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結婚相手の事を知る
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「…そろそろ時間だ」
今、僕は早瀬さんと待ち合わせをしている。
もちろん佐藤には内緒だ。
おととい、我が家で風呂に入っている佐藤のガラケーを勝手に見たのだ。
携帯のロックナンバーは僕の誕生日だし、待ち受け画面も僕の寝顔だし…罪悪感が半端なかった。
でも、これは二人の将来のためには絶対に必要な事なのだ!
佐藤を真っ当な道に進ませる為に、反社会勢力の早瀬さんとは手を切ってもらわないと。
二人っきりで大切なお話があります。
と早瀬さんに伝えると、彼は先日あったときよりも怖い声で、分かりましたと答え日時を指定してきた。
僕のお腹は緊張できゅるきゅるですよ。
なんだか、早瀬さん、佐藤と会ったときよりも、めちゃくちゃ怖い感じなんだ。
やっぱり、普通の世界の人間じゃないのか…
「どうしよう、帰るとき僕の小指なかったら…」
ドクドクと鼓動が聞こえてくるし、さっき行ったのにトイレ行きたい。
あぁ、待ち合わせに指定された都会の大通りに立っているけど、場違い感が凄い。
グレーのパーカーに黒のパンツ、そして大きなリュック…。
道行く人パリッとスーツの此処では浮いている!
此処はいわゆる丸の内とかそういう所では?地下街でも凄い迷ったし、グーグール先生居なかったら着かなかったよ…。
僕は限りなく埼玉よりの東京に住んでいるのだ。
THE都心は管轄外なのだ。
あぁ、もう一回トイレ行きたいけど、もう時間だしぃぃ。
キョロキョロしていたら、目の前に凄い高そうな黒い車が止まった。
車に興味ない僕にはさっぱりだけど、これよくテレビで金持ちがのっているやつだ。
後部座席の窓がすーっと下がった。
「お待たせしました乗ってください」
早瀬さんの顔の上部が見えた。
眼鏡がキラリと冷たく光る。
「あっ…」
僕がビックリしてオロオロしていると、運転席の人が降りて、反対側のドアを開けてくれた。
運転手付き!?
やばいよ!
しかも運転手さん、舎弟って感じじゃないよ!ちゃんとした雇われている運転手さんだよ。帽子かぶって手袋している…。
早瀬さんの組のフロント企業というやつは、とても儲かっているのか…。
なんて人を呼び出してしまったんだ…。
街の食品工場で働くオメガとは世界が違う人だ…。
もちろん佐藤とも…。なんで、佐藤、こんな大物に捕まっちゃったのだろう。
広くて綺麗な車内に乗り込み、シートベルトをすると、運転手さんが乗り込んで走り出した。
早瀬さんは、とても不機嫌な冷たい表情で僕を見ている。
「それで、二人でしたい大切な話とは何ですか」
「あっ、あの……」
あぁ、緊張でお腹ゴロゴロするぅ!!
駄目なの、僕緊張すると、トイレ凄い近いの!
「さ、先に、どこかでおトイレお借りしてもいいですかぁ!?」
恥を忍んで白状する。
あぁ、恥ずかしい。今から佐藤を足抜けさせてくれと土下座して、啖呵きる予定なのに!かっこ悪い。
早瀬さんが、深いため息を吐く。
「運命の番なんていうのも大した事無いのですね」
「っ!?」
心臓が凍りついたかのようだった。
本当は分かっている、佐藤は駄目おっさんだけど、すごく良い奴だし、格好いいし、本当は優秀で…今まで番を持っていないのが不思議なくらいのいい男だ…僕に相応しく無いことは薄々気がついていた…
でも、だからって佐藤は僕を選んだんだ!
ギュッとパーカーの内側で首からネックレスにして下している指輪を掴む。
僕と佐藤の未来は誰にも邪魔させない!
「いいですよ、部屋に行きましょう」
部屋?
どこの?
組の事務所的な!?
あぁ…僕生きて帰れるかなぁ…まさか東京湾とか、逆に日本海とかにポイ?
それとも富士の樹海でポイ?
着いたのは、都内が見下ろせるタワーマンションという所だった。
最近の組の事務所はマンションなのか…
背が高くて足が長い早瀬さんは、佐藤と違って僕の歩きに合わせてくれないので、小走りに着いていく。
そんな所にも佐藤の愛を感じて、ちょっと勇気がわいてきた。
必ず生きて帰る!
