怪異脱出劇

マカロン

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「羽隅、はすみね。なるほどな。歴史の修正ってやつ?ふぅん、へぇ。
ハスミっておまえかぁぁぁぁ!!!」
冷静だった声色は突然にして怒鳴り声に変わりました。なにかを理解したそうで、そういうことかよ、と繰り返し呟いております。
「これたぶん繋がってんの俺の時代じゃねえし、さらに言うならスマホでにちゃんねる開けたのも羽隅さんと場所がマッチしたからってことか⁉
え、じゃあ待てよ、帰れんの七年後じゃんか。俺の受験返せ糞やろう!!」
絶望か怒りか、彼にはうちから出る感情と言うものがあるようで、そのかたちのよい唇から紡がれる、呪詛のような言葉たちは暫く止まりませんでした。
15:名無しのオカルト好き
え、やば、現状は?いま駅前?電車はもう行ってる?
16:???のオカルト好き
縺ッ縺励j蜴サ繧翫∪縺励◆髮サ霆翫?
縺吶$縺ォ邱夊キッ繧呈ュゥ縺阪∪縺励◆縲
縺ソ縺滄ァ?恚譚ソ縺ョ霑代¥縺九i縺ッ縺翫→縺後@縺セ縺吶?
縺ッ繧?@遶九※繧句、ェ鮠薙?髻ウ縺後@縺セ縺吶?
縺ヲ縺ォ豎励′豬√l縺ヲ縺?∪縺吶?
縺阪%縺医k縺ョ縺ッ驤エ縺ョ髻ウ繧ゅ?
17:???のオカルト好き
閨槭>縺ヲ縺上l縲√f縺阪%縲
縺ォ縺偵m
18:名無しのオカルト好き
まじか~電車行っちゃったの?ん?
これ縦読みでも読めるじゃん。そういう系?うちオカルトスレやで
19:名無しのオカルト好き
てか、【閨槭>縺ヲ縺上l縲√f縺阪%縲
縺ォ縺偵m】ってなに?だれなの?どういうこと?

「んだこれ⁉」
桜倉くんは、慌てたように、板を手から振り落としました。それを持ち前の素晴らしい反射で見事地面に叩きつける前に羽隅くんは掴みました。
 これどうしましょう、両手で抱えおろおろとしながら、私に助けを求める羽隅くんの瞳は、やはり大型犬のようです。そしていぬのお顔で顔を傾け、そのお顔は不思議そうな表情になります。
 私もつられて羽隅くんの顔の向きを向けば、同じように謎を引き寄せます。どこかで嗅いだような、懐かしくて、しかし悲しくなるような香りがするのです。夜の匂いや、汽車や、都会の匂いともまた違います。
「……まさか。そんな、嘘じゃないわよね、本当に…?」
「奥さま!!」
「は!?おいっ、藤川さん!?」
呼び止める声など耳に入りませんでした。懐かしくて、愛しくて、忘れかけていたいつかに抱き締められて感じた香り。

