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ビッチ、体育の先生に恋をする。
「奏(かなで)、あんたの夏休みを10日間買いたいの」
都内に住む姉のマンションに呼び出され、リビングで封筒を差し出された。
十三歳差がある姉は、もはや俺にとって第二の母のような存在で、喧嘩をした記憶も無いし、沢山面倒をみてもらった。だから、今でも姉の言うことは絶対みたいな刷り込みがある。
結婚して実家を出てからは、少し疎遠になったけれど、甥っ子が産まれてからは里帰りなどもあり、実家に顔を出すことも増えて頻繁に顔を見るようになった。といっても、姉は出産後も女医として精力的に働いているので、甥が実家に預けられる機会が多いからだ。
現在5歳の甥っ子は、割と大人しいタイプの男の子で俺にも良く懐いていて、とても可愛い。男勝りで勝ち気な姉よりも、大人しくて自己主張の控えめな旦那に似ている。
「俺の? 母さんは?」
きっと甥の面倒を見るバイトなんだろうけど。
まぁまぁ裕福な家に遅れて産まれた俺は、周囲に甘やかされ育ち、金の掛かる私立の音大に通っている。
ピアノとバイオリンが得意だが…これといってプロの偉大な奏者になる予定も無い。将来は子供に音楽を教えたり、子供向けの演奏会をしたり、そういう活動をしたいと思っている。だから…そんなにストイックな大学生活は過ごしていない。バイトは歓迎だ。
「母さんは、推しの全国ツアーと、次期推しになりそうな子のファンミで東京にいないわ」
「あ…そう…」
いわゆる良い所のお嬢さんだった母さんは、なかなか自由に人生を楽しんでいる。
そういえば、姉さんが里帰りで帰って来たときも、甥の美治(みはる)の夜泣き担当は何故か俺で、防音施工された俺のピアノ部屋にベビーベッドが置かれ、俺の布団が敷かれた。
一ヶ月間、夜な夜なミルクを作り、世話するのは大変だったけど、俺が面倒みるのは夜だけで、昼は当時通っていた高校で爆睡していた。
おかげで子供好きになり、子供と音楽で関わりたいと思うようなれたし……俺は、ゲイで将来的にも我が子を世話するなんて未来無いから、貴重な経験になった。
「で、何をすればいいの?」
差し出された封筒を受け取る。中をちらっと見ると、万札が結構入っている。うん、流石夫婦で稼いでいらっしゃる。金払いが良すぎる。
「美治を体育教室に送迎して、見ていて欲しいの。終わったら送って来てくれれば、旦那は在宅で仕事しているから。これ、その教室のパンフレット」
差し出されたファイルを手にとった。どれどれ…と開いてみる。
「へぇ…色々やるんだ…」
種目が日替わりでプールや球技、陸上運動、体操系、音楽を使った身体表現……盛りだくさんだ。前半45分、休憩と遊び挟んで、後半45分で、おおよそ2時間。おぉ……凄い。月曜から金曜まで5日間を2週。
うわ…金額すごい……そんなに払うの?高い!いや……俺の学費に比べたらあれだけど。
えっ?というか、姉さん、美治をどうしたいの?
「2週間色々やって合っているものを習わせる予定よ」
「へぇ…」
「朝9時くらいに迎えに来て、車使って良いから」
「ううん、電車で行くよ。駅近いみたいだし」
「そう?まぁ、暑かったらタクシー乗って」
「うん」
姉さんの家の車、旦那さんの趣味で……トスラだ。あんな大人しい顔して、あんな目立つ車。正直乗りたくない。ドアが上に開くんだよ。
「助かるわ! よろしくね」
「こちらこそ、バイト代ありがとう」
将来的にも子供への指導の場は、良い勉強になりそうだし、楽しみだ。
□□□
「……」
姉との約束の日になり、書いてある場所までやってきた。ビルの一回がスイミングスクールで、2階が運動できるスタジオ、3階以降は違うテナントが入っている。
正直、今、俺は目立っている。美治と手をつないで、入口近くの自販機の前に立っているのだけれど、同じく待っている親子連れにチラチラ見られてる。
年より若く見られるのもあり、どう考えても父親には見えないし、かと言って兄弟っぽくもないからだろう。
それに、まんまだけど、俺の見た目は、お育ちの良い御子息感あるらしい。色素の薄い栗色のサラサラの髪に、初対面の人には「顔小さっい!」とよく叫ばれる、整った顔立ち。ピアノを弾くのに適した細くて長い指。あだ名は「貴族」とか「王家」「プリンス」だった。ちょっと馬鹿にされているのでは?と悩んだ時期もあった。
でも、この容姿のおかげで、セックスの相手に困ったことが無い。
男性が好きで、同性同士の性行為に目覚めてから……狙った獲物は逃してない。俺の好みは、ゲイだと自覚しつつもオープンにできず悶々とした童貞くんを食べる事だ。
おそらく俺はビッチと言われる種類なのかも知れない。
でも、俺は相手にビッチだとバレずに、ウブなやつと思われてお互いドキドキの初夜みたいなセックスがしたいんだ。だから一つのコミュニティで手を出して良いのは一人と決めている。だって……ビッチバレるし。
高校では同級生を、大学では、もう先輩チェロ奏者の童貞を美味しく頂いてしまった。地元のオーケストラサークルでは年下のトランペットくんも良かった。
でも、みんなイマイチ恋人にしたいほどじゃなかったんだよね。……どこかにいないかな、本気になれる人は。恋人だと、やりたい放題セックスできるし最高だよね。
「保護者の皆様、お待たせしました。中へどうぞ」
館内から中年の女性が出てきて、集まっていた人たちが中へ入って行く。この人たち、みんな、あの料金払っているんだと思うと……凄いなって思う。
「美治、緊張してる?」
「ううん、一回見学に来た時、楽しそうだったから」
「そっか、それなら安心だね」
甥っ子と手を繋ぎ、歩き出した。
美治は5歳にしては、しっかりしていて落ち着いている。一緒に出かけても騒いだりしないし、実家に来ているときは、よく俺のピアノ練習をおとなしく聞いている。良いのか悪いのかは分からないけれど、手のかからない子だ。
「へぇ~、今のプールってこんなに綺麗なんだ」
出入口の下駄箱も、ロビーみたいな受付も、奥に見えるプールと観覧席も、とても綺麗だった。
「プールの水も綺麗らしいよ、オゾンだから塩素が少ないんだって」
5歳って結構親のつぶやきとか言ったことを覚えてるよね。きっと姉が説明したんだろう。
「美治は賢いなぁ。じゃあ美治のこの天使の輪は守られるな」
美治のショートの髪を撫でると、首をすくめて喜んでいる。可愛いいなぁ。
「こんにちは」
「っ!」
美治とじゃれていると、後ろから大きな声がかけられて、思わずビクッと反応してしまった。思わず美治の手をギュッと握ってしまい、大きな瞳が心配そうに見上げている。
「すいません、驚かせてしまいましたか?」
振り向くと、屈強な水着姿の男性が立っていた。
でかっ……まず、背がデカい。ほぼ日本人男性の平均170㎝の俺より10㎝以上大きい。しかも、身幅が違う。体が厚い。逆三角形の上半身の胸板は、俺がどんなに頑張っても、そうならないレベルだ。半袖のラッシュガードで体のラインが浮き彫りになっている。腹筋もシックスパックに盛り上がっているのに、胸板が厚いために凄くウエストは細く感じる。
そして、足と腕の筋肉も立派だ。おす、雄……まさにオスだった。
しかし、流石に子供の体育指導者、笑顔が眩しい。
黙っていたら怖く見えそうだけど、笑顔を作り慣れている、人当たりの良い表情だ。笑顔になると顔を出す右の八重歯、くっきりとした二重で輝く瞳、鼻は高くて立派。耳が少し大きめで立っている。
なんだか……ちょっとお猿さん系のイケメンだ。そして屈強。
そして多分、ゲイだ。俺のレーダーが反応している。
美味しそう。今まで俺のアクセスしてきた世界は、割と知的なインテリとか、音楽の世界で生きる繊細な芸術家ばかりだったから……体育会系の男子良いな。
野生の生命力を感じる筋肉!
