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歩く
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心が、なんとなく、そわそわしたから、歩いてみる。青い上着を羽織って、白い帽子をかぶって、昨日買ったばかりの新しいスニーカーをはいて。とりあえず、歩いてみる。
玄関のドアを開けると、涼しい春風がひゅるるって顔にあたる。花壇に咲いてる紫色のパンジーが、私の髪とおんなじように揺れた。転がってたジョウロを拾って、水を汲んで、花壇にかける。「ありがとう」なんて、花は言わない。気を取り直して、また歩き出す。
住宅街の細い道を進んでいると、猫が日向ぼっこしてるのを見つけた。道の脇に生えてた猫じゃらしを摘んで、ゆっくり、そっと近づく。あと少しで触れられるってところで、猫が走って逃げていった。「さよなら」なんて、猫は言わない。猫じゃらしを、ぽいって捨てる。気を取り直して、また歩き出す。
河川敷まできて、芝生の上に寝転がる。空がとっても水色だ。目を閉じると、はしゃぐ子供達の声が聞こえる。ゆったり流れる空気が心地いい。大きな欠伸を一つ。
そのまま、微睡む。そわそわ、する。
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「僕たちさ、別れよう。」
「え?き、急にどうしたの?」
「別に急じゃないと思うけど。」
「私、あなたに何か酷いことした?」
「そんな事はないけど。」
「じゃあ、どうして?」
「正直、君といても楽しくないよ。」
「、、、」
「じゃあ、そうゆう事で。今まで、ありがとう。さよなら。」
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🌅
目が覚めて、身体を起こすと、もう夕方で、空いっぱいに夕日がみえた。河も茜色に染まっていた。泣きそうになるくらい綺麗な景色だ。いや、私はもう、泣いているのか。
河に架かる大きな橋がある。夕暮れに照らされて光っている。そこに向かって歩き出す。夕日からは目を逸らさずに、ふらふらになりながら、歩く。何度も転んで、遠回りして、それでも夕日からは、目を逸らさずに、一生懸命、歩く。大きく、手を、振って。唇を噛んで、夕日だけを、見て。
そわそわしたから歩いて、それでも何かが足りなくて、やっぱりそわそわして。忘れたはずの思い出が、楽しかったことも、悲しかったことも、愛おしいかったことも、切なかったことも、最期にあなたが言った「さよなら」も、どんどん溢れて、涙が止まらなくなって、そのうち夕日も見えなくなって、、、
烏の声が聞こえて、我に帰ると、そこはもう、橋の上だった。私の後ろを、スピードに乗った車が次々と通り過ぎる。
ここで、何もかも、綺麗さっぱり忘れる。
死んで、全てをリセットする。
上着の裾で、涙を拭って、一生懸命、前を向く。
家を出る時に顔に当たった春風が、私の帽子を攫っていく。
買ったばかりのスニーカーをていねいに揃えて、欄干に登る。
「さよなら」
夕日に向かって、歩き出す。
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