やたらエレベーターが上昇して、おそらく最上階に着いた。
どえらい所に来てしまった…。
タワーマンションの天辺に事務所を抱える反社会勢力…恐ろしい。
それに此処は何処だ!?
5つ星のホテル?
早瀬さんがオシャレすぎて何処がドアか分からない廊下を歩いて、防火扉くらい大きな玄関の扉を引いた。
無言で入れと目配せされて、後についていく。
「…おじゃましますぅ」
自然と小声になる。
部屋はなんか良い匂いがする。
そして広い、ピカピカ、生活感ゼロ。
落ち着かなぁぁい!事務所だからかもしれないけど、全然、落ち着かないよ。
「あの……トイレは……」
「……そこだ。さっさと済ませろ」
「はい!!」
まったくトイレのドアっぽく無いダークブラウンのデカい扉を開けた。
トイレは無意味に広い。トイレなのに洗面スペースあるし、テレビ付いている。
「トイレでかっ」
ぼくは手早く用をたし、綺麗に手を洗いながら、鏡を見た。
顔が完全にびびっている。
ポケットからスマフォを取り出すと、佐藤からメールが来ていた。
今、お前どこにいる?
あぁ、佐藤、僕も今会いたいけど!!
まってろ!僕が断ち切れなかった早瀬さんとの関係を絶つ!
それで仕事が無くなっても、僕の家に住めば良いし、借金抱えても二人で乗り越えよう!
それでも、ちゃんと祝福される結婚がいいもん!
兄たちにも昨日正直にメールをした。
運命の番が密入国斡旋している、ヤクザのおっさんαだったと。
でも凄く良い奴で、僕は愛しているから、もろもろ解決したら結婚するからと宣言した。
「よし!」
気合いを入れて、トイレから出た。
早瀬さんを探して、リビングルームのような部屋へ足を踏み入れた。
そこは、豪華なリビングで、何人すわるのかと思うほどの大きな黒いソファとガラス張りの大きなテーブル、程よく配置されているインテリア、そして窓の外に広がる東京の景色。
トーキョータワーかよ!と平素ならつっこみたいところだけど…
「ちゃんとほぐしてきたんですか?」
スーツの上着を脱いで、ネクタイを取った早瀬さんは、ペットボトルの水を飲んでいる。
他の組員さんはどこだろうか?
それに、ほぐすってなに?方言?
つかったトイレを掃除したかってこと?
「すいません、そこまでは…」
水道の蛇口はしゃしゃっと洗ったけど…
そもそもオシャレがすぎて、トイレブラシとか見あたらなかったよ。
「まったく、佐藤は甘やかして何でもするでしょうけど……私は君を甘やかしたりしませんよ」
「ごめんなさい!」
他人の家でトイレつかったら、掃除するのが常識だったのか…。
それは申し訳ない…。でも、きっと佐藤もしないよ。甘やかすとかじゃないよ、アイツは自分が絶対しない!
「どいつもこいつも、あいつの良さがわからず、財産目当てで迫るくせに、すぐ乗り換える……君も知っていてアイツに迫ったんだな……運命の番というのも、碌なもんじゃない」
早瀬さんがペットボトルをゴミ箱に投げ捨てて、ソファに座った。
「あの!なんか、ちょと良く分からないんですけど、今日はお願いがあってきたんです!!」
「は?知っているよ。大体みんなそうだからな…」
そうなの?最近足抜けしようとする人多いの!?
それなら話が早い!
僕は、早瀬さんの足下に走り込んだ。
「佐藤をやくざの世界から解放してください!!」
思いっきり土下座をした。
この部屋凄く綺麗だからおでこをグリグリ絨毯につけても抵抗ない。
「……はぁ?」
「もう、佐藤をやくざの世界に連れて行かないで!!」
沈黙が広がる。
やっぱり駄目?
今は絨毯しか見えないから、早瀬さんの表情が分からない。
「あっ…あの…小指とか無くなっちゃうのは…勘弁して欲しいですけど……小指の爪剥がされる位はぁぁ嫌だけどぉぉ、だからどうか佐藤を解放してください!!」
僕は泣きながら、震える右手を差し出した。
怖くて歯がカチカチする。
涙で絨毯の色が変わる。ああ…吐きそう。
「…君は、佐藤から乗り換えて私に抱かれに来たんじゃないのか?」
「え?」
思わず顔を上げてしまった。
早瀬さんが、先ほどまでの怖い顔から困惑しているみたいな顔をしている。
「大概のオメガや女は、佐藤を落とそうと寄ってくるが、想像と違うと皆、今度は私を誘惑しに来た。」
「んん?」
なに?なんの話?