あの屈強な体で腰を使われたら、さぞかし気持ち良いだろう。
性欲も強そう……一晩中セックス出来るのでは?
食べてみたい。屈強な男を尻で喘がせたい。
「……」
「…かなちゃん?」
美治が俺の手を引っ張った。
「あっ…すいません、ちょっとビックリして」
セックスの相手には清純派と思われたい俺は、煩悩を隠し、すました顔で答えた。
「いいえ、こちらこそすみませんでした。今回、指導を担当させて頂く、桐原 蒼介です。こちらでお子様のお着替えをして頂きますので、どうぞ」
桐原先生が美治を誘導するように腕を伸ばした。
「美治の叔父の奏です。よろしくお願いします」
挨拶をする俺に、顔だけ振り返って先生が笑った。背中を向けた先生の後ろ姿も堪らない。
ゴリラ系ではない、スポーツマンとして程よい筋肉が最高のバランスだ。
確か、この習い事は2週間。何とかして先生の個人的な連絡先を、ごく自然に入手しなければ。
一日目の前半はプールだった。ひたすら桐原先生の肉体美を堪能し、妄想を膨らませた。先生の水着の股間部分をジッと見ないようにするのは大変だった。だって……桐原先生、デカいんだもん。
休憩と、ちょっとしたお遊びを挟んで、後半は二階のホールで身体表現だった。
普段はバレエでも使っているのか、アップライトのピアノが置かれていて、講師の先生の一人がピアノを弾いて遊びを交えながら子供達がとても楽しそうに踊っている。
凄い……この先生達、高いお金を取るだけあって、子供達への指導がプロだった。何度か美治の他の習い事を見たことがあるけれど、今までで一番感動している。
25人位を相手に指導員が3人もいて、皆が目配せをしながら全体を見て一つの劇のように動いている。子供達の表情、反応をしっかりと観察し、その子にあった声かけや、関わりが行われている。そして時には真剣に、時にはおちゃらけて、見ている保護者達まで楽しませていた。
最初は、桐原先生を邪な目で観察していたのに、最後の方は忘れていた。
帰りがけに、桐原先生に「いかがでしたか?」と聞かれ、俺は興奮が止まらなかった。
「凄いです!先生方、凄すぎです!俺も将来子供に音楽やピアノ教えるような仕事がしたいと思っていたんですけど……なんか、考えが甘かったの気がつきました。子供を指導するのにもプロのワザがあるんですね!」
思わず桐原先生の手を握りしめていたのは、本当に純粋な興奮からだった。
「あっ…ありがとうございます」
桐原先生は、俺の勢いに圧倒されている。
「美治くんの叔父さんは…えっと…」
「奏です!音大に通ってます。これから2週間、皆さんの指導が見られるの、とっても楽しみです!美治をよろしくお願いします」
「…こ、こちらこそ…よろしくお願いします」
桐原先生の少し照れたような顔が、とても可愛い。
「かなちゃん、お腹空いた」
「あっ、ごめん美治。帰ろうか」
「うん、僕…パン食べたい」
「わかった」
いやぁ……いい役目を頼んでくれたな、姉さん。最高だ!
