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獣人の町
第十六話
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『サクヤ、ヘ~~~ルプ!!』
……耳が痛い。
ログインすると同時の救援要請に、佐久弥はきょろきょろと辺りを見回すが拓也の影一つない。
『あ~wis知んねぇかな……ステータスウインドウ開いて右の方見てみ。whisperって意味。それ押して相手指定したら話し出来んだよ』
ふむふむ、と一人頷くと佐久弥は久々にステータスウインドウに指を滑らせる。
* * *
サクヤ LV38
【スキル】
・テイム
・採取
……ここで見るのを止めた。異常な数値など見てはいない。
とりあえずLVの端の方にあったwisを選択し、話しかけられているせいか『リリィ』の名が光っているのを見てそこを押す。
「あ~聞こえるか?何かあったか」
『お、聞こえる聞こえる!サクヤ、ヘルプ!』
「何を助けろってんだよ。あとうるせー」
どれだけ大きな声を出しているのか、佐久弥の耳が今も痛い。
『あー……その、嫌だと思うんだが……』
急に声が小さくなり、言い澱み始める拓也を佐久弥は一刀両断する。
「しおらしいお前が碌なこと言わないのは知ってる。言うんならとっとと言え」
今まで拓也がこんな声を出すたびに面倒ごとに巻き込まれていた佐久弥は、どの道巻き込むこと決定なんならとっとと言えと促す。
『うちのメンバーと採取一緒に行ってくれ!!』
キーンと痛む耳と、それ以上に痛む頭に佐久弥は不本意だと教えるために深く溜め息をつく。
『マジ、マジお願い!糸取りに行ったんだけど、ジャイアントスパイダー出てきてくんねぇのよ!』
「こないだお前順調に採取できてたじゃないか」
『俺一人で行った時は、何とか数匹出てきてくれてちょっとは採取出来たんだけど、他の奴らが一緒だともうアウト。他の奴らだけで行かせてみたら下手すりゃ戦闘』
弱りきった声で続ける拓也に、しばし迷う。
「俺が行ったからって何が変わるわけでも無いと思うがな」
『そんときゃそん時で、他の理由あるのか探すだけだ。とりあえず可能性一個ずつ潰していきてェんだよ……無理にってんじゃないけどさぁ……』
ぼそぼそと続ける拓也が、どんな顔をしているのかまでわかる付き合いってのも問題有りだと思う。
どうせあのいつもは顰められている眉を情け無さそうに垂れさせ、リリィの姿でやってたように拗ねたような口をして……そこまで考えて、気持ち悪くなり却下したくなるのを意思の力でねじ伏せる。
「何人」
『本当は五人って言いたいところだが……三人』
佐久弥の許容ギリギリラインをきっちり狙ってくるところが気に食わない。
「……了解」
『マジすまねー!今度飯奢る!』
「ばぁか。万年金欠野郎が大きく出るんじゃない」
拓也の謝罪を聞き流し、そのまま合流地点を話し合う。あんな風に返しはしたものの、どうせ後日酒の一本でも持ってくるのを知っているからだ。
「ごめんねぇ~さっくん。無理言っちゃって☆」
町の入り口で佐久弥が門番と雑談を交わしながら待っていると、久々の寒気のする声が投げかけられる。
(帰ろう、よしそうしよう)
「待って待ってさっくん~っっ!!」
反射的に背を向けた佐久弥のフードの裾はがっちり拓也に掴まれる。
「わかっちゃいるが……気持ちわりぃ」
ぼそ、と拓也にだけ聞こえる程度の小さな声で呟く。
佐久弥にしてもわかってはいるのだ。今ここに居るのは普段リリィとして行動している拓也の仲間なのだと。ならば……この面子でいる間中、拓也はあの寒気のする口調のままという事だ。浮かぶ鳥肌を擦ることで少しでも抑えようとしながら、佐久弥は他の面子に向き合う。
「ごめんね、突然無茶言っちゃって。私はケイ。今日はよろしくね」
さらりとした長い茶髪を背に流した女性が控えめに告げると、続いて他の二人も申し訳無さそうに名乗りはじめる。
「ちょっと手詰まりでさ。悪いな~とは思ったけど付き合ってもらえて嬉しいよ。あたしは弥生。よろしくね」
首までの長さの赤毛を揺らしながら弥生は軽く手を上げる。
「面倒をかけるがよろしく。シュウだ」
最後は強くウェーブがかった髪を後ろで一つにまとめている男が簡潔に告げる。
「こちらこそよろしく。サクヤだ。……普段一人で動いているから、失礼な事をしたらすまない」