え?早瀬さん、僕が佐藤から乗り換えて誘ってきたって思ったの!?
僕は立ち上がった。
「違う!違います!僕は佐藤には真っ当な人間になってもらって、貧乏だけど幸せな家庭を作ろうと……だから、やくざのお偉いさんの早瀬さんに、こうしてお願いにきました…」
「……」
早瀬さんが、瞬きもせず僕を凝視している。
沈黙が再び場を支配している。
タワーマンションって僕のアパートと違って無音なんだ。
日差し、強いなぁ。
早瀬さん、一本白髪発見。
「あの……」
「はははははは!」
「っ!?」
早瀬さんが突然、お腹を抱えて笑い出した。
ヒーヒー言っている。
オールバックの髪の毛が乱れてセクシーになっている。
どうしたのかな? なんで笑っているの!?
僕はどうすることも出来ず、早瀬さんの前でオロオロしている。
「はははっ…すまないっ…あまりに面白いのと…自分が、はははっ…自意識過剰で…ははは」
「…はぁ」
それで、足抜けの話はどうなったの?
「はぁはぁ……すまない。本当に、申し訳ない」
早瀬さんが眼鏡を外して、目尻の涙を拭っている。
「いえ…」
再び眼鏡をかけ直して、僕に座るようにソファに促してくれた。
早瀬さんと向きが違うソファに座る。
「私も勘違いをしていたけれど、石川君…いや、千歳君も大きな勘違いをしているよ」
早瀬さんが僕の方に膝を向けて座り直した。
「勘違い?」
「あぁ、私も佐藤も真っ当な社会人で、決して反社会勢力ではない。」
「えっ!?でも、だって、佐藤このまえ密入国斡旋しているって言って……言ってないか?」
よくよく思い出してみると、他の国の人を世話しているとは言っていたけど、斡旋しているとは言っていない。
え?誤解?
でも、妙に羽振りがいいのは?
「でも、佐藤、妙に羽振りが良くって、こないだ10万もするパソコンポーンと買ってくれたりして…」
「……千歳君……可愛いですね……おじさんが車くらい買おうか?国産派?外車派?」
何を言い出したのだ、この人は。
僕、なんか遊ばれてない?
「僕免許ないですし、このまえ誕生日に佐藤が自転車買ってくれましたから間に合ってます!アシスト付きなんですから」
早瀬さんがニヤニヤしている。
何!?なんなの!?
「千歳君、ゼネコンとか分かります?」
「ん?」
聞いた事はあるよ、何となく。ニュースは天気予報くらいしか見ないけど。
「創業20年でスーパーゼネコンの仲間入りした、佐藤建設は聞いたことありますよね?」
「……」
早瀬さんがビックリしている。
「佐藤建設、つまりそういう事ですよ」
え?それ常識? っていうか佐藤建設?まさか佐藤のご親戚の会社?
あぁ…だから仕事一杯あって羽振りがいいの佐藤!
「ちなみに、会社の売り上げは、5年連続1兆円を超えていますし、国外でも他の仕事してます」
すげぇぇ!!
佐藤の親戚すげぇええ!!
なにそれ雲の上の一族じゃん!
そうか…佐藤…居心地悪かったんだろうな。
「なので安心して玉の輿に乗ってください、千歳君。勘違いとは言え、サブの為にヤクザの事務所に乗り込んで爪剥がされる覚悟とは…あいつは幸せものですね」
「……よ……よかったぁああ」
安心したらまともに座っていられなくて、ソファに倒れ込んだ。
なんだ!
誤解!佐藤真っ当なガテン!しかも、親戚金持ち!
良かったよお!
佐藤の元に無事に帰れる!
「あっ、佐藤にメール…」
今どこか聞かれていたんだ。
スマフォを取り出してメールを開く。
今、お前の兄に呼び出されて会っている。
連絡をくれ。
「ええええええ!?どっ、どうしよう!」
「どうしました?」
スマフォを片手に叫ぶ僕を心配そうに見つめる早瀬さん。
「あっ、あの、佐藤が今、僕の兄と会っているみたいなんですけど、僕、兄に佐藤のこと密入国斡旋しているヤクザのおっさんαだって言っていて…まずい!すいません!僕行かなきゃ!」
ソファから立ち上がり、玄関へと急ぐ。
「待って、千歳君。送っていきますよ」
今、僕は早瀬さんと待ち合わせをしている。
もちろん佐藤には内緒だ。
おととい、我が家で風呂に入っている佐藤のガラケーを勝手に見たのだ。
携帯のロックナンバーは僕の誕生日だし、待ち受け画面も僕の寝顔だし…罪悪感が半端なかった。
でも、これは二人の将来のためには絶対に必要な事なのだ!
