月の聖霊さまに間違えられた僕の話

いんげん

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多分、僕は怪我をしたのだろう。

結構大きな。

僕を見下ろす、皆の表情が、とても険しい。

ガイウスは、僕に何か処置をしたいと思って僕の元にしゃがみこんだけど、そのまま手をさまよわせた。



ああ、僕、相当まずい状況なんだね。



視界の端に、トレノスの兵に捕まって連行されていくビザンの国王が見えた。

彼の手が血に濡れている。



僕、国王に刺されたのか。







「ごめんね、こころ。迎えに来るのが遅くなって」

ヴァジルが手を繋いでくれている。

待っていた、優しい手。

皆が険しい表情の中、ヴァジルは眉毛がハの字になってるけど、笑顔でいてくれる。

すごいなぁ。

きっと僕が不安にならないように…。

「……ヴァジル、僕、役に……立った?」

ヴァジルみたいに頑張ろうと思って……。

でも、やっぱり最後にボロが出た。



僕はヒーローになりきれないみたい。



「…っ、あぁ。全部こころのおかげで、うまく行ったよ。だから、一緒に帰ろう」



ヴァジルが僕の左の頬に手をのせる。

あったかい。

なんだか、とっても寒いから、頬があったかい。



「……うん。帰る……ヴァジルと。一緒がいい……」



もう、あっちこっち飛ばされたり、大変なめにあったりするのはたくさんだ。

ヴァジルと一緒にいたい。



握っていてくれている手をぎゅっとする。

でも、思いの外力が入らない。



「んっうぅ!」



「っ!こころ!!」



動くと更に痛みがます。

あぁ、泣けてくる。ポロポロと。



せっかく好きな人が出来たのにな



「ヴァジル……好き……」



もう言ったけ?

泣きながら、笑って告白する。

人生初の告白だ。



ヴァジルの手に力がこもる。

紫色の瞳に涙が浮かぶ。



「こころっ!私も愛してるよ。ずっと昔から……」



嬉しい。

好きな人に、好きでいてもらえる。

とっても嬉しい。



でも、もうきっと僕には時間がない。



僕、此処で死んだら何処にいくの?



深井さんのお姉さんは、死んだかもしれないけど帰って来てない。



僕は、何処にいくの?

ただ消えるだけ?



もうやだよ知らない所に行くの。

ヴァジルも居ないし。



「……怖い……僕、何処に…行く……のかな……」



「っ!」



ガイウスが、ヴァジルに何か耳打ちした。

もう、僕まずいのかな?



「こころ、大丈夫だよ。そばにいるから。もう君を離したりしない」



ありがとう。

来てくれて。



「……ヴァジル…キス…して……」



最後かもしれないから。

僕がお願いすると、ヴァジルが泣きそうに笑ってうなずいた。



「もちろん、喜んで」



ヴァジルが、僕に顔を寄せる。

僕も出来るだけ首をまわす。



ヴァジルの唇が、僕の唇の端っこに触れる。



「私の愛しい人」



やっぱり、ヴァジルは甘い!笑っちゃいそう。

でも、嬉しい。

ヴァジルが僕の頬、目尻、額に口づける。

好き。



もっと一緒にいたかった。



もっとキスしたかったし



手を繋いで、デートしてみたかったし。



痴話喧嘩とかしてみたかった。



ヴァジルのカッコ悪いところも探したい。



ずるいよ。最後まで完璧にかっこいいとか。



あぁ、もっと一緒に居たかった。



「…ヴァ…ジル?あれ……どこ?」



泣きすぎたのかな?

視界が霞む。



「大丈夫、こころっ!ここにいるよ」



「……ヴァジ…ル……ヴァ…ジル」



だんだん色んな感覚が無くなってくる。



うっすら見えるヴァジルが、剣を持っている。



「こころ、愛してる」



僕も。



大好き、ヴァジル。











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