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獣人の町
第十三話
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森から無事帰り着いた三人は、夕闇が迫る中、門の傍で別れを告げる。
到着したばかりでまずは町で情報を得たい佐久弥と、すでにここにきてIWO内で数日過ごしている二人では行動が異なるからだ。
「ん~兄貴のNPCとの付き合い方見てみたくはあるんだけどな」
少し迷っている咲だが、戦闘が少なそうというのがネックらしい。
「俺はさっそくこれ使って布作りだな!!後回しにしていたリボンとか作りてーし!!」
ちょっとリアルで想像して気持ち悪くなりながら、佐久弥は楽しそうでよかったよかった、と拓也に頷く。
「一回くらい一緒に行動してみないか?今回はこっちの希望に付き合わせただけだし」
ドラゴンと出会えなかったため情報料を受け取ろうとしなかった佐久弥に、変わりに戦闘の手助けをする事で咲は返そうとしているのだが……
「いや、どうせフィールド出ても今のとこ戦闘する気ないんだが」
「え?マジで?今までどーしてたわけ?」
佐久弥の返答に、拓也が不思議そうに首を傾げる。……中身を知らなければとても愛らしい姿だ。中身を知らなければだが!
「採取情報先に仕入れてたから、戦う必要なかったしなー。コリル道場のも戦闘っつーか訓練だし」
「まさかの戦闘ゼロ」
ありえない……。戦う事に全力で楽しさを見出している咲は不思議な物を見るような目で佐久弥を見下ろす。
「まあ、採取や例のケイブオクトープスの崖登りみたいなイベントでも経験値は入るから問題は無いのかもしれないけど……」
ありえない……と咲は呆然と繰り返す。
「誰も彼もがお前みたいに戦闘重視だと思うな」
不服そうに答える佐久弥に、あー、とかうーとか唸った後、髪をくしゃりと混ぜながら咲は頷く。
「それはわかってるんだけど……ゼロっていうのが初でさすがに驚いた」
実のところ、攻略組と言われるパーティーの一端でもある二人にとって、採取やイベントに走った方が伸びが良いのはわかっているし実行もしているのだが、やはり採取情報が無い相手とは戦闘しているのだ。
咲にとっては、画一的な動きしかしないような相手が居ないこのIWOでの戦闘は楽しくてたまらないのだ。
予想外の攻撃を仕掛けてきたり、数が多い時は見事な連携を見せ、弱いと思っていた相手に苦戦したりする戦いは面白くてならないので、ついもったいなく感じてしまう。
「もったいないなと思いはするが――それも楽しみ方の一つ、か……」
しばらく唸った後、納得した咲が頷くのについで、拓也も告げる。
「いーんじゃねーの?これ始めるとき好きにしろーって言われてんし」
にやり、と素の笑みを浮かべながら告げられた言葉に佐久弥も笑う。
「だから、これでいったん解散だ……と、その前に」
佐久弥はごそごそとアイテム欄を探り、目当てのものを取り出す。
「げ」
「うげ」
そこには、もじゃりと毛の生えた足が四本あった。
「これすんげー美味かったから、食わせてやりたいと思ってな~」
邪魔にならない位置まで離れて薪を取り出し火をおこす佐久弥に、二人の顔は盛大に引き攣っていた。
「こ、これが噂の……」
「足の生えた魚……」
ぷるぷると首を振る二人の姿は、すね毛を一心に毟る佐久弥には見えていない。
足元にこんもりとした毛の山を作り上げた佐久弥は、毟り残しがないか確認すると躊躇無く焼き始める。
「おにいちゃん!これ気持ち悪い!!」
青ざめながら叫ぶ咲に、佐久弥が眉を顰め言い返す。
「その姿でおにいちゃん言うな、それこそ気持ち悪い」
「い、いやぁ~サクヤ、俺もちょっとそれはどうかと思うぞ……」
ひくっ、と口元を引き攣らせながら続ける拓也をスルーして、佐久弥は真面目に焼き加減を調べる。
