運命の番が解体業者のおっさんだった僕の話

いんげん

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アレルギー

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「どうしよう。僕、もう仕事続けられないかも」 

僕は、ここ数日悩んでいる事を相談するべく、だだっ広いリビングのソファで、ねぶたジュースを飲んでいる佐藤の隣にくっついた。 

「あー? どうした? マダム達と何か有ったのか?」 

佐藤はテレビを消して、逞しい腕の中に僕を抱き込んだ。 
あぁ、本当に……なんでこんなキュンキュンするんだろう。

格好いい、佐藤本当に格好いい。

「ううん、そこは問題ないんだけど……僕さ、もしかしたら、おにぎりアレルギーかもしれない!」 

佐藤のTシャツを握りしめて、その端正な顔を見上げた。

「おにぎりアレルギー?」

佐藤の眉間に深い皺が刻まれた。
僕を見ている鋭い目が、ちょっと笑っている気がする。

「そう、おにぎりアレルギーだよ」
「お前……でも、普通に米食っているだろ?」 
佐藤が僕のほっぺをムギュッと掴んだ。

「うん、まぁ……食べられる事は食べられるけど、なんか最近、美味しくないし、とにかく駄目なの」
「駄目って言うのは、どう駄目なんだ?」 

佐藤の手が、ほっぺたから僕の栗色の毛に移り、よしよしと撫でられる。

「なんかね……工場に行くと気持ち悪くなるんだよ。あの、ご飯の炊ける臭いを嗅ぐと……胃がムカムカして」 

何なんだろう。
家でご飯炊くのは、キッチンが広いせいか、二十四時間換気システムのせいか、そんなに気にならないんだけど。

「……」
「ねぇ、聞いてる?」

なぜか無表情のまま固まった佐藤。

 「僕、このまま、おにぎりアレルギーが悪化したらどうしよう」

僕の稼ぎが無くても暮らせるのは知って居るけど、僕的には、あの職場も仕事仲間も気に入っているので、やめたくない。
でも、おにぎりアレルギーが悪化して、全身に発疹とかできたら流石にまずい。

「おにぎりアレルギーって治るよね?花粉の薬とか効くかな」
 「駄目だ!」 

佐藤の上からどいて、ドラッグストアにでも行こうかと思った僕の腕が引かれ、ソファの上にフワリと座らされた。 

「い……いいか!動くな! 大人しくしろ! 薬を飲むなんて言語道断だ!」
「え? ん? どうしたの?」

 僕をソファに座らせて、僕の前に立ち上がった佐藤の挙動がおかしい。
佐藤がこんなに慌てている姿、はじめてみたかも。 

「千歳……お前、それは、あれじゃねぇか!」
「あれ?」
「アレだよ! 妊娠だ!」

 に……妊娠? 
え?
身に覚えは毎日のようにあるけど……え? 妊娠? 

「ツワリってヤツじゃないのか? いいか、ソコを動くなよ! 俺が今から妊娠検査薬つーのを買ってくる」 

佐藤がいつもより二倍は早口でまくし立てた。
というか、佐藤が妊娠検査薬買いに行くの? 

「お前のおっちょこちょいが、今は一番怖ぇ……頼むから、ソコを動くな。いいか、ここで大人しくテレビでも見ていろ」 

慌てた様子の佐藤が、ポケットに財布を突っ込み、僕の前にお茶とスマホとリモコンを並べて、自分の作業着の上着を僕の膝に掛けた。 

「そんな、まだ決まった訳でもないし……」 
どれだけ過保護なの? 

「頼むから…そこで待て」

 必死な様子の佐藤が可愛くて、愛しくてコクンと頷いた。
すると佐藤がダッシュで走りだした。

「くそっ!無駄に家が広い!」

 僕は、何だか面白くなってケラケラ笑ってしまった。

まぁ、笑って居られたのも、ソコまでだったけどね。 

あの後、ドラッグストアの妊娠検査薬を全種類買ってきて、全部やらされた上に、全部陽性だったのを見て
「千歳っ…」
 と、半泣きになりながら、僕を抱きしめて、いかに自分が幸せを感じているかと語りだした。

