運命の番が解体業者のおっさんだった僕の話

いんげん

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一人でふた味楽しめる

普段だったら外で佐藤と歩いていても別にドキドキまではしないのに…エンペラー効果が酷い。

一緒に歩いているだけでドキドキする。
佐藤の方が向けずに、せっかくの高級住宅街なのに、下向いて歩いている。
金持ちの匂いよりも佐藤の存在が気になる!!
気分は好きな子と一緒に帰る中学生な感じ。

「この辺は各国の大使館もちけぇから色んな国の飲食店もあるしショップもあって面白いよな」
佐藤が周りを見ながら、どこの国の料理だとか説明してくれる。
僕ら2人の進路では、すれ違う前に人が避けている。
彼らの気分は凄く分かる。

「サトー!!お前、何するしてる。姿いつもと違うですよ。」
突然、異国情緒溢れるショップから話しかけられた。中東の方の国の方?
「おお、デミ。お前こそ何してんだ」
佐藤が何やら知らない言葉で喋り始めた。
数人の仲間が店の中からやってきて、わいのわいの話して、僕を見た。
蚊帳の外からの突然中心でドキドキする!僕、日本語も時々通じませんから!

「おくさん!いつも、サトーには、お世話させてあげてるよー!ありがとね」
みんなにペコリと頭を下げられた。僕もつられて深々と頭を下げる。
おぉ、解体業関係の人たちか!
「じゃあな、行こうぜ千歳」
佐藤が自然と僕の手を引いてあるき出した。

ドキドキ
手をつないで歩いてる…。
あぁ、思春期か僕!!

佐藤は何とも思ってないだろうに…。
ちらりと佐藤を見ると、幸せそうに僕を見て笑っている。

「っ!?」
帰りたい!!
心臓がもたないし、顔が赤くなりすぎてまずい。


話もせずに、手をつないで歩いてる。
佐藤に導かれるまま…。
佐藤の手はやっぱり大きい。
僕のフニャフニャの手と違って固くてゴツゴツしてるし……。
いつもこの手で僕の……

ああああ!!
駄目だ、駄目だ!

余計な事考えてるとヒート来る!
佐藤のカッコ良さのせいで…。

「ここが候補地の1つだぜ」
佐藤が止まって一軒の豪邸を指差す。
そこは高い塀で囲まれた、大きな家だ。
多少年季が入っているだろうけど、丁寧に手入れがされていて綺麗だ。
えーこんな立派な家を壊して新しいの建てちゃうの??
と思うけど、そうじゃないと大工の佐藤の仕事はないし、家を建てようと思っている夫婦は土地を探してるんだもんね。
「凄く静かなんだね。どの家も豪邸だし、凄いねぇ」
というか、佐藤が本当に、エンペラーならなぜ解体業や大工??
本当に、佐藤は社長ごっこしてるだけなの??エンペラーなの?
「他の場所だともっとすげーところもあるけど、400坪近くの出物が今ないんだよなぁ。ここももう少し大きくてもいいんだけどよぉ、まぁ周りも知り合い多いし安心だしな」
あぁさっきの人達のお店近いから街のリサーチができるよね。
家を建てるオーナーさんに話しやすいね。
でも、大工さんって土地探しもするんだ。大変だね。
「で、どう思う?」
「えっ?素敵だとおもうよ」
別世界だけど。

「そうか、じゃあここで業者に提案してみるかな」
佐藤がガラケーをカタカタやりだした。
おぉ、よくわからないけど働く男っぽいぞ!
っというか、佐藤建設の社長だとしたら、ガラケーなくない?スマホじゃない??


「佐藤様!」
「ふわぁ!」
後ろから突然声がかかって驚いて、僕は、佐藤に飛びついた。
振り向くと、身なりのいい初老の紳士が立っていた。
たぶんαだと思う。
「お久しぶりです。以前、経団連のパーティーでお会いした」
「三木さん、お久しぶりです」
「覚えて頂けているとは光栄です」
2人がにこやかに会話する。
またしても蚊帳の外だ。僕は佐藤の背中についたまま紳士を眺める。

歳を重ねても姿勢正しく、気品があっって、前に立つと気が引き締まる感じの人だ。
ボケーっと見ていたら紳士と目があってしまった。
「こちらの可愛らしいお方は?」
紳士の魅力が凄い。
笑顔が仏様のようで浄化されそう。
「俺の運命の番です。近く結婚予定で」
「それは素晴らしい!運命の番に出会えるなんて、やはり貴方は特別なお人ですね。おめでとうございます」

運命の番に出会ったオメガなんて、からかわれそうだけど、この紳士に言われると素直にお礼が言いたくなる。なんだか照れる。

「…ありがとうございます」
紳士がふふっと笑っている。
「本当に愛らしい方ですね。佐藤様は、これから忙しくなりそうですね…。」
「覚悟してます」
えっどういうこと??

また何やら2人が難しい話を始めた。
景気がどうだとか、何かの相場がどうだとか……。
こんな紳士とパーティーで知り合い??

やはりエンペラー説浮上。
っていうか、そもそもパーティーってなに??
僕、友人の誕生日会とか、みりりんファンのオフ会しか行ったこと無いよ。
それは他のオメガや女性も来るのかな……

佐藤狙われちゃうじゃん!!