重い沈黙の中、足が焼ける香ばしい匂いが辺りに立ち込める。
「……匂いは、良いな」
ぽつり、と咲が呟く。
「そんな問題じゃねぇええええ!!」
必死に拓也は首を振る。そんな二人に死刑宣告でもある一言がおりる。
「さ、焼けたぞ」
差し出されたこんがりとした足に、二人が受け取ることを拒否する。
「どうした?見た目と違って美味いぞ?」
首を振る二人の前で、ならば実践と佐久弥は自分用の足に齧り付く。
サクッと音を立てて噛み切ると、じゅわりと脂の旨みと淡白な味わいが口中に広がる。断面はそれこそ白身の魚のようだが、肉質はしっかりしており噛めば噛むほどに旨みが広がる。
「……もらう」
じっと佐久弥が食べる姿を見ていた咲が、美味そうに食べる姿と香りに釣られ手を伸ばす。
「っ!美味しい!!」
一口齧って目を輝かせる咲に、そうだろう、そうだろうと佐久弥は満足そうに頷く。
「お前好きだと思ったんだよ。魚の中でも鯖とか好きだろ?しっかりした食感で脂がのってるやつ。しかもこいつはしつこくないから、いくらでも食べられる」
「……うぐ、うぐ」
美味さに、口を動かしたまま咲が頷いている横で……拓也は青ざめている。
「俺は無理だ……」
絶対に食わねーと頑なに言い張る拓也に、そういえばこいつは結構繊細だった……と思い出し、ならばともう一本咲に差し出す。
「ひひのは?」
頷いてやると、目を輝かせて最初の一本を食べつくすと即座に次へと手を伸ばす。
「これ、どうぞ」
残りの一本を近くにいた門番に差し出すと、先ほどから鼻をひくひくさせていた彼は嬉しそうに受け取る。
「好物なんだよ。兄ちゃん、あんがとな」
「いやいや、いつもお疲れ様です」
きっとこの門番もこの場所から動かないのだろう。そう思うとこれくらい安いもんだ。
「こっちの川はこいつがあんま釣れねぇんだ。――鳥ばっか釣れるから食えるところがありゃしねえ」
「……へー、鳥って食べられないんですかー」
やや平坦な声で返してしまうのはもうしょうがないだろう。
「鳥は羽を加工するもんだからよぉ。ま、良い武器の材料になるから文句言ってちゃいけねぇな」
ははははっと豪快に笑うのに、色々勉強になりましたと返す佐久弥は定番の笑顔だ。
「…………」
「…………」
傍らでその会話を聞いていた二人も無言だ。
「と、いうことらしい。生産してるんならリリィは釣りするのも良いんじゃないか?」
「鳥の羽が武器……鳥の羽が武器……」
ぶつぶつと虚ろな顔で呟く拓也を励ますようにその背を叩いた。
「美味かった、ご馳走様」
先ほどの会話を聞いて固まっていたものの、その後すぐに食べ終えた咲に、火の始末を終えると共に解散する流れとなる。
「ちょっと残念なような……だがあれは無理だ……」
咲の食いつき具合に少し心引かれながらも断念した拓也は苦笑しながら手を振る。
「またな」
「またどっか行こうぜー」
二人とわかれた佐久弥はそのまま町の中を巡りはじめる。
すれ違うNPCは様々な姿をしていた。狼や猫、獅子や熊。鳥や爬虫類のようなタイプはいなくて、全体的にもふもふしている。
もふもふしているのは良いのだが……雌雄がわからない。
話しかけてみても声は種類ごとに似たような高さだし、町娘のような存在はワンピースを着ているからいいものの、冒険者や傭兵のような存在は男女ともに鎧を着込んでいるので見分けが付かない。
「大変失礼なんですが……どうやって見分ければ良いんでしょうか。間違ったら失礼なんじゃないかと思って……」
がっちりとした体型に、ひらひらのワンピースを着ている門番そっくりの狼の女性に問いかけると、あっさりと教えてもらえる。
「匂いよ」
「そうですか、匂いですか」
無理だ。
一瞬で見分ける事を諦めた。
「ほら、私もそうだけど女性は甘い果物のような香りがするでしょ?」
「そうなんですね」