「そ~し~て~、みんなのアイドルリリィちゃんでっす☆」
「うざい」
ゴツリと頭に拳を入れ、痛い痛いと文句を言う拓也を全員で置き去りにしつつ、洞窟へと向かう。
「これは……すごいな」
ざわりと巣の奥から出てくる大量の蜘蛛に、シュウの顔が少し白い。
「う~この量はちょっと……」
頬を引き攣らせながら弥生は一歩後ろに下がる。
「あら、いっぱいね。これは大漁?」
一番繊細そうなケイは嬉しそうに手をわきわきさせている。
またもや円陣を組んだかと思うと、大半は佐久弥の周りに集い、次いで拓也の周り。残りは数匹ずつ様子を見るようにケイ達の前に近付いて行く。
来たついでだしと、しゅるしゅる糸を佐久弥が巻き始めると、残りの皆も戸惑いながらも糸巻きを始める。
「きゃ~っ大漁!!さいっこー!!これで色々作れるわ!!」
採取が進めば進むほどケイは元気一杯だ。
「なんで頭に乗るのぉ……?」
本体に頭の上に居座られ、涙目で呟く弥生だが……その手は見事な動きを見せている。
「…………」
シュウは最早無心だ。青ざめていたはずの顔も元に戻り、黙々と糸を巻いてゆく。
順調に糸巻きが進む光景に、佐久弥は傍にいた蜘蛛に声をかける。
「今日は人数多いからな~糸抜いてもらうなら狙い目だぞ」
考えるように一度動きを止めた蜘蛛が、さかさかと洞窟の奥へと向かって行き――大量に引き連れて戻ってきた。
「呼びすぎだ!」
佐久弥が叫ぶが、すでに足の踏み場もないほどの蜘蛛に囲まれる。
「ふ、ふぐ……っ、糸、糸のためなら……っ」
とうとう弥生は鼻声だ。何がそこまで彼女を駆り立てているのか佐久弥にはわからない。
「おいでおいで、痛いことないからね~」
語尾にハートマークが付きそうなほど浮かれているケイに、一瞬その周りの蜘蛛が空間を作る。ちょっと怖かったらしい。
たすけて~と数匹が佐久弥に向かってわっしゃわっしゃと足を振っているが、助けられそうにないと、佐久弥はそっと視線を逸らした。
逆に怯える姿が楽しいのか、糸を抜いてもらっている間の本体が何匹も弥生に密集する。全身を蜘蛛に覆われ、もう弥生の目は虚ろだ。それなのに手の動きは変わらないのが不思議でならない。
一番平和なのはシュウのところだ。もう蜘蛛もシュウの事を一切気にしてない。本体が弥生のところへ行くときなど、近道とばかりにシュウの身体を乗り越えて行く。
「なにが違うのかなぁ~毎回さっくんに頼むわけにもいかないしぃ」
むーんと口を尖らせる拓也に、以前コボルドにされた話を思い出す。
「俺が戦闘ゼロだからじゃね?何かこないだすんげー渋いコボルドにのんびりするか戦い続けるか選べとか言われたし」
しゅるしゅると糸を巻きながらの会話だ。完成している糸玉の数は比較にならないが、今のところ使う予定のない佐久弥は少なくても問題ない。
「へ?なにそれ」
「リリィ、戻ってる戻ってる」
注意しながら、先日の会話を教えると、拓也の目がキラキラし始める。
「うおー何それ、すっげぇかっけー!酒場だよな!俺も会いにいこ!」
「だから戻ってるって!!」
ぼそぼそと片隅でしている会話だからいいが……こんなすぐに襤褸を出すようなら、とうにパーティーメンバーにばれてるんじゃなかろうかと佐久弥は思う。そして気にするべきところは会話の内容だ、そこじゃない。
「あ~だったら、リリィ達はぁ、もう戦っちゃってるから、採取難しいってことぉ?」
「コボルドのように戦闘で得る素材もあるだろうし、そうとも限らないんじゃないか。それに、簡単じゃないかもしれないが、後戻りもできるようだし」
組み分けするかな~とぶつぶつ呟いている拓也に、まあ他の原因があるかもしれないけどなと釘を刺すことだけは忘れない。
「もちろん、ちゃんと検証するよぉ~大丈夫☆さっくんってばぁ心配性なんだから。リリィう・れ・し・い☆」
……いつになったらこの鳥肌はおさまるのだろうか。佐久弥がそんな事を思いながら腕を擦ると、その手が花子に触れる。
シャキン
「「え……?」」
宙に浮いた剣の切っ先が外からの微かな光を反射……せず、光を吸収しながらドス黒いオーラを放つ。
「…………待て花子!」
呆然とした拓也と二人、ぼんやりと刀身を見ていた佐久弥だが、不穏な気配を察しその柄を掴むと『マスター気持ち悪がってる!倒す、倒すの!』とヒュンヒュン音を立てて拓也に襲いかかる。
(ハウス!!)
