時に、シャンタルが布団を持ち上げて顔を出した。
「ミーヤ?」
「はい」
すぐに返事をする。
「ずっといてくれたの?」
「はい」
「ミーヤはシャンタルの味方?」
「だと思います」
正直に思ったままを言う。
「思う?」
「はい、そう思ってはおりますが」
「思ってるだけ?」
「思っております、そのつもりでおります」
「つもり?」
「はい」
ミーヤが続ける。
「ミーヤはシャンタルの味方だと思っております、信じております。ですが、何が正しいのか、それで果たしていいのかが分からないのです」
シャンタルが警戒の色を見せる。
「ミーヤもシャンタルを沈めるの?」
返答に困る。
「沈めるの?」
少し考えて答える。
「ミーヤは、シャンタルに助かっていただきたいと思っております」
それだけは確かなことだ。
「そして、そのためにできることは何でもする。その覚悟でシャンタルのお部屋に入れていただきました」
シャンタルがじっとミーヤを見つめる。嘘はないと思ったようだ。
「シャンタルを助けてくれるの?」
「はい」
「どうやって?」
「分かりません」
弱く首を振る。
「シャンタルは沈むの?死ぬの?」
「そんなことにならぬように、そのためにいるのです」
シャンタルがじっとミーヤを見つめ、そして聞いた。
「シャンタルはどうすればいいの?」
初めてのことだ。
シャンタルが、自分がどうすればいいのかを聞いたのは。
「トーヤに助けを求めてくださいませ」
「それは……」
シャンタルが黙り込み、そしてしばらくして言う。
「トーヤは嫌……」
「シャンタル……」
「トーヤは怖い、怒鳴るの、シャンタルを嫌いなの、シャンタルじゃなくて他の子を助けたいの、シャンタルを助けたくないの」
「そんなことはございません」
「でも言ってた」
シャンタルが思い出すようにして言う。
「トーヤは、シャンタルが沈むのをじっと見てるって言った」
「それは違います。トーヤはシャンタルに助けてと言ってもらいたくてそう言っているのです」
「シャンタルが助けてって言わなかったら?」
「それは……」
きっとトーヤは見捨てる。シャンタルが沈むのをじっと見届ける。いくら自分が苦しくとも。
「シャンタルが沈むのを、死ぬのをじっと見ていると思います」
シャンタルがビクリと体を震わせた。
「やっぱり怖い……」
「ですが、それはシャンタルがお心を開かれない時、です。どうぞトーヤに心から助けてと言ってくださいませ」
「心から……」
口先だけで助けてと言ってもトーヤはきっと断るだろう。嘘をついても見破るだろう。
「はい。シャンタルがトーヤを信頼し、助けてくれると信じてそう言ってくだされば助けてくれます」
「どうやって?」
どうやって。
ミーヤは考えて言う。
「朝まで時間がございます。トーヤの話をしてさしあげましょう。荒っぽい話し方、様子なので誤解されやさすい人ですが、本当はとてもやさしい人なのです」
「信じない!」
この状況で信じろと言われてもそれは無理だとミーヤも思った。
「どうぞトーヤにお心をお開きになって、そして助けをお求めください。それが唯一の道なのです」
「嫌!トーヤは嫌い!トーヤもシャンタルを嫌い!トーヤも一緒になってシャンタルを沈めるの!」
「そんなことはございません!」
キリエが声を張り上げる。
「トーヤは約束いたしました、シャンタルがお心を開かれたら助けると。シャンタルが自ら助けてと言えば何があっても助けると!」
「嫌!」
シャンタルがミーヤにしがみついたまま激しく首を横に振る。
「嘘!トーヤはシャンタルを助けない!」
「マユリアやキリエの言葉を思い出されたのなら、どうぞ、どうぞトーヤの言葉も思い出してくださいませ!」
「嫌!思い出したくない!」
「思い出してください!」
「嫌!」
そう言うなりミーヤの背を離れ、走って寝室に駆け込んでしまった。
「シャンタル!」
急いで後を追う。