何もわからない。
というか町全体がほんのりと獣っぽい匂いがしているくらいしかわからない。
この町では性別に触れるような会話だけはすまい。そう佐久弥は心に決めた。
到着したばかりでまずは町で情報を得たい佐久弥と、すでにここにきてIWO内で数日過ごしている二人では行動が異なるからだ。
「ん~兄貴のNPCとの付き合い方見てみたくはあるんだけどな」
少し迷っている咲だが、戦闘が少なそうというのがネックらしい。
「俺はさっそくこれ使って布作りだな!!後回しにしていたリボンとか作りてーし!!」
ちょっとリアルで想像して気持ち悪くなりながら、佐久弥は楽しそうでよかったよかった、と拓也に頷く。
「一回くらい一緒に行動してみないか?今回はこっちの希望に付き合わせただけだし」
ドラゴンと出会えなかったため情報料を受け取ろうとしなかった佐久弥に、変わりに戦闘の手助けをする事で咲は返そうとしているのだが……
「いや、どうせフィールド出ても今のとこ戦闘する気ないんだが」
「え?マジで?今までどーしてたわけ?」
佐久弥の返答に、拓也が不思議そうに首を傾げる。……中身を知らなければとても愛らしい姿だ。中身を知らなければだが!
「採取情報先に仕入れてたから、戦う必要なかったしなー。コリル道場のも戦闘っつーか訓練だし」
「まさかの戦闘ゼロ」
ありえない……。戦う事に全力で楽しさを見出している咲は不思議な物を見るような目で佐久弥を見下ろす。
「まあ、採取や例のケイブオクトープスの崖登りみたいなイベントでも経験値は入るから問題は無いのかもしれないけど……」
ありえない……と咲は呆然と繰り返す。
「誰も彼もがお前みたいに戦闘重視だと思うな」
不服そうに答える佐久弥に、あー、とかうーとか唸った後、髪をくしゃりと混ぜながら咲は頷く。
「それはわかってるんだけど……ゼロっていうのが初でさすがに驚いた」
実のところ、攻略組と言われるパーティーの一端でもある二人にとって、採取やイベントに走った方が伸びが良いのはわかっているし実行もしているのだが、やはり採取情報が無い相手とは戦闘しているのだ。
咲にとっては、画一的な動きしかしないような相手が居ないこのIWOでの戦闘は楽しくてたまらないのだ。
予想外の攻撃を仕掛けてきたり、数が多い時は見事な連携を見せ、弱いと思っていた相手に苦戦したりする戦いは面白くてならないので、ついもったいなく感じてしまう。
「もったいないなと思いはするが――それも楽しみ方の一つ、か……」
しばらく唸った後、納得した咲が頷くのについで、拓也も告げる。
「いーんじゃねーの?これ始めるとき好きにしろーって言われてんし」
にやり、と素の笑みを浮かべながら告げられた言葉に佐久弥も笑う。
「だから、これでいったん解散だ……と、その前に」
佐久弥はごそごそとアイテム欄を探り、目当てのものを取り出す。
「げ」
「うげ」
そこには、もじゃりと毛の生えた足が四本あった。
「これすんげー美味かったから、食わせてやりたいと思ってな~」
邪魔にならない位置まで離れて薪を取り出し火をおこす佐久弥に、二人の顔は盛大に引き攣っていた。
「こ、これが噂の……」
「足の生えた魚……」
ぷるぷると首を振る二人の姿は、すね毛を一心に毟る佐久弥には見えていない。
足元にこんもりとした毛の山を作り上げた佐久弥は、毟り残しがないか確認すると躊躇無く焼き始める。
「おにいちゃん!これ気持ち悪い!!」
青ざめながら叫ぶ咲に、佐久弥が眉を顰め言い返す。
「その姿でおにいちゃん言うな、それこそ気持ち悪い」
「い、いやぁ~サクヤ、俺もちょっとそれはどうかと思うぞ……」
ひくっ、と口元を引き攣らせながら続ける拓也をスルーして、佐久弥は真面目に焼き加減を調べる。
重い沈黙の中、足が焼ける香ばしい匂いが辺りに立ち込める。
「……匂いは、良いな」
ぽつり、と咲が呟く。