佐久弥がそう叱責すると、しおしおとした花子は自ら鞘に収まる。
『叱られた……マスターに叱られた……』
ぼたぼたと涙を零す花子に佐久弥も微妙な顔になる。
(あー……気持ちは、嬉しい)
『ホント!?』
ぱぁあああ~っと花を飛ばし始めた花子に、危険は去った事を知る。
「うちの花子がすまんかった。だがもうあんまり気持ち悪い事言わないでいてくれると嬉しい」
「りょーかい」
冷や汗を流しながら、拓也も素直に頷く。
他の連中が慌ててないかと二人首を巡らせてみるが、そんな心配は杞憂だった。
――誰一人こっちを気にしていなかったのだから。
「何を作ろっかなぁ~迷っちゃうなー」
ほくほくしながら糸を巻き続けるケイ。
「糸……蜘蛛……糸……蜘蛛……」
もうそろそろ止めてやった方が良いかもしれない弥生。
「…………」
機械化しているシュウ。
「……そろそろ終わりにした方が良くね?」
「……俺もそう思う」
終了を提案する佐久弥に、拓也も真顔で頷く。
「えーもうちょっとぉおおお!!」
一人叫ぶケイの襟首を引きずりながら、彼等は洞窟を後にした。
……耳が痛い。
ログインすると同時の救援要請に、佐久弥はきょろきょろと辺りを見回すが拓也の影一つない。
『あ~wis知んねぇかな……ステータスウインドウ開いて右の方見てみ。whisperって意味。それ押して相手指定したら話し出来んだよ』
ふむふむ、と一人頷くと佐久弥は久々にステータスウインドウに指を滑らせる。
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サクヤ LV38
【スキル】
・テイム
・採取
……ここで見るのを止めた。異常な数値など見てはいない。
とりあえずLVの端の方にあったwisを選択し、話しかけられているせいか『リリィ』の名が光っているのを見てそこを押す。
「あ~聞こえるか?何かあったか」
『お、聞こえる聞こえる!サクヤ、ヘルプ!』
「何を助けろってんだよ。あとうるせー」
どれだけ大きな声を出しているのか、佐久弥の耳が今も痛い。
『あー……その、嫌だと思うんだが……』
急に声が小さくなり、言い澱み始める拓也を佐久弥は一刀両断する。
「しおらしいお前が碌なこと言わないのは知ってる。言うんならとっとと言え」
今まで拓也がこんな声を出すたびに面倒ごとに巻き込まれていた佐久弥は、どの道巻き込むこと決定なんならとっとと言えと促す。
『うちのメンバーと採取一緒に行ってくれ!!』
キーンと痛む耳と、それ以上に痛む頭に佐久弥は不本意だと教えるために深く溜め息をつく。
『マジ、マジお願い!糸取りに行ったんだけど、ジャイアントスパイダー出てきてくんねぇのよ!』
「こないだお前順調に採取できてたじゃないか」
『俺一人で行った時は、何とか数匹出てきてくれてちょっとは採取出来たんだけど、他の奴らが一緒だともうアウト。他の奴らだけで行かせてみたら下手すりゃ戦闘』
弱りきった声で続ける拓也に、しばし迷う。
「俺が行ったからって何が変わるわけでも無いと思うがな」
『そんときゃそん時で、他の理由あるのか探すだけだ。とりあえず可能性一個ずつ潰していきてェんだよ……無理にってんじゃないけどさぁ……』
ぼそぼそと続ける拓也が、どんな顔をしているのかまでわかる付き合いってのも問題有りだと思う。
どうせあのいつもは顰められている眉を情け無さそうに垂れさせ、リリィの姿でやってたように拗ねたような口をして……そこまで考えて、気持ち悪くなり却下したくなるのを意思の力でねじ伏せる。
「何人」
『本当は五人って言いたいところだが……三人』