シャンタルは寝台の上に上がり布団の中に潜り込んでいた。
「シャンタル……」
気持ちは分かる。一番信頼していたはずの人たちが自分に辛いことを強いる、それも苦しいことを、命を落とすかも知れないことを。
そんなことを知って平常でいられる人間がどれほどいるものか。
寝台横の椅子に腰掛ける。いつもはラーラ様がそこに座り、シャンタルを見守っているだろう椅子に。
キリエは寝室の入り口に立ち、じっと黙って立っている。
ミーヤをじっと見て、黙って頭を下げる。シャンタルを頼む、そう言っているのだろう。
ぱたりと扉が閉じられ、寝室にはシャンタルとミーヤの2人になった。
長い夜になるだろう、ミーヤはそう思った。
じっと待つ。シャンタルが何かを言うまで、動くまで。そう思ってミーヤはじっと待ち続けた。
時間がただ進んでいくがどのぐらいの早さで進んでいるか分からない。長いような、短いような、待たねばならないような、急かさねばならないような。そんな時間の間に浮かんだような形でずっと待ち続けた。
何時頃になったのだろう。誰も寝室に近寄らず静かに夜が進んでいったある時に、シャンタルが布団を持ち上げて顔を出した。
「ミーヤ?」
「はい」
すぐに返事をする。
「ずっといてくれたの?」
「はい」
「ミーヤはシャンタルの味方?」
「だと思います」
正直に思ったままを言う。
「思う?」
「はい、そう思ってはおりますが」
「思ってるだけ?」
「思っております、そのつもりでおります」
「つもり?」
「はい」
ミーヤが続ける。
「ミーヤはシャンタルの味方だと思っております、信じております。ですが、何が正しいのか、それで果たしていいのかが分からないのです」
シャンタルが警戒の色を見せる。
「ミーヤもシャンタルを沈めるの?」
返答に困る。
「沈めるの?」
少し考えて答える。
「ミーヤは、シャンタルに助かっていただきたいと思っております」
それだけは確かなことだ。
「そして、そのためにできることは何でもする。その覚悟でシャンタルのお部屋に入れていただきました」
シャンタルがじっとミーヤを見つめる。嘘はないと思ったようだ。
「シャンタルを助けてくれるの?」
「はい」
「どうやって?」
「分かりません」
弱く首を振る。
「シャンタルは沈むの?死ぬの?」
「そんなことにならぬように、そのためにいるのです」
シャンタルがじっとミーヤを見つめ、そして聞いた。
「シャンタルはどうすればいいの?」
初めてのことだ。
シャンタルが、自分がどうすればいいのかを聞いたのは。
「トーヤに助けを求めてくださいませ」
「それは……」
シャンタルが黙り込み、そしてしばらくして言う。
「トーヤは嫌……」
「シャンタル……」
「トーヤは怖い、怒鳴るの、シャンタルを嫌いなの、シャンタルじゃなくて他の子を助けたいの、シャンタルを助けたくないの」
「そんなことはございません」
「でも言ってた」
シャンタルが思い出すようにして言う。
「トーヤは、シャンタルが沈むのをじっと見てるって言った」
「それは違います。トーヤはシャンタルに助けてと言ってもらいたくてそう言っているのです」
「シャンタルが助けてって言わなかったら?」
「それは……」
きっとトーヤは見捨てる。シャンタルが沈むのをじっと見届ける。いくら自分が苦しくとも。
「シャンタルが沈むのを、死ぬのをじっと見ていると思います」
シャンタルがビクリと体を震わせた。
「やっぱり怖い……」
「ですが、それはシャンタルがお心を開かれない時、です。どうぞトーヤに心から助けてと言ってくださいませ」
「心から……」
口先だけで助けてと言ってもトーヤはきっと断るだろう。嘘をついても見破るだろう。
「はい。シャンタルがトーヤを信頼し、助けてくれると信じてそう言ってくだされば助けてくれます」
「どうやって?」
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