オメガは番になれば項に噛み跡残るけど、αは見かけ変わらない!
ずるい!!なんかずるいよ!

僕も佐藤に、僕のものだって証拠残したい!
僕も佐藤の項噛もうかな…。

「千歳、おい千歳!」
「っあ、ごめん」
考え込んでいたら、紳士が立ち去って行くところだった。
慌てて頭を下げる。
「では、私はこれで。ご近所になられましたらぜひ、遊びに来てください」
「…はい?」

近くによったら来てねってことか。
すごいなぁ紳士、このへんに住んでるんだ。

「悪いな、立ち話しちまって」
「ううん。大丈夫!」
紳士がご近所なら、ここが現場になったら騒音とかあるし、ちゃんと対応しないとだもんね!
「腹減ったなぁ。飯食うか!」
もう10月も終わる頃、日が落ちるのも早くなってきた。
夕暮れから、もうソロソロ夜だ。
「うん」
僕、リサーチしてきたよ!
「近くに知り合いの店があんだよな、そこ行くか」
「焼き肉?」
「ちげーよ!」
佐藤が僕の頭をガシガシしてくる。

まぁお知り合いの店なら、うっかり高級レストランじゃないよね!


知り合い詐欺か…。
やってきたのは高そうなフレンチレストラン!!
コースだよ。
メニューに値段が書いて無いよ!!
そもそもメニューが日本語じゃ無い。

しかも、着席と同時にフランス人シェフ出てきちゃったよ。
お手上げだ。
佐藤が妙にいい発音で注文してる。
ブネーネ、アポー、コンピューラーっていうみたいに

佐藤のくせにフランス語か??
お前は無駄に何カ国語しゃべるんだ!!

シェフが立ち去り二人きりになった。
僕は、高そうな炭酸水をのみながら、改めて佐藤を観察する。

ソムリエに入れてもらったワインを飲む姿が様になっている。
いつもうちで缶ビール飲んでカップ焼きそば食べているのに!!
ちょっとワイシャツ着てスラックス穿はいて、ひげ剃って髪整えただけで別人って、どれだけ素がいいんだ。
凛々しい太めの眉と、強い眼差し。日本人らしくなく眉間から鼻筋が通っている。

尊い!
もはや神業レベル!
他の人間と担当した絵師が違うはず。

富山さんのコレクションの発行元が知りたい!
取り寄せたい!

今日、家帰ったら佐藤三郎太で検索しよう。
指名手配は検索したけど、普通に検索してれば良かった

「…どうした?千歳?」
ワイングラス片手に推しが僕に微笑んでる!!
課金したい!!

写真集5冊くらい買いたい!

「佐藤が素敵だと思ってる」
「………」
エンペラー佐藤のポカーン顔頂きました!
よし、今なら探りを入れられるかもしれない。
エンペラー検証スタートゥ!

「あのさぁ、佐藤。佐藤はいつ解体以外の佐藤建設の仕事してるの?」
これはなかなかいい質問だと思う。
「ん?まぁ普通に出社する日もたまにはあるぜ。それ以外は大体現場行く車は青田に運転させて、そのうちに朝の連絡だとか受けて、色々指示出したり、バーっとやって、昼必要なら飯食いながらやって、帰りの車でやって、帰ってきてやってるかな?」
出された前菜を、完璧なテーブルマナーで食べ進める佐藤。
お前…いつもは焼きそばのキャベツ飛ばすくせに…。
「めちゃくちゃ忙しいじゃん!!」
「まぁ今は全然楽だぜ。でもお前のところに行くと、ついグーたらしちまうよな……すげー落ち着くんだよな」
「……」
佐藤がグラスを置いて、僕の右手に手をのせた。
そっと撫でられる。
佐藤のぬくもりや思いが伝わって来る。
「安心できる場所っつーのか?上手く言えねぇけど、これが俺が欲しかったものなんだよな。今までどんなに金を稼いでも、どんなに、偉くなっても手に入らなかった、俺の大事な半身」
「……佐藤」
佐藤の真剣な目に見つめられて、息も出来ない。
心に響く。
「運命の番が、こんなおっさんでわりぃけど。俺はもうお前を離してやれねぇ。お前との未来を想像するだけでワクワクすんだ、お前はどうだ?全然違うか?」
佐藤がちょっと眉を下げて僕に聞いた。
気がついたら、僕は、ボロボロ泣いていた。
別に悲しいわけじゃない。嬉しいだけじゃない。

エンペラーは、人間だった。

そしてジゴロだった。
こんなの皆惚れちゃうよ!
「佐藤三郎太は僕が幸せにする!」
「っぷ、ははは、なんだそれ、俺のセリフじゃねーのか??頼もしいな、おい」
「僕は今めちゃくちゃワクワクしてるよ!!僕、応援する!」

つまり、こういう事でしょ。
モサモサの普段の佐藤が、時々アイドルのエンペラー佐藤に変身する。
めっちゃ応援する!
バックステージの佐藤も、スポットライト佐藤も!!
よっ!恋の中年魔法使いアイドル!

「お前も、俺の全力の愛情を覚悟しておけよ」
決め台詞きたああ!!

富山さーん!!



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