佐藤を真っ当な道に進ませる為に、反社会勢力の早瀬さんとは手を切ってもらわないと。
二人っきりで大切なお話があります。
と早瀬さんに伝えると、彼は先日あったときよりも怖い声で、分かりましたと答え日時を指定してきた。
僕のお腹は緊張できゅるきゅるですよ。
なんだか、早瀬さん、佐藤と会ったときよりも、めちゃくちゃ怖い感じなんだ。
やっぱり、普通の世界の人間じゃないのか…
「どうしよう、帰るとき僕の小指なかったら…」
ドクドクと鼓動が聞こえてくるし、さっき行ったのにトイレ行きたい。
あぁ、待ち合わせに指定された都会の大通りに立っているけど、場違い感が凄い。
グレーのパーカーに黒のパンツ、そして大きなリュック…。
道行く人パリッとスーツの此処では浮いている!
此処はいわゆる丸の内とかそういう所では?地下街でも凄い迷ったし、グーグール先生居なかったら着かなかったよ…。
僕は限りなく埼玉よりの東京に住んでいるのだ。
THE都心は管轄外なのだ。
あぁ、もう一回トイレ行きたいけど、もう時間だしぃぃ。
キョロキョロしていたら、目の前に凄い高そうな黒い車が止まった。
車に興味ない僕にはさっぱりだけど、これよくテレビで金持ちがのっているやつだ。
後部座席の窓がすーっと下がった。
「お待たせしました乗ってください」
早瀬さんの顔の上部が見えた。
眼鏡がキラリと冷たく光る。
「あっ…」
僕がビックリしてオロオロしていると、運転席の人が降りて、反対側のドアを開けてくれた。
運転手付き!?
やばいよ!
しかも運転手さん、舎弟って感じじゃないよ!ちゃんとした雇われている運転手さんだよ。帽子かぶって手袋している…。
早瀬さんの組のフロント企業というやつは、とても儲かっているのか…。
なんて人を呼び出してしまったんだ…。
街の食品工場で働くオメガとは世界が違う人だ…。
もちろん佐藤とも…。なんで、佐藤、こんな大物に捕まっちゃったのだろう。
広くて綺麗な車内に乗り込み、シートベルトをすると、運転手さんが乗り込んで走り出した。
早瀬さんは、とても不機嫌な冷たい表情で僕を見ている。
「それで、二人でしたい大切な話とは何ですか」
「あっ、あの……」
あぁ、緊張でお腹ゴロゴロするぅ!!
駄目なの、僕緊張すると、トイレ凄い近いの!
「さ、先に、どこかでおトイレお借りしてもいいですかぁ!?」
恥を忍んで白状する。
あぁ、恥ずかしい。今から佐藤を足抜けさせてくれと土下座して、啖呵きる予定なのに!かっこ悪い。
早瀬さんが、深いため息を吐く。
「運命の番なんていうのも大した事無いのですね」
「っ!?」
心臓が凍りついたかのようだった。
本当は分かっている、佐藤は駄目おっさんだけど、すごく良い奴だし、格好いいし、本当は優秀で…今まで番を持っていないのが不思議なくらいのいい男だ…僕に相応しく無いことは薄々気がついていた…
でも、だからって佐藤は僕を選んだんだ!
ギュッとパーカーの内側で首からネックレスにして下している指輪を掴む。
僕と佐藤の未来は誰にも邪魔させない!
「いいですよ、部屋に行きましょう」
部屋?
どこの?
組の事務所的な!?
あぁ…僕生きて帰れるかなぁ…まさか東京湾とか、逆に日本海とかにポイ?
それとも富士の樹海でポイ?
着いたのは、都内が見下ろせるタワーマンションという所だった。
最近の組の事務所はマンションなのか…
背が高くて足が長い早瀬さんは、佐藤と違って僕の歩きに合わせてくれないので、小走りに着いていく。
そんな所にも佐藤の愛を感じて、ちょっと勇気がわいてきた。
必ず生きて帰る!