走って、走って、左足の下駄が落ちたことさえ気にせずあの人のもとを目指して。
あたりには、真っ赤な彼岸花たちが咲き乱れております。ぼう、と怪しいなにかに誘われるように、私はそのまま走り続けました。
そのまま進んだ先には、学校のような風貌の建物の前で、添い遂げることを諦めていた人がいらっしゃいました。なんだか記憶の風貌とは違い、髪は白く垂れ下がり、目を引く紅のように赤い瞳と羽織を着ておりまして、その下には、葬儀のような純白の着物をしておりますようでした。ですが、表情は真逆に穏やかで、手を広げ微笑み、私の抱擁を待っておられます。
ああ、ずっとお会いしたかったのです……。届く距離ではありませんが、黙っていられませんでした。しかし、想いは伝わったのでしょうか。彼は頷いてくださいました。
彼のもとへ、先程よりも早く走ります。もう少しです、迷わず手を伸ばしました。
「健治さま……!」
「おい、この下駄落とし……待て!」
ですが、彼の人の元へは行けませんでした。
後ろから抱き締められるように捕らえられたからです。
「離して!!いや、健治様!!」
泣き叫ぼうが、桜倉くんは離してくれませんでした。なぜこんなことを、愛しい夫に会えた妻を、どうして引き留めるのです。疑問と怒りは、声にならない声を作り出し、抵抗はいっそう強まりました。
「だめです、奥さま!僕も、あの人が旦那様なのも、奥様の苦しいお気持ちもよくわかります!」
「なら、このこを私から離してちょうだい!私は健治様の無事を確認しなければならないのよ!!ねぇ、お願いよ、羽隅くん……。
私は健治様と、お家へ一緒に帰って、あの日のような生活をするの……。健治さま、私、寂しかったのですよ?」
 健治様は、私の言葉に一瞬悲しげな顔をなされました。どうしたのですか、と私は言葉を発しましたが、健治さまの表情は切なげなままです。
「奥さま、どうか冷静になってください!奥さまは誘われたのです、罠です、彼は死人です!」
「そんな、おかしな人ね。旦那様は、健治さまは、目の前にいらっしゃるでしょう……?」
「奥さま……っ、どうして……。」
羽隅くんの言っている意味が、いまいちよくわかりません。そんな彼は、再会に喜ぶのでも感動するのでもなく、ただ呆然と立って絶望した顔をしております。
不思議で滑稽なその様子に、乾いた笑いと、吐息が口から漏れでました。
「どうしてわかってくださらないの?」
「わかってねぇのはアンタだよ!現実逃避をこんな状況で続けるつもりか⁉てめぇ、二度と生きて帰れなくなるぞ⁉」
「恩があるこの人の傍にいられるなら、それでもいいかもしれないわ……。」
小さくそういうと、ふざけるな、と怒られます。年下に怒られるだなんて、いつぶりでしょう。結婚前に家族と住んでいたときの、弟との喧嘩以来でしょうか。それに、健治様が苦笑いしていらっしゃったのも、覚えております。
「なつかしいわね……。」
愛する家族と、私の夢の手伝いをしてくれた健治様。
人によっては、お金で買われたようだとおっしゃいますが、私にとってはとても優しい手を差しのべてくれた人。
大切な人たちと笑いあえたあの日々が、酷く恋しくて。
 私が健治様を見つめていれば、桜倉くんは気をそらすように私の腕を強引に、しかし強すぎない力で引っ張り上げました。
「ああそうだ、アンタのその懐かしい、は決して戻らねぇもんだ。綺麗な思い出のままにするべきなんだよ。住職の親父はよく言ってた、死んだ人間が現れたときは、それは思い出の人じゃなく、その人の形をした全く違う化物だ、死を呼び寄せる死神だって、一緒に過ごしても、やつがアンタの本当に愛する人じゃないかもだろ!」
「で、も……。」
「でもじゃねぇ!聞け、藤川さん……いや、違う。いまここにいるときだけは、アンタは藤川健治の妻じゃなくなれ……おねがいだ、由紀子さん。あんたを、守らせろ。」
「ええ!僕も同感です!」
 二人の真剣な顔つきに、心を惑わせる、過去という名の暗闇の出口がかすかに現れました。彼らは、本気で私を黄泉の国へ連れていきたくないようです。
「どうして。」
「寺生まれの息子として、アンタを怪異絡みで死なせるわけにはいかないんだよ!おやじたちの仕事を、尊敬して認めてる訳じゃねえけど!ただ……そうだ、夢見が悪くなるんだよ!」
「ぼ、僕は…あなたが大切だからです、こんないいひとを化物になんて渡せません!僕、そこそこ喧嘩強いですし!あ、幽霊に拳骨効きますかね……⁉」
「羽隅くん……、桜倉、くん……。」
「それに奥さま、僕は……!」
眉を寄せ、上ずった声で羽隅くんはなにかを私に伝えようとしました。しかし、最後まで聞くことは叶いませんでした。場を支配する、嫌なほどこの状況に似合う音が、彼の声を阻害したからです。
「ぽ、ぽぽ、ぽ、……っ。」
「健治、さま…?」
「八尺さまだったのかあいつ⁉」
私と桜倉くんの声の大きさはまるで違いましたが、同じように驚愕し、彼の声のおぞましさを身をもって知るような気持ちでしたでしょう。それほどまでに、健治様のそれは言葉にすら感じられず、生前の面影もかすかな声だったのです。
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