「そんな問題じゃねぇええええ!!」
必死に拓也は首を振る。そんな二人に死刑宣告でもある一言がおりる。
「さ、焼けたぞ」
差し出されたこんがりとした足に、二人が受け取ることを拒否する。
「どうした?見た目と違って美味いぞ?」
首を振る二人の前で、ならば実践と佐久弥は自分用の足に齧り付く。
サクッと音を立てて噛み切ると、じゅわりと脂の旨みと淡白な味わいが口中に広がる。断面はそれこそ白身の魚のようだが、肉質はしっかりしており噛めば噛むほどに旨みが広がる。
「……もらう」
じっと佐久弥が食べる姿を見ていた咲が、美味そうに食べる姿と香りに釣られ手を伸ばす。
「っ!美味しい!!」
一口齧って目を輝かせる咲に、そうだろう、そうだろうと佐久弥は満足そうに頷く。
「お前好きだと思ったんだよ。魚の中でも鯖とか好きだろ?しっかりした食感で脂がのってるやつ。しかもこいつはしつこくないから、いくらでも食べられる」
「……うぐ、うぐ」
美味さに、口を動かしたまま咲が頷いている横で……拓也は青ざめている。
「俺は無理だ……」
絶対に食わねーと頑なに言い張る拓也に、そういえばこいつは結構繊細だった……と思い出し、ならばともう一本咲に差し出す。
「ひひのは?」
頷いてやると、目を輝かせて最初の一本を食べつくすと即座に次へと手を伸ばす。
「これ、どうぞ」
残りの一本を近くにいた門番に差し出すと、先ほどから鼻をひくひくさせていた彼は嬉しそうに受け取る。
「好物なんだよ。兄ちゃん、あんがとな」
「いやいや、いつもお疲れ様です」
きっとこの門番もこの場所から動かないのだろう。そう思うとこれくらい安いもんだ。
「こっちの川はこいつがあんま釣れねぇんだ。――鳥ばっか釣れるから食えるところがありゃしねえ」
「……へー、鳥って食べられないんですかー」
やや平坦な声で返してしまうのはもうしょうがないだろう。
「鳥は羽を加工するもんだからよぉ。ま、良い武器の材料になるから文句言ってちゃいけねぇな」
ははははっと豪快に笑うのに、色々勉強になりましたと返す佐久弥は定番の笑顔だ。
「…………」
「…………」
傍らでその会話を聞いていた二人も無言だ。
「と、いうことらしい。生産してるんならリリィは釣りするのも良いんじゃないか?」
「鳥の羽が武器……鳥の羽が武器……」
ぶつぶつと虚ろな顔で呟く拓也を励ますようにその背を叩いた。
「美味かった、ご馳走様」
先ほどの会話を聞いて固まっていたものの、その後すぐに食べ終えた咲に、火の始末を終えると共に解散する流れとなる。
「ちょっと残念なような……だがあれは無理だ……」
咲の食いつき具合に少し心引かれながらも断念した拓也は苦笑しながら手を振る。
「またな」
「またどっか行こうぜー」
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すれ違うNPCは様々な姿をしていた。狼や猫、獅子や熊。鳥や爬虫類のようなタイプはいなくて、全体的にもふもふしている。
もふもふしているのは良いのだが……雌雄がわからない。
話しかけてみても声は種類ごとに似たような高さだし、町娘のような存在はワンピースを着ているからいいものの、冒険者や傭兵のような存在は男女ともに鎧を着込んでいるので見分けが付かない。
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がっちりとした体型に、ひらひらのワンピースを着ている門番そっくりの狼の女性に問いかけると、あっさりと教えてもらえる。
「匂いよ」
「そうですか、匂いですか」
無理だ。
一瞬で見分ける事を諦めた。
「ほら、私もそうだけど女性は甘い果物のような香りがするでしょ?」
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