俺は満面の笑みで美治と手を繋ぎ、教室をあとにした。
□□□ 桐原視点
日本有数の体育大学を卒業して、2年は幼稚園や保育園で運動の指導を行う会社に勤めた。
しかし、もっと子供達の個々の能力や興味関心にあった活動を手助けしていきたいと考え、大学時代の各分野に明るく、子供の指導に向いている奴らに声を掛けた。
入念に事業計画を作成し、各自の指導能力を磨き、1年の準備期間を経て、個人の体育指導教室を立ち上げた。
少人数で精鋭の代わりに、料金は高く設定した事が、逆に富裕層にウケて、お陰様で賑わっている。金銭に余裕のあるご家庭が多いせいか、教室が充実したものだと、割と雑費や経費が高くなっても書面にて明確に提示すれば一切のクレームが来ない。都度都度、より専門的な指導者なども十分なギャラでお呼びできて、既存の指導者のレベルも上がり、好循環が生まれている。
スタッフに口うるさく言っているのは「子供のご両親と親密な関係にならないこと」それが大切なルールだ。
だから……今日、お会いした美治くんの保護者の方を見て、一瞬で目を奪われたのは秘密だ。
俺は、今まで誰にも話したことが無いが、男が好きだ。
自分はスポーツマンタイプの筋肉質な男だが、惹かれるのは、細身で綺麗系な繊細な感じがする青年だ。体育大学には、存在しないタイプだ。お陰で大学で悲しい片思いをすることも無かったが、恋の経験も出来なかった。
就職してからは女性ばかりの職場に顔をだしていたし、同僚はマッチョばかりだった。
美治くんの叔父さんは、まさに俺の理想を具現化した……いや、それ以上だった。細く長い手足と完璧なスタイル。整った優しい顔立ち。キラキラと輝いた瞳。
それに……子供に対する、あの笑顔。駄目だと分かっていても、釘付けになってしまった。
「……怪我?」
『申し訳ありません、所長。骨折しました』
子供達のダンスの音楽を担当してくれているスタッフから早朝に電話がかかって来た。何事かと思ったら、転倒して腕の骨を折ってしまったらしい。
あぁ、お気の毒に、怪我の前のパフォーマンスに戻すには相当時間がかかるし、リハビリも大変だろう。
「それは、なんと言って良いか……とにかく、ちゃんと療養してくれ」
『それで……今日、代わりにピアノを弾けそうな人間に声かけたんですけど、全滅で……』
彼は本来は音楽の専門家ではなくバレエ出身のピアノ経験者だった。
バレエの講師は既に居たために何度も断ったのだが、どうしても働きたいと頼み込まれ、今のポジションに落ち着いたのだが……自分で確立した場所である分、相当気に病んでいるのだろう。
「そこは気にしないでくれ。こちらで何とかする、大丈夫だ」
そうは言ってみたものの、通話を終了してから頭を抱えた。最悪、録音されている音源で何とかしようと思うが、そうなるとレッスンの流れが一瞬止まるし、即興で音で遊ぶことも出来ない。夕方のバレエ教室の生演奏も調整しなければ。
朝から事務所で方々に連絡したが、誰も彼も「急に言われても困る、自信ない」と断られてしまった。それもそうだろう。
その時だった、美治くんの叔父さんから欠席の連絡があったのは。
『それで、歯が欠けちゃって歯医者に行くので今日はお休みさせて頂きます』
美治くんの叔父さんは、声も澄んでいて綺麗だ。そんなどうでも良い感想を抱いてしまう、俺は馬鹿だ。
「わかりました。お大事になさってください。あの……スイマセン、非常に不躾な質問なんですけれど」
『はい、なんでしょうか?』
「美治くんの叔父さまは、音大に通われているんですよね?ピアノ弾けますか?」
『え? はい。人並み以上には』
その表現に少しクスッとしてしまった。彼は天然なのだろうか?
「あの……実は……」
□□□□
「ラッキーチャーーーンス!!」
俺は電話を切って、ガッツポーズをした。まだ耳に桐原先生の声が残ってて、ゾクゾクする。
これは、色々チャンスだ。一瞬でもスタッフとして働ければ、子供の指導も学べるし、桐原先生の童貞を頂けるかもしれない。
保護者の一人のままでは、進展しないけれど……スタッフなら、個人的な連絡先を確実にゲットできる。
ピアノやってて良かった!美治の叔父さんで良かった!
「ひゃほー!」
俺は、この喜びをピアノで即興曲に変えた。そして、昨日の美治のレッスンを思い出して、スタッフさんが弾いていたピアノを再現してみた。
「うん、まぁ簡単な曲っぽかったし大丈夫かな」
練習をソコソコに終わらせて、家を飛び出した。
「今日演奏して欲しい曲の楽譜なんですが、どうでしょうか?」
「弾いてみます」
桐原先生の体育教室の事務所にやって来て渡されたのは、幼児教室のダンス遊びの曲と、夕方のバレエ教室の曲だった。どちらも初見で弾けるレベルだったので、譜面を広げ演奏をはじめた。
「楽譜捲るのもなんなんで、始まるまえに此処にはっつけて良いですか?止まったりガサガサ言わない方が良いですよね」
弾きながら隣に立つ桐原先生を見上げて聞いた。
なぜかポカーンとした顔で見られている。うん、なんか可愛い。
「……凄いですね。一生懸命練習してたスタッフの彼が可哀想になるくらいだ」
「いやいや、三歳からずっとやってますから、昨日のレッスンみたいに声かけて貰えれば適当にアレンジして応えますから言って下さい」
「頼もしいですね。いや……本当に流石ですね。なんだか本職の方にこんな事を頼んでしまって、逆に申し訳なくなってきました」
苦笑しながら頭を掻く桐原先生は、体の大きさよりも小さく見えた。
「いえ、声かけして頂けて凄く嬉しかったです。みなさんのプロの指導のワザを間近で勉強できて光栄です。よろしくお願いします」
俺は手を差し出して、桐原先生と握手をした。
「子供の前では下の名前で先生呼びをするので、奏先生とお呼びしても?」
脳内の俺がファンファーレを演奏しはじめた。チューバ……音が外れたぞ。
「もちろんです、えっと蒼介先生」
勝手にドキドキして、照れて笑いながら呼んでみた。
「……よ…よろしく、お願いします」
ん?あれ?蒼介先生。ゲイだって事は察知してたけど、まさか脈有りか。俺は鼻の穴が広がりそうになるのを必死に耐えた。これは、蒼介先生の童貞を食えたも同然では?
そのデカいチンコは、もう俺の中にインしちゃう感じなのでは?
でも、焦っちゃ駄目だ。俺はビッチを隠してセックスをしたいのだ。
向こうか辛抱溜まらなくなってがっついて来て、駄目……そんな……いやぁぁ♡を楽しみたいのだ。
ここからの駆け引きが重要だ。あくまで、スタッフとして、健全に誘惑する!
もとより自信があったけど、やはりレッスンは大成功だった。
最初は遠慮がちに、音の変化を要求してきた蒼介先生だったが、レッスンの中盤には、無茶ぶりに近いフリをしてきて、即興の演奏バトルしている気分になってきた。負けるつもり無いけど。
「奏先生!凄い良かったです!流石です!」
レッスンが終わり、子供と保護者の皆さんが全員退出すると、蒼介先生が腕を広げた。
えっ……これ、抱きついて良いの?うわぁ、さすが体育会系男子、試合の後はハグみたいな感じか。
「ありがとうございます」
ビッチだけど、ガッツかない俺は、自分からは腕を広げず蒼介先生の逞しい胸に、ぴとっと頬を寄せた。
「あっ…ああ…す、素晴らしい、演奏でした」
ぎゅっと抱きしめられるかと思ったけれど、なぜか蒼介先生の腕が広がったままで、指がピクピク動いている。
あれ? なぜか、もう一人のスタッフのサトシ先生が声を殺して笑っている。
「凄く楽しかったです。お二人の指導、とても勉強になりました。お二方とも360度見えているのかと思いました」
蒼介先生の胸から抜け出して、どれだけ自分が興奮したかを身振り手振りを交えて語った。ここの先生達は、子供達を楽しませようという意識と技術が高くて、本当に凄いと思う。
「慣れると見るべき所が見えるようになります。目に付くとも言えますが」
照れたように笑う蒼介先生は、爽やかで、チャームポイントの八重歯が可愛い。うん、マジで……絶頂寸前で意地悪したくなる。
「そうなんですね」
頭の中にモワモワと広がった煙のような妄想を、パタパタと吹き飛ばした。
「あっ、すいません。今日、俺、銀行に用事あるんで抜けて良いですか?」
サトシ先生が、右手で空間を切るようにチョップをしている。
左手は指で円を作ってお金ジャスチャーもしている。体育会系って何でも身体表現するの?それとも子供相手にしているとツイ妙な動きはいっちゃうの?
