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彦山製作所、従業員募集中
しおりを挟む「なぁ、亮平どの。暇でござる」
次の日、朝から俺用に敷かれたラグの上でジタバタした。
午前は二人で昆虫ドキュメンタリーを試聴し、面白そうな研究論文に目を通した。
そしてお昼は、ベーコン目玉焼き食パンをかじり、ゴロゴロする。
「……大人しく寝てろ」
亮平は里帰り用品の片付けと洗濯に追われている。
きっちりした性格だから、一つ一つ所定の場所に仕舞っている。俺だったら…たぶん洗濯物以外は、数日…数週間放置されるだろう。
「別に病気じゃねーし、寝てられない。俺じっとしてるの苦手なんよ」
「知ってる。でもじっとしてろ。あっ…そういえば、母さんがお前が来たら着せようと企んでた浴衣送ってくれたって」
「なんと!」
亮平のお母さんは、凄く綺麗な人で和裁を嗜む人だ。よく俺と亮平に浴衣とか作ってくれて、双子コーデを楽しんでいらっしゃる。自分で写真を撮るだけでは満足できず、あの…子持ちに大人気の写真館で撮ったこともある。そして、その写真が、引き延ばされて亮平の家のリビングに飾られている。しかも…息子より俺の方が多いのは何故でしょうか…。
「夏祭り行こうぜ!夏祭り!ひゅー!めっちゃ夏。すげぇ夏じゃん。青春じゃんか。って…痛ぇ」
調子に乗って立ち上がろうとしたら、痛かった。
「確か10日後くらいに隣の駅、花火大会あった気がするけど……無理なんじゃ無いか?」
「大丈夫!行ける。浴衣着て祭り……すげぇ楽しみ」
「治ったらな……ホラ」
冷凍庫から出された、ピピコアイスの片方が投げ渡された。
先っちょを追ってチューチュー吸って、んって差し出すと、亮平ママが捨ててくれた。
「それにしても…全然バイト出来ないの後々きついわぁ……何か家で出来るバイトねぇかな…ロボの部品足りないしなぁ…」
バイトのシフト自体は、里帰り予定で減らしていたから皆に迷惑掛ける日が少なくて良かったけど…来月苦しい。両親に貰った金で生活はしのげるけど、買いたかった本とか部品が遠のいた。
「お前は…本当にジッとしていられないのか……」
「あっ!そうだ!古代アドバイザー」
頭に浮かんだのは、ヒコさんのパパ、又吉さんだ。
あの手のタイプの社長は、思いっきりは良いし、人の使い方上手いから儲かっているけど……事務作業やら、面倒くさい細かい作業とか、その手の事が大っ嫌いというのが定番だろ。
『ねー、パパ。座ってできる仕事ない?』
メールを送った。
するとすぐに電話が掛かってきた。
そうだと思った。ぜったいメールでは返ってこないって。
「もしもし、又吉さん?」
『お前、働きてぇのか?じゃあ迎えに行ってやるから、来いよ』
「了解!あっ…もう一人!元気な使えそうな若者がいます」
亮平の顔を見て電話を切ったら、亮平がガックリと崩れ落ちていた。
プルプルとピピコを持つ手が震えています。
あっ…まずかったかな?
「お前!!お前の脳みそ!学習能力が低すぎる!AI入れろ!」
亮平が冷凍庫から保冷剤をごっそりだして、俺の背中に突っ込んだ。
「ぎゃーーー冷たい冷たい!」
□□□□
今日も安定の作業着悪役レスラー顔の又吉さん。
その車に乗って、彦山製作所にやってきた。
「……お前……そのさぁ……友達の家族は…友達……みたいなの……はぁ……いいや……何でも無い……」
俺に肩を貸して歩く亮平が深い深いため息をついた。
どうした?昨日新幹線のって帰って来たわけだし、疲れているのか?
でも、俺一人で行ったら、また怒られそうだったから巻き込んだんだけどな。
「よし、じゃあお前は、ここで事務作業。お前、CAD使えるか? もう一人の兄ちゃんは、工場作業だ。安心しろ、常に人手不足だ。大歓迎だ」
それは、逆に不安しか無いけどな。
「又吉さん。うちの亮平の器用なオールマイティーぶりに惚れても、今しか貸しませんからね。うちの社長になる奴ですから」
「……アホ」
マジで、何でも出来すぎて引く。本人は何でも大体こなせるが、今ひとつ主力が無い。とかいうけど、傍からみると全部才能有るからな…。ボクシングも空手も、勉強も、お母さんにならった裁縫から、ピアノまで…どれも専門に行けるレベルだから…。なんでコイツ目立たねぇのか。
うん、やっぱり俺の隣に居るからだな。ゴメンだぞ。
「そうか!仕事の出来によっては一杯金やらぁ」
「又吉さん、太っ腹!!」
刺しがきいている又吉さんのお腹を叩いた。
「そうだろ!夕食は期待しとけよ」
うん、何時まで働かせる気だ?まぁ…有り難いから、いいけど。
□□□□
ぐちゃぐちゃで、めちゃくちゃの領収書やら何やらをまとめ、税理士に提出しやすくしたり…納品書や請求書をチェックしたりした。
若干、今日来た突発バイトにやらせていいのか…と思う事もあったけど。
時々やってくる又吉さんは、案の定、亮平の事をベタ褒めだった。
「…なぁ、やっぱ…あいつウチに来ねぇかな」
と言い出したので「アイツは、こんな所で終わるやつじゃないんっすよ」と返すと「てめぇ…言ってくれるな!嫌いじゃ無いぞ!くそが……路頭に迷ったら二人とも採用してやるぜ」と喜んでいた。
「給料良さそうだけど、人遣い荒そうだから断る!」
「ちげぇねぇ!」
なんてベラベラおしゃべりしていたら、あっという間に夜になり、又吉さんが寿司をとってくれた。
インスタに又吉さんと寿司食べてる写真アップしたんだけど……ヒコさん見るかな?って考えて楽しくなった。
□□□□
「バイト代も入ったし、夕食も浮いたし、サイコーだな」
家まで送って貰い、亮平のおんぶで階段を登っている。
男一人背負って、少しもグラつかないのカッコいいな。
「……俺は敵に送られた塩をジャリジャリ食った気分だ……」
「ん?」
「なんでも無い」
「それにしても、本当に何でもすぐこなすよなぁ亮平。又吉さんからのスカウトかなり本気だったぞ」
友人として鼻が高いな。亮平が褒められるの見ると、凄く嬉しい。
「まぁ…優秀で秀才ですから、俺」
「カッコいい~」
亮平の首筋に顔を埋めた。
「でも、もし…レオンが、何でも興味を持ってやれば、全部天才級だと思うよ」
亮平がボソっと言った。
珍しく褒められてる…なんかムズムズするぞ。
「へへへ」
「だから、もっと色々、ちゃんとしろよ」
「なんだよ!褒めて終わってよ!あーあ!昔の亮平は可愛かった!レオン凄い!レオンカッコいいってあんなに言ってくれたのに!」
「そんなに、言ってない」
「言ってた!もう目が語ってた!」
「はいはい。鍵開けるから降りろ」
今日も、俺達の1日はワイワイして終わった。
そういえば、ヒコさんと居ると俺一人で騒いでるよなぁ、と思う。
うん、これが大学生と社会人の差なのか。俺も30過ぎると、寡黙な大人に……ならないだろうな。
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