やたらエレベーターが上昇して、おそらく最上階に着いた。
どえらい所に来てしまった…。
タワーマンションの天辺に事務所を抱える反社会勢力…恐ろしい。
それに此処は何処だ!?
5つ星のホテル?
早瀬さんがオシャレすぎて何処がドアか分からない廊下を歩いて、防火扉くらい大きな玄関の扉を引いた。
無言で入れと目配せされて、後についていく。
「…おじゃましますぅ」
自然と小声になる。
部屋はなんか良い匂いがする。
そして広い、ピカピカ、生活感ゼロ。
落ち着かなぁぁい!事務所だからかもしれないけど、全然、落ち着かないよ。
「あの……トイレは……」
「……そこだ。さっさと済ませろ」
「はい!!」
まったくトイレのドアっぽく無いダークブラウンのデカい扉を開けた。
トイレは無意味に広い。トイレなのに洗面スペースあるし、テレビ付いている。
「トイレでかっ」
ぼくは手早く用をたし、綺麗に手を洗いながら、鏡を見た。
顔が完全にびびっている。
ポケットからスマフォを取り出すと、佐藤からメールが来ていた。
今、お前どこにいる?
あぁ、佐藤、僕も今会いたいけど!!
まってろ!僕が断ち切れなかった早瀬さんとの関係を絶つ!
それで仕事が無くなっても、僕の家に住めば良いし、借金抱えても二人で乗り越えよう!
それでも、ちゃんと祝福される結婚がいいもん!
兄たちにも昨日正直にメールをした。
運命の番が密入国斡旋している、ヤクザのおっさんαだったと。
でも凄く良い奴で、僕は愛しているから、もろもろ解決したら結婚するからと宣言した。
「よし!」
気合いを入れて、トイレから出た。
早瀬さんを探して、リビングルームのような部屋へ足を踏み入れた。
そこは、豪華なリビングで、何人すわるのかと思うほどの大きな黒いソファとガラス張りの大きなテーブル、程よく配置されているインテリア、そして窓の外に広がる東京の景色。
トーキョータワーかよ!と平素ならつっこみたいところだけど…
「ちゃんとほぐしてきたんですか?」
スーツの上着を脱いで、ネクタイを取った早瀬さんは、ペットボトルの水を飲んでいる。
他の組員さんはどこだろうか?
それに、ほぐすってなに?方言?
つかったトイレを掃除したかってこと?
「すいません、そこまでは…」
水道の蛇口はしゃしゃっと洗ったけど…
そもそもオシャレがすぎて、トイレブラシとか見あたらなかったよ。
「まったく、佐藤は甘やかして何でもするでしょうけど……私は君を甘やかしたりしませんよ」
「ごめんなさい!」
他人の家でトイレつかったら、掃除するのが常識だったのか…。
それは申し訳ない…。でも、きっと佐藤もしないよ。甘やかすとかじゃないよ、アイツは自分が絶対しない!
「どいつもこいつも、あいつの良さがわからず、財産目当てで迫るくせに、すぐ乗り換える……君も知っていてアイツに迫ったんだな……運命の番というのも、碌なもんじゃない」
早瀬さんがペットボトルをゴミ箱に投げ捨てて、ソファに座った。
「あの!なんか、ちょと良く分からないんですけど、今日はお願いがあってきたんです!!」
「は?知っているよ。大体みんなそうだからな…」
そうなの?最近足抜けしようとする人多いの!?
それなら話が早い!
僕は、早瀬さんの足下に走り込んだ。
「佐藤をやくざの世界から解放してください!!」
思いっきり土下座をした。
この部屋凄く綺麗だからおでこをグリグリ絨毯につけても抵抗ない。
「……はぁ?」
「もう、佐藤をやくざの世界に連れて行かないで!!」
沈黙が広がる。
やっぱり駄目?
今は絨毯しか見えないから、早瀬さんの表情が分からない。
「あっ…あの…小指とか無くなっちゃうのは…勘弁して欲しいですけど……小指の爪剥がされる位はぁぁ嫌だけどぉぉ、だからどうか佐藤を解放してください!!」
僕は泣きながら、震える右手を差し出した。
怖くて歯がカチカチする。
涙で絨毯の色が変わる。ああ…吐きそう。
「…君は、佐藤から乗り換えて私に抱かれに来たんじゃないのか?」
「え?」
思わず顔を上げてしまった。
早瀬さんが、先ほどまでの怖い顔から困惑しているみたいな顔をしている。
「大概のオメガや女は、佐藤を落とそうと寄ってくるが、想像と違うと皆、今度は私を誘惑しに来た。」
「んん?」
なに?なんの話?