あー、でも音大の奴らも独特な所あるよな、時々ミュージカル始まるし、鼻歌でも何人も勝手にハモってくるし。
絶対音感早押しクイズ始まるときもあるもんな。
「奏先生?」
「あっ……はい!」
生息地域の違いに思いをはせていたら、ちょっと蒼介先生の話が耳に入ってなかった。
「よければ、お昼ごはん奢らせてください」
「いや、そんな」
「嫌じゃなければですけど、働いている間の福利厚生の一つと思って頂ければ。突然呼び出したのに完璧で、何かお礼をしないと気が済みませんから」
なんと!昼食代が浮くうえに、プライペートの話をする機会が沢山できて、断る理由が無い。しかし、俺も成人した大人。ここは一回遠慮する雰囲気を出す必要があることは分かっている。だから一回、そんなとか言った。大人の世界は面倒くさい。早く仲良くなりたい。
「蒼介先生とお話ができるの……凄く嬉しいです」
「わ…私もです」
可愛い。ガタイの良い筋肉好青年、可愛い。
これ、インテリ格好つけでは得られないキュンキュンだよ。あぁ、早く大胸筋を揉みたい。
ランチでは、業務連絡の為にも当然のように連絡先を交換した。蒼介先生のスマホのホーム画面は、海の写真だった。泳ぐのが好きでプールもマリンスポーツも大好き。それで、この完璧な体が維持されているのか。
うん、運動って凄い。
俺、ピアノ弾く前腕の筋肉しか発達してない。海とか、もう何年も行ってないなぁ。蒼介先生が手取り足取り教えてくれるなら、マリンスポーツも悪くないかな。
腕に怪我するのだけは駄目だけど。むしろ、海辺で曲聞きながら泳ぐ蒼介先生を眺めたい。躍動する肉体、良いな。
「奏先生の彼女さんに怒られそうですね……」
夏休みだったのに、突然バイトがギッシリ入って申し訳ないという話題から、俺の彼女の話題になった。
よーし、よし、気になっている、かなり俺の事を恋愛対象として意識していると見た。ここはフォルティッシモでガツンと攻めよう。
「居ないです、彼女。いたことないです」
ちょっと言いにくい感じで言うのがポイントだ。
「いや、そんな事ないでしょう。こんなに美青年な奏先生がモテないわけがない」
蒼介先生が熱く否定してくれた。
「いや……気持ち悪いって思われちゃうかも知れないんですけど、俺……」
俯いてカフェのテーブルに視線を彷徨わせる。グラスから滴る水滴が水たまりを作っている。
ここでは、男が好きだとハッキリと言わない所が重要だ。
「……」
ちらっとテーブルの向かいに座る蒼介先生を見上げると、目を見開いて動きが止まっている。
どうなのかな?体育大学って、そういう性の多様性みたいな所に理解ある感じなのかな?逆に気持ち悪いとか言われちゃう所?
「すいません、こんな話して……蒼介先生、優しいから話しやすくて……あ、だからどうって訳じゃなくて、憧れるのはいつも男の人ってだけで……」
申し訳なさそうに苦笑する。
「そっ、そうか!そうなんだ、ありがとう教えてくれて。うん、嬉しいよ」
さぁ、蒼介先生。思う存分、俺を落とす計画を立ててください。
蒼介先生は、絶対に今まで自分を抑圧してきたゲイ!さぁ、今、丁度良い鴨がネギショルダーして来ましたよ。手を出すしか無いでしょ!
□□□□
あれから5日間、美治を送迎して自身もレッスンのスタッフとして加わり、美治を送ってまた教室に戻り働く、を繰り返した。
俺と蒼介先生の関係は、完全なる空中戦だ。
ちょいちょい、わざと隙を見せる俺と、攻め倦ねる蒼介先生の構図から進展しない。
美治のレッスンは、あと5回だけど、他のバレエやダンスに呼ばれているので、一ヶ月くらいバイトする予定だ。
だから焦る必要ないけれど、のんびりしていもいられない。鉄は熱いうちに打てっていうでしょ。
そのためには、二人の関係を発展させるような切っ掛けが欲しい。そんな事を考えていた時だ。蒼介先生からメッセージが来た。
『奏先生、1週間お疲れ様でした。奏先生のお陰で良いレッスンが提供できています。来週もよろしくおねがいします。それで、これは自由参加なので断って頂いて構わないのですが、毎年この幼児向けの夏季教室が終わった日に、希望するスタッフと海辺のコテージでバーベキューして一泊しているのですが、いかがでしょうか?』
「しゃあぁあ!」
俺はメッセージを見て、すぐに雄叫びをあげた。
よし、これはもう、蒼介先生を美味しく頂くチャンス以外の何物でも無いだろう。
蒼介先生から宿泊するコテージのホームページとか、参加者が送られてきたけど、正直どうでも良かった。返事はイエス以外はあり得ない。
『喜んで参加させて頂きます。よろしくお願いします』
俺は休みを2日間挟んだけれど、その間に姉さんには、教室から録画した動画が送られてきたり、美治の様子や、今までやった種目に取り組む様子などの中間報告が細かく送られて来た。見せて貰った時に、そんなところまで意識して一人ずつ観察して記録しているのか、と感心した。
蒼介先生、最高に良いからだしているし、お耳の立ったイケメン顔も可愛いし、優しいし、仕事も出来るとは……ますます美味しそうだ。これで性欲強かったら完璧だな。
□□□
「俺、バーベキューとかしたことなくって……海も家族以外と行くの初めてで、皆さんどんな水着を着るんですか?」
週明け、夕方のバレエの前に、集まりに参加するバレエの先生に聞いてみた。
ちなみに先生は男性だ。凄い発達した足の筋肉で、彼が舞うと空を飛んでいるみたいで、最初は驚いた。
「んー、毎年皆それぞれ自由かな?俺は普通の短パンみたいな奴だけど、サトシ先生はアホみたいに面積の少ない水着だった。所長はいつものプール指導の水着だったな…あとは覚えてないかな。ただ言えるのは……去年参加した6人のなかで、一番デカかったのは所長だった」
「おい、ジョージ!奏先生に下品な話をするな!」
フロアにモップを掛ける蒼介先生が、ストレッチするジョージ先生に蹴りを入れていた。お二人は大学の同級生で、親友らしい。
俺の勘ではジョージ先生は敵じゃ無いっぽい。二人は健全な友人だと思う。
「えー、あれ?これってセクハラ」
「いえ、大丈夫です」
むしろ、詳しく聞きたい。いっそ見せて欲しいと思ってますよ。
「奏先生、こいつ口を開くと下ネタしか言わないので会話しない方が良いですよ」
「ひでぇな、男なんてそんなものだろう。奏先生、コイツの方が近寄らない方が良いですよ。まじでムッツリだから、奏先生相手にきっとエロい妄想してるぜ」
「おまっ!馬鹿な事いうな!!」
真っ赤になって焦っている蒼介先生が、凄く可愛い。本当に俺でエロい妄想してくれてたら凄く光栄だ。
「なんだよ、冗談だろ本気にすんなよ。ねー、奏先生。でもさ、どう?この男、結構良い物件だと思うよ。心身共に健康で、将来有望だし。外見も悪くないし」
ニヤニヤと笑いながら俺に蒼介先生を薦めるジョージ先生。
これは、まさか……親友へのキラーパスでは?!お前、ゴール決めちゃえよって奴なのでは?青春の放課後トーク?!