佐久弥の許容ギリギリラインをきっちり狙ってくるところが気に食わない。
「……了解」
『マジすまねー!今度飯奢る!』
「ばぁか。万年金欠野郎が大きく出るんじゃない」
拓也の謝罪を聞き流し、そのまま合流地点を話し合う。あんな風に返しはしたものの、どうせ後日酒の一本でも持ってくるのを知っているからだ。
「ごめんねぇ~さっくん。無理言っちゃって☆」
町の入り口で佐久弥が門番と雑談を交わしながら待っていると、久々の寒気のする声が投げかけられる。
(帰ろう、よしそうしよう)
「待って待ってさっくん~っっ!!」
反射的に背を向けた佐久弥のフードの裾はがっちり拓也に掴まれる。
「わかっちゃいるが……気持ちわりぃ」
ぼそ、と拓也にだけ聞こえる程度の小さな声で呟く。
佐久弥にしてもわかってはいるのだ。今ここに居るのは普段リリィとして行動している拓也の仲間なのだと。ならば……この面子でいる間中、拓也はあの寒気のする口調のままという事だ。浮かぶ鳥肌を擦ることで少しでも抑えようとしながら、佐久弥は他の面子に向き合う。
「ごめんね、突然無茶言っちゃって。私はケイ。今日はよろしくね」
さらりとした長い茶髪を背に流した女性が控えめに告げると、続いて他の二人も申し訳無さそうに名乗りはじめる。
「ちょっと手詰まりでさ。悪いな~とは思ったけど付き合ってもらえて嬉しいよ。あたしは弥生。よろしくね」
首までの長さの赤毛を揺らしながら弥生は軽く手を上げる。
「面倒をかけるがよろしく。シュウだ」
最後は強くウェーブがかった髪を後ろで一つにまとめている男が簡潔に告げる。
「こちらこそよろしく。サクヤだ。……普段一人で動いているから、失礼な事をしたらすまない」
「そ~し~て~、みんなのアイドルリリィちゃんでっす☆」
「うざい」
ゴツリと頭に拳を入れ、痛い痛いと文句を言う拓也を全員で置き去りにしつつ、洞窟へと向かう。
「これは……すごいな」
ざわりと巣の奥から出てくる大量の蜘蛛に、シュウの顔が少し白い。
「う~この量はちょっと……」
頬を引き攣らせながら弥生は一歩後ろに下がる。
「あら、いっぱいね。これは大漁?」
一番繊細そうなケイは嬉しそうに手をわきわきさせている。
またもや円陣を組んだかと思うと、大半は佐久弥の周りに集い、次いで拓也の周り。残りは数匹ずつ様子を見るようにケイ達の前に近付いて行く。
来たついでだしと、しゅるしゅる糸を佐久弥が巻き始めると、残りの皆も戸惑いながらも糸巻きを始める。
「きゃ~っ大漁!!さいっこー!!これで色々作れるわ!!」
採取が進めば進むほどケイは元気一杯だ。
「なんで頭に乗るのぉ……?」
本体に頭の上に居座られ、涙目で呟く弥生だが……その手は見事な動きを見せている。
「…………」
シュウは最早無心だ。青ざめていたはずの顔も元に戻り、黙々と糸を巻いてゆく。
順調に糸巻きが進む光景に、佐久弥は傍にいた蜘蛛に声をかける。
「今日は人数多いからな~糸抜いてもらうなら狙い目だぞ」
考えるように一度動きを止めた蜘蛛が、さかさかと洞窟の奥へと向かって行き――大量に引き連れて戻ってきた。
「呼びすぎだ!」
佐久弥が叫ぶが、すでに足の踏み場もないほどの蜘蛛に囲まれる。
「ふ、ふぐ……っ、糸、糸のためなら……っ」
とうとう弥生は鼻声だ。何がそこまで彼女を駆り立てているのか佐久弥にはわからない。
「おいでおいで、痛いことないからね~」
語尾にハートマークが付きそうなほど浮かれているケイに、一瞬その周りの蜘蛛が空間を作る。ちょっと怖かったらしい。
たすけて~と数匹が佐久弥に向かってわっしゃわっしゃと足を振っているが、助けられそうにないと、佐久弥はそっと視線を逸らした。
