運命の番が解体業者のおっさんだった僕の話

いんげん

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入籍までもう少し


「なぁ、早瀬。今どきの若い奴らって何を喜ぶんだ?デートとかどこ行っているんだ?」
今日は朝から呼び出されオフィスに来て仕事をしていた。
後で現場に行く予定なので作業着で来た。

処理するべきことが全て終わったので、早瀬に聞いてみた。
社長室には、現在俺と早瀬しか居ない。
「……サブ、俺に聞くな。俺は金とセックス目当ての奴しか相手にしてない。天使の扱いなどわからない」
早瀬が応接セットのテーブルでパソコンを閉じながら言った。
「お前……いつか刺されるぞ」
この男は、恋愛的情緒に問題がある。
とにかく仕事が大好きで、ひとの好意など邪魔だと思っているのだ。
そのくせアブノーマルなセックスをスポーツとして楽しむ問題のある男だ。
千歳の運命の番が、この男じゃ無くて本当に良かった。
一見爽やかで他の人間には丁寧な口調で話すが、本性はとんでもなく悪い男だ。
仕事でも必要とあらば平気で残酷な決断を下す。
それに助けられている面もあるが、長い付き合いの親友としては、心配だ。

「俺はそんなへまはしない。ちゃんと全員躾ている」
「………」
こいつ今何人相手にしているんだ…。
「まぁ天使なら何でも喜ぶんじゃないか?奇跡みたいな子だからな…」
早瀬の所に千歳が乗り込んでから、すっかり気に入られてしまっている。
こいつは親友としては良いが、千歳にはあまり近づけたくない。
「俺は最高にアイツを喜ばせてぇんだよ」
「……だから俺に聞くな。俺の相手にしている奴らは最高に金のかかるデートとぶっ飛んだセックスで喜ぶ」
つい白い目で早瀬を見てしまった。
相変わらずだな、おい。

急用があり、こいつのマンションで仕事したときに、うっかり間違えて開けた部屋を見て驚いた。
見られた本人は何も気にしていなかったが……。
本当に必要以上に千歳には近づかせないようにしよう。

「まぁ、あれだ。一般的なデートをすればいいだろ。なんだ、知らないが……遊園地とか…動物園とか…ふっ…」
メガネをおさえた早瀬が、自分で言いながら笑っている。
「お前の現場の部下に聞いたら良いんじゃないか?」
「お前も破綻してるが、あいつらもおかしい。女とパチンコにスロット、酒ばっかりだ」
主に青田情報だが…
「中にはまともに付き合ってる奴も居るだろう。そいつに聞け」
早瀬が俺は用済みとばかりに、しっしと追い払う。




そのまま現場の仕事へ向かう。
昼休憩中に合流できた。
かわいい彼女ができたという若い井上を車の中に呼んでみた。
運転席と助手席に座った。
井上はガテンらしく筋肉に覆われた体を小さくして俺の言葉を待っている。
いや、説教とかじゃないんだが…

「なぁ、お前付き合ったらデートとかどこ行きたい?」
「親方!?」
井上が驚いた顔で俺を、凝視する。
すまねぇ、怒られると思ったか?
申し訳ない気持ちで、井上を安心させるために微笑んだ。
「おっ、親方とでしたら、どこでも!!」
確かに、千歳もそう言ってくれそうだけどよ。
だから、困ってるんだよな。
「だけどよ、最近の若い奴らの好みなんて知らねぇからな、喜ばせてぇだろ」
千歳の事を考えながら微笑んで頭を掻いていたら、井上がモジモジし始めた。
どうした、ションベンか…。
「漏らすなよ」
「……俺、俺……親方になら抱かれても良いっす!!」
井上が助手席のシートを倒した。
なぜか目をつぶっている。
「ああ!?」

なんでそうなった!?
千歳のドタバタ体質がうつったか!?
「親方…」
車の前には呆然と此方を見る青田がいる。
「俺、誰にも言わねぇっす!!」
青田が大きな誤解をして走り出した。
まずい、面倒くさい事になる。
俺は、運転席のドアを開けて、青田を追いかけようとした。

アイツは他の奴らに、絶対あること無いこと言いふらすに違いない。
直ぐに止めて誤解を解かねぇと!

しかし、井上に腕を捕まれた。

「親方…優しくして下さい…」
「誤解だぁああ!!」



危なかったぜ、何故あんな誤解が起きたのか…まったく今までこんな事無かったんだが…
最近、千歳に感化されている気がする。
「おまえ色に染められてんぞ…」
千歳の寝顔を盗み見ながら仕事をしている。
今日は疲れているのか、俺が風呂に入っているうちに寝てしまっていた。
可愛い。
サラサラとした栗毛の髪を撫でる。
「んん……さとぅ……」
千歳が身じろいで俺の手を掴む。
胸が締め付けられるように高鳴る。
アーモンド型のくりくりの目が閉じられて、大人しくしていると不思議な感じだ。

普段は、あまりじっとしていないし元気に動き回っているから、見ていて面白いが、寝顔は俺の腕に閉じ込めて守ってやりたくなる。
「…はぁ」

早瀬から来たメールの事を考えると、ため息が止まらない。

結婚式をしないなら、せめて結婚報告のパーティーでもやれと……
招待予定の客のリストが送られてきた。

本当に煩わしい…
なぜ、そんな事を…
まぁ、なんらかの形で周囲に報告をしなければならないと思って居たが…
気分がのらない。千歳、嫌がるだろうか…

それに、気になる事がまだある。
千歳の隣に住まわせている警備の笹原の報告だと、最近千歳の家に脅迫状が届く。
郵送されてきているのだが、内容は実にくだらねぇ。

俺と別れろ、さもないと酷い目にあうと。

差出人の特定を急いでいるが、おそらく俺にちょっかいを出してくる人間のだれかだろう。
千歳が見る前に全て処理しているが…。

まったく…興味ないとはっきり遠ざけても、しつこい。
早瀬が気に入ると引き取って遊ぶのだが、いつまでもしつこいのも居る。

以前は放っておいたが、今は千歳が居る。
千歳を守るために、適切に処理しないとならねぇな。

千歳の首輪を弄る。
俺がこいつを噛んで番になる前に、もしも、他のαに噛まれたら……
考えるだけで肝が冷える。

入籍予定まで、もうあと3週間も無い。
いっそもう噛んじまうかと思うが……一生に一度のことだ、ちゃんとしてぇ。
丁度、そのころに千歳のヒートも来る予定だしな。

あと少し。
気を引き締めて守らなければ。

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