「なに言ってるんだよ!変な事を言って奏先生を困らせるな」
蒼介先生は、ピアノの椅子に座る俺を不自然なほどに振り向かない。広くて大きな背中しか見えない。お耳が真っ赤だ。
マジで可愛い。今すぐホテルに連行したい。
「……蒼介先生は素敵すぎて、俺じゃあ釣り合わないですよ」
とりあえず、イエスともノーとも言えない浅いところをフワフワする答えを出す。ビッチだとばれたくない。ウブなセックスがしたいのだ。
「そんな事無い!」
思わずといった感じで蒼介先生の声がデカくなった。振り返って目が合うと、蒼介先生の方が驚いて目を逸らした。
「…お前」
「戻りました!!」
ジョージ先生が何か言おうとした時に、レッスン室のドアが開いてサトシ先生が休憩から戻ってきた。
微妙な空気が室内に流れるけれど、当のサトシ先生は気がつかない。プロレスラー並みのムッチムチの体でキョトンとした顔をしていて何だか、ゆるキャラみたいだった。
それから、俺と蒼介先生の間に、ムズムズする空気が流れながら、後半の5日間のレッスンが終了した。最後は姉さんの都合がついて、見学ついでにお迎えに来てくれ、美治は姉さんと帰っていった。
教室には女性スタッフが2人いるけれど、1人は海嫌い、1人は彼氏が嫉妬するとの理由で不参加だ。今回の旅は6人の男で行くことになった。
俺の旅行鞄には、こっそり使い捨てのローションまで入っている。今日は必ず、蒼介先生の童貞を頂くつもりである。パンツも水着も下品にならないけど、性器の形が綺麗に浮かぶエロい物を買った。
先生達は、海に面したコテージに着くなり、休憩するでもなく水着に着替えはじめた。
さすが体力モンスター達。
何となくお互いが見えないように後ろを向いて着替えを終え。各々海に向かって走りだした。
所長である蒼介先生は、鍵を掛け遊べそうな物を籠一杯に持ち出している。蒼介先生は先生達みんなのお兄さんっぽい所もキュンキュンする。
「奏先生、白!肌真っ白で艶々じゃないですか!」
サトシ先生が準備体操をしながら、俺の目の前まで来て屈伸しながら眺めてくる。
「皆さんと居るとコントラスト凄いですよね。筋肉ないし、自分のひょろさを感じます」
6人中、5人が良く日に焼けたマッチョ。1人混じっている色白細身。逆に目立つな。
「ひょろいっていうか……なんかエロいっすね!男臭さゼロ!こう…艶めかしいっていうか」
まぁ、そうかも知れない。
医者の姉さんの『体毛なんて不衛生』という考えを鵜呑みにして、おヒゲも脇もアンダーも永久脱毛してある。ツルツルだ。
「俺、筋肉付きづらいし日焼けする前に真っ赤になるんで、男っぽい演出もできないです。あっ、日焼け止め忘れた」
「じゃあ、鍵開けるし一緒に行くよ」
カゴをビーチに置いた蒼介先生が言った。
先生達は、ビーチボールで遊びはじめたり、海に飛び込みはじめている。
「ありがとうございます」
狙ったわけでは無いが、コテージのリビングで二人きり、日焼け止めを塗ってもらうというシュチュエーションを手に入れた。
「お願いします」
フローリングにあぐらをかいて座り、後ろに膝をついて屈んでいる蒼介先生に日焼け止めを手渡した。
「はいっ」
後ろから聞こえてくるシャカシャカという日焼け止めを振る音が、尋常じゃなく大きい。そんなに振らなくても大丈夫なんだけど。
「じゃあ……始めますね」
蒼介先生の大きくてゴツゴツした手が、俺の背中を撫でるように触れていく。スキンシップが嬉しいのと、ドキドキする気持ちで、つい「ふふふ」と笑いが漏れてしまう。
「すいません、くすぐったいですか?」
「そんな事無いです、気持ちよくてニヤニヤしちゃいます」
顔だけ振り返って、微笑んだ。
「それは……よかった」
二人の間に、割と良い雰囲気の空気が流れている気がする。
よし、ちょっと踏み込んでみようかな。俺は、くるりと振り返って、日焼け止めを持つ蒼介先生の手を握った。そして、反対の自分の手の平を広げて、そこに日焼け止めを垂らした。
「……」
蒼介先生の視線が、俺の手に、そしてぷっくりと立ち上がった乳首に注がれた。
俺は何食わぬ顔で、胸やお腹に日焼け止めを塗った。そして、ゆっくりと指の上にのせた乳液タイプの日焼け止めを乳首に塗りはじめた。
「……」
すこし膨れている乳輪の形に添って円を描き、尖った乳首をツンツンと潰すように塗った。声を失って俺の胸を凝視する蒼介先生。
「……あれ?綺麗に塗れない」