そして、大喜びしたと思ったら、色々調べて、今度はオメガの男性の出産のリスクとかと向き合い、めちゃくちゃ心配症になり……ちょっとウザいくらいだった。

基本、楽観主義な僕は、なるようになると思っているのに。
やれ動くなとか、箸より重いモノを持つなとか。
部屋のあちこちに、緊急呼び出し用のブザー設置したり。

まぁ、そんな流れで、僕の工場も佐藤三郎太に買収され、売り上げも倍増、従業員も増やし、諸処の休暇も増えて、僕は長い休暇に入らされました。

「……愛してるぜぇ…」

今では二児の父となった、佐藤がよく似た息子の寝顔にキスをしている。

隣に眠る妹にもヤバい程の溺愛っぷりで、無駄に高いウサギのロンパースを着せて、一人で悶えている。

「かわいい、息子も、娘も……嫁も最高に可愛い……俺は世界で一番の幸せ者だ」

 最近の佐藤の口癖を聞く度に、僕はいつも、こう答えるんだ。 

「残念だったな、一番幸せなのは僕だよ」
 
「千歳が幸せなら、俺は、もっと幸せだ」

 佐藤が立ち上がり、大きな体を屈ませて、僕にキスをした。 

僕は、満面の笑みで佐藤を見つめた。

 おしまい
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感想 26

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みんなの感想(26件)

るんるん
2025.04.17 るんるん

すみません、先程は読み返したすぐあとだったためあのような自分勝手なコメントを送ってしまいました。
販売するのにも沢山の労力がかかると言うのに申し訳ないです。
ただ、手元に置きたいくらい大好きな作品ということには変わりないですし、これからも陰ながらいんげん様のお話を応援しています₍ᐢ⑅•ᴗ•⑅ᐢ₎♡

2025.04.17 いんげん

るんるん様、ありがとうございます。
むしろ、お声掛け嬉しいです。
予備でとっておいた分が数冊あるのですが、ブースを閉じてしまって「はてさて、どうしたものか」状態でして、いつの日か重い腰を上げて、「よし!やるぞ!」となりましたら、残りの数冊を出したいと思います。
その時は、活動報告などで報告しますので、もしよろしければ、どうぞ。
気長にお待ちいただければと思います♪

応援ありがとうございます♡
これからも、楽しくお話を書き続けますので、ぜひ、お暇なときには読んでいただけると嬉しいです♪

解除
るんるん
2025.04.17 るんるん

何度も何度も読み返している大好きな作品です。
最初から最後まで私の好きが詰まっていて読む手が止まりません。本当に大好きです!!!
一つ質問なのですが、BOOTHで過去にこちらの本の販売があったと思うのですが再入荷などの予定はありますでしょうか😭出会ったのが遅く、、、手元に置きたいくらい大好きな作品です😭
または電子での販売はありませんでしょうか?どうしても書き下ろし(豪邸完成編)と、おまけの小話付き。
⬆️こちらが読みたく、ついついコメントしてしまいました。


これからも応援しています!!

2025.04.17 いんげん

るんるん様、コメントありがとうございます!
そんなに愛していただき、とても光栄です♡

同人誌に掲載しました書き下ろしですが、すべて公開しております♪
おまけの小話が、掲載してある「アレルギー」にあたります。
あと、ゆりりこ様が描いてくださった、番外編の漫画も、なんと、アルファポリスさんの投稿BL漫画の方で読むことができますので、ぜひぜひ、検索して読んでみてください! 私の解体世界が、完全に絵で再現されております♡
リンクの貼り方がわからず、すみません(^-^;

解除
もくれん
2023.12.26 もくれん

はじめまして!!
一気読みしました……めっちゃ面白すぎる!!千歳の1人暴走にどういう事!?なんでこんな発想するの!!とニヤニヤしながら読みました😅
初めはガテン佐藤に翻弄される千歳だと思ったんです……なのに次から次へと誰も想像しない明後日方向の天才頭脳に走り回ってるのは、(思ったより)常識佐藤でした……。佐藤乙。って何度も語りかけましたよ。
早瀬の変態振りも霞む千歳のおバカさ、それに匹敵する佐藤ファンマダム2人の掛け合いが最高です!!😭
ありがとうございました!!

他の作品も随時拝読させて頂きます!!

2023.12.26 いんげん

もくれん様、感想ありがとうございます(´;♡;`)

今、絶賛「私の小説おもしろくない期」に入ってたので、心救われました!!ありがとうございます♫
確かに、タイトルとあらすじだと、佐藤の方が、ぶっ飛んでいそうなのに、まさかの受けが、暴走www

よくよく考えてみると、包容力、ガテン攻めと、大暴走健気受けかもしれません!! 

おばちゃんずも、いつの間にか、ひょっこり現れて今ではレギュラーメンバー入りで、妙に愛着が湧いてます♫

また、なにか二人のドタバタを書いてお届けしたいなぁと思います♡♡

解除

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