逆に怯える姿が楽しいのか、糸を抜いてもらっている間の本体が何匹も弥生に密集する。全身を蜘蛛に覆われ、もう弥生の目は虚ろだ。それなのに手の動きは変わらないのが不思議でならない。
一番平和なのはシュウのところだ。もう蜘蛛もシュウの事を一切気にしてない。本体が弥生のところへ行くときなど、近道とばかりにシュウの身体を乗り越えて行く。
「なにが違うのかなぁ~毎回さっくんに頼むわけにもいかないしぃ」
むーんと口を尖らせる拓也に、以前コボルドにされた話を思い出す。
「俺が戦闘ゼロだからじゃね?何かこないだすんげー渋いコボルドにのんびりするか戦い続けるか選べとか言われたし」
しゅるしゅると糸を巻きながらの会話だ。完成している糸玉の数は比較にならないが、今のところ使う予定のない佐久弥は少なくても問題ない。
「へ?なにそれ」
「リリィ、戻ってる戻ってる」
注意しながら、先日の会話を教えると、拓也の目がキラキラし始める。
「うおー何それ、すっげぇかっけー!酒場だよな!俺も会いにいこ!」
「だから戻ってるって!!」
ぼそぼそと片隅でしている会話だからいいが……こんなすぐに襤褸を出すようなら、とうにパーティーメンバーにばれてるんじゃなかろうかと佐久弥は思う。そして気にするべきところは会話の内容だ、そこじゃない。
「あ~だったら、リリィ達はぁ、もう戦っちゃってるから、採取難しいってことぉ?」
「コボルドのように戦闘で得る素材もあるだろうし、そうとも限らないんじゃないか。それに、簡単じゃないかもしれないが、後戻りもできるようだし」
組み分けするかな~とぶつぶつ呟いている拓也に、まあ他の原因があるかもしれないけどなと釘を刺すことだけは忘れない。
「もちろん、ちゃんと検証するよぉ~大丈夫☆さっくんってばぁ心配性なんだから。リリィう・れ・し・い☆」
……いつになったらこの鳥肌はおさまるのだろうか。佐久弥がそんな事を思いながら腕を擦ると、その手が花子に触れる。
シャキン
「「え……?」」
宙に浮いた剣の切っ先が外からの微かな光を反射……せず、光を吸収しながらドス黒いオーラを放つ。
「…………待て花子!」
呆然とした拓也と二人、ぼんやりと刀身を見ていた佐久弥だが、不穏な気配を察しその柄を掴むと『マスター気持ち悪がってる!倒す、倒すの!』とヒュンヒュン音を立てて拓也に襲いかかる。
(ハウス!!)
佐久弥がそう叱責すると、しおしおとした花子は自ら鞘に収まる。
『叱られた……マスターに叱られた……』
ぼたぼたと涙を零す花子に佐久弥も微妙な顔になる。
(あー……気持ちは、嬉しい)
『ホント!?』
ぱぁあああ~っと花を飛ばし始めた花子に、危険は去った事を知る。
「うちの花子がすまんかった。だがもうあんまり気持ち悪い事言わないでいてくれると嬉しい」
「りょーかい」
冷や汗を流しながら、拓也も素直に頷く。
他の連中が慌ててないかと二人首を巡らせてみるが、そんな心配は杞憂だった。
――誰一人こっちを気にしていなかったのだから。
「何を作ろっかなぁ~迷っちゃうなー」
ほくほくしながら糸を巻き続けるケイ。
「糸……蜘蛛……糸……蜘蛛……」
もうそろそろ止めてやった方が良いかもしれない弥生。
「…………」
機械化しているシュウ。
「……そろそろ終わりにした方が良くね?」
「……俺もそう思う」
終了を提案する佐久弥に、拓也も真顔で頷く。
「えーもうちょっとぉおおお!!」
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