乳首にまだらに残る白い乳液を、少しずつ丁寧に塗り込む。
乳首が限界まで尖って、少し触れるだけでジンジンする快感が走るので、声を出さないように唇を噛んで耐える。すぐ目の前で蒼介先生のゴクリと唾を飲む音が聞こえた。
「よし、有難うございました、蒼介先生」
「あっ、ああ!」
「それじゃあ、行きましょうか」
俺は先に立ち上がり、玄関を指さした。しかし片膝を立てた状態の蒼介先生は、動かない。
いや、正確には動けない。そう、チンコが兆しているのを隠すために……。
「あの、一件連絡するのを忘れていたので……先に行っていてください」
「待ってますよ」
つい可愛くて、意地悪を言ってしまった。
「いえ、長くなる……かも、しれないので……」
蒼介先生の不自然にしゃがんでいる姿がとても愛らしい。
他の人が居なかったら、今ここで「どうしたんですか?」って水着の膨らみに触れるのに。
「そうなんですか?じゃあ、先に行ってます。早く来て下さいね」
互いの社会的名誉を守る為に、俺は未練を断ち切って外へと向かった。
今日は、俺はエロスの神に愛されていた。
海で散々遊び、バーベキューでお腹いっぱいになり酒も入った先生方は、一人二人と自室に消えていった。外のバーベキューを簡単に片付けて、室内で二次会が始まっている。
残るは、飲んでも酔わないという蒼介先生と、缶ビール片手に船を漕ぎ始めたサトシ先生だ。
「サトシ先生?起きてますか?」
サトシ先生は、リビングのローテーブルに段々と顔を伏せはじめた。
よし!寝ろ、そのまま寝ろ。俺は隣に座るサトシ先生に顔を近づけた。
「……」
サトシ先生の反応が無い。どうやら寝たようだ。
「寝ちゃいましたね」
俺の顔が満面の笑みになるのは仕方ないよね。
それに、サトシ先生って、気の優しい森の熊さんみたいで見ていて和むし。
「あー、しょうが無いな」
向かいに座る蒼介先生が立ち上がると、こちらに歩いてきた。
えっ…まさか、サトシ先生を運ぶの?サトシ先生、ゴリラマッチョだから、90㎏越えていそうなムチムチだよ。蒼介先生の方が背は高いけれど、太さは一回り大きい。
アレか!俺がサトシ先生の足を持って、捕獲した熊みたいにブラーンと後ろのソファに運ぶ感じ?
よし、っと俺も腰を上げた。
「あっ、大丈夫。コイツ重いから。ピアニストが怪我したら大変だよ」
ニッコリと笑った笑顔から八重歯が覗いている。あぁ……爽やか。
本当に優しそうに笑う蒼介先生の笑顔に胸が高鳴る。
まじで、こんな良い人漏れ出ちゃっているの中々居ないよな。ちょっと一夜のセックスだけじゃ味わい足りないかも。
「サトシ先生移動するよ」
蒼介先生が、突っ伏したサトシ先生の肩を叩くと、んーなんて答えたサトシが腕を広げて蒼介先生に抱きついた。
えっ。何ソレ!俺もやりたいんだけど!ずるっ!サトシ先生ずるい!
サトシ先生は木によじ登る熊のように、蒼介先生に正面から抱きついた。
「よっ…」
その巨体を抱えた蒼介先生が、少し離れたソファに歩く。凄いね、筋肉。今まで筋肉と無縁の人生を歩んできたけれど、逞しい肉体って格好いいね、やっぱり。
いいなぁ、サトシ先生いいなぁ!
「蒼介先生、蒼介先生!」
「ん?」
サトシ先生を下ろし、近くにあったタオルをそのお腹に掛けてあげた蒼介先生が振り返った。
俺は、彼に向かって両手を広げた。
「そのアトラクション、俺もやりたいです」
「えっ?ん?あっ…え?……うん」
困惑した様子の蒼介先生が、首をひねりながら俺の前までやって来た。
推定90㎏のサトシ先生が持ち上がるなら、60㎏無い俺は軽いものだと思う。
「蒼介先生に飛びつく子供の気持ち、今凄く理解してます!」
「そ、そう?……じゃあ…」
蒼介先生の大きな手が、俺を持ち上げた。まるでフィギュアスケートのペアみたいに。
「うわあぁぁ、凄い高い」
体の密着が少なくて思ってたのと違うけれど、これはこれで楽しい。高めの天井がスレスレにある。見下ろした蒼介先生と見つめ合う。彼がとても優しい顔で笑うから、柄にも無く性欲以外のキスがしたくなった。
今、目を閉じたら、キスしてくれるだろうか……。
「……」
意味深にゆっくりと瞼を閉じた。すこし顎を向けて。
「……」
俺の体は、引き寄せられて着地した。ちらっと目を開けたかったけれど、我慢してギュッと瞑っていると、肩に手を置かれた。期待が高まり心臓がドキドキして止まらない。
「奏先生……キス、しても良いですか」
か、確認された!
