望月アグリと申します

有住葉月

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第7章 新生活

6、ヨウスケさんのデリカシー

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望月アグリと申します。
私が洋装店でワクワクしたことはお話ししましたね。

帰りに辻さんからプレゼントしていただいたワンピースを抱えてヨウスケさんと帰りました。

「なんだ、男にもらって喜んで。人妻が。」
「どういう意味ですか?」
「辻に媚を売ったんだろ」
「そんなことしてません。」
「ならなんで洋装店にこだわるんだよ。」
「私の新しい夢になったのです。」
「夢?」
「私は洋装店で働きたいです。」
「冗談?」
ヨウスケさんは目を丸くして言いました

「冗談は言っていません。本気です。」
「でも、修行が必要な職業だろ?」
「はい、店員のお姉さんに聞きました。」
「君、買う一方でそんなこと聞いてたの?」
「だって、興味があったんですから。」
「興味があったってさ。」
「ヨウスケさんに夢を奪う権利あるんですか?」
「夢、夢っていうけどさ。」
「あなたの夢は文豪になることでしょう?」
「そんなたいそれたもんじゃないけど。文筆業にはつきたいよ。」
「じゃあ、夢持ってるじゃないですか。」
「君と僕じゃ立場が違う。」
「どう違うんですか?」
「君は母親で。」
「ヨウスケさんは父親ですよ。」
「子供には母親だよ。」
「誰が決めたんですか?」
「え?」
「子供を育てるのは母親だっていう法律でもあるんですか?」
「それは、、」
「私、修行したいです。」
「それこそ群馬の望月の家が許さないと思うよ。」
「説得します。」
「僕だってダメだったんだから。」

どうしてなんでしょう?自分の夢はよくて他人の夢はダメなんですか?

「私、初めてなんです。」
「初めて?」
「夢を持つことが。」
「だから、それは夢じゃないかも知れないよ。単なる興味かも知れないし。」
「いいえ。私自分のことだからわかるんです。」
「落ち着きなよ、アグリ。」
「落ち着いてます。私、淳に相応しい親になりたいんです。」
「なら、一緒にいなきゃ。」
「私なら、自慢できる母親でいたいです。ヨウスケさんだって同じでしょう?」

ヨウスケさんは黙ってしまいました。
私はヨウスケさんの背中を見ながら帰り道を歩きました。

夢は誰にも奪えない。それを本当は1番知ってるヨウスケさんが葛藤しているようでした。
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