え?早瀬さん、僕が佐藤から乗り換えて誘ってきたって思ったの!?
僕は立ち上がった。
「違う!違います!僕は佐藤には真っ当な人間になってもらって、貧乏だけど幸せな家庭を作ろうと……だから、やくざのお偉いさんの早瀬さんに、こうしてお願いにきました…」
「……」
早瀬さんが、瞬きもせず僕を凝視している。
沈黙が再び場を支配している。
タワーマンションって僕のアパートと違って無音なんだ。
日差し、強いなぁ。
早瀬さん、一本白髪発見。
「あの……」
「はははははは!」
「っ!?」
早瀬さんが突然、お腹を抱えて笑い出した。
ヒーヒー言っている。
オールバックの髪の毛が乱れてセクシーになっている。
どうしたのかな? なんで笑っているの!?
僕はどうすることも出来ず、早瀬さんの前でオロオロしている。
「はははっ…すまないっ…あまりに面白いのと…自分が、はははっ…自意識過剰で…ははは」
「…はぁ」
それで、足抜けの話はどうなったの?
「はぁはぁ……すまない。本当に、申し訳ない」
早瀬さんが眼鏡を外して、目尻の涙を拭っている。
「いえ…」
再び眼鏡をかけ直して、僕に座るようにソファに促してくれた。
早瀬さんと向きが違うソファに座る。
「私も勘違いをしていたけれど、石川君…いや、千歳君も大きな勘違いをしているよ」
早瀬さんが僕の方に膝を向けて座り直した。
「勘違い?」
「あぁ、私も佐藤も真っ当な社会人で、決して反社会勢力ではない。」
「えっ!?でも、だって、佐藤このまえ密入国斡旋しているって言って……言ってないか?」
よくよく思い出してみると、他の国の人を世話しているとは言っていたけど、斡旋しているとは言っていない。
え?誤解?
でも、妙に羽振りがいいのは?
「でも、佐藤、妙に羽振りが良くって、こないだ10万もするパソコンポーンと買ってくれたりして…」
「……千歳君……可愛いですね……おじさんが車くらい買おうか?国産派?外車派?」
何を言い出したのだ、この人は。
僕、なんか遊ばれてない?
「僕免許ないですし、このまえ誕生日に佐藤が自転車買ってくれましたから間に合ってます!アシスト付きなんですから」
早瀬さんがニヤニヤしている。
何!?なんなの!?
「千歳君、ゼネコンとか分かります?」
「ん?」
聞いた事はあるよ、何となく。ニュースは天気予報くらいしか見ないけど。
「創業20年でスーパーゼネコンの仲間入りした、佐藤建設は聞いたことありますよね?」
「……」
早瀬さんがビックリしている。
「佐藤建設、つまりそういう事ですよ」
え?それ常識? っていうか佐藤建設?まさか佐藤のご親戚の会社?
あぁ…だから仕事一杯あって羽振りがいいの佐藤!
「ちなみに、会社の売り上げは、5年連続1兆円を超えていますし、国外でも他の仕事してます」
すげぇぇ!!
佐藤の親戚すげぇええ!!
なにそれ雲の上の一族じゃん!
そうか…佐藤…居心地悪かったんだろうな。
「なので安心して玉の輿に乗ってください、千歳君。勘違いとは言え、サブの為にヤクザの事務所に乗り込んで爪剥がされる覚悟とは…あいつは幸せものですね」
「……よ……よかったぁああ」
安心したらまともに座っていられなくて、ソファに倒れ込んだ。
なんだ!
誤解!佐藤真っ当なガテン!しかも、親戚金持ち!
良かったよお!
佐藤の元に無事に帰れる!
「あっ、佐藤にメール…」
今どこか聞かれていたんだ。
スマフォを取り出してメールを開く。
今、お前の兄に呼び出されて会っている。
連絡をくれ。
「ええええええ!?どっ、どうしよう!」
「どうしました?」
スマフォを片手に叫ぶ僕を心配そうに見つめる早瀬さん。
「あっ、あの、佐藤が今、僕の兄と会っているみたいなんですけど、僕、兄に佐藤のこと密入国斡旋しているヤクザのおっさんαだって言っていて…まずい!すいません!僕行かなきゃ!」
ソファから立ち上がり、玄関へと急ぐ。
「待って、千歳君。送っていきますよ」
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政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
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