ビックリして思わず目を開けてしまった。言葉を発したくなかった俺は、かかとを持ち上げ、背伸びをした。
もう、ウブなふりはしない。我慢したくない。
蒼介先生に抱きつくように頭を引き寄せて、唇を重ねた。
「俺と、お付き合いをして頂けませんか?」
唇が離れると、少し心配そうな表情で、眉がハの字になった彼が聞いた。
お付き合い……それは、セックスした後でだ。ビッチな俺を満足させてくれるなら。
俺は、是とも否とも取れる笑顔で答えた。
それから、俺達は蒼介先生の部屋にやって来た。
ベッドの上で向かい合って座り、触れるだけの口付けを繰り返した。ちゅ……ちゅっと触れあう唇から可愛い音がする。
彼は、付けている耐水性のシンプルな腕時計を外した。なんだか、その行為が妙にエロく感じた。
今までインテリ系の男とばかりやっていたから、誰も彼も高そうで繊細な時計だった。服装もスーツばっかりだった。
蒼介先生は、体のラインがハッキリわかる黒のオーバーアーマーのTシャツで、エロく感じる。
だって、雄ッパイの質感も見て取れるし……引き締まったウエストも抱きつきたいし、簡単に手を入れられそうな短パンが俺を誘っている。
「……蒼介先生」
右胸に頬を寄せて、ツルツルした手触りのTシャツに手を当てる。左の盛り上がっている大胸筋を撫で摩る。
「か、なで先生!?」
腕を上げて体を硬くする蒼介先生の焦った声が俺のS心を刺激する。つい、シャツの上から彼の乳首を唇で挟む。俺の開発された乳首と違って、つんって勃ってくれない。
「あの……ちょっと…視覚的に、色々不味いです」
「だって、蒼介先生の体、俺と全然違って……素敵だから」
「……」
胸を撫でる手を滑らせ、鍛えられた腹筋にじゃれるようにパンチをした。
「お…俺なんかより、奏先生の方がよっぽど魅力的です。凄く……綺麗だ」
「本当ですか?」
念願のウエストに抱きついて、彼の顔を見上げた。
蒼介先生がコクコクと頷いている。
「あの……俺の体を見ても、引かないで下さいね……」
「どうして?」
「……実は、生えて無いんです…」
俺は、抱きついていた腕を解いて、蒼介先生の股間に触れた。
そこは、とても大きく硬くなっていた、布越しにも感じる熱に興奮が止まらない。
「……そ、そうか……うっ……そんなこと、問題ないよっ……」
「蒼介先生の……ほんとに、大きい」
「うっ!」
押し込められている大きなペニスが、更にかさを増して、短パンを押し上げている。
短パンごと左手で握った。
「俺のと全然違う……」
「みせて、奏先生の……見せてください」
熱っぽい目でお願いされ、頷いた。手を離して、Tシャツとズボンを脱いだ。あえてパンツは脱がなかった。蒼介先生も服を脱いで下着だけになった。大きなペニスが黒のボクサーブリーフを押し上げている。先が少し湿っぽくなっているのは気のせいじゃない。
「……」
ベッドの側に立って向かい合い、自分の下着を少しだけ下ろした。
毛に覆われていない、剥き出しのペニスは、期待で少し大きくなっている。蒼介先生が体を密着させ、俺の下半身へ手を当てた。
「…んっ」
彼の手が俺の睾丸を優しく揉んだ後、ペニスを掴んだ。大きくてゴツゴツした手に握られて興奮する。だって今までは、音楽畑の男ばかりで、みんな綺麗な手をしてた。全然違う。
「蒼介せんせ…」
蒼介先生の手が、ぎこちなくペニスを擦る。それに負けじと、俺も彼の下着の上からペニスを掴んだ。太くて硬いその根元を優しく何度も擦り、睾丸を転がすように波打たせた。
おでこが蒼介先生の胸に当たっているのだけど、しっとりと汗をかき始めた。お互いに興奮し、夢中になって相手のペニスを弄る。
「……奏先生……うっ…」
大きくなりすぎた蒼介先生のペニスが下着から飛び出したので、先走りを塗り込むように直に触れると、ドクドクと脈打ち白濁が漏れ出る。
やばい……凄い興奮する。
滾るデカいチンコも、汗に濡れた筋肉も、耐える蒼介先生の顔も。
「…あっ……んっ……う…」
前をシゴかれて、後ろが疼く。
海から上がりシャワーを浴びたときにローション使って解した。
もう、蒼介先生のペニスで、ぐちゃぐちゃにしてほしい。
「奏先生の……綺麗だ…」
まじまじとペニスを見下ろされて、つい自分のモノに視線を向ける。
蒼介先生のものよりも淡い色合いのペニスは亀頭の赤さが際立って見える。
「一緒に触っても良い?」
子供に語りかけるように聞かれて、何だかとても恥ずかしかった。
「蒼介先生……なんだか、悪戯されているような気分になります!」
「えっ!ごめんね、そんなつもりじゃ……」
「でも、ちょっと興奮します」
素直に白状すると、彼がふっと笑った。
「じゃあ、奏くん……先生のお膝に座ってみて」
ベッドに腰掛けた蒼介先生が、俺の脇に手を差し入れて引き寄せた。
「ちょっ……蒼介先生!」
「はは、冗談です。子供にそういった興味はありません。ずっと隠して生きてきたけど、奏先生みたいな、綺麗な大人の男性が好きです。実は、はじめて会った時から気になっていました。だから……今、とても興奮しています」
向かい合うように、蒼介先生の足の上に座らされ、勃起したペニスが触れあっている。
「……俺もです」
「すごく嬉しい」
本当に嬉しそうに微笑んだ蒼介先生が、遠慮がちに俺の頬に触れて口付けをした。キスに夢中になっているうちに、彼の手が俺の乳首と二人のペニスに触れた。
「…あっ……そ、すけ…せんせい」
触れられた右の乳首は、ぷっくりと腫れて、痺れるような快感が走る。ビッチな俺のペニスは、びゅっびゅと先走りが垂れはじめ、二人のペニスの潤滑油となり、ぐちゅぐちゅと卑猥な音が響く。
「…くっ……」
大きさだけではなく硬さも相当な蒼介先生のペニスが、ゴリゴリ当たって気持ち良い。
「あッ…ああー、気持ちいいっ!うぁ……」
自分でオナニーする時のやり方と違って、どんな刺激が来るのか分からないから、より体が快楽を求めていく。
「奏くん……すごく……興奮する……素敵だよ……うっ……んっ…」
こんな時も、褒めてくるの辞めて欲しい!メチャクチャ興奮する!
俺は息も上がって、はぁはぁ言っているのに、蒼介先生はまだ余裕がありそうで悔しい。
「あー!ああぁ!」
反対の乳首も摘ままれて、転がされながら、二人のペニスを上下に擦られる。陰茎の皮の動きが蒼介先生の硬いペニスに当たって不規則になる。それが……気持ち良い。
「あっ、あっ……やだ!もう!もうでますっ!ああー!」
「うっ……奏くん!……俺もイキそうだっ!」
蒼介先生の手の動きが激しくなり、先に俺のペニスが精液を吐き出した。
白いトロっとしたソレが蒼介先生の手の中で溢れ、二人のペニスが濡れ、更に滑りが良くなった。
そして、間もなく蒼介先生の手が止まり、彼のペニスからも白濁が吹き上げた。
俺のものなんて比べものにならない、その量に目を見開いた。
お腹もペニスも、ビショビショだ。
「そっ……蒼介先生……」
精液の量にも驚いたけど、全く硬さを失わないペニスにも驚いている。今、イッたばかりなのに……このまますぐ入れられるのでは?
「ごめん、奏くんが可愛いから……全然おさまらない」
「……」
俺は、八重歯を見せて苦笑する蒼介先生が可愛くて、後ろが疼いた。
お互いのペニスを濡らす精液を指にとり、自らの後孔に塗り込む。
「……か…奏くん……」
既に緩んでいる後孔を頑張って解すフリをしていると、頭を引き寄せられ、唇を塞がれた。噛みつくように興奮して貪られるようなキスに、こちらも煽られる。
「蒼介先生……優しく、して」
キスに満足して、顔をずらして蒼介先生の前に立っているお耳に囁いた。
「奏くん!」
抱きしめられ、ベッドに押し倒された。あまりに一瞬の出来事でビックリした。格闘技の寝技か。でも、しっかり頭ホールドしてくれている所に優しさを感じる。
「蒼介先生」
見つめ合って微笑むと、足を持ち上げられて、もう口を開いている後孔に彼のペニスが宛がわれた。硬く勃起し、濡れたペニスは簡単に俺に飲み込まれる。
「あっ…ん…あっ!」
あと少し、あとちょっと奥が気持ち良いところだ。
もう前立腺は膨れて、少し突かれるだけでもキツい快感を生み出すだろう。
「痛くない?……大丈夫?…少し…このままにする?」
口元は笑顔を作りながらも、眉がハの字になって我慢している蒼介先生が愛おしい。
いつもは後ろに流されている髪が乱れて色気がある。つい、悪戯心が刺激されて、意識的に後孔に力を入れて、きゅっと絞めた。
一瞬目を閉じて息を呑んだ蒼介先生が可愛い。
「大丈夫、動いて下さい」
「……辛かったら、教えて」
そう言うと、蒼介先生のペニスが俺の中に全て沈められた。
彼のペニスの先が、今まで無い程、奥までやって来た。
「んっ!」
押し込まれたソレが、今度はゆっくりと引き抜かれ、再び沈む。
「あっ…あっ…」
俺を気遣い、優しい腰使いのピストンが何度か繰り返された。
「ああー!あっ!んっ……蒼介先生…そこ…あっ!そこっ……やっ!」
蒼介先生のペニスが、俺の前立腺を押しつぶし、ペニスから精液が飛び出す。そして引き抜かれ擦られ、喘ぐ声が止まらない。いつもより高くなっている自分の声が少し恥ずかしい。
「奏くん!」
どうすれば、気持ち良いのか気がついた蒼介先生が、容赦なく腰を打ちつけ、俺を追い詰めるようにソコを刺激する。
「ああー!うっあ!ああー!だめっ…やっ!出るっ…いっちゃう!ああー!」
勘が良すぎる!しかも腰使いが……流石すぎる!
今までにないくらい、激しく気持ち良いところを刺激されて、快楽で掻き混ぜられている。
やばい!
「ああ!だめ!もうイッてる!やだ…怖い!あっ、あっ!だめ!きもちいよぉ…やだ、ああー!」
やばい!こんなセックス知らない!
何度もイッてるのに、刺激が止まらない。
蒼介先生の腰を打ち付ける音と、ぐちゅぐちゅという卑猥な音が永遠に続く。
「そっ、蒼介先生!もうやっ……あああー!もうイッて!もうお終いにして!」
「うっ…くっ…奏くん!奏くん!うぅ!」
「あああー!!」
蒼介先生の限界も近いのか、腰が激しく打ち付けられて、一瞬、俺の目の前が真っ白になった。
中に熱いものを、ぶちまけられて、耐えきれず大きく身を捩ったが、のしかかってきた大きな体に抑えこまれた。
「はぁはぁ」
この荒い息遣いが、俺なのか彼なのか分からない。
もう……疲れた。指一本動かしたくない……。
「奏くん……すまない……我を忘れてしまった」
額に汗を浮かべて、不安そうに謝る蒼介先生のペニス、まだ俺の中に刺さったままだ。
「そ……蒼介先生……まさか……まだ勃ってる?」
俺は、信じられない思いで聞いた。いくらビッチの俺でも、もう何も出ないよ!
「……少し、待ってほしい。抜こうと思うんだが……今動くと……マズい」
えっ……何がマズいの?と疑問に思い首を持ち上げたら、中が少し蠢いてしまった。
「うっ!」
再び最大強度になった蒼介先生のペニスから、熱い雫が吹き出す。
「うあぁ!もう無理!抜いて!もう出てって!」
「か、奏くん!!ぐっ!」
俺が体を引くと、蒼介先生のペニスがブルンと飛び出した。そしてドクドクと精液が流れている。
「……」
まだ勃起して硬いペニスに恐怖に似た感心すら覚えて、赤黒い亀頭に触れた。
「こら!今触ったら駄目だ……」
俺の頭は、この体力モンスターは、どれほど射精できるのか、という問に取り憑かれた。
体力と精力は比例するのか?大人の自由研究みたいだ。
モンスターの蒼介先生とセックスしまくると、レベル上がって、もっと中でイキまくるのを楽しめるようになるのでは?
楽しい夏になりそうだ!
追伸
モンスターが強すぎて倒せる気がしません!!
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うわ~❗️このお話も面白かったです( ゚Д゚)ゞ奏はビッチというわりに ガチセックスに弱いみたいだし、これからは蒼介デロデロに甘やかされて 振り回してるつもりが どんどん 振り回される用な感じがしますね( *´艸)
虎太郎さまぁぁぁ(´;♡;`)
ホントに沢山読んでくれてありがとうございます!!
今回は隠れビッチをお送りしましたが、確かに先生が純情ストレートでデロデロに甘やかしたら、奏の方がヤラれちゃうwww
ミイラ取りがミイラに(*´艸`*)
まぁ、でも二人は末永くお幸せになりそうな予感です♡♡
いんげんさんの新作だー嬉しい♡♡♡
ワー♡キャー♡えちち。
コレえちちですねぇ。
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それとも各所でビッチ街道を突き進むのか。
続きも読んでみたいです。
機会があれば是非また書いてください。
飴さま\(^o^)/
感想ありがとうございます!!
ビッチなラブコメを書かせていただきました♡
隠れビッチが、今のところ最後まで隠れられておりますが、今後二人はどうなるのか……ワクワク!
とりあえず、お付き合いをスタートした感じにはなっていますが、きっと、以前食べられちゃった童貞達がひょっこり現れては、ビッチバレのピンチが訪れ、勘違いとかが多発し、なぜか『清純無垢な天使』とか思われて、先生のセコム能力が高まる一方になったら面白いな、と妄想が膨らみます!!
書いたらノリノリになりそうです(^♡^)
いつも応援ありがとうございます♡♡